76 / 76
新しい出会い
76.愛のカタチ
しおりを挟む
ジャクリーンは東都医科大学付属病院へ急行する。途中、エルモアたちを途中で拾い、一緒に行く。
この世界での保険証を持っていないから、べらぼうな医療費を請求されるだろうが、それも致し方がないこと。ひょっとすれば電鉄会社の保険金で賄われるかもしれないけど、ありったけの現金をかき集めて持ってきたのだ。
まだ、緊急手術中で、助かるかどうかわからないらしい。
「主人に会わせてほしい。」と頼んでも、
「奥さん、懸命の救急処置をしておりますので、今しばらく、お待ちください。」
「私は医者よ。だから主人に会わせて。」
医者にしたら、ずいぶん若いので、病院関係者は???困惑しているようだ。
手術室の前の廊下で待つことしばし、ようやく手術中のランプが消え、医者が出てきた。
「シャルマンさんのご家族の方ですか?手を尽くしましたが、残念ながら……。」
「主人に会わせてください。」
ジャクリーンは、内心、この藪医者め!と罵りたい気持ちをグっとこらえ、一刻も早くシャルマン様に会いたい、会って治癒魔法でカラダの損傷を確かめたいと思っている。
手術室から出てこられたシャルマン様は虫の息で、よかった。まだ生きていらっしゃった。
人目もはばからず、手術着をめくると、あの藪医者、縫わずに医療用テープだけを貼りやがって、怒りで手が震えるのをこらえながらお腹の部分に手をかざす。
手のひらから金色の光があふれだし、みるみるうちにまるで、レントゲン写真を見ているかのようにカラダの中の臓器がどういう風に損傷しているのかがわかる。
エルモアもジャクリーンと同様に、カラダに手をかざしながら
「今の医者、研修医か?ずいぶん雑なことをしているな。」
同じ感想を口にしている。
「大きな事故でベテラン医師はそっちにかかりきっているからじゃないかしらね?」
傷んだ内臓を少しずつ修復していく。後はバイパスを通し、神経と血管をつなぎ切られた皮膚を再生していく。
そこまで来て、ようやく息も絶え絶えだったシャルマン様の顔色が、赤みが差してきたのだ。
モニターを見ると血圧も心拍数、脈拍、体温共に正常値に近づいてきたのだ。
回復魔法に気をとられ、医者でありながらモニターをチェックすることをおろそかになっていたことが幸いする。
ナースセンターには、当然シャルマンのデータがモニターに映し出されているのに、誰も気づかず、それを幸いなことに、そのまま転移魔法で乙女ゲームの世界に連れ帰ってしまったのだから。
これは医療費を踏み倒したことになるのか?でも電鉄会社の事故だから保険金で何とかなるようにも思うが、患者が消失した今、それをどうやって請求するのかは定かではない。
いずれにせよ、シャルマンの命は助かった。というより無理やりこの世に引き戻したと言った方が適切。
レバトリー家とエルモア、アルフレッドにお礼を言い、カントリーハウスに連れ帰ることにする。
「ごめんよ。ジャッキー、あの本どこかへやってしまったようなんだ。」
「いいわよ。シャル様が無事で何よりだもの。」
それから10日後、ジャクリーンは、元気な男の赤ちゃんを産んだのだが、シャルマン様が名付けられた名前がなぜか「フレッド」といい、どうみても浮気したことがバレている!?とヒヤヒヤしたものだ。
この世界での保険証を持っていないから、べらぼうな医療費を請求されるだろうが、それも致し方がないこと。ひょっとすれば電鉄会社の保険金で賄われるかもしれないけど、ありったけの現金をかき集めて持ってきたのだ。
まだ、緊急手術中で、助かるかどうかわからないらしい。
「主人に会わせてほしい。」と頼んでも、
「奥さん、懸命の救急処置をしておりますので、今しばらく、お待ちください。」
「私は医者よ。だから主人に会わせて。」
医者にしたら、ずいぶん若いので、病院関係者は???困惑しているようだ。
手術室の前の廊下で待つことしばし、ようやく手術中のランプが消え、医者が出てきた。
「シャルマンさんのご家族の方ですか?手を尽くしましたが、残念ながら……。」
「主人に会わせてください。」
ジャクリーンは、内心、この藪医者め!と罵りたい気持ちをグっとこらえ、一刻も早くシャルマン様に会いたい、会って治癒魔法でカラダの損傷を確かめたいと思っている。
手術室から出てこられたシャルマン様は虫の息で、よかった。まだ生きていらっしゃった。
人目もはばからず、手術着をめくると、あの藪医者、縫わずに医療用テープだけを貼りやがって、怒りで手が震えるのをこらえながらお腹の部分に手をかざす。
手のひらから金色の光があふれだし、みるみるうちにまるで、レントゲン写真を見ているかのようにカラダの中の臓器がどういう風に損傷しているのかがわかる。
エルモアもジャクリーンと同様に、カラダに手をかざしながら
「今の医者、研修医か?ずいぶん雑なことをしているな。」
同じ感想を口にしている。
「大きな事故でベテラン医師はそっちにかかりきっているからじゃないかしらね?」
傷んだ内臓を少しずつ修復していく。後はバイパスを通し、神経と血管をつなぎ切られた皮膚を再生していく。
そこまで来て、ようやく息も絶え絶えだったシャルマン様の顔色が、赤みが差してきたのだ。
モニターを見ると血圧も心拍数、脈拍、体温共に正常値に近づいてきたのだ。
回復魔法に気をとられ、医者でありながらモニターをチェックすることをおろそかになっていたことが幸いする。
ナースセンターには、当然シャルマンのデータがモニターに映し出されているのに、誰も気づかず、それを幸いなことに、そのまま転移魔法で乙女ゲームの世界に連れ帰ってしまったのだから。
これは医療費を踏み倒したことになるのか?でも電鉄会社の事故だから保険金で何とかなるようにも思うが、患者が消失した今、それをどうやって請求するのかは定かではない。
いずれにせよ、シャルマンの命は助かった。というより無理やりこの世に引き戻したと言った方が適切。
レバトリー家とエルモア、アルフレッドにお礼を言い、カントリーハウスに連れ帰ることにする。
「ごめんよ。ジャッキー、あの本どこかへやってしまったようなんだ。」
「いいわよ。シャル様が無事で何よりだもの。」
それから10日後、ジャクリーンは、元気な男の赤ちゃんを産んだのだが、シャルマン様が名付けられた名前がなぜか「フレッド」といい、どうみても浮気したことがバレている!?とヒヤヒヤしたものだ。
5
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「エステファニア・サラ・メレンデス――お前との婚約を破棄する」
婚約者であるクラウディオ王太子に、王妃の生誕祝いの夜会で言い渡された私。愛しているわけでもない男に婚約破棄され、断罪されるが……残念ですけど、私と結婚しない王太子殿下に価値はありませんのよ? 何を勘違いしたのか、淫らな恰好の女を伴った元婚約者の暴挙は彼自身へ跳ね返った。
ざまぁ要素あり。溺愛される主人公が無事婚約破棄を乗り越えて幸せを掴むお話。
表紙イラスト:リルドア様(https://coconala.com/users/791723)
【完結】本編63話+外伝11話、2021/01/19
【複数掲載】アルファポリス、小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアップ+
2021/12 異世界恋愛小説コンテスト 一次審査通過
2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる