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久しぶりに朝の空気が美味しいと感じる。やはり領地へ寄ってよかったと思える一日の始まり。
ロアンヌは、昨日父から聞いたモントリオール家のことは何も覚えていなかったので、後味の悪さを微塵も感じていない。それどころか、人間どこで逆恨みされるものか、わかったものではないと気を引き締める。
近所に住んでいたぐらいで、妬まれても困るっつうの。
だって、ロアンヌの責任がないところで妬まれてもね。どうしようもない。謝るのも変だし、運というか、巡り合わせというか、そういうものでしょ?
そう考えると、急に楽になった。今まで、本当にロバートかその親類縁者から「浮気者」と思われて、愛の告白っぽい脅迫っぽい手紙の内容に耐えてきたものだから、それが全然知らない人からの単なる嫌がらせなら、話は変わってくる。
領地で英気を養い、2人目を作るため、王家所有の領地に行ける覚悟は吐いたというもの。
父は第1王子のウィリアムのことを大層、気に入り、ウィリアムと乳母は領地で逗留することが決まったのだ。
リチャード殿下が気を利かせてくれて、もちろん王家の護衛は張り付くようにつくので安心できる。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
リチャードは、別の面からも捜査の手を伸ばしている。
モントリオール伯爵家のことだから、おそらく長女のカトリーヌの婚約者がいただろうから、その線からも探ることにした。今、現在の居場所はわからなくても、少なくとも、クロイセン家よりは、内情に精通していることは明らかだから。
カトリーヌと婚約していたものは、ルクセンブルク伯爵家のトーマツで、当時、同業者であったモントリオール家のカトリーヌと長男を婚約していたことを明らかにする。だが案の定、現在の居所は知らないという。
婚約破棄した当時のカトリーヌが引き取られた先のことなら、知っているというから、話を聞きだしたところ、オセアニアのメルボルン子爵家に引き取られたことがわかり、早速、メルボルン子爵家に遣いを出す。
メルボルン子爵家では、当時、跡継ぎがいなかったことから、二人の姉弟は可愛がられて、育ったという。
それでも長男のジョーンズは、なかなかのイケメンであったが、初恋の相手のことが忘れられず、婚約者がいないまま国外に仕入れに行ったまま帰らぬ人となった。
どうやら長女のカトリーヌはそのことが無念で、しかも弟の初恋の相手はロアンヌだったことから、ロアンヌのことを逆恨みになった模様。
リチャードは、ロアンヌにこのことを言えば、きっと怒るだろうなと思い、あえてロアンヌに秘密にすることにする。
だいたい伯爵家の息子がいくら一目惚れをしてしまったとしても、相手は公爵令嬢なわけなのだから、高嶺の花もいいところというもので、到底縁談の申し込みに行っても相手にされないことがオチ。
さらに家が没落してからはもう一ランク下の子爵家の息子になってしまったので、余計、縁談の相手としてつり合いが取れず、相応しくない。
ロバートは、仮にも公爵家令息だったので、ロアンヌとつり合いがとれ、婚約したというのに。
それを伯爵家位の家格で、逆恨みするなどもってのほかのこと。
ルクセンブルグ家の長女カトリーヌは、平民の行商のオトコと結婚し、今はオセアニアを離れて暮らしているという。
こうしてみるとカエルの子はカエルで、親と同じ商売の道を志すということがわかる。
とにかく今は、カトリーヌの所在を突き止めえることが急務で、そのためには、あの伝書鳩を遣おうと思っているが、ロアンヌは、同返事を書いたらいいか悩んでいるようで、「早く書くように」と、催促できないままにいる。
「親愛なるロバート
わたくしは、今、幸せです
もう、これ以上、わたくしを悩ますことはやめていただけないかしら
一時は、ロビー(ロバートの愛称)を失った悲しみで、息をするのも辛かったわ
でも、それを救ってくださったのが、今の夫、リチャード殿下に他ならないのよ
どうか、わかってください
ロビーの愛するロアンヌ」
「本当に、こんな文面を出してしまっていいのかしら?」
「いいのだ。上出来だよ。愛しているロアンヌ」
「わたくしも殿下を愛しております」
新婚旅行先とはいえ、またしても二人の間に甘いムードが立ち込める。
その夜は、久しぶりに熱くなる。ロミオメールの相手が誰だか特定できそうなことをいいことに、不安を払しょくできたわけではない。それがかえって、二人の夜を熱くさせているところもある。
「可愛いよ。ロアンヌ、俺もロロと呼んでいいか?」
「殿下のお好きなように呼んでくださいませ」
「ロロ、愛している。俺だけの妻になってくれ」
それって、おかしいのでは?とは絶対に反論しない。そこが意地悪クリスティーヌとは大違いなところ。
殿下の妻よりも、ロアンヌの夫でいてくださいとお願いしたいところなのだ。
殿下は、この先、何人もの女性と閨を共に去れるだろうが、ロアンヌにとってはただ一人の夫であり、殿方なのだ。
「イクゥゥゥー」
ロアンヌは、昨日父から聞いたモントリオール家のことは何も覚えていなかったので、後味の悪さを微塵も感じていない。それどころか、人間どこで逆恨みされるものか、わかったものではないと気を引き締める。
近所に住んでいたぐらいで、妬まれても困るっつうの。
だって、ロアンヌの責任がないところで妬まれてもね。どうしようもない。謝るのも変だし、運というか、巡り合わせというか、そういうものでしょ?
そう考えると、急に楽になった。今まで、本当にロバートかその親類縁者から「浮気者」と思われて、愛の告白っぽい脅迫っぽい手紙の内容に耐えてきたものだから、それが全然知らない人からの単なる嫌がらせなら、話は変わってくる。
領地で英気を養い、2人目を作るため、王家所有の領地に行ける覚悟は吐いたというもの。
父は第1王子のウィリアムのことを大層、気に入り、ウィリアムと乳母は領地で逗留することが決まったのだ。
リチャード殿下が気を利かせてくれて、もちろん王家の護衛は張り付くようにつくので安心できる。
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リチャードは、別の面からも捜査の手を伸ばしている。
モントリオール伯爵家のことだから、おそらく長女のカトリーヌの婚約者がいただろうから、その線からも探ることにした。今、現在の居場所はわからなくても、少なくとも、クロイセン家よりは、内情に精通していることは明らかだから。
カトリーヌと婚約していたものは、ルクセンブルク伯爵家のトーマツで、当時、同業者であったモントリオール家のカトリーヌと長男を婚約していたことを明らかにする。だが案の定、現在の居所は知らないという。
婚約破棄した当時のカトリーヌが引き取られた先のことなら、知っているというから、話を聞きだしたところ、オセアニアのメルボルン子爵家に引き取られたことがわかり、早速、メルボルン子爵家に遣いを出す。
メルボルン子爵家では、当時、跡継ぎがいなかったことから、二人の姉弟は可愛がられて、育ったという。
それでも長男のジョーンズは、なかなかのイケメンであったが、初恋の相手のことが忘れられず、婚約者がいないまま国外に仕入れに行ったまま帰らぬ人となった。
どうやら長女のカトリーヌはそのことが無念で、しかも弟の初恋の相手はロアンヌだったことから、ロアンヌのことを逆恨みになった模様。
リチャードは、ロアンヌにこのことを言えば、きっと怒るだろうなと思い、あえてロアンヌに秘密にすることにする。
だいたい伯爵家の息子がいくら一目惚れをしてしまったとしても、相手は公爵令嬢なわけなのだから、高嶺の花もいいところというもので、到底縁談の申し込みに行っても相手にされないことがオチ。
さらに家が没落してからはもう一ランク下の子爵家の息子になってしまったので、余計、縁談の相手としてつり合いが取れず、相応しくない。
ロバートは、仮にも公爵家令息だったので、ロアンヌとつり合いがとれ、婚約したというのに。
それを伯爵家位の家格で、逆恨みするなどもってのほかのこと。
ルクセンブルグ家の長女カトリーヌは、平民の行商のオトコと結婚し、今はオセアニアを離れて暮らしているという。
こうしてみるとカエルの子はカエルで、親と同じ商売の道を志すということがわかる。
とにかく今は、カトリーヌの所在を突き止めえることが急務で、そのためには、あの伝書鳩を遣おうと思っているが、ロアンヌは、同返事を書いたらいいか悩んでいるようで、「早く書くように」と、催促できないままにいる。
「親愛なるロバート
わたくしは、今、幸せです
もう、これ以上、わたくしを悩ますことはやめていただけないかしら
一時は、ロビー(ロバートの愛称)を失った悲しみで、息をするのも辛かったわ
でも、それを救ってくださったのが、今の夫、リチャード殿下に他ならないのよ
どうか、わかってください
ロビーの愛するロアンヌ」
「本当に、こんな文面を出してしまっていいのかしら?」
「いいのだ。上出来だよ。愛しているロアンヌ」
「わたくしも殿下を愛しております」
新婚旅行先とはいえ、またしても二人の間に甘いムードが立ち込める。
その夜は、久しぶりに熱くなる。ロミオメールの相手が誰だか特定できそうなことをいいことに、不安を払しょくできたわけではない。それがかえって、二人の夜を熱くさせているところもある。
「可愛いよ。ロアンヌ、俺もロロと呼んでいいか?」
「殿下のお好きなように呼んでくださいませ」
「ロロ、愛している。俺だけの妻になってくれ」
それって、おかしいのでは?とは絶対に反論しない。そこが意地悪クリスティーヌとは大違いなところ。
殿下の妻よりも、ロアンヌの夫でいてくださいとお願いしたいところなのだ。
殿下は、この先、何人もの女性と閨を共に去れるだろうが、ロアンヌにとってはただ一人の夫であり、殿方なのだ。
「イクゥゥゥー」
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