ワンナイトラブから玉の輿婚へ 結婚してから始まる恋愛

青の雀

文字の大きさ
19 / 41
オフィスラブ

19.集中治療室

しおりを挟む
 再生医療というのだろうか、美織のやけどの治療は、救急搬送された直後から細胞を増殖させる形で医療に取り掛かってもらっている。

 昔なら太ももの皮膚を移植するという方法がとられていた時代もあり、ずいぶん進歩したものだと思う。

 集中治療室にずっと入院しているわけだが、ご家族の方を集めてくださいと、昨日、病院から言われ、京都から美織の両親と世田谷正彦の両親、正彦と5人が美織のベッドの周りにいる。

 病院側の最後のお別れという意味なのだが、誰も諦めていない。

 美織の顔を見ると穏やかな顔をして眠っているようにしか、見えない。

 一瞬、美織のカラダから金色の光が発せられたような気がしたけど、気のせいか?と誰もが思っていると、

 「んん……。」

 奇跡的に美織の意識が戻ってきたみたいだった。

 急いで、美織母がナースコールを押す。

 ご臨終かと思ったのか、看護師と医者が何も聞かずに、慌てて飛んでくるように病室の中に入ってくる。

 脈拍も血圧も徐々に回復傾向を見せている。

 「……。」

 「信じられない!奇跡だ!」

 まさに、V字回復といったところ。

 「多摩川さん!世田谷さん!……美織さん!聞こえますか?聞こえたら、頷いてください。」

 美織は、うすぼんやりとした意識の中で、目を開けると白い天井が見える。

 「ここ、どこ?」

 その途端、周りにいた家族からは、ふぅーっという大きな安ど感が漂うような息が漏らされる。

 正彦は、美織の枕元で、泣きながら

 「よかった。よかった。美織、心配したよ。もう大丈夫だ。」

 「?……あんた、誰?」

 「え!……。」

 一瞬にして、温かな穏やかなムードが凍り付いてしまう。正彦は、先生に食って掛かる。

 「先生!これは、一体どういうことなのでしょうか?」

 「おそらく一時的に混乱されているのではないでしょうか?奥様は、生死の境をさまよわれたわけで、これは医療の範疇を超えている現象だと思われます。」

 「だとしてもです。」

 「しばらくは、様子見されてはいかがでしょうか?脳波は、異常なしの結果しか出ていません。」

 正彦は、頭を抱え、その場にうずくまる。

 美織の両親は、命拾いしただけで、良しとしましょう。などというのんきなことを言っている。そういうところが京都人気質なのだが、東男に京女で、相性はいいと思うのだが……。

 「なあ、親父、しばらく美織の養生を二人三脚でやっていきたいから、会社の方は、任せてもいいか?」

 すると、美織の両親は、

 「いやいや、退院したら、美織は京都で療養させます。京都には京大病院もありますから、そちらへ転院させてもろたら、よろしおすわ。美織かて、京都に帰ってきた方が、ゆっくりできるのと違いますやろか。正彦君は、安心してお仕事に専念してもらったら、ええのとちゃいますやろか。」

 言い方は柔らかいけど、早い話が会社も辞めて、離婚して京都へ引き上げさせます。の意味がある。

 「これからのことは、美織さんとゆっくり二人で話し合ったら、どうかな?今、ここで決める話でもない。」

 正彦は、親父の言うとおりだと思い、頷く。それに毒花の裁判もまだこれから始まる。あれから、毒花の両親は、娘に前科が付くのを恐れ、示談で金を払って和解しようとしているが、ひょっとすれば、今日、このまま臨終になっていたかもわからない状態で、示談などできるわけがない。

 公判の論点は、未必の故意があったかどうか、で殺人未遂か傷害かが論点になるだろう。

 毒花は、勝手に正彦に恋をして、将来、正彦と結婚するのは自分だと思い込んでいて、邪魔になった美織を目の敵にしえ、排除しようとした。という趣旨の供述をしているらしい。

 急に、経理部長に抜擢したのも、美織が枕営業で勝ち取った成果と思い込んで、たまたまデズニーに行ったとき、正彦と美織が手をつないでホテルから出てきたところを目撃し、でたらめの噂話にも動じない美織に立腹し、今回の犯行に及んだということが事件の概要にある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

DEEP FRENCH KISS

名古屋ゆりあ
恋愛
一夜を過ごしたそのお相手は、 「君を食べちゃいたいよ」 就職先の社長でした 「私は食べ物じゃありません!」 再会したその日から、 社長の猛攻撃が止まりません!

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

ズボラ上司の甘い罠

松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。 仕事はできる人なのに、あまりにももったいない! かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。 やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか? 上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。

4番目の許婚候補

富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお断りいたします。

汐埼ゆたか
恋愛
旧題:あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。 ※現在公開の後半部分は、書籍化前のサイト連載版となっております。 書籍とは設定が異なる部分がありますので、あらかじめご了承ください。 ――――――――――――――――――― ひょんなことから旅行中の学生くんと知り合ったわたし。全然そんなつもりじゃなかったのに、なぜだか一夜を共に……。 傷心中の年下を喰っちゃうなんていい大人のすることじゃない。せめてもの罪滅ぼしと、三日間限定で家に置いてあげた。 ―――なのに! その正体は、ななな、なんと!グループ親会社の役員!しかも御曹司だと!? 恋を諦めたアラサーモブ子と、あふれる愛を注ぎたくて堪らない年下御曹司の溺愛攻防戦☆ 「馬鹿だと思うよ自分でも。―――それでもあなたが欲しいんだ」 *・゚♡★♡゚・*:.。奨励賞ありがとうございます 。.:*・゚♡★♡゚・* ▶Attention ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

処理中です...