異世界に迷い込んだ大女優、元の世界に戻るため王太子殿下を誑かす~社交界と王宮に潜む罠

青の雀

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14.サイモン2

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 そして、いよいよ舞踏会 当日の朝、仕立て屋サイモンが小躍りしながら王宮へやってくる。

 総レースのドレスの仕上がりに時間がかかったが、当日の朝までには納品できたのだ。

 ひろみがマイ・フェアレディをイメージして注文したマーメイド型のドレス。大きなリボンの特徴があるが、あえてひろみはその特徴のリボンを外し、スタイルの良さだけが引き立つドレスを注文したのだ。

 元の世界の人間が見たら、どこかで見たことがあると思えるようなデザイン。だけど異世界では、誰も見たことがない素材とデザインで、きっと目を白黒されるだろう。

 今夜の舞踏会が楽しみ、終わればフィリップともお別れになるけど、元の世界に戻り中務監督をギャフンと言わせたい。

 その一念だけで、今まで異世界で頑張ってきたのだから、どうしても帰る。

 「私も、一世一代の大仕事をさせていただき心より感謝申し上げます。すでにお代は頂戴しております。」

 出来上がったドレスを眺めていると、夜、バルコニーへ出た時、あるいは庭を散歩することがあるかもしれない時、寒いかもと思った。ボレロを注文したけど、屋内では邪魔になるだけ。

 そこで追加に注文することにしたのだ。

 「あのね。サイモン、急で悪いのだけど、シルクのジョーゼットのような布地を2メートルほどいただけないかしら。なるべく薄色のものがいいわ。それと同色の絹糸を少し。」

 「何にお使いになられるのですか?今、手持ちのものなら、こんなものがありますが。」

 それは上質の薄いピンク色の絹織物だった。

 針と糸を借りて、器用に裾をまつっていく。そしてそれぞれの生地の端の上部に丸い輪っか状のものを作る。

 「できたわ。これならお庭に出てもバルコニーに出ても冷えない。」

 「ああ、ストールになさるおつもりだったのですね。でもその丸い輪っかは何のために?」

 「ここに指を通すと、お部屋にいるとき、落とさないでしょ。熱い時は、腰のあたりまで、ストールを落としアクセサリー代わりにするのよ。そして外へ出た時、衿までかぶせれば暖かい。一石二鳥よ。」

 「素晴らしいアイデアでございますね。これも頂戴してもよろしいでしょうか?」

 「それはダメだ。そのアイデアは王家のものだからな。」

 いるの間にか、フィリップが後ろに立ってサイモンを睨みつけている。

 「ヒっ!ご冗談でございますれば、お許しを。」

 「俺の前で2度と冗談を口にするな!」

 「フィリップいいじゃないの。こんなことぐらい誰だって、思いつくわよ。」

 「しかし……。」

 「では、キャサリン嬢のドレスとセットでの条件付きなら、構いませんでしょうか?」

 「キャシーがそう言うのなら、良いだろう。」

 「素材は、レースだけを認めるというのはどうかしらね?そこそこ値も張るし、王家の許可なくしては、作れないから。」

 「おお!いい考えだ。それなら許可しよう。」

 「それでは認めていただけるのですね。ありがとう存じます。」

 せっかくだからと、ドレスの試着をすることになる。試着だけなのに、風呂の用意がされ、髪の毛まで綺麗に洗われる。

 女官長も、ひろみの好みを知って、わざわざお湯を張ってくれたのだ。湯上りにバスローブを羽織り、ドレッサーの前で綺麗に髪の毛をセットアップしてくれる。

 下着になるスリップドレスを着て、コルセットを絞められるのだけどブラジャーの肩ひもを外し、パンティを穿いておく。

 よくこの世界の人はこんなきついコルセットをはめて、食事ができるものだと感心する。

 まぁ慣れれば、どうってことないのかもしれないが、元の世界に戻るまでの辛抱だから我慢する。
 
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