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オフィスラブ
18.事件
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「美織!」
真っ先に飛び出してきた正彦は、美織を抱締めるが、反応がない。
美織はいつも女子社員の制服を着ているのだが、その日はたまたま高級ブランドの高いスーツを着ていたため、それほどのやけどではないように見えるが、そっと脱がせる。
正彦が買ってやったスーツだ。
「嘘だ。嘘だろ?美織、返事をしてくれ!やっと、気持ちが通じ合ったというのに。」
毒花は自身もやけどを負ったのか、その場でへたり込んでいて、独り言のように、
「コーヒーをかけるつもりだったのに、手が滑ってお湯をかけてしまったわ。あはは。ざまあみろ。何が会計士よ。偉そうにして。」
「貴様のせいで、妻が死ぬかもしれないのだぞ!この人殺しが!」
正彦は、毒花の頬を平手打ちする。
社長室前廊下では、「救急車!」「パトカーだ!」騒然としていて、社長秘書のオバサンだけが落ち着いて、毒花の証言をICレコーダーに録音した。と平然と言う。
さすがに、落ち着いているというかなんというか。
正彦は美織と共に救急車に乗り込む。
{どうか神様、命だけは助けてやってください。}
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「いらっしゃいませ~。ようこそ肉体ブティックへ。」
「へ?」
「ここは、三途の川の一歩手前にあるブティックで、無念の死を遂げた人に特別に六文銭だけで、もう一度リアルタイムで人生をやり直せるのよ。好きなカラダを選んで頂戴。」
「あの……、私、死んだのですか?」
「そうよ。会社の縁故採用の秘書に熱湯をかぶせられて、まあ今は仮死状態といったところなんだけどね。旦那様がひどく悲しんでいらっしゃるわ。見ていて、痛々しいほどによ。」
「もう一度、行き帰らせてもらえるのですか?」
「厳密にいえば、違うヒトのカラダに魂が入って、それでまた旦那さんとやり直せばいいじゃない?」
「それなら、いりません。このまま三途の川を渡ります。さようなら。」
美織は、店を出て、三途の川の渡し船の方へふらふらと行く。
「待って。待ってよ。」
さっきのブティックの店長?女神様?に引き留められる。
「いやいや、最近、こういう客が多いのよね。ったく!わかったわよ、アナタのカラダを修復してあげるから、今度こそ、旦那様と幸せな人生を送ってね。ただし、ここでのことをしゃべられたら、困るからアナタには、一時的に、記憶喪失になってもらいます。それでもいいなら、そのカラダをきれいなやけど前のカラダに修復してあげるから、ここで待っていなさい。」
ったく。商売あがったり、だっつうの!でも、こういう人まで、天国に送ってしまったら、また神様から、どやされるし、仕方ないわね。
女神様は、ブツクサ文句を言いながら、美織のカラダを修復してくれる。
「記憶がなくなってしまうのですか?」
「そうよ、旦那様の愛情でしか、記憶を取り戻せないの。だから、どれだけ旦那様が、アナタのことを愛しているかがカギになるわね。」
「それほどでもなかったら……。一生思い出せないのかもしれないってことですか?」
「それは、旦那様だけの責任ではないわよ。アナタも旦那様のことがそれほど好きでもなかったってことの裏返しでもあるから、お互いの思いあう心が強ければ強いほど、記憶は戻るのが早くなるということね。しっかり、頑張ってちょうだいよ。」
美織は正彦のことを信じようと思う。
心のどこかでは、一発逆転の人生もいいかもしれないと、どこかで思う自分がいることも確かなのだが、もう一度公認会計士の勉強をするのは、ハッキリ言ってツライ。大学受験もしかり。
大学受験なんて、会計士の勉強に比べたら、楽と言えば、楽なんだけど、あの頃、学校も家も、周りが追い込んでいき、結局、自分で自分を追い詰めていくという状態になるから、勉強は楽でも、精神的にツライ。
真っ先に飛び出してきた正彦は、美織を抱締めるが、反応がない。
美織はいつも女子社員の制服を着ているのだが、その日はたまたま高級ブランドの高いスーツを着ていたため、それほどのやけどではないように見えるが、そっと脱がせる。
正彦が買ってやったスーツだ。
「嘘だ。嘘だろ?美織、返事をしてくれ!やっと、気持ちが通じ合ったというのに。」
毒花は自身もやけどを負ったのか、その場でへたり込んでいて、独り言のように、
「コーヒーをかけるつもりだったのに、手が滑ってお湯をかけてしまったわ。あはは。ざまあみろ。何が会計士よ。偉そうにして。」
「貴様のせいで、妻が死ぬかもしれないのだぞ!この人殺しが!」
正彦は、毒花の頬を平手打ちする。
社長室前廊下では、「救急車!」「パトカーだ!」騒然としていて、社長秘書のオバサンだけが落ち着いて、毒花の証言をICレコーダーに録音した。と平然と言う。
さすがに、落ち着いているというかなんというか。
正彦は美織と共に救急車に乗り込む。
{どうか神様、命だけは助けてやってください。}
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「いらっしゃいませ~。ようこそ肉体ブティックへ。」
「へ?」
「ここは、三途の川の一歩手前にあるブティックで、無念の死を遂げた人に特別に六文銭だけで、もう一度リアルタイムで人生をやり直せるのよ。好きなカラダを選んで頂戴。」
「あの……、私、死んだのですか?」
「そうよ。会社の縁故採用の秘書に熱湯をかぶせられて、まあ今は仮死状態といったところなんだけどね。旦那様がひどく悲しんでいらっしゃるわ。見ていて、痛々しいほどによ。」
「もう一度、行き帰らせてもらえるのですか?」
「厳密にいえば、違うヒトのカラダに魂が入って、それでまた旦那さんとやり直せばいいじゃない?」
「それなら、いりません。このまま三途の川を渡ります。さようなら。」
美織は、店を出て、三途の川の渡し船の方へふらふらと行く。
「待って。待ってよ。」
さっきのブティックの店長?女神様?に引き留められる。
「いやいや、最近、こういう客が多いのよね。ったく!わかったわよ、アナタのカラダを修復してあげるから、今度こそ、旦那様と幸せな人生を送ってね。ただし、ここでのことをしゃべられたら、困るからアナタには、一時的に、記憶喪失になってもらいます。それでもいいなら、そのカラダをきれいなやけど前のカラダに修復してあげるから、ここで待っていなさい。」
ったく。商売あがったり、だっつうの!でも、こういう人まで、天国に送ってしまったら、また神様から、どやされるし、仕方ないわね。
女神様は、ブツクサ文句を言いながら、美織のカラダを修復してくれる。
「記憶がなくなってしまうのですか?」
「そうよ、旦那様の愛情でしか、記憶を取り戻せないの。だから、どれだけ旦那様が、アナタのことを愛しているかがカギになるわね。」
「それほどでもなかったら……。一生思い出せないのかもしれないってことですか?」
「それは、旦那様だけの責任ではないわよ。アナタも旦那様のことがそれほど好きでもなかったってことの裏返しでもあるから、お互いの思いあう心が強ければ強いほど、記憶は戻るのが早くなるということね。しっかり、頑張ってちょうだいよ。」
美織は正彦のことを信じようと思う。
心のどこかでは、一発逆転の人生もいいかもしれないと、どこかで思う自分がいることも確かなのだが、もう一度公認会計士の勉強をするのは、ハッキリ言ってツライ。大学受験もしかり。
大学受験なんて、会計士の勉強に比べたら、楽と言えば、楽なんだけど、あの頃、学校も家も、周りが追い込んでいき、結局、自分で自分を追い詰めていくという状態になるから、勉強は楽でも、精神的にツライ。
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