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当時のモントリオール商会の密輸事件を調べていくと、不自然な仕入れ担当者の証言に目を止める。
その担当者は、ルクセンブルグ家から派遣されてきたもので、カイル・インセントと申すもので、供述調書によると、自分がすべて仕入れているにも関わらず、その商品だけは主人の命令に従ったとある。
購買部長の権限なしで、その商品に限って、密輸で、しかもモントリオール伯爵夫妻が直接指図したなど、不自然極まりない。
密輸の噂を流したのも、この購買部長が怪しい。
リチャードは部下に命じて、このカイル・インセントの行方を追わせる。しかし、この男はルクセンブルグ家の領地で、静かに眠っていた。消されたのか?新たな容疑者が浮かび上がるたびに、今はその者はほとんどが他界している。
こうなると、ルクセンブルグ家もシロとは言えなくなってきた。今回のロアンヌに対するロミオメールとは、また違う意味で、17年前のルクセンブルグ家の動きが怪しい。
なぜ、ルクセンブルグは、長男の婚約者の家を陥れるようなことをしたのか?動機がイマイチはっきりしない。
同じ時期から商会を始め、互いに切磋琢磨してきた仲ではなかったのだろうか?
モントリオール夫妻が投獄されてから、最初は、事業協力をしていたようだが、結局、カイルのせいで、モントリオール商会の在庫のほとんどは捨て値でルクセンブルグ商会が引き取っている。
一見すると、事業協力の様にも見えるが、その実、乗っ取りと変わらない。残された幼い姉弟たちには、なす術がなかったであろう。
かといって、カトリーヌの疑いが晴れたわけではない。
でも、ロアンヌの言うとおりだとしても、カトリーヌがオセアニアから出ていないのに、ユーラシアから伝書鳩を飛ばすことなど可能かどうかも立証されていない。
早急に部下に命じて、検証してみるつもりでいる。
モントリオール家とルクセンブルグ家を調べているうちに、新たな情報が入る。それはジョーンズの乳母をしていたという女の存在に気づいたのだ。その女は、シルビア・エマニエルで、なんと、ジョーンズの乳母をする前は、トーマツの乳母でもあったということ。
それだけではなく、エマニエル夫人は、ユーラシア出身者であることがわかり、ぼんやりとした点が線で結ばれるような感覚に捉われる。
このエマニエル夫人は、いまだ健在で、しかも現住所はユーラシアの東でオセアニアと隣接しているという。
決まりだな。直感的に、リチャードは読んだ。
おそらくエマニエル夫人が共犯者なのだろう。あるいは、何も知らないのかもしれない。絵はカトリーヌが描き、それに何も知らずに協力させられているのかのどちらかだと思う。
とにかく、一度エマニエル夫人から事情を聴く必要がありそうだ。
カイル・インセントは、空振りに終わってしまったので、ここはなんとしても手掛かりが欲しいところだ。それに乳母ならば、モントリオール家とルクセンブルグ家のしがらみもおのずと知っていることだろうから、17年前の生き証人としても、ここは証言を得たいところ。
エマニエル夫人に早速、王城へ来るように招集通知を出すが、いっこうに返事が来ない。王家からの命令に背くとどうなるかわかっている立場だろうが、どうしたものかと考え込んでしまう。
それでユーラシアを治める領主に、それとなく実家に帰っているエマニエル夫人のことを尋ねることにした。
ユーラシアは、エマニエル夫人の実家があるところだが、その実家も今は廃墟に等しく、昔からの炊事の婆さんが一人、家を守っている状態だったのだ。
すると、エマニエル夫人は、病気で自分がどこの誰かもわからない状態であった。お城から招集通知が来ていることも知らず、名前を耳元で大声を張り上げても、わからない程ボケている。
決して、仮病と言った類ではなく、あれでは共犯者にもなりえないだろうと推察される。
寝たきりと言ったわけではないが、足腰もおぼつかなく、とてもあの岩場から伝書鳩を放つなど無理だと思わせる体たらく。
なんだ。また、空振りに終わってしまうのかと諦めそうになる。
今度ばかりは、ホシに近づいたと思ったのだが、ボケ婆さんでは、どうしようもないだろう。いかに共犯者が妙齢の女性だったとしても、カトリーヌはオセアニアを出たという証拠はない。
元はと言えば、ルクセンブルグだ。ルクセンブルグが妙な動きをして、モントリオール家を陥れなければ、……でも、それとロバートの死と何か関係があるのか?なぜ、今、ロバートがロミオメールを出す必要があるのか?
結局、事態は進展するどころか、後退してしまったように思える。それに今朝のロアンヌの態度によそよそしさを感じたのは、偶然だろうか?
できるだけロアンヌを刺激することは避けたい、だが、もし何かを気づいたのなら教えてほしい。今は藁にもすがりたい思いなのだから。
操作が空振りばかり、ここでロアンヌにまでそっぽを向かれたら、立つ瀬がない。
その担当者は、ルクセンブルグ家から派遣されてきたもので、カイル・インセントと申すもので、供述調書によると、自分がすべて仕入れているにも関わらず、その商品だけは主人の命令に従ったとある。
購買部長の権限なしで、その商品に限って、密輸で、しかもモントリオール伯爵夫妻が直接指図したなど、不自然極まりない。
密輸の噂を流したのも、この購買部長が怪しい。
リチャードは部下に命じて、このカイル・インセントの行方を追わせる。しかし、この男はルクセンブルグ家の領地で、静かに眠っていた。消されたのか?新たな容疑者が浮かび上がるたびに、今はその者はほとんどが他界している。
こうなると、ルクセンブルグ家もシロとは言えなくなってきた。今回のロアンヌに対するロミオメールとは、また違う意味で、17年前のルクセンブルグ家の動きが怪しい。
なぜ、ルクセンブルグは、長男の婚約者の家を陥れるようなことをしたのか?動機がイマイチはっきりしない。
同じ時期から商会を始め、互いに切磋琢磨してきた仲ではなかったのだろうか?
モントリオール夫妻が投獄されてから、最初は、事業協力をしていたようだが、結局、カイルのせいで、モントリオール商会の在庫のほとんどは捨て値でルクセンブルグ商会が引き取っている。
一見すると、事業協力の様にも見えるが、その実、乗っ取りと変わらない。残された幼い姉弟たちには、なす術がなかったであろう。
かといって、カトリーヌの疑いが晴れたわけではない。
でも、ロアンヌの言うとおりだとしても、カトリーヌがオセアニアから出ていないのに、ユーラシアから伝書鳩を飛ばすことなど可能かどうかも立証されていない。
早急に部下に命じて、検証してみるつもりでいる。
モントリオール家とルクセンブルグ家を調べているうちに、新たな情報が入る。それはジョーンズの乳母をしていたという女の存在に気づいたのだ。その女は、シルビア・エマニエルで、なんと、ジョーンズの乳母をする前は、トーマツの乳母でもあったということ。
それだけではなく、エマニエル夫人は、ユーラシア出身者であることがわかり、ぼんやりとした点が線で結ばれるような感覚に捉われる。
このエマニエル夫人は、いまだ健在で、しかも現住所はユーラシアの東でオセアニアと隣接しているという。
決まりだな。直感的に、リチャードは読んだ。
おそらくエマニエル夫人が共犯者なのだろう。あるいは、何も知らないのかもしれない。絵はカトリーヌが描き、それに何も知らずに協力させられているのかのどちらかだと思う。
とにかく、一度エマニエル夫人から事情を聴く必要がありそうだ。
カイル・インセントは、空振りに終わってしまったので、ここはなんとしても手掛かりが欲しいところだ。それに乳母ならば、モントリオール家とルクセンブルグ家のしがらみもおのずと知っていることだろうから、17年前の生き証人としても、ここは証言を得たいところ。
エマニエル夫人に早速、王城へ来るように招集通知を出すが、いっこうに返事が来ない。王家からの命令に背くとどうなるかわかっている立場だろうが、どうしたものかと考え込んでしまう。
それでユーラシアを治める領主に、それとなく実家に帰っているエマニエル夫人のことを尋ねることにした。
ユーラシアは、エマニエル夫人の実家があるところだが、その実家も今は廃墟に等しく、昔からの炊事の婆さんが一人、家を守っている状態だったのだ。
すると、エマニエル夫人は、病気で自分がどこの誰かもわからない状態であった。お城から招集通知が来ていることも知らず、名前を耳元で大声を張り上げても、わからない程ボケている。
決して、仮病と言った類ではなく、あれでは共犯者にもなりえないだろうと推察される。
寝たきりと言ったわけではないが、足腰もおぼつかなく、とてもあの岩場から伝書鳩を放つなど無理だと思わせる体たらく。
なんだ。また、空振りに終わってしまうのかと諦めそうになる。
今度ばかりは、ホシに近づいたと思ったのだが、ボケ婆さんでは、どうしようもないだろう。いかに共犯者が妙齢の女性だったとしても、カトリーヌはオセアニアを出たという証拠はない。
元はと言えば、ルクセンブルグだ。ルクセンブルグが妙な動きをして、モントリオール家を陥れなければ、……でも、それとロバートの死と何か関係があるのか?なぜ、今、ロバートがロミオメールを出す必要があるのか?
結局、事態は進展するどころか、後退してしまったように思える。それに今朝のロアンヌの態度によそよそしさを感じたのは、偶然だろうか?
できるだけロアンヌを刺激することは避けたい、だが、もし何かを気づいたのなら教えてほしい。今は藁にもすがりたい思いなのだから。
操作が空振りばかり、ここでロアンヌにまでそっぽを向かれたら、立つ瀬がない。
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