王配狙いで悪役令嬢にされ婚約破棄~社会勉強のため伯爵家へ養女に行った王女殿下が立派な女王陛下となるまで

青の雀

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養女

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 コーネリアル国の一人娘、ジャクリーン・フォン・コーネリアルは、唯一の王位継承権者であるが、幼い頃より城の外へ一歩も出たことがなく、将来女王となる身として憂いているのである。

 そのかわり勉強はたくさんした。お城の中にある王国内随一を誇る蔵書数の図書室で、日夜勉強に励む。特に計数管理が面白く、まるでパズルを解くかのように次々と難しい算数を学んでいく。将来は女アインシュタインと呼ばれることになるだろう。

 国王夫妻には、他に子供がいなくジャクリーンが生まれるとき、大変な難産で、王妃殿下は一生子供が産めないが身体になってしまったのです。国王陛下は、そのことを心苦しく思い、また王妃のことを心から愛していたので、他に側妃を娶らず、王妃ただ一人を愛し抜いたのである。

 国王夫妻は、そんな一人娘のジャクリーンのことを目の中に入れても痛くないぐらい、可愛がっている。だから、社会勉強がしたいと言われたときは考え込むほど、王妃様などは寝込むほど衝撃的なことだったのです。

 「机上論ばかりで、庶民の暮らしがわからないのですもの、将来、女王となった時、困るのではないかしら。」

 「それならば、王女であることの身分を隠してでないと意味がない。王女としてではなく、市井の一平民もしくは一貴族令嬢として世の中を見てくるがいい。」

 父の国王陛下は、そういうが、母の王妃殿下は

 「ダメです。もし悪い虫がついたらどうします?自分で何一つ身の回りのことができない娘を市井へなど、放り出せません。いくら頭が良くても、それとこれは別問題です。それよりもこんなかわいい娘を売り飛ばされるかもしれません。そうなったら、アナタどうやって責任を取られるおつもりですか?」

 「まだ売り飛ばされるとは、決まっていないだろう。」

 「例えばの話ですが、十分考えられますわよ。」

 珍しく両親が、わたくしのことで言い争っている。でも、お父様のほうがタジタジではある。

 「それでは、社会勉強はダメだ。ジャッキーには、婚約者がいるから、世間知らずの部分は、婚約者殿に補ってもらうこととする。」

 「ええー!わたくしに婚約者様がいらっしゃったのでございますか?一度もお会いしたことがないのに。」

 「筆頭公爵家バーグナーの嫡男で名前は何と言ったかなぁ。え……と、確かヘンリーだったかなぁ。一度も会ってないことはないぞ、3歳ぐらいの時、一度会っている。仲良く積み木で遊んでおったわ。」

 「バーグナー公爵は王位を狙っていらっしゃるのよ。女王の王配となれば、女王が出産のとき、不在のとき代位できるから。油断も隙もありゃしないわ。」

 「まぁまぁそう言うな。あ奴の祖母が王女殿下で祖父のところへ降嫁したのだからな。儂の爺さんが王位に就いたから、その後の王位はみんな儂の親父、そして儂と続いたから悔しがっておったのだろう。」

 「わたくしが難産で産んですぐから、もうわたくしに子供ができないことを見越して、ジャッキーとの婚約を無理強いしてきたのよ。許せないわ。到底、受け入れられることではないのに、アナタったら人が好過ぎるわ。だから、市井など絶対ダメです。バーグナーが何をしでかすかわかったものじゃないわ。」

 「それでは、身分を隠して、どこかへ表向き養女としていくか?バーグナーにだけは、こっそり知らせておこう。それでいいだろう?」

 「ダメです。貴族になら、養女として行ってもいいけど、!……そうだわ、騎士団長の娘としてなら、養女に行っても構わないわ。王配になってから、ジャッキーを亡き者にしないとも限らないから、今のうちから剣の腕を磨いとくのも悪くはないわね。」

 「「は??」」

 「ひょっとしたら、毒殺もあり得るかもしれないから、薬師のところのほうがいいか?」

 お母様は、ジャッキーが将来、暗殺されるかもしれないと心配し、すっかりその気になって身の安全を確保するための防御案を考えていらっしゃるようです。」

 「そんなもの、護衛や毒見の数を増やせばいいだけの話では?」

 「何、言っているのよ、初夜の時、寝室で切り殺されてしまうかもしれないのに、初夜まで護衛がくっついてくる?」

 また、喧嘩が始まりそうになったので、ジャッキーは

 「あの……、蔵書の中に薬学の本を見つけましたので、それで少しは解毒の知識はあります。実践で使ったことがないけれど……。」

 「まぁ、ジャッキーちゃん偉いわね。そんなご本をいつの間にか、読んでいたのね。それでは騎士団長のところへ養女として預けましょう。明日からビシバシ剣術のお稽古をしてもらいましょうね。ステキだわ。女剣術士なんて、憧れるわ。わたくしも一緒に行こうかしらね。」

 「「無理無理無理無理。」」

 お父様と口をそろえて言う。

 最初、反対していたお母様が俄然やる気をみせられて、騎士団長のサニーバード伯爵家へと預けられることになりましたわ。

 サニーバードの家は、息子さん3人ばかりで、女の子はジャッキーひとりだけ、奥様は穏やかな優しい方で、大変可愛がってくださいます。

 騎士団長は、奥様と息子3人を呼んで、言い聞かせます。

 「王女殿下だけど、社会勉強のため表向き我が家に養女として居候されることになった。くれぐれも無礼の無いようにいたせ。明日から、王妃殿下も剣術の稽古に来られるが、こちらも同様だ。王妃殿下が我が家を選んでくださったのだ。粗相なきようにいたせ。」

 そして、お母様も通いで、ジャッキーとともに剣術のお稽古を始められたのですが、二人とも体幹ができていないから、剣を持つこともままならない。腕立て伏せと腹筋を鍛えることから始め、毎日、お散歩することが日課となりました。大腿四頭筋を鍛えることから始めます。

 そして、両手の掌を合わせ胸の前で組みます。肘を外側にして、右手と左手を押し合うことで胸の筋肉が鍛えられます。垂れるよりはいいからと、お母様は真剣に、しょっちゅうされます。筋肉を作る細胞を活性化させる狙いがあります。手軽にできるので、どうぞお試しあれ。

 あとは、お散歩途中でかかと落としを行う。ふくらはぎの血管を若返らせ、早く心臓に血を戻す。

 これらを3か月間にわたって、行うことで、ずいぶん体幹が変わっていく。お母様は、始められる前と今では、お肌の色つやまで変わっていき、ずいぶん見た目若返られたので、喜んでおられる。

 ジャッキーはと言うと、生まれて初めて兄妹ができて嬉しい。一番上の兄さまは、学園の3年生でトーマツ様、卒業後はお父様の後を継ぎ騎士団の入団試験を受けられる予定です。すでに婚約者様がいらっしゃって、子爵家の御令嬢です。1週間に一度の割合で、おふたりでお茶会を為され、仲睦まじい様子にうらやましいと思う。

 だって、ジャッキーは、小さい時に一度会っただけの婚約者はいるが、今、どんな感じなのかさっぱりわからない。父と母も仲がよく、たまに喧嘩することもあるけど、まだ子供で男女間の恋愛に疎い。それにお母様の話によれば、政略は政略だけど、王位を狙っていると言われているから、なおさらジャッキーがしっかりしなければと思うし、でなければ国を乗っ取られる恐れがある。

 愛してもいない相手と結婚するのは、嫌だ。子供でもそれは感じる。

 真ん中の兄さまは、学園の一年生、ちょっと反抗期か?ツンデレのところがある。でもジャッキーには、優しくしてくれるから、好きかもしれない。名前は、ネルソン。

 一番下の兄さまは、来年、学園に入られる14歳、ちょっと変声期であまり話しかけてくれない。名前は、マーカス。

 3人の兄たちは、急に10歳の王女様が妹になり、将来の出世は間違いなしとなるから、みんな大切に扱ってくれる。

 義母?養母?となる騎士団長の奥様で伯爵夫人は、まるでジャッキーを着せ替え人形のごとく、かわいい服をたくさん作ってくださり、毎日、違うものを1日何回も着替えさせられるのである。

 「だって、今まで女の子が欲しいと思っていても、出来なかったのだから、少しの間だけになるかもしれないから、どんどん着替えて見せて頂戴。」

 着替えたら、ミニファッションショーのようなものをして、お母様の前でくるりと回って見せると、王妃である母と養母である伯爵夫人は、手を叩いて喜んでくださるものだから、やめられない。

 そして、やっと手にできた真新しい木刀は重い。でも実際の剣よりは、これでもだいぶ軽いらしい。まずは、この木刀を素振りして、扱えるようになれば、護身術としての剣術を学ぶことができる。

 ジャッキーの練習相手は、もっぱら3人のお兄様方である。遊びながら、身体の使い方や動体視力を磨いていく。

 「ジャッキー、どこからでもいつでも打ち込んで来い。」

 一番上の兄さまが手取り足取り教えてくださる。

 「へっぴり腰になるな!正面から上段に構えろ!」

 「攻撃は最大の防御だ!」

 「気持ちで負けるな!どんな相手でも自分は勝てると思え!」

 遊びながらの剣術のお稽古は楽しい?まぁ、楽しいことにしておきましょう。

 「隙あり!」でも、決してジャッキーのカラダに当たらないように寸止めしてくださる。ジャッキーもだんだんとカラダの使い方に慣れてくる。眼も剣の動きや、他の人の動きが素早く見えるようになってきた。

 気配もなんとなくわかるようになってきたのである。おやつの時間になると中生のネルソン兄さまが、ご自分のおやつをそっとわたくしのおさらに入れてくださるようになったこと。

 「早く大きくなれ。」

 それを一番下のマーカス兄さまが、こっそり自分のお皿へ移されることもわかってきたのです。そしてテーブルの下では長兄のトーマツ兄さまが、マーカス兄さまの足を蹴飛ばしてらっしゃることまで。

 王家の血筋か、ジャッキーはみるみる頭角を現してきたのである。お母様とは段違いに上達してきた。お母様もお城へ帰ってからは、庭で素振りの練習などされていたようだが、あくまでもエレガントに優雅にダンスをされるような素振りで、とても護身術とは程遠い代物です。それを見て国王陛下は安心されたとか、していないとか。とにかく安堵の胸を撫でおろされたようです。
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