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現代フィクション
1加藤夏美
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丸の内の商社で働く加藤夏美は、年が明けたら同僚の藤崎大吾と結婚式を控えているのだが、最近は、彼氏の仕事が忙しく、ちっとも会えないでいる。
でもこれからは、ずっと一緒にいられるので、辛抱することにしている。
仕事帰り、ウィンドウショッピングをしていると、視線を感じる。恥ずかしいけど、夏美はFカップ美女なので、しょっちゅう男性から、ジロジロ胸を見られる。
でも、今回はなんとなくだけど、視線の質が違うような気がする…。気のせいかもしれない。
新入社員の頃、忘年会で大吾と出会ったのも、バストのせいだ。違う部署の大吾なんかとはめったに会わない。夏美は人事部で大吾は営業部だったから、それが
「すごいボインだね。君、人事にいる子だろ?名前なんて言うの?」
「加藤です。加藤夏美です。」
「そうか、夏美ちゃんか。ねえ夏美ちゃん、そっちの小鉢食べなよ。うまいからさ。」
その忘年会では、飲み過ぎた。学生時代、お酒は強い方だったのに、やっぱり会社に入ったら、周りが大人ばかりだから緊張するのかしら。
それで夏美はお持ち帰りされてしまったのだ。その相手が大吾、以来、大吾と恋人関係になり3年後、結婚することが決まったのである。
半年前までは、毎週末、大吾が夏美の自宅に泊っていたのだが、結婚が決まったあたりから、ピタリと来なくなったのである。
「夏美に楽な暮らしをさせたいから、出世を目指している。結婚したら、いつでも君と愛し合えるから、今は辛抱してくれ。」
そう言われたら、納得するしかない。社内で時折、会っても
「今度、島村部長のプロジェクトに入れてもらえることになったんだ。」
嬉しそうに顔を輝かせて話してくれていたのに、ここのところ、社内で会っても知らんぷりされているのは、なぜ?
同期が営業部にいるからそれとなく聞いてみると、同期の早苗の話では、島村部長の娘が藤崎大吾にべったりくっついていて、やけになれなれしくしているらしい。
藤崎さん、嫌がっていることは丸わかりなんだけど、島村部長の手前、邪険にすることも出来ず、適当にあしらっているみたい。
そういえば、この前廊下ですれ違ったときに、大吾の腕にぶら下がっている女がいた。あの女が島村部長の娘なのか……?
でもわが社は、縁故入社はできないはず。親が役員や上級管理職である場合、履歴書のチェックをして、まず不採用のほうへ割り振りしているからだ。
聞けば、派遣社員らしいわ。派遣社員は、人事部を通さず、各部門が勝手に派遣会社と連絡して、必要な人数を確保している。単なる人手に過ぎない。人事部が扱うのは、コアな人材だから、正規の社員でもないくせに、他人の男を狙うなんて、……でも、元旦に入籍して、お正月が過ぎれば、結婚式。私たちは、晴れて夫婦になるのだから、こんなことぐらいでいちいち目くじらは立てない。妻の余裕よ。
その時はそう思っていたのだが、まさか……あんなことが起ころうとは夢にも思っていなかったのだ。
忘年会の前日、珍しく仕事帰りに大吾が夏美の家に立ち寄ったのだ。お酒を飲んでいるので今夜はできないと思っていると、いきなり押し倒される。夏美は、久しぶりでカラダが疼く。
そして、コトが済むと泊まらずにさっさと帰り支度をしている。おもむろに玄関先で振り返り
「夏美、悪いが元旦入籍はなしだ。俺は、島村部長の娘婿になることが決まってしまったんだ。これで、出世は間違いなし、夏美とは結婚できないが恋人としては続けたいと思っている。どうせ仕事を辞めないのだから、いいだろう?社内不倫なんて、誰でもやっていることさ。」
「なんですって!だったら、なぜ抱いたの?結婚できないのなら、大吾とは、もうこれで終わりよ。さよなら。二度と来ないで。」
「なんでだよ?俺が出世するのが面白くないのか?」
「あなたなんか、出世できないように人事に手を回してあげるわ。なんなら、社長にキズモノにされたって泣いて訴えてあげてもいいのよ。」
「夏美がそんな女だとは思わなかった。帰る。もうここへは二度と来てやらない!」
荒々しくドアを開け、出て行く大吾。
大吾は、夏美と別れることには躊躇していたのだ。でも島村部長の娘にしつこく言われ、「もう別れた。」と嘘を吐き続けていたのだが、いよいよ結婚式が1か月前に迫り招待状を出さなくてはならないタイミングでようやく別れ話を切り出すことにしたのだ。
島村部長の娘かえでは、全然抱いてもカラダがよろしくない。胸はまな板のように固いだけ、柔らかくもなければ、出っ張りが……ほとんどない。Aカップだと本人は言っているが、ブラジャーには隙間だらけで、ゴソゴソなのだ。だから最後に、もう一度夏美を抱きたかった。しかし、抱いて、やっぱり夏美を諦めきれないから、恋人関係を続けたいと虫のいい話をしたのだが、それが夏美を怒らせたのだ。当然だよな。いくら出世のためとはいえ、愛する女性との結婚を諦めてまで手に入れる価値があるかどうか。
3年前の忘年会、新入社員だった夏美を落としたくて、前々から狙っていたのだ。あの豊満なおっぱいに顔を埋めて眠りたい。
夏美が飲む忘年会の酒に細工をして、酔わせて、その場で襲い自分の女にしたのだ。夏美は胸だけでなくカラダもよく、俗にいう名器の持ち主だった。よくこんな女が今まで処女にいてくれたことに神に感謝したものだ。
対して、かえではあっちのほうもブカブカでしまりがない。かえでを抱くぐらいなら、自分で、こんにゃくでした方がまだマシだと思えるぐらいよくない。
俺は島村部長にババを掴まされたのだ。「将来の後継者に。」甘い誘いについ、乗ってしまったのだ。
それからはあの父娘に、蹂躙された様なものだ。だから夏美を他の男に取られたくない一心で、あんなことを言ってしまったのだ。でもできることなら、もし許されるのであれば、俺が愛しているのは間違いなく夏美ひとりなのだから、愛人として続けたいということも本心なのである。
でも、断わられてしまった。やっぱりな。
そして忘年会当日、俺と婚約破棄したことがもう社内にニュースで広がっている。夏美の周りには、若い独身の男性社員が懸命に自分をアピールしているのだ。
夏美の胸は、ヌーブラを着けているかのように揺れている。それだけでもう男をそそる。付き合ってしばらくのころ、冗談でヌーブラを買ってやったことがある。紐パンとヌーブラで一日過ごしてくれたら、キャビアを食わせてやるって約束したら、すぐ次のデートで実行してくれたんだっけ。
それで給料前だったにもかかわらず、キャッシングしてまでキャビアを食べに行った。今となれば、楽しい思い出だ。
夏美はやけ酒をあおるように、ガンガン飲みまくっている。学生時代のように飲んで何もかも嫌な事を全部忘れてしまいたい。だから今日はノーブラにしたのだ。ブラジャーを着けると苦しい。それに肩が凝るのだ。自分のバストを紐で縛り、肩で支えるから。
ブラを外した久しぶりの解放感に、身も心も解き放たれ、気持ちいい。
若い同僚は、夏美が笑うたび、何か行動をするたびに揺れるバストを見つめている。夏美のバストに触れる機会をうかがっているようだ。
「あ!ごめん。小皿を取ろうとしたら夏美ちゃんのおっぱいに当たってしまったけど、とっても柔らかかった。」
「いやん、エッチ。」
「一回一万円で一分間、触らせてくれない。」
「ばか!10万円でも嫌よ。」
「じゃあ、10秒1万円はどう?一分間で6万円になるよ。」
「ばーか!あきらめが悪いわね。だったら、前金で。」
「コラ!忘年会で何の商売してる!」
半分冗談で言ったものの、真剣に長財布を取り出す若い社員たち。
仕方なく10秒1万円で触らせることになってしまった。前からというよりは背中から抱きついて、揉みたい人が多くて、服の上からよ。と念を押し触らせることにしたのだ。
その中で触り方が一番良かった人を、逆にお持ち帰りしようと思う。男を忘れるには、新しい男を作るに限る。
学生時代の同級生しのぶちゃんがよく言っていた言葉。
1万円をもらって、次々触られる夏美、時折、サービスで「ああん。」とか言うと、さらに時間を延長してお金を払ってくれる。
集まったお金で、部署で焼き肉パーティをすることになってしまう。なぜか、人事部長が決めてしまったのだ。本当は、部長も社長も1万円で触りたかったらしいが、そんなことをすれば、たちまち白い目で見られ、スキャンダルになるから、忘年会の余興ということで、若い独身男性社員だけのお遊びということになり、収益金はなぜか人事部での懇親会費用となったのである。
人事部長は、たくさんお金が集まり満足そうにしている。だって、今日は失恋記念日だからノーブラなのよ。と言うと、さらに希望者が増える。部長なんて、鼻血を押さえながら
「加藤君、それなら10秒1万円は安すぎたね。1万5千円は取れたのに、もっと早く言ってくれれば良かったのに。」
なんで、部長にノーブラかどうか言わなきゃなんないのよ。
「社内で募金活動をするとき、これからは加藤夏美さんが一役買ってくれたら、もっとたくさん集まるね。」
あのね、それって、給料の手当でも付くの?
でも、結局その中にお持ち帰りしたくなるような男性はいなかったのだ。仕方ないわね。お正月は、Anazonでオモチャでも買って、自分で慰めようかしらね。
忘年会帰り、大吾に呼び止められる。
「婚約破棄の破棄をしたい。夏美が他の男と喋っているだけで嫉妬したよ。まして10秒1万円で胸を揉まれている姿など見たくない。頼むからもう、あんなことはやめてくれ。部長の娘との結婚は止める。会社も辞める。だからもう一度、俺とやり直してくれないか?」
「お断りします。」
「待ってよ。島村部長、なんか危ないことに手を出しているようなんだ。だから、君ともう一度最初から、やり直したい。チャンスをくれ。」
「嫌です。もう大吾の顔なんか見たくもないわ。今までタダで私を抱いてきたのだから、これからは島村部長のお嬢さんを大事にしてあげてください。」
それから、大吾は会社の中のこと、取引先のことなどをすべて話してくれた。そして今のままでは、大吾はスケープゴートにされかねないとも言っていたのだ。
「もし俺に何かあれば、これを公にしてほしい。島村部長の目を盗んで、会社の極秘資料が入っている。」
「ねぇ、何か危険なことがあるの?」
「いや、まさか消されることはないだろうと思うが、とにかく俺は年内で退社するつもりでいる。もし、再就職先が決まれば、また付き合ってほしい。」
言いようがない不安を夏美は感じながら、渡されたSDカードをスマホに仕込み、そのまま別れたのである。
それから、一週間後の金曜日の夜、お約束の部署懇親会が始まる。人事部だけでなく、監査部も合同での懇親会となったのである。いずれも社長直属の部署だから、普段は仲良くしていないが、こういう時だけは、合同でやることが多い。たいてい、社長から金一封が出るので。
でも今回は、夏美のおっぱいを揉ませた収益があったので、それで皆でワイワイがやがや騒ぐことにしたのである。
懇親会の間、スマホをマナーモードのサイレントに設定している。帰りがけに、ふと見ると無料通話アプリに大吾から着信があった。
直感的におかしいと感じる。なぜなら、大吾とは無料通話アプリで連絡を取ったことはない。お互い、アカウントは登録し合っているが、大吾とは、メールのやり取りもしていない。
別に、夏美の勤めている会社は社内恋愛がご法度と言うわけではないが、社内では極力スマホを使いたくないのである。では、普段、大吾と連絡を取っているかと言うとSMS、ショートメールサービスである。
90文字も入れられたら、たいていの用件は伝えられる。儀礼文の必要もなく、いきなり本題だから合理的で好きなのである。
だいたい大吾のメールアドレスを夏美は知らないのだ。たぶん、大吾も夏美のメアドを知らないだろう。
「夏美ちゃん、ごちそうさまでした。」
「ゴチになりました。夏美ちゃん。」
お開きになるとき、口々に夏美にお礼を言ってくれる。まだ、あの収益金に余裕があるらしく、二次会へ行きたい人は行く。
最初、夏美も二次会へ行くつもりだったのだが、どうも嫌な予感がする。さっきの無料通話アプリの着信だ。
二次会を断って、帰ろうとしたら、監査部の一ノ瀬さんが「一緒に帰ろう。方向が同じだから送っていくよ。」と言ってくれたので、ありがたくその申し出を受けることにしたのである。
一ノ瀬さんは、長身で独身、女子社員の人気の的なのだ。
なるようになれば、この人と付き合ってもアリかな?なんて、考えていると、ふいに一ノ瀬さんが
「誰かにつけられているみたいだ。振り返ってはダメだよ。」
思い当たることと言えば、大吾から預かったSDカードぐらいのこと。それにさっきの謎の着信も気になる。
焼き肉店から夏美の家までの間、ラブホ街がある。そこで思い切って、
「ねぇ、焼き肉の後のデザートを食べていきませんか?」
大胆にも夏美は、一ノ瀬を誘ったのだ。今日はノーブラではないけど、下着は高級品を着ている。決して、他人に見せられないレベルではないのだ。
「え?こんなところに美味しいカフェあったっけ?」
なに、ボケてるのよ。
「デザートは、わ・た・し。」
「……。」
何も言わず、一ノ瀬さんは、夏美を自身のコートの中に入れてくれたのだ。
部屋に着き、バスタブにお湯を張り、着ているコートを脱ごうとしたら、いきなり胸をわしづかみされて、
「夏美ちゃん、ゴチになります。」
そのまま、お湯も使わないで、最後まで。
それでコトが終わった後に、大吾となぜ別れたのか、いきさつを話す。
一ノ瀬さんは、難しい顔で聞いている。
「ここだけの話にしてくれる?監査部では、以前から、島村部長が外為法に違反しているのでは?という噂があってね。……さっき、確かに誰かに後をつけられているという気がしたが、何か関係があるのかもしれない。」
「ごめんなさい。一ノ瀬さんを巻き込んでしまって……。」
「いいよ。美味しいデザートをありがとう。」
そう言って、また、キスをしてくれる。それから、二回戦、三回戦と朝まで、少し休んでからホテルを後にして、帰宅する。
部屋の前まで送ってくれて、このまま別れるのは名残惜しいので、「お茶でも」と中へ誘う。
部屋の鍵は、どういうわけか開いていた。
恐る恐る部屋の中へ足を踏み入れると……!
泥棒?空き巣?が入ったみたいに部屋の中は荒らされていたのだ。
「け、け、けいさ……つを……。」
手が震えて、うまく番号を押せない。
代わりに一ノ瀬さんが、警察を呼んでくれたのだ。すぐにパトカーがサイレンを鳴らして、マンション前に到着、鑑識の人がドアの指紋を採取している。
夏美の部屋には、ブルーシートがかぶせられ、物々しく見える。夏美と一ノ瀬は、それぞれ警察官から事情を聴かれる。
特に被害はわからないが、大吾と二人で映っている写真が切り刻まれていたぐらいなもの。もう大吾とは、終わったので、どうでもよかったのだけど、鑑識さんから指摘されるまで忘れていたぐらい。
夏美は、さすがに今夜はマンションには泊まれないから、どこかホテルを取ろうとしたら、一ノ瀬が自分の部屋へ来る?と誘ってくれたので、ありがたく申し出を受けることにしたのである。
マンションの防犯カメラには、若い男女の姿が映っていたようだったが、誰かはわからない。まさか!大吾!? と思ったけど、大吾ではないようで。大吾なら、どこに何があるのか知っているので、部屋を荒らす必要はない。
そして、土曜、日曜と一ノ瀬とやりまくる。とりあえず不安感から一ノ瀬を求めてしまうのだ。一ノ瀬も強い。というべきか、その要求にちゃんと応えてくれる。
もうカラダは、一ノ瀬にしか反応しないぐらい彼の色に染まっていく。不思議なものね、つい10日ほど前まで、大吾と愛し合うのが当たり前だと思っていたのに、今は別の男に抱かれている。
そして、一ノ瀬さんは、今度のことが片付いたら結婚しようと言ってくれた。嬉しい。
もう夏美はマンションに帰らないで、一ノ瀬さんの家に同棲している。退社するときは、時間を合わせて、一緒に手を繋いで帰ることにしたのだが、その日に限って、一ノ瀬さんが残業になってしまったのだ。
仕方なく、スーパーへ寄って、帰ることに。
スーパーマーケットで、リンゴにジャガイモ玉ねぎ、重いものばかりをついかごに入れるが、今日は持ってくれる人がいないから、簡単なものにしようかと思うが、好きな人の帰りを、ご飯を作って待つということもおつなものであるから、ウキウキしながら精算を済ませ、スーパーを出て帰路に、途中、前のマンションがどうなったか見に行くとまだブルーシートが張られたままになっていたのである。
夏美のマンションから一ノ瀬の家まで、徒歩で移動中に信号のない交差点が一か所だけある。
右見て、左見て、よく確認してから渡る……と、急にヘッドライトが!
ドンっ!ガシャン!
ひき逃げされたようで……、遠くで救急車のサイレンが聞こえる。
でもこれからは、ずっと一緒にいられるので、辛抱することにしている。
仕事帰り、ウィンドウショッピングをしていると、視線を感じる。恥ずかしいけど、夏美はFカップ美女なので、しょっちゅう男性から、ジロジロ胸を見られる。
でも、今回はなんとなくだけど、視線の質が違うような気がする…。気のせいかもしれない。
新入社員の頃、忘年会で大吾と出会ったのも、バストのせいだ。違う部署の大吾なんかとはめったに会わない。夏美は人事部で大吾は営業部だったから、それが
「すごいボインだね。君、人事にいる子だろ?名前なんて言うの?」
「加藤です。加藤夏美です。」
「そうか、夏美ちゃんか。ねえ夏美ちゃん、そっちの小鉢食べなよ。うまいからさ。」
その忘年会では、飲み過ぎた。学生時代、お酒は強い方だったのに、やっぱり会社に入ったら、周りが大人ばかりだから緊張するのかしら。
それで夏美はお持ち帰りされてしまったのだ。その相手が大吾、以来、大吾と恋人関係になり3年後、結婚することが決まったのである。
半年前までは、毎週末、大吾が夏美の自宅に泊っていたのだが、結婚が決まったあたりから、ピタリと来なくなったのである。
「夏美に楽な暮らしをさせたいから、出世を目指している。結婚したら、いつでも君と愛し合えるから、今は辛抱してくれ。」
そう言われたら、納得するしかない。社内で時折、会っても
「今度、島村部長のプロジェクトに入れてもらえることになったんだ。」
嬉しそうに顔を輝かせて話してくれていたのに、ここのところ、社内で会っても知らんぷりされているのは、なぜ?
同期が営業部にいるからそれとなく聞いてみると、同期の早苗の話では、島村部長の娘が藤崎大吾にべったりくっついていて、やけになれなれしくしているらしい。
藤崎さん、嫌がっていることは丸わかりなんだけど、島村部長の手前、邪険にすることも出来ず、適当にあしらっているみたい。
そういえば、この前廊下ですれ違ったときに、大吾の腕にぶら下がっている女がいた。あの女が島村部長の娘なのか……?
でもわが社は、縁故入社はできないはず。親が役員や上級管理職である場合、履歴書のチェックをして、まず不採用のほうへ割り振りしているからだ。
聞けば、派遣社員らしいわ。派遣社員は、人事部を通さず、各部門が勝手に派遣会社と連絡して、必要な人数を確保している。単なる人手に過ぎない。人事部が扱うのは、コアな人材だから、正規の社員でもないくせに、他人の男を狙うなんて、……でも、元旦に入籍して、お正月が過ぎれば、結婚式。私たちは、晴れて夫婦になるのだから、こんなことぐらいでいちいち目くじらは立てない。妻の余裕よ。
その時はそう思っていたのだが、まさか……あんなことが起ころうとは夢にも思っていなかったのだ。
忘年会の前日、珍しく仕事帰りに大吾が夏美の家に立ち寄ったのだ。お酒を飲んでいるので今夜はできないと思っていると、いきなり押し倒される。夏美は、久しぶりでカラダが疼く。
そして、コトが済むと泊まらずにさっさと帰り支度をしている。おもむろに玄関先で振り返り
「夏美、悪いが元旦入籍はなしだ。俺は、島村部長の娘婿になることが決まってしまったんだ。これで、出世は間違いなし、夏美とは結婚できないが恋人としては続けたいと思っている。どうせ仕事を辞めないのだから、いいだろう?社内不倫なんて、誰でもやっていることさ。」
「なんですって!だったら、なぜ抱いたの?結婚できないのなら、大吾とは、もうこれで終わりよ。さよなら。二度と来ないで。」
「なんでだよ?俺が出世するのが面白くないのか?」
「あなたなんか、出世できないように人事に手を回してあげるわ。なんなら、社長にキズモノにされたって泣いて訴えてあげてもいいのよ。」
「夏美がそんな女だとは思わなかった。帰る。もうここへは二度と来てやらない!」
荒々しくドアを開け、出て行く大吾。
大吾は、夏美と別れることには躊躇していたのだ。でも島村部長の娘にしつこく言われ、「もう別れた。」と嘘を吐き続けていたのだが、いよいよ結婚式が1か月前に迫り招待状を出さなくてはならないタイミングでようやく別れ話を切り出すことにしたのだ。
島村部長の娘かえでは、全然抱いてもカラダがよろしくない。胸はまな板のように固いだけ、柔らかくもなければ、出っ張りが……ほとんどない。Aカップだと本人は言っているが、ブラジャーには隙間だらけで、ゴソゴソなのだ。だから最後に、もう一度夏美を抱きたかった。しかし、抱いて、やっぱり夏美を諦めきれないから、恋人関係を続けたいと虫のいい話をしたのだが、それが夏美を怒らせたのだ。当然だよな。いくら出世のためとはいえ、愛する女性との結婚を諦めてまで手に入れる価値があるかどうか。
3年前の忘年会、新入社員だった夏美を落としたくて、前々から狙っていたのだ。あの豊満なおっぱいに顔を埋めて眠りたい。
夏美が飲む忘年会の酒に細工をして、酔わせて、その場で襲い自分の女にしたのだ。夏美は胸だけでなくカラダもよく、俗にいう名器の持ち主だった。よくこんな女が今まで処女にいてくれたことに神に感謝したものだ。
対して、かえではあっちのほうもブカブカでしまりがない。かえでを抱くぐらいなら、自分で、こんにゃくでした方がまだマシだと思えるぐらいよくない。
俺は島村部長にババを掴まされたのだ。「将来の後継者に。」甘い誘いについ、乗ってしまったのだ。
それからはあの父娘に、蹂躙された様なものだ。だから夏美を他の男に取られたくない一心で、あんなことを言ってしまったのだ。でもできることなら、もし許されるのであれば、俺が愛しているのは間違いなく夏美ひとりなのだから、愛人として続けたいということも本心なのである。
でも、断わられてしまった。やっぱりな。
そして忘年会当日、俺と婚約破棄したことがもう社内にニュースで広がっている。夏美の周りには、若い独身の男性社員が懸命に自分をアピールしているのだ。
夏美の胸は、ヌーブラを着けているかのように揺れている。それだけでもう男をそそる。付き合ってしばらくのころ、冗談でヌーブラを買ってやったことがある。紐パンとヌーブラで一日過ごしてくれたら、キャビアを食わせてやるって約束したら、すぐ次のデートで実行してくれたんだっけ。
それで給料前だったにもかかわらず、キャッシングしてまでキャビアを食べに行った。今となれば、楽しい思い出だ。
夏美はやけ酒をあおるように、ガンガン飲みまくっている。学生時代のように飲んで何もかも嫌な事を全部忘れてしまいたい。だから今日はノーブラにしたのだ。ブラジャーを着けると苦しい。それに肩が凝るのだ。自分のバストを紐で縛り、肩で支えるから。
ブラを外した久しぶりの解放感に、身も心も解き放たれ、気持ちいい。
若い同僚は、夏美が笑うたび、何か行動をするたびに揺れるバストを見つめている。夏美のバストに触れる機会をうかがっているようだ。
「あ!ごめん。小皿を取ろうとしたら夏美ちゃんのおっぱいに当たってしまったけど、とっても柔らかかった。」
「いやん、エッチ。」
「一回一万円で一分間、触らせてくれない。」
「ばか!10万円でも嫌よ。」
「じゃあ、10秒1万円はどう?一分間で6万円になるよ。」
「ばーか!あきらめが悪いわね。だったら、前金で。」
「コラ!忘年会で何の商売してる!」
半分冗談で言ったものの、真剣に長財布を取り出す若い社員たち。
仕方なく10秒1万円で触らせることになってしまった。前からというよりは背中から抱きついて、揉みたい人が多くて、服の上からよ。と念を押し触らせることにしたのだ。
その中で触り方が一番良かった人を、逆にお持ち帰りしようと思う。男を忘れるには、新しい男を作るに限る。
学生時代の同級生しのぶちゃんがよく言っていた言葉。
1万円をもらって、次々触られる夏美、時折、サービスで「ああん。」とか言うと、さらに時間を延長してお金を払ってくれる。
集まったお金で、部署で焼き肉パーティをすることになってしまう。なぜか、人事部長が決めてしまったのだ。本当は、部長も社長も1万円で触りたかったらしいが、そんなことをすれば、たちまち白い目で見られ、スキャンダルになるから、忘年会の余興ということで、若い独身男性社員だけのお遊びということになり、収益金はなぜか人事部での懇親会費用となったのである。
人事部長は、たくさんお金が集まり満足そうにしている。だって、今日は失恋記念日だからノーブラなのよ。と言うと、さらに希望者が増える。部長なんて、鼻血を押さえながら
「加藤君、それなら10秒1万円は安すぎたね。1万5千円は取れたのに、もっと早く言ってくれれば良かったのに。」
なんで、部長にノーブラかどうか言わなきゃなんないのよ。
「社内で募金活動をするとき、これからは加藤夏美さんが一役買ってくれたら、もっとたくさん集まるね。」
あのね、それって、給料の手当でも付くの?
でも、結局その中にお持ち帰りしたくなるような男性はいなかったのだ。仕方ないわね。お正月は、Anazonでオモチャでも買って、自分で慰めようかしらね。
忘年会帰り、大吾に呼び止められる。
「婚約破棄の破棄をしたい。夏美が他の男と喋っているだけで嫉妬したよ。まして10秒1万円で胸を揉まれている姿など見たくない。頼むからもう、あんなことはやめてくれ。部長の娘との結婚は止める。会社も辞める。だからもう一度、俺とやり直してくれないか?」
「お断りします。」
「待ってよ。島村部長、なんか危ないことに手を出しているようなんだ。だから、君ともう一度最初から、やり直したい。チャンスをくれ。」
「嫌です。もう大吾の顔なんか見たくもないわ。今までタダで私を抱いてきたのだから、これからは島村部長のお嬢さんを大事にしてあげてください。」
それから、大吾は会社の中のこと、取引先のことなどをすべて話してくれた。そして今のままでは、大吾はスケープゴートにされかねないとも言っていたのだ。
「もし俺に何かあれば、これを公にしてほしい。島村部長の目を盗んで、会社の極秘資料が入っている。」
「ねぇ、何か危険なことがあるの?」
「いや、まさか消されることはないだろうと思うが、とにかく俺は年内で退社するつもりでいる。もし、再就職先が決まれば、また付き合ってほしい。」
言いようがない不安を夏美は感じながら、渡されたSDカードをスマホに仕込み、そのまま別れたのである。
それから、一週間後の金曜日の夜、お約束の部署懇親会が始まる。人事部だけでなく、監査部も合同での懇親会となったのである。いずれも社長直属の部署だから、普段は仲良くしていないが、こういう時だけは、合同でやることが多い。たいてい、社長から金一封が出るので。
でも今回は、夏美のおっぱいを揉ませた収益があったので、それで皆でワイワイがやがや騒ぐことにしたのである。
懇親会の間、スマホをマナーモードのサイレントに設定している。帰りがけに、ふと見ると無料通話アプリに大吾から着信があった。
直感的におかしいと感じる。なぜなら、大吾とは無料通話アプリで連絡を取ったことはない。お互い、アカウントは登録し合っているが、大吾とは、メールのやり取りもしていない。
別に、夏美の勤めている会社は社内恋愛がご法度と言うわけではないが、社内では極力スマホを使いたくないのである。では、普段、大吾と連絡を取っているかと言うとSMS、ショートメールサービスである。
90文字も入れられたら、たいていの用件は伝えられる。儀礼文の必要もなく、いきなり本題だから合理的で好きなのである。
だいたい大吾のメールアドレスを夏美は知らないのだ。たぶん、大吾も夏美のメアドを知らないだろう。
「夏美ちゃん、ごちそうさまでした。」
「ゴチになりました。夏美ちゃん。」
お開きになるとき、口々に夏美にお礼を言ってくれる。まだ、あの収益金に余裕があるらしく、二次会へ行きたい人は行く。
最初、夏美も二次会へ行くつもりだったのだが、どうも嫌な予感がする。さっきの無料通話アプリの着信だ。
二次会を断って、帰ろうとしたら、監査部の一ノ瀬さんが「一緒に帰ろう。方向が同じだから送っていくよ。」と言ってくれたので、ありがたくその申し出を受けることにしたのである。
一ノ瀬さんは、長身で独身、女子社員の人気の的なのだ。
なるようになれば、この人と付き合ってもアリかな?なんて、考えていると、ふいに一ノ瀬さんが
「誰かにつけられているみたいだ。振り返ってはダメだよ。」
思い当たることと言えば、大吾から預かったSDカードぐらいのこと。それにさっきの謎の着信も気になる。
焼き肉店から夏美の家までの間、ラブホ街がある。そこで思い切って、
「ねぇ、焼き肉の後のデザートを食べていきませんか?」
大胆にも夏美は、一ノ瀬を誘ったのだ。今日はノーブラではないけど、下着は高級品を着ている。決して、他人に見せられないレベルではないのだ。
「え?こんなところに美味しいカフェあったっけ?」
なに、ボケてるのよ。
「デザートは、わ・た・し。」
「……。」
何も言わず、一ノ瀬さんは、夏美を自身のコートの中に入れてくれたのだ。
部屋に着き、バスタブにお湯を張り、着ているコートを脱ごうとしたら、いきなり胸をわしづかみされて、
「夏美ちゃん、ゴチになります。」
そのまま、お湯も使わないで、最後まで。
それでコトが終わった後に、大吾となぜ別れたのか、いきさつを話す。
一ノ瀬さんは、難しい顔で聞いている。
「ここだけの話にしてくれる?監査部では、以前から、島村部長が外為法に違反しているのでは?という噂があってね。……さっき、確かに誰かに後をつけられているという気がしたが、何か関係があるのかもしれない。」
「ごめんなさい。一ノ瀬さんを巻き込んでしまって……。」
「いいよ。美味しいデザートをありがとう。」
そう言って、また、キスをしてくれる。それから、二回戦、三回戦と朝まで、少し休んでからホテルを後にして、帰宅する。
部屋の前まで送ってくれて、このまま別れるのは名残惜しいので、「お茶でも」と中へ誘う。
部屋の鍵は、どういうわけか開いていた。
恐る恐る部屋の中へ足を踏み入れると……!
泥棒?空き巣?が入ったみたいに部屋の中は荒らされていたのだ。
「け、け、けいさ……つを……。」
手が震えて、うまく番号を押せない。
代わりに一ノ瀬さんが、警察を呼んでくれたのだ。すぐにパトカーがサイレンを鳴らして、マンション前に到着、鑑識の人がドアの指紋を採取している。
夏美の部屋には、ブルーシートがかぶせられ、物々しく見える。夏美と一ノ瀬は、それぞれ警察官から事情を聴かれる。
特に被害はわからないが、大吾と二人で映っている写真が切り刻まれていたぐらいなもの。もう大吾とは、終わったので、どうでもよかったのだけど、鑑識さんから指摘されるまで忘れていたぐらい。
夏美は、さすがに今夜はマンションには泊まれないから、どこかホテルを取ろうとしたら、一ノ瀬が自分の部屋へ来る?と誘ってくれたので、ありがたく申し出を受けることにしたのである。
マンションの防犯カメラには、若い男女の姿が映っていたようだったが、誰かはわからない。まさか!大吾!? と思ったけど、大吾ではないようで。大吾なら、どこに何があるのか知っているので、部屋を荒らす必要はない。
そして、土曜、日曜と一ノ瀬とやりまくる。とりあえず不安感から一ノ瀬を求めてしまうのだ。一ノ瀬も強い。というべきか、その要求にちゃんと応えてくれる。
もうカラダは、一ノ瀬にしか反応しないぐらい彼の色に染まっていく。不思議なものね、つい10日ほど前まで、大吾と愛し合うのが当たり前だと思っていたのに、今は別の男に抱かれている。
そして、一ノ瀬さんは、今度のことが片付いたら結婚しようと言ってくれた。嬉しい。
もう夏美はマンションに帰らないで、一ノ瀬さんの家に同棲している。退社するときは、時間を合わせて、一緒に手を繋いで帰ることにしたのだが、その日に限って、一ノ瀬さんが残業になってしまったのだ。
仕方なく、スーパーへ寄って、帰ることに。
スーパーマーケットで、リンゴにジャガイモ玉ねぎ、重いものばかりをついかごに入れるが、今日は持ってくれる人がいないから、簡単なものにしようかと思うが、好きな人の帰りを、ご飯を作って待つということもおつなものであるから、ウキウキしながら精算を済ませ、スーパーを出て帰路に、途中、前のマンションがどうなったか見に行くとまだブルーシートが張られたままになっていたのである。
夏美のマンションから一ノ瀬の家まで、徒歩で移動中に信号のない交差点が一か所だけある。
右見て、左見て、よく確認してから渡る……と、急にヘッドライトが!
ドンっ!ガシャン!
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