20 / 41
オフィスラブ
20.退院
しおりを挟む
美織は、退院してもよいという日の前日に荷物をまとめて、さっさと退院したのだ。
それも、正彦の住むマンションに帰らず、もともと独身時代から暮らしていたマンションに戻ったのだ。
だって、女神さまの約束?で記憶がないから、まったく覚えていない男性と一緒に暮らしてはいけない。
世田谷さんと言えば、覚えていることは美織の就職先の会社の社長ということしかない。
どうして、私がそんな社長と結婚することになったのか?さっぱり記憶がない。両親が言うように、京都へ帰ろうかとも思ったけど、なれそめなどを聞き出してみたいと思うようになったからで、でないと前に進めないような気がする。
京都へは、いつでも帰れる。新幹線で2時間ちょっとの距離だもの。
美織は、ほんとうにあんなイケメンと結婚していたのか疑心暗鬼になっている。だって、あんなかっこいい人、いくらでも他に縁談がありそう。なんでわざわざ社内調達などしようとしたのか、わからない。仕事に接点もないのに。
それに、本当に好きで結婚したのなら、このマンションを処分したはずなのに、まだこのマンションが残っているということは、本気ではなかったのかもしれない。いずれ離婚を前提としていたから、このマンションをそのままにしていたのではないかと考えられる。
だから、このマンションを拠点にして、会社にも行くつもり。公認会計士2次試験は学生時代に合格して、それからその資格をぶら下げて、クリスタル化粧品に就職したことまでは、覚えている。同期に村上君がいたから、出社したら、村上君に聞いてみよう。
たぶん、仕事は経理、しかも会計士でなければできることが困難な原価計算の仕事をしていたのだろうと思う。
会社の社員証も鞄の中に入れ、通勤定期もあれ?期限が……切れている!なんで?
ま、いいや、しばらくは回数券で繋いで、お給料で定期券を買えばいいから。
考えたら、銀行口座も多摩川美織のままになっている。結婚していたのに、おかしいわよね?
本当に、結婚していたのか?やっぱり、その疑問はついて回る。
翌日、出社したら、更衣室のロッカーの場所が変わっていた。もしかして、休んでいる間に退職扱いになったってこと?うっそー!明日から、どうやって食べていくの?でも、社員証が手元にあるということは、今日、出社したから、今すぐ返しなさいと言われるのだろうか?いやいや、それはないな。
理由はどうであれ、会社内でけがをして休職していたので、労災にならなくても、解雇予告は1か月前になされるべきだし、これだけの大手企業であれば、見舞金も取れるはず。それに予告手当も合わせれば、しばらく東京で活動できると思う。
つくづく、マンションを解約していなくて、よかったと胸をなでおろす。
思っていたところに、経理部はあった。ああ、よかったと思う。職場の場所まで忘れていたかと思って、ヒヤヒヤしていたのだ。
「おはようございます。」
経理部に入る前に、大きな声で挨拶をする。部員は驚いた様子で、ワラワラと集まってくる。
「もう、大丈夫ですか?」
「心配していたんですよ。」
「お見舞いに行こうかと、みんなで話し合っていて。」
「大変でしたね。まだ痛みはありますか?」
なに?なに?ここの人たちって、そんなに私に興味があった?それに、多摩川部長って、なによ?まさか、私が部長ってことないよね?
うそ!うそ?部長席が私の机になっているじゃない!
ということは……。本当に部長になっているの?うっそー!前の部長は、どこへ行かれたのかしら?でも、うかつには聞かれない。
こういう時は、同期に聞くのが一番のはずなのに、同期の村上君の姿もない。なんで?
とりあえず、PCに電源を入れ、メールを開くと2000通も着信があった!こんなお、読み切れるわけがない!
それも、正彦の住むマンションに帰らず、もともと独身時代から暮らしていたマンションに戻ったのだ。
だって、女神さまの約束?で記憶がないから、まったく覚えていない男性と一緒に暮らしてはいけない。
世田谷さんと言えば、覚えていることは美織の就職先の会社の社長ということしかない。
どうして、私がそんな社長と結婚することになったのか?さっぱり記憶がない。両親が言うように、京都へ帰ろうかとも思ったけど、なれそめなどを聞き出してみたいと思うようになったからで、でないと前に進めないような気がする。
京都へは、いつでも帰れる。新幹線で2時間ちょっとの距離だもの。
美織は、ほんとうにあんなイケメンと結婚していたのか疑心暗鬼になっている。だって、あんなかっこいい人、いくらでも他に縁談がありそう。なんでわざわざ社内調達などしようとしたのか、わからない。仕事に接点もないのに。
それに、本当に好きで結婚したのなら、このマンションを処分したはずなのに、まだこのマンションが残っているということは、本気ではなかったのかもしれない。いずれ離婚を前提としていたから、このマンションをそのままにしていたのではないかと考えられる。
だから、このマンションを拠点にして、会社にも行くつもり。公認会計士2次試験は学生時代に合格して、それからその資格をぶら下げて、クリスタル化粧品に就職したことまでは、覚えている。同期に村上君がいたから、出社したら、村上君に聞いてみよう。
たぶん、仕事は経理、しかも会計士でなければできることが困難な原価計算の仕事をしていたのだろうと思う。
会社の社員証も鞄の中に入れ、通勤定期もあれ?期限が……切れている!なんで?
ま、いいや、しばらくは回数券で繋いで、お給料で定期券を買えばいいから。
考えたら、銀行口座も多摩川美織のままになっている。結婚していたのに、おかしいわよね?
本当に、結婚していたのか?やっぱり、その疑問はついて回る。
翌日、出社したら、更衣室のロッカーの場所が変わっていた。もしかして、休んでいる間に退職扱いになったってこと?うっそー!明日から、どうやって食べていくの?でも、社員証が手元にあるということは、今日、出社したから、今すぐ返しなさいと言われるのだろうか?いやいや、それはないな。
理由はどうであれ、会社内でけがをして休職していたので、労災にならなくても、解雇予告は1か月前になされるべきだし、これだけの大手企業であれば、見舞金も取れるはず。それに予告手当も合わせれば、しばらく東京で活動できると思う。
つくづく、マンションを解約していなくて、よかったと胸をなでおろす。
思っていたところに、経理部はあった。ああ、よかったと思う。職場の場所まで忘れていたかと思って、ヒヤヒヤしていたのだ。
「おはようございます。」
経理部に入る前に、大きな声で挨拶をする。部員は驚いた様子で、ワラワラと集まってくる。
「もう、大丈夫ですか?」
「心配していたんですよ。」
「お見舞いに行こうかと、みんなで話し合っていて。」
「大変でしたね。まだ痛みはありますか?」
なに?なに?ここの人たちって、そんなに私に興味があった?それに、多摩川部長って、なによ?まさか、私が部長ってことないよね?
うそ!うそ?部長席が私の机になっているじゃない!
ということは……。本当に部長になっているの?うっそー!前の部長は、どこへ行かれたのかしら?でも、うかつには聞かれない。
こういう時は、同期に聞くのが一番のはずなのに、同期の村上君の姿もない。なんで?
とりあえず、PCに電源を入れ、メールを開くと2000通も着信があった!こんなお、読み切れるわけがない!
1
あなたにおすすめの小説
ズボラ上司の甘い罠
松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
氷の上司に、好きがバレたら終わりや
naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。
お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、
“氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。
最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、
実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき――
舞子の中で、恋が芽生えはじめる。
でも、彼には誰も知らない過去があった。
そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。
◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか?
◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか?
そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。
笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。
関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。
仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。
「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。
なし崩しの夜
春密まつり
恋愛
朝起きると栞は見知らぬベッドの上にいた。
さらに、隣には嫌いな男、悠介が眠っていた。
彼は昨晩、栞と抱き合ったと告げる。
信じられない、嘘だと責める栞に彼は不敵に微笑み、オフィスにも関わらず身体を求めてくる。
つい流されそうになるが、栞は覚悟を決めて彼を試すことにした。
契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
ラヴ KAZU
恋愛
橘花ミクは誕生日に恋人、海城真人に別れを告げられた。
バーでお酒を飲んでいると、ある男性に声をかけられる。
ミクはその男性と一夜を共にしてしまう。
その男性はミクの働いている辰巳グループ御曹司だった。
なんてことやらかしてしまったのよと落ち込んでしまう。
辰巳省吾はミクに一目惚れをしたのだった。
セキュリティーないアパートに住んでいるミクに省吾は
契約結婚を申し出る。
愛のない結婚と思い込んでいるミク。
しかし、一途な愛を捧げる省吾に翻弄される。
そして、別れを告げられた元彼の出現に戸惑うミク。
省吾とミクはすれ違う気持ちを乗り越えていけるのだろうか。
龍の腕に咲く華
沙夜
恋愛
どうして私ばかり、いつも変な人に絡まれるんだろう。
そんな毎日から抜け出したくて貼った、たった一枚のタトゥーシール。それが、本物の獣を呼び寄せてしまった。
彼の名前は、檜山湊。極道の若頭。
恐怖から始まったのは、200万円の借金のカタとして課せられた「添い寝」という奇妙な契約。
支配的なのに、時折見せる不器用な優しさ。恐怖と安らぎの間で揺れ動く心。これはただの気まぐれか、それとも――。
一度は逃げ出したはずの豪華な鳥籠へ、なぜ私は再び戻ろうとするのか。
偽りの強さを捨てた少女が、自らの意志で愛に生きる覚悟を決めるまでの、危険で甘いラブストーリー。
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる