7 / 76
悪役令嬢として転生
7.魅了魔法
しおりを挟む
お妃教育の帰り道、ついふらふらと悪役令嬢ジャクリーンの店に入ってしまったことを今更ながらに後悔しているリリアーヌ。
でも、本当にあこがれを持つぐらい綺麗な顔をしていらっしゃるジャクリーン様。たまたま準備中だったから、2階にある歯医者の方へ先に行く。
さすが世界一の美貌を誇るアナザーライト家の嫡男だけのことはある。正面から、横顔、後姿まで完璧なまでの美形。
攻略対象の5人なんかと比べ物にならない。なぜ、このエルモア・アナザーライトが攻略対象にならなかったのか、いまだにわからない。
受付で、名前と生年月日、住所などを書き、順番に並ぶ。初診の場合だけ、問診票を書きながら待つ。
この世界は魔法がある世界だから、大抵の病気やけがは魔法で何とかなるというものだけど、歯だけは、そういうわけにはいかない。
折れた歯、抜けた歯は、そのままで一生生えてこない。
リリアーヌ自身は、大変魔力量が多いが、それで、攻略対象の中でも、王太子殿下を狙い、玉の輿にあと少しで乗れるところなのだが、なかなか妃教育が難しくて、厳しい。
王太子殿下の婚約者は、皆、貴族令嬢だから5~6年も勉強すれば、基礎ができているから、そう苦労なしに修了できるかもしれないけど、リリアーヌは、つい1年ほど前までは、市井に暮らす平民だったので、努力してもしきれない。
少しでも間違えるようなことがあれば、容赦ない叱責と鞭、体中みみず腫れができているというのに、エドモンドは何もしてくれない。
それどころか、帰宅してからまで、炊事洗濯が待っているという現実。これなら女中と変わらない。
平民の頃の方がまだマシだったと思う。
もし、あの卒業パーティの時に戻れるのならば、ジャクリーン様と婚約破棄しないで、と申し出たことだろう。リリアーヌは、エドモンド殿下に愛されればそれだけで十分です。側室になるのなら、こんな厳しい妃教育を受けなくてもよかったと心から後悔している。
歯医者のリリアーヌの順番が回ってくるや否や、エルモアには、妹の恋敵だとわかる。
「本日は、どのようなことで参られましたか?」
エルモアは、問診票もロクに見ずに、リリアーヌに問う。
「え……と、歯並びの矯正と虫歯があるかどうかを調べていただきたくて……。」
「それでは、まずはレントゲンを撮りましょう。こちらへ来てください。」
リリアーヌはおっかなびっくりで、小部屋に入る。内心、れんとげんとは???
「はい。もういいですよ。」
目の前の光る台に、レントゲンを並べていく先生は、ものすごくかっこいい。本当はマスクを外して、顔をよく見せていただきたいと思っているが、恥ずかしくて、言えない。それに何やら、白いコート状の上着も清潔感溢れかっこいい。
「虫歯は数本ありますね。この黒く見えるところが虫歯です。歯並びの矯正をするには、まず虫歯の治療をしてからとなりますが、大丈夫でしょうか?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「では、虫歯を削っていき、歯の代わりに詰め物をしますね。痛かったら、手を挙げてください。」
テルモアは、大丈夫な歯も削ってやろうかと一瞬考えたが、医者としての衿持があるから、踏みとどまった。
胸に紙のエプロンを着けてもらい、リリアーヌは緊張しながら、診察台に横たわる。
診察台は、前世から持ってきたもので、靴を履いたまま椅子に腰かけ、背もたれが倒れるというもの。
患者さん目線では、正面にテレビのディスプレイがあるが、ビデオを見せてもいいが、何かとうるさいので、ディスプレイの上に絵画をかけている。
どの患者さんに対してでも、そうなのだが歯の治療を行っている間は、口元以外の顔に白い目隠し上の紙をかぶせる。
それでも紙の上からでもハッキリわかる。リリアーヌ嬢は魅了魔法の使い手だと感じる。
幸い治療時は、細菌から目をガードするために伊達メガネを着用しているため、裸眼であることには変わりがないが、魅了魔法はかかりにくくなっている。
エドモンドや側近の貴族令息の態度は、この魅了魔法にかかっていたのだと推察する。この世界でも王族に対しての魅了魔法は禁忌で、場合によれば極刑となることも免れない。
ただ本人には自覚がないのだろうと思われる。無自覚、無意識に魅了を垂れ流していたとしても重大な罪に問われるだろう。
それに加え、今回の事件を引き起こすきっかけになったと言われれば、もしリリアーヌ嬢が学園に転入してこなければ、王太子殿下をはじめとする貴族令息は、廃嫡廃籍の憂き目にあうこともなかっただろうし、その婚約者であったそれぞれの令嬢の人生も違ったものになったかもしれない。
ドイル男爵の責任も問われることになりかねない。
どうしたものかと思う。父アナザーライト侯爵に打ち明け、王家に報告すべきことではあるが、どちらにせよ不憫な未来しか見えない。
自業自得と言えばそれまでだけど。魔力が膨大であれば、魔術学園ではないところを選んで入学してくれと言いたい。
リリアーヌに簡素な麻酔を嗅がせ、とりあえずジャクリーンに事の仔細の報告だけをする。
ジャクリーンは治療後のリリアーヌのために簡単に食べられて、滋養がつく軽食を用意してくれた。
「これは、お代金は不要です。胃にやさしい食材ばかりを選んで作りましたから、どうぞお召し上がりください。」
ジャクリーンとエルモアからのせめてもの餞別。
でも、本当にあこがれを持つぐらい綺麗な顔をしていらっしゃるジャクリーン様。たまたま準備中だったから、2階にある歯医者の方へ先に行く。
さすが世界一の美貌を誇るアナザーライト家の嫡男だけのことはある。正面から、横顔、後姿まで完璧なまでの美形。
攻略対象の5人なんかと比べ物にならない。なぜ、このエルモア・アナザーライトが攻略対象にならなかったのか、いまだにわからない。
受付で、名前と生年月日、住所などを書き、順番に並ぶ。初診の場合だけ、問診票を書きながら待つ。
この世界は魔法がある世界だから、大抵の病気やけがは魔法で何とかなるというものだけど、歯だけは、そういうわけにはいかない。
折れた歯、抜けた歯は、そのままで一生生えてこない。
リリアーヌ自身は、大変魔力量が多いが、それで、攻略対象の中でも、王太子殿下を狙い、玉の輿にあと少しで乗れるところなのだが、なかなか妃教育が難しくて、厳しい。
王太子殿下の婚約者は、皆、貴族令嬢だから5~6年も勉強すれば、基礎ができているから、そう苦労なしに修了できるかもしれないけど、リリアーヌは、つい1年ほど前までは、市井に暮らす平民だったので、努力してもしきれない。
少しでも間違えるようなことがあれば、容赦ない叱責と鞭、体中みみず腫れができているというのに、エドモンドは何もしてくれない。
それどころか、帰宅してからまで、炊事洗濯が待っているという現実。これなら女中と変わらない。
平民の頃の方がまだマシだったと思う。
もし、あの卒業パーティの時に戻れるのならば、ジャクリーン様と婚約破棄しないで、と申し出たことだろう。リリアーヌは、エドモンド殿下に愛されればそれだけで十分です。側室になるのなら、こんな厳しい妃教育を受けなくてもよかったと心から後悔している。
歯医者のリリアーヌの順番が回ってくるや否や、エルモアには、妹の恋敵だとわかる。
「本日は、どのようなことで参られましたか?」
エルモアは、問診票もロクに見ずに、リリアーヌに問う。
「え……と、歯並びの矯正と虫歯があるかどうかを調べていただきたくて……。」
「それでは、まずはレントゲンを撮りましょう。こちらへ来てください。」
リリアーヌはおっかなびっくりで、小部屋に入る。内心、れんとげんとは???
「はい。もういいですよ。」
目の前の光る台に、レントゲンを並べていく先生は、ものすごくかっこいい。本当はマスクを外して、顔をよく見せていただきたいと思っているが、恥ずかしくて、言えない。それに何やら、白いコート状の上着も清潔感溢れかっこいい。
「虫歯は数本ありますね。この黒く見えるところが虫歯です。歯並びの矯正をするには、まず虫歯の治療をしてからとなりますが、大丈夫でしょうか?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「では、虫歯を削っていき、歯の代わりに詰め物をしますね。痛かったら、手を挙げてください。」
テルモアは、大丈夫な歯も削ってやろうかと一瞬考えたが、医者としての衿持があるから、踏みとどまった。
胸に紙のエプロンを着けてもらい、リリアーヌは緊張しながら、診察台に横たわる。
診察台は、前世から持ってきたもので、靴を履いたまま椅子に腰かけ、背もたれが倒れるというもの。
患者さん目線では、正面にテレビのディスプレイがあるが、ビデオを見せてもいいが、何かとうるさいので、ディスプレイの上に絵画をかけている。
どの患者さんに対してでも、そうなのだが歯の治療を行っている間は、口元以外の顔に白い目隠し上の紙をかぶせる。
それでも紙の上からでもハッキリわかる。リリアーヌ嬢は魅了魔法の使い手だと感じる。
幸い治療時は、細菌から目をガードするために伊達メガネを着用しているため、裸眼であることには変わりがないが、魅了魔法はかかりにくくなっている。
エドモンドや側近の貴族令息の態度は、この魅了魔法にかかっていたのだと推察する。この世界でも王族に対しての魅了魔法は禁忌で、場合によれば極刑となることも免れない。
ただ本人には自覚がないのだろうと思われる。無自覚、無意識に魅了を垂れ流していたとしても重大な罪に問われるだろう。
それに加え、今回の事件を引き起こすきっかけになったと言われれば、もしリリアーヌ嬢が学園に転入してこなければ、王太子殿下をはじめとする貴族令息は、廃嫡廃籍の憂き目にあうこともなかっただろうし、その婚約者であったそれぞれの令嬢の人生も違ったものになったかもしれない。
ドイル男爵の責任も問われることになりかねない。
どうしたものかと思う。父アナザーライト侯爵に打ち明け、王家に報告すべきことではあるが、どちらにせよ不憫な未来しか見えない。
自業自得と言えばそれまでだけど。魔力が膨大であれば、魔術学園ではないところを選んで入学してくれと言いたい。
リリアーヌに簡素な麻酔を嗅がせ、とりあえずジャクリーンに事の仔細の報告だけをする。
ジャクリーンは治療後のリリアーヌのために簡単に食べられて、滋養がつく軽食を用意してくれた。
「これは、お代金は不要です。胃にやさしい食材ばかりを選んで作りましたから、どうぞお召し上がりください。」
ジャクリーンとエルモアからのせめてもの餞別。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」
婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。
ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。
表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723)
【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19
【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+
2021/12 異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過
2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる