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新しい出会い
63.勉強2
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あの日のように、実際にクリニックの中を通って、女子寮の一室に行けるかどうかの検証が行われることになったのだ。
「私ができるのは、入り口部分を自在にどこにいても出すことができるというスキルしかございませんが、妹だけが、裏口を自分の近くに置くことができるのです。だからもし、妹が嫁ぎ先の領地にいたとしたら、急患のベルは聞こえず、助けられないということになります。」
「では実際に通って見せましょう。今秋はわかりやすくするために、クリニックの入り口部分をお見せします。」
何もない空間のところが、急に建物らしき入り口が出現する。それだけで、審問官たちの間にどよめきが広がる。
「中にジャクリーンが待っているかもしれませんが、お気になさらずに。あ!それとこの建物の仲は滅菌状態にしておりますので、入る前は必ず手洗いをしてから入ってくださいね。手洗いが済めば、靴のカバーと手袋とヘアキャップをお渡ししますので、できましたらそれをかぶって、入っていただけますか?」
審問官も王子殿下も言われたとおり、手洗いをしてマスク着用、ヘアキャップと手袋、靴底にはカバーを嵌めている。
非常に素直、これぐらいでないと本来は入れないということを示しておかなければ、今後、どんなに乱雑に便利通路として使われるかわからないから。あえて滅菌であるということを強調しているのである。
「では、お気をつけて。」
審問官たちも、そして一度目は通ったはずの王子殿下たちも中にある医療器具に目を白黒させている。
50歩あたり歩くと扉があり、そこを開けると女子寮の書斎のクローゼットに穴が開いたようになっている。
確かに雰囲気が違うところに出たが、ここが女子寮だと言われても正直なところ分からない。
女子寮だとわかるのは、この部屋を出てから出ないと見当がつかない。
そこで、審問官の一人が代表して、見てくることになったのだが、誰が代表者になるかで今度はモメている。
結局、平等にしようということになり、全員で女子寮かどうかの確認に行くことになったのだ。
頭の禿げたオジサン審問官がジャクリーンの部屋の扉を開け、一歩踏み出したところで、もう悲鳴が上がっている。
王子殿下が、女子寮から出てきたときでも、ここまでの悲鳴は聞かれなかった。
「きゃぁっー!」
「痴漢!」
「変態!」
「あっち行ってー!」
枕は投げつけられるわ。花瓶は投げつけられるはで、大惨事になっている模様だが、放っておくことにした。
もとはと言えば、王子様たちに冤罪を着せようとしたのは、そちらではございませんこと?
こうして王子殿下たちの容疑は晴れたのだ。
ジャクリーンとエルモアは、今度は、正々堂々とレバトリー家の玄関ベルを鳴らす。
「おや、お珍しいことで、今日は子爵様も伴ってこられたのでございますね。」
「あら、わたくしも子爵を拝命しておりますわよ。」
「そうでございました若奥様、どうぞ中へ。」
「ちょっとゴタゴタがあって、なかなか勉強に来られなくなりましたわ。」
「若奥様と子爵様なら、いつでも大歓迎でございますよ。」
今日ここに来た目的は、ひとつ。
回復魔法と治癒魔法をマスターするためである。もう大検を受けずに、この世界で有効な魔法を活用することにした。それで魔法で治らない難しいことだけを現代の医学で補おうという考え方をとことにしたのだ。
せっかく魔法の素養を持って生まれているのだから、これを活用しない手はない。
それにもし、来世、ニッポンに生まれたとしたら、魔法が使えるに越したことはないと思うからで、下手な護身術よりもよほど自分の身を守るのに有効だからと思ったので、真剣に勉強を始めようと考えた。
それにキャサリンを救えたのも、間違いなく治癒魔法のおかげだと思う。今まで治癒魔法の原理など知らなかった分だけ損した気分がなおさらなのだ。
エルモアも、医者だから人体のことがよくわかっている。だから、この世界の治癒魔法の使い手よりは、きちんと覚えたら、習得は早いと思う。
だから誘ってみたわけで、それにしてもシャルマン様がニッポン語を理解しているとは、思わなかった。これからは、内緒話は英語で、それもクイーンズ・イングリッシュではなく、メリケンイングリッシュにしようねと、確認を取り合う。
「モデルの仕事で、1年以上ニッポンにいれば、ヒアリングぐらい完ぺきにこなせると思うよ。読み書きは、まだ無理だろうけど、そのうち読めるようになるかもしれないから、ジャッキーも気を付けた方がいいぜ。」
「そうね。そうするわ。」
「それはそうと、ヴィンセント殿下がジャッキーの下僕になりたがっているよ。」
「なにそれ?下の句ってどういう意味?」
「この前、シャルマン殿とイチャついたろ?それで、妻に臨むことをあきらめられたようなのだが、それならば少しでも一緒にいたいという思いから下僕を志願されているみたいだ。」
「うそ!?シャルマン様とイチャついたって?」
「聞いたぜ。シャルマン殿がジャッキーに馬乗りになって、頬をペチペチ叩かれたら、とんでもないような甘い声でジャッキーが反応したらしいぜ。」
そういって、お兄様はニヤニヤする。
「王子殿下連中は、その時のジャッキーの声が耳から離れないって、ボヤいていたぜ。」
「うそだぁー!」
あの時は、初めて使った治癒魔法のせいで、自分をコントロールできなかっただけと、心の中で言い訳をする。
「私ができるのは、入り口部分を自在にどこにいても出すことができるというスキルしかございませんが、妹だけが、裏口を自分の近くに置くことができるのです。だからもし、妹が嫁ぎ先の領地にいたとしたら、急患のベルは聞こえず、助けられないということになります。」
「では実際に通って見せましょう。今秋はわかりやすくするために、クリニックの入り口部分をお見せします。」
何もない空間のところが、急に建物らしき入り口が出現する。それだけで、審問官たちの間にどよめきが広がる。
「中にジャクリーンが待っているかもしれませんが、お気になさらずに。あ!それとこの建物の仲は滅菌状態にしておりますので、入る前は必ず手洗いをしてから入ってくださいね。手洗いが済めば、靴のカバーと手袋とヘアキャップをお渡ししますので、できましたらそれをかぶって、入っていただけますか?」
審問官も王子殿下も言われたとおり、手洗いをしてマスク着用、ヘアキャップと手袋、靴底にはカバーを嵌めている。
非常に素直、これぐらいでないと本来は入れないということを示しておかなければ、今後、どんなに乱雑に便利通路として使われるかわからないから。あえて滅菌であるということを強調しているのである。
「では、お気をつけて。」
審問官たちも、そして一度目は通ったはずの王子殿下たちも中にある医療器具に目を白黒させている。
50歩あたり歩くと扉があり、そこを開けると女子寮の書斎のクローゼットに穴が開いたようになっている。
確かに雰囲気が違うところに出たが、ここが女子寮だと言われても正直なところ分からない。
女子寮だとわかるのは、この部屋を出てから出ないと見当がつかない。
そこで、審問官の一人が代表して、見てくることになったのだが、誰が代表者になるかで今度はモメている。
結局、平等にしようということになり、全員で女子寮かどうかの確認に行くことになったのだ。
頭の禿げたオジサン審問官がジャクリーンの部屋の扉を開け、一歩踏み出したところで、もう悲鳴が上がっている。
王子殿下が、女子寮から出てきたときでも、ここまでの悲鳴は聞かれなかった。
「きゃぁっー!」
「痴漢!」
「変態!」
「あっち行ってー!」
枕は投げつけられるわ。花瓶は投げつけられるはで、大惨事になっている模様だが、放っておくことにした。
もとはと言えば、王子様たちに冤罪を着せようとしたのは、そちらではございませんこと?
こうして王子殿下たちの容疑は晴れたのだ。
ジャクリーンとエルモアは、今度は、正々堂々とレバトリー家の玄関ベルを鳴らす。
「おや、お珍しいことで、今日は子爵様も伴ってこられたのでございますね。」
「あら、わたくしも子爵を拝命しておりますわよ。」
「そうでございました若奥様、どうぞ中へ。」
「ちょっとゴタゴタがあって、なかなか勉強に来られなくなりましたわ。」
「若奥様と子爵様なら、いつでも大歓迎でございますよ。」
今日ここに来た目的は、ひとつ。
回復魔法と治癒魔法をマスターするためである。もう大検を受けずに、この世界で有効な魔法を活用することにした。それで魔法で治らない難しいことだけを現代の医学で補おうという考え方をとことにしたのだ。
せっかく魔法の素養を持って生まれているのだから、これを活用しない手はない。
それにもし、来世、ニッポンに生まれたとしたら、魔法が使えるに越したことはないと思うからで、下手な護身術よりもよほど自分の身を守るのに有効だからと思ったので、真剣に勉強を始めようと考えた。
それにキャサリンを救えたのも、間違いなく治癒魔法のおかげだと思う。今まで治癒魔法の原理など知らなかった分だけ損した気分がなおさらなのだ。
エルモアも、医者だから人体のことがよくわかっている。だから、この世界の治癒魔法の使い手よりは、きちんと覚えたら、習得は早いと思う。
だから誘ってみたわけで、それにしてもシャルマン様がニッポン語を理解しているとは、思わなかった。これからは、内緒話は英語で、それもクイーンズ・イングリッシュではなく、メリケンイングリッシュにしようねと、確認を取り合う。
「モデルの仕事で、1年以上ニッポンにいれば、ヒアリングぐらい完ぺきにこなせると思うよ。読み書きは、まだ無理だろうけど、そのうち読めるようになるかもしれないから、ジャッキーも気を付けた方がいいぜ。」
「そうね。そうするわ。」
「それはそうと、ヴィンセント殿下がジャッキーの下僕になりたがっているよ。」
「なにそれ?下の句ってどういう意味?」
「この前、シャルマン殿とイチャついたろ?それで、妻に臨むことをあきらめられたようなのだが、それならば少しでも一緒にいたいという思いから下僕を志願されているみたいだ。」
「うそ!?シャルマン様とイチャついたって?」
「聞いたぜ。シャルマン殿がジャッキーに馬乗りになって、頬をペチペチ叩かれたら、とんでもないような甘い声でジャッキーが反応したらしいぜ。」
そういって、お兄様はニヤニヤする。
「王子殿下連中は、その時のジャッキーの声が耳から離れないって、ボヤいていたぜ。」
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