出世のために婚約破棄され殺された私は、誰かのカラダに憑依し全く違う人生を歩み、幸せを掴む

青の雀

文字の大きさ
5 / 9
異世界

しおりを挟む
 あれから3年の月日が過ぎても、クリスティーヌはまだカトリーヌのカラダにいる。

 毎晩愛し合ったおかげで、長男長女と子宝に恵まれ、幸せに過ごしている。キャロラインちゃんも、いい再婚相手が見つかったみたいで、よかったわ。

 これが本当の第2の人生よね。

 ただ、いつかカトリーヌにカラダを返さなければという不安がいつもある。

 トミー様は、そういうクリスティーヌの不安を察してか、その時はいつもより激しく愛してくださるから、つい、忘れてしまい、その場での快楽に身をゆだねてしまう。

 今日も、激しい真っ最中

 「今宵こそは、カトリーヌの不安を聞かせてもらおうか?」

 「信じてもらえるかどうか……、あん……。」

 「カトリーヌの言うことであれば、どんなことでも信じるさ。」

 「……わたくし、……実は、クリスティーヌなのです。」

 「!……いつから?」

 「トミー様と再会した時から、キャロラインちゃんは、わたくしがカトリーヌのカラダを借りていることをご存知で、承知のうえで、あなた様とのお見合いをセッティングしてくれたのです。ごめんなさい。いつか言わなければと思っていたのです。」

 「え……と、確かクリスティーヌは、サンドラの王と結婚したと聞いていたが、不慮の事故で亡くなり、その後を追うように王も亡くなったと聞いていたが……。」

 「事故ではありません。わたくしは夫に殺されたのです。自分でもどういう仕組みかわからないのですが、気づけば、妹のカラダに入っていたのです。」

 「殺されたって!本当か!なんで、クリスティーヌが殺されなければならないんだ!」

 トミー様は怒りながら激しく突いてくださるから、それだけでもう悶絶しそう。

 「夫は、少しでも気に入らないことがあると、結婚当初から、わたくしに暴力を振るうようになり、やがてそれがエスカレートしていき、ついには殴り殺されたのです。結婚前は何度も婚約解消を申し入れたのですが、聞き入れてくれなくて。」

 「そんなバカな話があるのか!俺は絶対そんなことしない、安心しろ、クリスティーヌ!」

 「ええ、ええ。だから、あなた様がわたくしから……、あっ!……ぃぃ……。」

 話は中断したまま、トミー様は怒りに任せて、どんどんクリスティーヌを求め、クリスティーヌもそれに応じていく。

 結局、朝までぐったりしたまま続く。話は今夜、持ち越そうということになったのだが、再び、トミー様が激昂して、これって、違う意味の暴力では?夜にこの話をするのはよそう。

 「話はだいたいわかった。それでクリスティーヌはいつか、カトリーヌにカラダを返さなければならないと思っているということだな?俺が昔から愛していたクリスティーヌであって、よかったとは思うよ。でもね、一生返さなくてもいいかもしれない。その辺のことはわからないけれど。だから、今を生きよう。たとえ、明日、返すことになったとしても、今は今を生きるのがベストだと思うよ。」

 いいこと言うわね!

 「トミー様がそれでよければ。」

 「良いも悪いもないよ。やっぱり俺が昔から愛していたのは、クリスティーヌだけだったということだ。たとえ、どんなに姿かたちが変わろうとも、愛しているよ。クリスティーヌ、でもこれからクリスティーヌ呼びすると変に思われるから、対外的にはカトリーヌ、二人っきりの時はクリスと呼ばせてもらう。それで、いいね?」

 「はい、トミー様ありがとう存じます。」

 それから半年後怒りの受胎も無事、次女を出産したのだけれど、この次女がどうもカトリーヌの魂をもって生まれ変わってきたみたい。本人は、気づいていないようだが、姉のモノをなんでも欲しがる子で、しつけをするのに苦労をしている。

 きっと将来、ひとりの男性をめぐって、取り合いすることになるだろう。

 顔立ちも心なしか、姉はクリスティーヌに似ているが、妹はカトリーヌに似ている。

 姉のほうは、妹が姉の持ち物を欲しがると、差し出して「あげる。」と言っているものを、クリスティーヌは、

 「ダメよ。お姉さまのものを取り上げては、ダメです。」

 いちいち、次女を叱っているのだ。その度に次女は泣きわめき、バタバタと手足を動かし駄々を捏ねる。

 将来、姉妹の関係性がどうなるかわかっているので、早めに手を打とうか考えるクリスティーヌ。

 トミー様と相談しなければ。

 「大丈夫さ、大きくなれば、直るよ。」

 「何、言っているの?あれは、死んでも直らないものなのよ。妹娘はカトリーヌにそっくり。修道院に預けるのはどうかしらね。」

 「俺にとっては、二人とも可愛い娘なんだよ。でもクリスがそうまで言うなら……、わかった。クリスの好きにすればいいよ。そのかわり……。」

 また濃厚なキス、その後は、いつものお決まり……。また娘ができて、また姉のモノを欲しがるような子だったら、どうしよう。でも抵抗むなしく、受け入れてしまう。

 その子は、男の子だった。よかった。

 クリスティーヌは、しばらくの間だけ、修道院に妹娘を預けることにした。妹娘は泣いて抵抗し、「もう二度とお姉さまのものを欲しがりません。」と言い、姉娘は「妹が修道院に入れられるのなら、わたくしも共に行きます。」と言う。けなげね。

 それで修道院行きは、流れたのよ、一応ね。

 それからは、姉妹喧嘩はしているようだったが、仲良くしているので安心している。

 少々キツイお灸だったが効果があったようで何より。

 それから瞬く間に月日は流れ、10年が経つ。まだ、クリスティーヌはカトリーヌのカラダにいる。

 姉娘は予想通り、生前の若い頃のクリスティーヌに瓜二つの美しい娘に成長。妹娘もそれなりにカトリーヌに似て、まぁまぁの美形。

 二人は好みの男性が違うようで、恋バナして仲良くしている。よかった、姉妹でひとりの男性を取り合いして、泥沼化しなくて。

 タイプは違うが、モントオール国では有名な美人姉妹として成長したのである。

 そしてやがて、二人に縁談が殺到する。母親は腐っても鯛のサンドラ王女であったことから、モントオール王家も放っておかない。

 その縁談をトミー様は、全部断ってしまわれる。

 「娘たちには、自由な恋愛をしてもらいたい。そして愛する人と結ばれてほしい。」

 姉娘は学園の同級生と普通に恋愛結婚する。その3年後、妹娘もまた恋愛結婚するのだが、お相手は、隣国の王子様で互いに一目ぼれしたのだとか……蓼食う虫も好き好き。

 二人の息子も結婚し、たくさんの孫に囲まれながら、カトリーヌのカラダに入ったまま幸せな一生に幕を閉じる。

 「クリス、愛しているよ。今度生まれ変わってもまた、僕のお嫁さんになってくれる?」

 「トミー様、愛しています。あなた様に出会えて幸せでした。きっとまた、いつか。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

後悔などありません。あなたのことは愛していないので。

あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」 婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。 理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。 証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。 初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。 だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。 静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。 「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

君を幸せにする、そんな言葉を信じた私が馬鹿だった

白羽天使
恋愛
学園生活も残りわずかとなったある日、アリスは婚約者のフロイドに中庭へと呼び出される。そこで彼が告げたのは、「君に愛はないんだ」という残酷な一言だった。幼いころから将来を約束されていた二人。家同士の結びつきの中で育まれたその関係は、アリスにとって大切な生きる希望だった。フロイドもまた、「君を幸せにする」と繰り返し口にしてくれていたはずだったのに――。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした

今川幸乃
恋愛
カレン・ブライスとクライン・ガスターはどちらも公爵家の生まれで政略結婚のために婚約したが、お互い愛し合っていた……はずだった。 二人は貴族が通う学園の同級生で、クラスメイトたちにもその仲の良さは知られていた。 しかし、昨年クラインの妹、レイラが貴族が学園に入学してから状況が変わった。 元々人のいいところがあるクラインは、甘えがちな妹にばかり構う。 そのたびにカレンは聞き分けよく我慢せざるをえなかった。 が、ある日クラインがレイラのためにデートをすっぽかしてからカレンは決心する。 このまま聞き分けのいい婚約者をしていたところで状況は悪くなるだけだ、と。 ※ざまぁというよりは改心系です。 ※4/5【レイラ視点】【リーアム視点】の間に、入れ忘れていた【女友達視点】の話を追加しました。申し訳ありません。

処理中です...