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学園
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学園の入学式、この日ばかりは国王夫妻が出席される。いつもは、陛下だけのご臨席なのに、ジャッキーがいるから王妃様もご臨席される。
養父母のサニーバード伯爵夫妻も同様です。
ジャッキーは新入生代表として、挨拶をします。王立学園とはいえ、入学試験があります。ジャッキーは抜群の全科目満点の成績でトップ合格をします。特に数学の成績は、他の生徒を圧倒的に出し抜く微分積分、連立方程式を駆使して、先生方も舌を巻くほどの満点成績で合格しました。将来、王国の予算配分をしなければならないので、小さい時から独学で学んできた成果です。
あくまでもジャクリーン王女殿下としてではなく、ジャッキー伯爵令嬢として挨拶をしなければなりません。
「本日は、わたくしたち新入生のために、このような立派な入学式をしていただき、誠にありがとうございます。また、国王陛下御夫妻並びに、多くの貴族父兄の方にご臨席を賜り恐悦至極にございますれば(以下省略)……、……そして、教職員の皆様、在校生の先輩方、どうかわたくしたち新入生をお導きくださいませ。以上、簡単ではございますが、入学式のご挨拶に代えさせていただきます。新入生代表、ジャッキー・サニーバード。」
壇上で一礼して、戻ってくるとお母様の王妃様とお養母様の伯爵夫人が涙してらっしゃるのが見える。
「立派だわ。ジャッキーちゃん……。」
学園では、なんでも成績順で、身分の隔たりはない。同じクラスの生徒たちは、ほとんどが平民出身者ばかりである。そのため、未だに婚約者のヘンリー・バーグナーとは会えずじまいなのである。
ヘンリー・バーグナーは、苦々しく思っている。同じクラスになれなかったからではない。入学式の後、両親から、ジャッキー・サニーバードと婚約していることを知らされたから。
「ジャッキーちゃんと仲良くしなさいね。決して、他の男子生徒に盗られるようなことがあってはなりません。いいですね?それが我が家のためなのですよ。」
「なぜ?」と聞いても、それ以上は決して何も言ってくれない。
我が家は曾祖母が王女殿下であったことから、代々の悲願がいずれ王位に就くことではないか?それができなければ、王配になり、王国の実権を掌握することにある。それなのに、なぜ?伯爵令嬢なんかと婚約だなんて、話が違うではないか!
ヘンリーは、学園に王女殿下が来られていないことをいいことに、両親の言いつけを守らず、次から次へと女の子の中を渡り歩くプレイボーイ気取りとなる。
そして今、目の前にヘンリー・バーグナーがいる。ヘンリーは違うクラスなのだが、一度も顔合わせしていないと、両親から叱責されるので、Aクラスにやってきたのである。
「おい、お前!俺は、ヘンリー・バーグナーである。両親に言われたから、顔を見せに来てやった。」
「まぁ!初めまして。あなた様がヘンリー様なのですね、わたくし達婚約していると聞かされましても、一度もお会いしたことがなく……3歳頃に一度お会いしたみたいでございますけれど、覚えておりませんでしたわ。」
3歳の頃に会った?ヘンリーも記憶がない。そんなに前からの婚約者?でも聞いたのは、入学式の後だから、こいつが首席で合格したからだ。きっとそうに違いない。勝手に解釈するヘンリー。
でなければ、とびきり美人でもない伯爵令嬢と婚約するはずがない。王位を狙うには、賢い子供を産む必要があるから、それでこいつが首席合格したので、婚約者になったのであろう。
「というわけだから、今度一度やらせろ。」
「は?何をでございますか?」
「だから、その……あれをだ。」
「あれとは、何でございますか?」
「もういい!鈍感バカ女には、興味がない!」
「は?バカ?首席合格したわたくしにバカとは?バーグナー公爵様に抗議しなければいけませんわね。」
その夜、ヘンリーは、バーグナーの家で両親からこっぴどく叱られるのです。
「あれほど、ジャッキーちゃんとは仲良くしなさいと言ったではありませんか!それをこともあろうにご自分より成績のいい令嬢に向かって、やらせろだとか、バカ女だとか言っていいことと悪いことの分別もつかないのですか?これでは、婚約がなくなってしまいそうで心配ですわ。」
「別に、あんな普通な女、どうでもいい。」
「よくありません。もし嫌われて、婚約破棄などなったら、あなたを廃嫡しますからね。覚悟しときなさい。」
「えー、でも……。」
向こうから嫌われなければいいのだ。俺が嫌いになって、婚約破棄すれば廃嫡にはならないだろう。とまた、勝手に解釈する。
それにしても伯爵家の娘の分際で、公爵家の両親にチクるなど、不届きな奴だ。
闇討ちしてやろうか?不穏なことを考える。でも、バレたら廃嫡されるかもしれない。廃嫡はイヤだ。俺は、王配になるのだから、それにしても同い年のはずの王女殿下が学園に来られていないのは、なぜだ?
きっと、婿希望者が殺到するので、他国へ留学でもされているのだろう。それなら、俺もその留学先へ行ってみたいが、俺の頭では、どのみち無理ってとこだろうな。
次の日、廊下ですれ違うことがあり、ジャッキーが挨拶をしてもヘンリー様からは無視されるようになった。
怒っていらっしゃるのかしらね。ジャッキーは、両親には、昨日のことは何も言っていないけれど、王女殿下なので、影の護衛がたくさん付いているから、その者たちから両陛下の耳に入り、バーグナー公爵へ抗議が行ったのであろう。
でも、王女の挨拶を無視したということになれば、また抗議が行くかもしれない。ジャッキーは、別にヘンリーと結婚したいと思っていないからどうでもいいけど。
その日の夜、やはり王家から抗議が行った模様で、またヘンリーは両親から叱られている。
「どうしてジャッキーちゃんが、ご挨拶してくださっているのに無視するようなことをするの!アナタ、本当に廃嫡されたいの?」
「あいついちいち告げ口するから、ウザイんだよ。」
「ジャッキーちゃんは、何も告げ口などされていませんわ。とにかく仲良くしなさい。今度、苦情が来たら、この家から追い出しますからね!」
あの女が告げ口をしていないのなら、学園がいちいち親に告げ口をしているのだろう。なんといってもあの女は、首席合格者で特待生だから。妙なところで特別扱いされているようだ。
それからは、表面だっては、挨拶をするようにした。また、どこかで学園の奴らが見ているかもしれないので。
しばらくは平穏な日々が続く。試験をすれば、必ずあの女がトップの成績になる。何か勉強法で、コツがあるのだろうか?聞きたいけれど、最初に俺様態度を取ってしまったから聞きにくい。
ジャッキーは、同級生たちと仲良く勉強をしている。市井の家に行って勉強すると、護衛が警備しにくいと言うから、サニーバードの家を借りて、そこでお勉強をする。伯爵夫人は、子供がたくさん増えたと大喜びされている。王城へ連れていくわけにいかないので、ジャッキーは伯爵夫人に謝り倒しているのだ。
「お手間をおかけして、すみません。」
「ジャッキーちゃん、何、他人行儀なことを言うの?水臭いわ。ここは、アナタの第2の実家よ。遠慮なく使ってちょうだい、マーカスが帰ってきたら、きっと喜ぶわよ。」
「マーカス兄さま、まだこの家にいらっしゃるの?」
「そうなのよ。なかなかお嫁さんをもらってくれなくてね、でも手のかかる子供ほどかわいいものはないのよ。」
ほどなくして、マーカス兄さま、続いて養父の騎士団長の伯爵様が帰ってこられる。
「珍しいな。ジャッキーがお友達を連れて、我が家に来るとは。」
「みんな、飯食っていけ!」
同級生にお声がけしてくださる。
帰りは、伯爵家の馬車で、それぞれの自宅まで送り届けてくださって、感謝している。ジャッキーは、お城へ転移魔法で帰ることにする。護衛も一緒だ。
「ジャッキーちゃん、たくさんお勉強できた。ありがとう。また明日ね。バイバーイ。」
それぞれの親御さんからは、晩御飯までごちそうになり、その上、馬車で送ってくださりと恐縮されるのだ。
その中の一人、ファイン・カーペンダーは、市井の大工さんの息子だけど、大変賢い。それで王立学園に入学したのだけど、どうあがいてもジャッキーには、叶わない。いつも二番手なのだ。だからジャッキーの勉強の仕方を教えてもらおうと、いつも勉強会に参加している。できることなら、将来、上の学校に進み、建築学を勉強したいと思っているのだ。
ジャッキーは、ファインのためにお城の図書室を見せてあげたいけど、そうすればジャッキーの身分がバレてしまうからできない。
いずれバレるにしても、今はこの学園生活を大切にしたいから、ということで、時折、ファインが好きそうな本を図書室からこっそり持ち出しては、ファインに貸している。
蔵書は貸出禁止なのだけど、ファインはスーパー速読魔法を使っていないのに、驚くほど速く読んで、その日のうちに返してくれるから。だから、内緒で持ち出ししている。
「ジャッキーちゃん、いつもいつも珍しいご本を貸してくれてありがとう。今度は、出来たら構造力学の本が読みたいから、探しといてくれる?」
「え……と、わかったわ。構造力学関係の本ね。」
学園の中庭で話し込んでいたら、いつの間にか、ヘンリーが来ていて
「へぇー、いいご身分だな。確か、婚約者がいる令嬢は、婚約者以外の男性と喋ってはいけないという決まりがあることを知らないのか?」
「は?アナタ様とは、政略で決まったお相手でございますから、それにファインとは、同じクラスの同級生です。アナタ様からとやかく言われるような間柄では、ございませんわ。」
「ったく、生意気な娘だ。伯爵令嬢ごときが!」
ヘンリーが手を挙げようとした瞬間、護衛が動くよりも前に、ジャッキーは側に落ちていた庭箒でヘンリーを叩きのめしていた。
「わたくし、サニーバード騎士団長の娘でございますから、みすみす殿方にやられるようなヘマは致しませんことよ。」
素知らぬ顔で庭箒を元の位置に戻す。
「痛っ!覚えていろよ。サニーバードに抗議してやる!」
「どうぞ、御勝手に。」
ファインは、呆気にとられている。
「強いんだね。ジャッキーちゃんの親父さんは、騎士団長をしていらっしゃるのか!それで、お城の本が手に入るんだね。」
「え?どうして、それを?」
「だって、いつも貸してくれる本の裏表紙にお城の蔵書を示す刻印があるからだよ。」
へぇー、知らなかった。いつも裏表紙まで見ていない。あとがきもロクすっぽ読んでいないから、知らなかったのである。
ヘンリーを叩きのめしたことでのバーグナー公爵家からの抗議は、いつまで経ってもくることはなかったのだ。
ヘンリーはなぜか、やられたのに怒られるハメになるとは思っていなかったようだ。
「だからあれほど、ジャッキーちゃんを怒らせるようなことはするな、と言っていたでしょう。ジャッキーちゃんを他の男子生徒に盗られないようにしなさいとは、言ったけど、ご学友は別です。そんなこともわからないなんて、情けない。」
「しばらく反省しなさい。ったく男のくせに、令嬢に叩きのめされるなど情けない。剣術の稽古を怠るからだ。でも、ジャッキー嬢にけがをさせなくて、よかった。」
両親から、ぼろくそに怒られるも、反省の色は全くなしで、どうすればいいか見当もつかない。
養父母のサニーバード伯爵夫妻も同様です。
ジャッキーは新入生代表として、挨拶をします。王立学園とはいえ、入学試験があります。ジャッキーは抜群の全科目満点の成績でトップ合格をします。特に数学の成績は、他の生徒を圧倒的に出し抜く微分積分、連立方程式を駆使して、先生方も舌を巻くほどの満点成績で合格しました。将来、王国の予算配分をしなければならないので、小さい時から独学で学んできた成果です。
あくまでもジャクリーン王女殿下としてではなく、ジャッキー伯爵令嬢として挨拶をしなければなりません。
「本日は、わたくしたち新入生のために、このような立派な入学式をしていただき、誠にありがとうございます。また、国王陛下御夫妻並びに、多くの貴族父兄の方にご臨席を賜り恐悦至極にございますれば(以下省略)……、……そして、教職員の皆様、在校生の先輩方、どうかわたくしたち新入生をお導きくださいませ。以上、簡単ではございますが、入学式のご挨拶に代えさせていただきます。新入生代表、ジャッキー・サニーバード。」
壇上で一礼して、戻ってくるとお母様の王妃様とお養母様の伯爵夫人が涙してらっしゃるのが見える。
「立派だわ。ジャッキーちゃん……。」
学園では、なんでも成績順で、身分の隔たりはない。同じクラスの生徒たちは、ほとんどが平民出身者ばかりである。そのため、未だに婚約者のヘンリー・バーグナーとは会えずじまいなのである。
ヘンリー・バーグナーは、苦々しく思っている。同じクラスになれなかったからではない。入学式の後、両親から、ジャッキー・サニーバードと婚約していることを知らされたから。
「ジャッキーちゃんと仲良くしなさいね。決して、他の男子生徒に盗られるようなことがあってはなりません。いいですね?それが我が家のためなのですよ。」
「なぜ?」と聞いても、それ以上は決して何も言ってくれない。
我が家は曾祖母が王女殿下であったことから、代々の悲願がいずれ王位に就くことではないか?それができなければ、王配になり、王国の実権を掌握することにある。それなのに、なぜ?伯爵令嬢なんかと婚約だなんて、話が違うではないか!
ヘンリーは、学園に王女殿下が来られていないことをいいことに、両親の言いつけを守らず、次から次へと女の子の中を渡り歩くプレイボーイ気取りとなる。
そして今、目の前にヘンリー・バーグナーがいる。ヘンリーは違うクラスなのだが、一度も顔合わせしていないと、両親から叱責されるので、Aクラスにやってきたのである。
「おい、お前!俺は、ヘンリー・バーグナーである。両親に言われたから、顔を見せに来てやった。」
「まぁ!初めまして。あなた様がヘンリー様なのですね、わたくし達婚約していると聞かされましても、一度もお会いしたことがなく……3歳頃に一度お会いしたみたいでございますけれど、覚えておりませんでしたわ。」
3歳の頃に会った?ヘンリーも記憶がない。そんなに前からの婚約者?でも聞いたのは、入学式の後だから、こいつが首席で合格したからだ。きっとそうに違いない。勝手に解釈するヘンリー。
でなければ、とびきり美人でもない伯爵令嬢と婚約するはずがない。王位を狙うには、賢い子供を産む必要があるから、それでこいつが首席合格したので、婚約者になったのであろう。
「というわけだから、今度一度やらせろ。」
「は?何をでございますか?」
「だから、その……あれをだ。」
「あれとは、何でございますか?」
「もういい!鈍感バカ女には、興味がない!」
「は?バカ?首席合格したわたくしにバカとは?バーグナー公爵様に抗議しなければいけませんわね。」
その夜、ヘンリーは、バーグナーの家で両親からこっぴどく叱られるのです。
「あれほど、ジャッキーちゃんとは仲良くしなさいと言ったではありませんか!それをこともあろうにご自分より成績のいい令嬢に向かって、やらせろだとか、バカ女だとか言っていいことと悪いことの分別もつかないのですか?これでは、婚約がなくなってしまいそうで心配ですわ。」
「別に、あんな普通な女、どうでもいい。」
「よくありません。もし嫌われて、婚約破棄などなったら、あなたを廃嫡しますからね。覚悟しときなさい。」
「えー、でも……。」
向こうから嫌われなければいいのだ。俺が嫌いになって、婚約破棄すれば廃嫡にはならないだろう。とまた、勝手に解釈する。
それにしても伯爵家の娘の分際で、公爵家の両親にチクるなど、不届きな奴だ。
闇討ちしてやろうか?不穏なことを考える。でも、バレたら廃嫡されるかもしれない。廃嫡はイヤだ。俺は、王配になるのだから、それにしても同い年のはずの王女殿下が学園に来られていないのは、なぜだ?
きっと、婿希望者が殺到するので、他国へ留学でもされているのだろう。それなら、俺もその留学先へ行ってみたいが、俺の頭では、どのみち無理ってとこだろうな。
次の日、廊下ですれ違うことがあり、ジャッキーが挨拶をしてもヘンリー様からは無視されるようになった。
怒っていらっしゃるのかしらね。ジャッキーは、両親には、昨日のことは何も言っていないけれど、王女殿下なので、影の護衛がたくさん付いているから、その者たちから両陛下の耳に入り、バーグナー公爵へ抗議が行ったのであろう。
でも、王女の挨拶を無視したということになれば、また抗議が行くかもしれない。ジャッキーは、別にヘンリーと結婚したいと思っていないからどうでもいいけど。
その日の夜、やはり王家から抗議が行った模様で、またヘンリーは両親から叱られている。
「どうしてジャッキーちゃんが、ご挨拶してくださっているのに無視するようなことをするの!アナタ、本当に廃嫡されたいの?」
「あいついちいち告げ口するから、ウザイんだよ。」
「ジャッキーちゃんは、何も告げ口などされていませんわ。とにかく仲良くしなさい。今度、苦情が来たら、この家から追い出しますからね!」
あの女が告げ口をしていないのなら、学園がいちいち親に告げ口をしているのだろう。なんといってもあの女は、首席合格者で特待生だから。妙なところで特別扱いされているようだ。
それからは、表面だっては、挨拶をするようにした。また、どこかで学園の奴らが見ているかもしれないので。
しばらくは平穏な日々が続く。試験をすれば、必ずあの女がトップの成績になる。何か勉強法で、コツがあるのだろうか?聞きたいけれど、最初に俺様態度を取ってしまったから聞きにくい。
ジャッキーは、同級生たちと仲良く勉強をしている。市井の家に行って勉強すると、護衛が警備しにくいと言うから、サニーバードの家を借りて、そこでお勉強をする。伯爵夫人は、子供がたくさん増えたと大喜びされている。王城へ連れていくわけにいかないので、ジャッキーは伯爵夫人に謝り倒しているのだ。
「お手間をおかけして、すみません。」
「ジャッキーちゃん、何、他人行儀なことを言うの?水臭いわ。ここは、アナタの第2の実家よ。遠慮なく使ってちょうだい、マーカスが帰ってきたら、きっと喜ぶわよ。」
「マーカス兄さま、まだこの家にいらっしゃるの?」
「そうなのよ。なかなかお嫁さんをもらってくれなくてね、でも手のかかる子供ほどかわいいものはないのよ。」
ほどなくして、マーカス兄さま、続いて養父の騎士団長の伯爵様が帰ってこられる。
「珍しいな。ジャッキーがお友達を連れて、我が家に来るとは。」
「みんな、飯食っていけ!」
同級生にお声がけしてくださる。
帰りは、伯爵家の馬車で、それぞれの自宅まで送り届けてくださって、感謝している。ジャッキーは、お城へ転移魔法で帰ることにする。護衛も一緒だ。
「ジャッキーちゃん、たくさんお勉強できた。ありがとう。また明日ね。バイバーイ。」
それぞれの親御さんからは、晩御飯までごちそうになり、その上、馬車で送ってくださりと恐縮されるのだ。
その中の一人、ファイン・カーペンダーは、市井の大工さんの息子だけど、大変賢い。それで王立学園に入学したのだけど、どうあがいてもジャッキーには、叶わない。いつも二番手なのだ。だからジャッキーの勉強の仕方を教えてもらおうと、いつも勉強会に参加している。できることなら、将来、上の学校に進み、建築学を勉強したいと思っているのだ。
ジャッキーは、ファインのためにお城の図書室を見せてあげたいけど、そうすればジャッキーの身分がバレてしまうからできない。
いずれバレるにしても、今はこの学園生活を大切にしたいから、ということで、時折、ファインが好きそうな本を図書室からこっそり持ち出しては、ファインに貸している。
蔵書は貸出禁止なのだけど、ファインはスーパー速読魔法を使っていないのに、驚くほど速く読んで、その日のうちに返してくれるから。だから、内緒で持ち出ししている。
「ジャッキーちゃん、いつもいつも珍しいご本を貸してくれてありがとう。今度は、出来たら構造力学の本が読みたいから、探しといてくれる?」
「え……と、わかったわ。構造力学関係の本ね。」
学園の中庭で話し込んでいたら、いつの間にか、ヘンリーが来ていて
「へぇー、いいご身分だな。確か、婚約者がいる令嬢は、婚約者以外の男性と喋ってはいけないという決まりがあることを知らないのか?」
「は?アナタ様とは、政略で決まったお相手でございますから、それにファインとは、同じクラスの同級生です。アナタ様からとやかく言われるような間柄では、ございませんわ。」
「ったく、生意気な娘だ。伯爵令嬢ごときが!」
ヘンリーが手を挙げようとした瞬間、護衛が動くよりも前に、ジャッキーは側に落ちていた庭箒でヘンリーを叩きのめしていた。
「わたくし、サニーバード騎士団長の娘でございますから、みすみす殿方にやられるようなヘマは致しませんことよ。」
素知らぬ顔で庭箒を元の位置に戻す。
「痛っ!覚えていろよ。サニーバードに抗議してやる!」
「どうぞ、御勝手に。」
ファインは、呆気にとられている。
「強いんだね。ジャッキーちゃんの親父さんは、騎士団長をしていらっしゃるのか!それで、お城の本が手に入るんだね。」
「え?どうして、それを?」
「だって、いつも貸してくれる本の裏表紙にお城の蔵書を示す刻印があるからだよ。」
へぇー、知らなかった。いつも裏表紙まで見ていない。あとがきもロクすっぽ読んでいないから、知らなかったのである。
ヘンリーを叩きのめしたことでのバーグナー公爵家からの抗議は、いつまで経ってもくることはなかったのだ。
ヘンリーはなぜか、やられたのに怒られるハメになるとは思っていなかったようだ。
「だからあれほど、ジャッキーちゃんを怒らせるようなことはするな、と言っていたでしょう。ジャッキーちゃんを他の男子生徒に盗られないようにしなさいとは、言ったけど、ご学友は別です。そんなこともわからないなんて、情けない。」
「しばらく反省しなさい。ったく男のくせに、令嬢に叩きのめされるなど情けない。剣術の稽古を怠るからだ。でも、ジャッキー嬢にけがをさせなくて、よかった。」
両親から、ぼろくそに怒られるも、反省の色は全くなしで、どうすればいいか見当もつかない。
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