置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀

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番外編:レオナルド

16.

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 セレナーデ公爵は、レオナルドをはじめとするセントルイスの孫と共にセレナーデ領へと向かうことにした。

 公爵から見れば、レオナルドもヘンリーもリチャードもジェームズも、皆バレンシアが産んだ孫なのでかわりはない。

 この中の誰か一人がセレナーデ家を継いでくれたら万々歳だと思っている。レオナルドは王家に取られてしまうことは仕方がないとしても……、だから孫たちを連れて、早くバルセロナに慣れてもらいたいと思っていたのも事実。

 孫たちは2人ずつ別れて、祖父の馬車と祖母の馬車に分かれて乗車する。馬車の中では、すっかり「おじいちゃん、おばあちゃん」呼びされて、老夫婦は目を細めて喜んでいる。

 行きは馬車で行っても、帰りはゲートを作って帰ってくるつもりなので、荷物は最小限しか持っていない。

 侍女も護衛も最小限しか連れていないというのに、なぜか陛下が1個師団の騎士を付けてくれて、行く先々の宿場町では大いに歓迎されてしまったのだ。

 有難迷惑の何物でもない。

 今更、父親面など、むず痒いだけだということがわかっていない!それにゲートの秘密が知られれば、セントルイスの企みもおのずとバルセロナに知れ渡ってしまう。

 ここは思案の為所とレオナルドは思いを巡らす。

 とりあえず、セレナーデ領に着いてから、こっそりゲートを作って、セントルイスの両親の指示を仰ごうと思い立つ。

 しっかりしているとはいえ、まだ15歳になったばかりのレオナルドには荷が重い。

 騎士団の狙いは、レオナルド一人なのだから、レオナルドさえ王都に戻れば、領地も静かになるだろうと思うのだが。

 レオンハルトは、レオナルドに聖獣がくっついているというのに、1個師団などをよこしてきても、フェンリルが一声吠えれば、何の役にも立たないということを知らないのだろうか?

 母バレンシアの話では、レオンハルトに捨てられたというが、実際のところは母バレンシアが愛想を尽かしたのではないか?と勘繰っている。

 先日、謁見した日のことを思い起こしても、やっと会えた実の父という感慨はない。

 どう考えても、養父フレデリックの方が男ぶりは上だ。だからこそレオンハルトが母と俺を捨てたとわかった時、すぐにと言っても、時間の猶予はあったが養父と出会って、恋に落ちたのではないかと思っている。

 バルセロナの血を引く俺にとっては、弟たちができたことは好ましい限りだが、よほど気を付けないと、生涯に俺の血を残せる子供はただ一人となるわけだから、近づいてくる女には警戒しなければならない。

 本当っ。因果な血筋だと思う。

 つらつら物思いにふけながら馬車は滞りなく進み、後1日でセレナーデ領に到着するというところで、王都から早馬が来て、至急に、レオナルド様に王都へ帰還してほしいという依頼が届いた。

 理由を聞けば、レオンハルトがレオナルドを王太子の位に即位させたいと思っているらしく、学園に入学前に行いたいとの理由で。

 俺は、その話をセレナーデお爺様に相談することなく一蹴してしまう。そんな、ふざけた話がどこにある!

 心配しなくても、学園の入学式には、どこにいても王都に戻る自信はある。それを領地に到着する目前になってから、言い出すとは、なんたることか!

 身重の母を捨てたばかりか、レオナルドにまで不自由を強いるとは許せない所業だと、その時は思っていた。

 領地に着いて、両親に相談すると、祖父母には何も言わず、言ってもいいが、レオナルドだけ、もう一度、馬車で王都に引き返すように進言されたのだ。

 バルセロナの国民に、レオナルドが正式な跡継ぎであることを知らしめたほうが、今後、やりやすくなるだろうからという話だったのだ。

 両親から諭され、渋々、レオナルドは、馬車を遣わず、バブーの背中に乗って、帰還することを決めた。

 その方が早いし、王都に着いたら、立太子の儀式まで、弟たちがいる領地に遊びに行く時間的余裕もある。と読む。



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