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新しい出会い
22.寮母
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前世でブルオード国に留学したエルモアは、先輩風を吹かせ、いろいろ案内してくれる。
王立学園に到着してからは、入学手続きと寮の部屋割りをしてもらう。女子寮と男子寮は中庭を隔てて左右対称に建てられている。家具は備え付けられているものを遣う。寮の部屋は意外と広く侍女部屋まであった。リビングと寝室、書斎に侍女部屋、簡易なキッチンも備え付けられている。
マンションは、どの部屋に出そうかしら。やっぱり寝室が良いわね。寝室のクローゼットにマンションをくっつける。
試しに中へ入ってみて、玄関のドアを開けたら、シャルマン様のお部屋に違いはなかった。
よかった。これでいつでも、逢いたいときに逢える。
そうか。今、いらっしゃらないのは、学園に行っていらっしゃるからだろう。少し寂しいと思った気持ちを切り替える。
クローゼットにお気に入りのドレスをかけて行く。
エルモアが学園内を案内すると、誘ってきたので、快諾して、寮の前で待ち合わせをする。
ジャクリーンが寮の前に出ただけで、あまりの美しさに人だかりができてしまう。
「新入生?美人だね?」
「どこの国から?」
「名前は?」
「婚約者いるの?」
矢継ぎ早に質問され、辟易する。
早く、お兄様来てーと思って向かい側の量に目をやると、向かい側でも同じように女子学生に囲まれている。
ブルオード国には、美人がいないのか?そんなにわたくしたち双子が珍しい?
首をかしげていると、ようやくエルモアが女子学生を振り切って、こちらに来てくれた。
「行こうか。」
「なんだぁー?あの眩しすぎる二人は?」
二人は、さっさと廊下を曲がる。
「ここが学食で、図書館はこっち。ここが魔法を使うときの実施場。どれだけ攻撃魔法を撃っても壊れないように頑丈な仕組みなのだ。そして、ここが教室で、理科室は、こちら、音楽室はあちら、美術室は、この廊下の突き当りだよ。」
「とても覚えられそうにないわ。」
「すぐ慣れるさ。」
クスクスと笑いあいながら、寮の前まで来ると、先ほどの学生と寮母が待ちかねている。何事かと思っていると、
「この学園の風紀を乱すような真似は許しません。男女交際など、卒業してから、おやりなさい!」
「「はぁ??」」
エルモアが、寮母に向かって、
「俺たちは、双子なのだが、オルブライト国王の書面を提出しているはずだ。先ほど、寮へ入る時の説明をきちんと受け、手続きをした。これに何か不都合があるとでも?おっしゃりたいのか?」
エルモアが強く言うと、寮母は急に眼を泳がせて、
「いえ、ご兄妹だったのですね。それは何の問題もございません。それにオルブライト家と言えば、美男美女で有名なアナザーライト家の方々でしょうか?」
「いかにも、私がエルモア・アナザーライトで。妹がジャクリーン・アナザーライトだ。このことは、学長及び国王陛下に申し上げる。心いたせ。」
「ひえーっ!それだけは、どうぞご勘弁ください。こんなことぐらいで外交問題にされては困ります。私の立場もありますし、何とかそれだけはご勘弁くださいませ。」
「こんなことと言ったな?先ほど、貴様は俺たちが風紀を乱していて、許さないと言ったのだぞ?他国の貴族に対して、これほどの無礼を容認するつもりか?」
「いやいや、どんなお詫びでもします。ですから、何卒……。」
もう、寮母はすっかり青ざめて震えてしまっている。そして、先ほどまで言いつけたのであろう学生たちは蜘蛛の子を散らすように一人残らず、その場から立ち去っている。
「妹のジャクリーンは、オルブライト国の宰相閣下の嫡男と婚約している。ここへ留学するための虫よけとしてでだ。そこまでしてきた妹をつかまえて、風紀を乱して許さないだと?こんなことタダで済まされるわけなかろう?」
「ごもっともでございます。では、今すぐ寮母を辞退させていただきます。それで、どうかご勘弁のほどを。」
「ダメだ。貴様のクビぐらいでは、許されないことだ。国王陛下より、正式に謝罪してもらう。」
「ひえーっ!どうか、お許しを。」
「お兄様、もうそのぐらいでいいのでは?わたくしもちょっと腹が立ちましたけど、このことはシャルマン様に投げてみて、御父上に話されるかどうかシャルマン様に決めていただこうと存じます。」
「そうだな。婚約者殿が判断されるべき筋合いのものだろう。して、その方、どちらの寮母をしておる?」
「はっ、はい。女子寮の寮母をしておりますマリア・スミスと申します。」
「そうか。以後、気を付けてくれたまえ。」
「あ、あの……ご兄妹であれば、男子禁制関係なく、部屋へのお出入り自由となります。」
「ありがとう。俺の侍女もダメなのかと思ったよ。それじゃ、妹を部屋の前まで送っていくことはいいってことだな?」
「はい。そうなります。別にお部屋に入っていただいてもかまいません。」
「妹の部屋でお茶を飲んでもいいということだな?」
「はい。かまいません。」
「よし、わかった。ジャッキー行くぞ。女子寮なんて、入れるとは思ってもみなかったよ。」
「はい。行ってらっしゃいませ。」
寮母は、深々と頭を下げ、二人を見送った後、ふーっとため息を吐いた。
王立学園に到着してからは、入学手続きと寮の部屋割りをしてもらう。女子寮と男子寮は中庭を隔てて左右対称に建てられている。家具は備え付けられているものを遣う。寮の部屋は意外と広く侍女部屋まであった。リビングと寝室、書斎に侍女部屋、簡易なキッチンも備え付けられている。
マンションは、どの部屋に出そうかしら。やっぱり寝室が良いわね。寝室のクローゼットにマンションをくっつける。
試しに中へ入ってみて、玄関のドアを開けたら、シャルマン様のお部屋に違いはなかった。
よかった。これでいつでも、逢いたいときに逢える。
そうか。今、いらっしゃらないのは、学園に行っていらっしゃるからだろう。少し寂しいと思った気持ちを切り替える。
クローゼットにお気に入りのドレスをかけて行く。
エルモアが学園内を案内すると、誘ってきたので、快諾して、寮の前で待ち合わせをする。
ジャクリーンが寮の前に出ただけで、あまりの美しさに人だかりができてしまう。
「新入生?美人だね?」
「どこの国から?」
「名前は?」
「婚約者いるの?」
矢継ぎ早に質問され、辟易する。
早く、お兄様来てーと思って向かい側の量に目をやると、向かい側でも同じように女子学生に囲まれている。
ブルオード国には、美人がいないのか?そんなにわたくしたち双子が珍しい?
首をかしげていると、ようやくエルモアが女子学生を振り切って、こちらに来てくれた。
「行こうか。」
「なんだぁー?あの眩しすぎる二人は?」
二人は、さっさと廊下を曲がる。
「ここが学食で、図書館はこっち。ここが魔法を使うときの実施場。どれだけ攻撃魔法を撃っても壊れないように頑丈な仕組みなのだ。そして、ここが教室で、理科室は、こちら、音楽室はあちら、美術室は、この廊下の突き当りだよ。」
「とても覚えられそうにないわ。」
「すぐ慣れるさ。」
クスクスと笑いあいながら、寮の前まで来ると、先ほどの学生と寮母が待ちかねている。何事かと思っていると、
「この学園の風紀を乱すような真似は許しません。男女交際など、卒業してから、おやりなさい!」
「「はぁ??」」
エルモアが、寮母に向かって、
「俺たちは、双子なのだが、オルブライト国王の書面を提出しているはずだ。先ほど、寮へ入る時の説明をきちんと受け、手続きをした。これに何か不都合があるとでも?おっしゃりたいのか?」
エルモアが強く言うと、寮母は急に眼を泳がせて、
「いえ、ご兄妹だったのですね。それは何の問題もございません。それにオルブライト家と言えば、美男美女で有名なアナザーライト家の方々でしょうか?」
「いかにも、私がエルモア・アナザーライトで。妹がジャクリーン・アナザーライトだ。このことは、学長及び国王陛下に申し上げる。心いたせ。」
「ひえーっ!それだけは、どうぞご勘弁ください。こんなことぐらいで外交問題にされては困ります。私の立場もありますし、何とかそれだけはご勘弁くださいませ。」
「こんなことと言ったな?先ほど、貴様は俺たちが風紀を乱していて、許さないと言ったのだぞ?他国の貴族に対して、これほどの無礼を容認するつもりか?」
「いやいや、どんなお詫びでもします。ですから、何卒……。」
もう、寮母はすっかり青ざめて震えてしまっている。そして、先ほどまで言いつけたのであろう学生たちは蜘蛛の子を散らすように一人残らず、その場から立ち去っている。
「妹のジャクリーンは、オルブライト国の宰相閣下の嫡男と婚約している。ここへ留学するための虫よけとしてでだ。そこまでしてきた妹をつかまえて、風紀を乱して許さないだと?こんなことタダで済まされるわけなかろう?」
「ごもっともでございます。では、今すぐ寮母を辞退させていただきます。それで、どうかご勘弁のほどを。」
「ダメだ。貴様のクビぐらいでは、許されないことだ。国王陛下より、正式に謝罪してもらう。」
「ひえーっ!どうか、お許しを。」
「お兄様、もうそのぐらいでいいのでは?わたくしもちょっと腹が立ちましたけど、このことはシャルマン様に投げてみて、御父上に話されるかどうかシャルマン様に決めていただこうと存じます。」
「そうだな。婚約者殿が判断されるべき筋合いのものだろう。して、その方、どちらの寮母をしておる?」
「はっ、はい。女子寮の寮母をしておりますマリア・スミスと申します。」
「そうか。以後、気を付けてくれたまえ。」
「あ、あの……ご兄妹であれば、男子禁制関係なく、部屋へのお出入り自由となります。」
「ありがとう。俺の侍女もダメなのかと思ったよ。それじゃ、妹を部屋の前まで送っていくことはいいってことだな?」
「はい。そうなります。別にお部屋に入っていただいてもかまいません。」
「妹の部屋でお茶を飲んでもいいということだな?」
「はい。かまいません。」
「よし、わかった。ジャッキー行くぞ。女子寮なんて、入れるとは思ってもみなかったよ。」
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