国境を越えた愛、ロイヤルロマンス

青の雀

文字の大きさ
1 / 5
愛しのグリンダ

1.愛しのグリンダ

しおりを挟む
 アタラント王国に仕える庭師の娘グリンダは、王国の第2王子マーカスに密かに恋をしていた。
 今日も庭の陰から、マーカス殿下の様子を覗き見ている。
仕事人間な第1王子トーマスとは正反対のプレイボーイである彼は、大貴族の公爵令嬢シャルロットとイチャイチャすることに夢中でグリンダのことは眼中になかった。

 「シャルロット嬢、君は、薔薇より美しい。」

 「あら、薔薇にはトゲがありますのよ」

 トーマスは、シャルロットの豊満な胸を揉みしだいた。別にシャルロットを愛しているわけではない。ただ、カラダを堪能しているだけ。
 シャルロットも、そのことはよく知っていて、高級娼婦のようなものだと理解していた。

 グリンダは、父からも身分違いの恋を咎められ、以前から決まっていた隣国留学の為にアタラント王国を離れる日が目前に迫る。叶わない恋を悲しんだグリンダは、自殺を図る。
 何気なく庭に近づいたトーマスは、異変に気付き、助けられ、グリンダは隣国へと旅立った。

 隣国での留学期間は、2年間。調理師学校へ入学した。留学生は、全寮制だった。
 調理師学校では、ほとんどが男子生徒で、女性はグリンダ一人で、しょっちゅうデートのお誘いがかかった。
でもグリンダは、第2王子のマーカスのことが忘れられなかった。

 その日のデートの相手は、隣国の伯爵家の令息でバルマンという見目麗しいイケメンだった。バルマンは、入学当初からグリンダにくぎ付けだった。身分が低いので、妻は無理でもいつか愛妾にしてやろうと目論んでいた。
高級レストランで舌鼓を打った後、バルマンは、ホテルへ誘った。お茶を飲むためではない。
 バルマンからのいやらしい視線に、身の危険を感じたグリンダは、ホテルから逃げ出した。

 ホテルから逃げ出したグリンダは、通りすがりの初老の紳士とぶつかった。謝罪するグリンダの様子に、察するところがあったのか、紳士は、グリンダを家へ連れ帰り、妻に紹介した。

 初老の紳士の正体は、隣国の大公だった。ルセンブルク大公と言われる。
 「殿下ありがとうございました。」グリンダは、恐縮しきって頭を下げる。

 「わはは。よいのだ。よいのだ。殿下など言わないでくれ、ただのおじいちゃんだよ。グリンダ、そなたを孫のように思えてな、こうして、ばあさんのところへ連れてきたんだよ。」

 グリンダは、寮へ帰らず、大公のお屋敷に寝泊まりすることになった。

 調理師学校のほうへは、屋敷から連絡が行き、昼間は勉強をするが、講義が終わると屋敷から馬車が迎えにきて、そのまま連れ帰られる。

 おかげでバルマン伯爵令息からの嫌味や懸想から逃れられた。
 屋敷でのグリンダの扱いは、行儀見習いだった。洗練された貴族のマナーをとことん教え込まれた。作法、ダンス、語学、所作、礼儀など学校が休みの日は、朝から晩まで続いた。
 心身ともに、疲れ切ったが、いつか綺麗なカラダのままマーカスと結ばれることを夢見て頑張った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』

しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。 どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。 しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、 「女は馬鹿なくらいがいい」 という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。 出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない―― そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、 さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。 王太子は無能さを露呈し、 第二王子は野心のために手段を選ばない。 そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。 ならば―― 関わらないために、関わるしかない。 アヴェンタドールは王国を救うため、 政治の最前線に立つことを選ぶ。 だがそれは、権力を欲したからではない。 国を“賢く”して、 自分がいなくても回るようにするため。 有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、 ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、 静かな勝利だった。 ---

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

旦那様は、転生後は王子様でした

編端みどり
恋愛
近所でも有名なおしどり夫婦だった私達は、死ぬ時まで一緒でした。生まれ変わっても一緒になろうなんて言ったけど、今世は貴族ですって。しかも、タチの悪い両親に王子の婚約者になれと言われました。なれなかったら替え玉と交換して捨てるって言われましたわ。 まだ12歳ですから、捨てられると生きていけません。泣く泣くお茶会に行ったら、王子様は元夫でした。 時折チートな行動をして暴走する元夫を嗜めながら、自身もチートな事に気が付かない公爵令嬢のドタバタした日常は、周りを巻き込んで大事になっていき……。 え?! わたくし破滅するの?! しばらく不定期更新です。時間できたら毎日更新しますのでよろしくお願いします。

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

誕生日前日に届いた王子へのプレゼント

アシコシツヨシ
恋愛
誕生日前日に、プレゼントを受け取った王太子フランが、幸せ葛藤する話。(王太子視点)

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

処理中です...