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1人目の妻 かなこ

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 山井俊介は、早くに父を亡くし、母と妹、弟の4人暮らしだった。中学を卒業してから新聞配達のバイトをしながら定時制高校に通った。生活は苦しく朝刊と夕刊の配達では食えなかった。

 住み込みで会計事務所に働いた。
 中学卒で働いているのは、俊介だけだった。
 事務所は、先生と30歳前後の事務員と俊介だけだった。

 午前3時に起きて新聞配達に向かい、午前6時に事務所の二階に戻り、朝食を取り、午前7時には、事務仕事に就き、正午に昼食を取り、午後1時から3時まで事務所に籠り、3時から夕刊を配りに行った。戻ってきたらすぐに定時制高校へ行き、夕飯は、先生の奥さんがおにぎりを作ってくださり、それを食べた。帰って、風呂に入りすぐ就寝。という日々を送っていた。体力的にきつかったが、若さゆえ乗り切れたのだろうと思う。

 ある日、寝ていたら、夜中に事務所の先輩のかなこが布団に潜り込んできた。残業だったのだ。

 「俊ちゃん、はじめてでしょ?私が全部教えてあげる♡」

 その経験に興味がある年頃だったし、若いカラダは萎えることなく、すぐに回復する。

 そのまま初めてを奪われた。

 それから毎夜、興味本位のまま抱かれた。
 ただでさえ、睡眠不足の上に、かなこからせがまれ限界だった。
 事務所が休みの日も、まるでペットのようにかわいがられ愛玩具のようになっていたが、生活のため耐えた。

 学費は、かなこが全部払ってくれた。
 新聞配達のバイト代と会計事務所の給料全額を家に入れることができた。

 定時制高校は4年で卒業だが、かなこの経済的援助により大検を受け、合格し、大学受験に挑んだ。

 受験勉強中も、ずっと、かなこを抱き続けた。やがて、かなこは妊娠したので籍を入れた。

 大学に合格したが、母と幼い妹、弟の生活費を稼ぐ必要はまだある。昼間の学生生活を諦め、夜間部の大学に通った。

 高校時代となんら変わらない生活が続いた。

 相変わらず、かなこのヒモというべきか、情夫になり、かなこに生活費と学費の全額を支払ってもらっていた。

 そのかわり、朝も昼も夜も、休日もずっと、かなこに愛の奉仕を続けた。

 その時、俺は大学辞めても、ホストで食っていける自信ができた。と思った。

 同級生の奴らは、気楽に親のすねかじりしながら、青春を謳歌していた。

 それに引き換え、俺は、かなこを抱くことにより、生活を保障してもらっている身分だ。

 かなこを一度も愛おしいと思ったことがない。ただ、生活のために抱いた。

 結局、かなことの結婚生活で、娘二人を儲け、大学卒業と同時に離婚した。

 俺の青春を返せと言いたいところだが、女が悦ぶテクニックを身に着けたことは、後の人生にとって、プラスになった。
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