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新しい出会い

21.ヘネシー

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 いよいよブルオード国へ旅立つ日が来た。朝からマンションの部屋でイチャイチャしながら別れを惜しんでいる。

 0.01ミリは、ネットショッピングで買うより、「要注意」の地上のドラッグストアで買った方が安く、種類も多い。温熱タイプのものやイボイボが付いたもの、それに香り付きまである。

 シャルマン様と二人で選ぶのも楽しいから、いろいろ買って、感想を言い合ったりして楽しんでいる。

 「じゃあ、そろそろ行くね。着いたら、シャルマン様のところへ一番に行くから、待っていて。それと浮気しちゃイヤよ。」

 「ジャッキーも、達者でな。浮気するなよ。」

握った手を放しがたくいつまでも、繋いでいたいという気がする。

 それともブルオードまで、同行しようかとさえも、思ってしまうぐらい離れがたい。

 「じゃあ、本当に行くね。またあとでね。」

 ジャクリーンの方からシャルマン様にキスをして、マンションから出ていく。ひとり取り残されたシャルマンは、呆然とマンションの部屋の中を見渡す。

 この部屋の中でジャクリーンと同棲するというのは、どうだろうか?ブルオードに着いたジャクリーンと相談してみよう。

 この部屋は小さいけれど、生活に必要なものはすべて揃っていて、ジャクリーンの頭の中で持ち運びができるような仕組みらしい。初めて、ジャクリーンを抱いた部屋もこの部屋だったし、ここで生活するのも悪くはないという考えがある。

 それに「要注意」の世界は、自分たちがいる世界とははるかに文明が進歩している世界であることを実感している。

 この部屋を見ても実感できるし、あのメトロという名の金属モグラを見ても、スカイツリーだったか?東京タワーだったか?天まで届くような高さは、この世界の人間では到底、実現できないものばかりだ。

 それにジャクリーンがよく行くコンビニにドラッグストアも、カフェで出てくる食事もすべて、この世界の人間では到底まねできないぐらいの水準の高さがある。

 できれば今度生まれ変わるとしたら、ジャクリーンのいる世界に生まれ変わりたい。あの豊かで平和な世界で思う存分自分の能力を発揮してみたいと願う。その時は、またジャクリーンを妻に迎えたい。ジャクリーンとなら、どこにいても、どんな状況であっても幸せな家庭を築けられると信じられる。

 おそらく祖父さんは、あの世界に転生したのではないかと思う。祖父さんが死んでから一度も夢に出てきたことがない。

 しばらくそんなことを考えながら、マンションの部屋を出ていこうとした時、何やらジャクリーンの声が聞こえる気がする。

 「「え?」」

 ほぼ同時に、ジャクリーンと目があった。

 「どうした?もう着いたのか?」

 「あ、いえ……、馬車の車輪が脱輪してしまって、直すのに時間がかかりそうだから、しばらくここで休憩しようと思っていまして。」

 「それは、難儀しているであろう。ドワーフの親父さんをそこに向かわせるから待っていてください。」

 「ええーっ!でも、それはあまりにも悪くて……、というか、マンションの秘密がバレてしまいそうで……。」

 「地下室の秘密があるレバトリー家ならではの若奥様だから大丈夫だよ。」

 「はい……。」

 シャルマンは、大急ぎで、ドワーフの親父さんが作業している小屋に飛び込んで、ジャクリーンの乗った馬車の車輪が脱輪したことを告げると、親父さんは、道具を袋の中に一式入れ、シャルマンの後をついて、マンション内に入っていく。

 「あ!土足厳禁だから。靴脱いでください。脱いだ靴は持って、そのまま移動してください。」

 「こりゃ、おったまげた!地下室だけだと思っていたら、こんなところにも異次元と通じる世界があるとは思っても見やせんだ。長生きはするものさね。」

 シャルマンも靴を持って、ドワーフの親父さんと共にベランダから地面に飛び降りる。

 「会いたかったよ。ジャッキー。」

 「わたくしもよ。シャル様。」

 二人は、ほんの数時間前に別れたばかりだというのに、手と手を取り合って再会を喜ぶ。

 「ゥオッフォン!」

 兄のエルモアが怒ったような呆れたような顔をして、二人を見ている。

 「まぁ、今回は、ドワーフの人を連れて来てくれたから良いようなものだけどさ。いつまでイチャイチャしているの?見ている方が恥ずかしいよ。」

 「「だって、寂しかったんだもん。ねー。」」

 「だったら、ジャッキーは、留学辞めたらどうだ?」

 「ダメよ。そんなことしたら、またGame overになったら困るもの。今回はわたくしも留学します。」

 シャルマンは「?」時々、元異世界人の二人の話についていけない。それでもジャクリーンのことを愛しているから、信じられる。

 そうこうしているうちに、車輪は元通りになった。

 ジャクリーンは、どうしてもドワーフの親父さんにお礼がしたいと申し出て、再びマンションの中に入り、戸棚を物色している。

 「いやあ、お礼なんさいいよ。」

 「ああ、あった。あった。ヘネシーが残っていたと思っていたら、やっぱりあったわ。ブランデーだけど、よかったら飲んでくださる?」

 「へねし?ぶらんで?」

 ドワーフの親父さんに、包み紙ごと渡すジャクリーン。

 ドワーフの親父さんは、重さから直感的に酒だと悟り、上機嫌でマンションの部屋を後にし、シャルマンの部屋からも出ていく。

 自分の作業場に戻り、包み紙を解くとそこにが綺麗な透明の瓶に入った茶色の液体が目に飛び込んでくる。

 ほんの一口だけと、思い。グラスに注ぐと、それだけでもううまそうな匂いがする。

 「ふひーっ!うめぇー!」

 その声に反応して、他のドワーフがぞろぞろやってくる。

 「親方!一人で、何飲んでやんす?」

 「若奥様が難儀されておったので、ちょいと車輪を直しただけで、お礼にもらったのさ。」

 興味半分に、他のドワーフにも注いでやり、まだ昼過ぎだというのに、作業場は酒盛り状態と化していく。

 「それにしても、若奥様からいただく土産物は変わったものばかりだが、この酒は特に美味い!今度からへねしをもらおう!」
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