死者からのロミオメール

青の雀

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22.

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 その夜、ロアンヌは領主の館で不思議な夢を見る。白い象がロアンヌの右脇の下から入って受胎をする夢。

 先ごろ、フランシスコを産み、まだ1度もリチャードとシていないのに?でも、不思議と不快感はなく、さりとてセックスをしたときのような激しい快感もなかった。ただ、とても幸せな気分を味わった夢で緩やかだが、エクスタシーを感じたことは確かなこと。 

 出産後、まだ月のものは来ない。王都を出るとき、フランシスコに初乳をのませたばかりで、まだ授乳中とカラダが反応しているはず、それなのに、不思議な夢は幸福感をもたらしてくれた。

 なんともいいようがない温かな優しい、いい気分になったのだ。

 もう一人産んでもいいかなぁ?なんて、気楽に考えてしまう。でも、次の子は、リチャードの子供ではない。白い象の子供なんて……人間である保証がないというのに、それでも産みたいと思うところの不可思議さ。

 この子を産んだら、リチャードと離縁され、お城を追い出されることになっても、やっぱりどうしても産みたいと思ってしまう。

 どうしてか、わからない。

 白い象の子なのに、象の出産期間は、650日、およそ2年弱かかるのに、その子は、なんと1か月で出てきた。

それで、王家に知らせず、クロイセンの子として、育てられることが決まる。フランシスコとは、1か月半しか誕生日が変わらない。

 父は、ロアンヌの話を全て信じてくれて、右脇の下から生まれた子供に、ホワイトと名付けてくれた。

 ホワイトは生まれ落ちたその時から、両脚でしっかりと大地を踏み、

「天上天下、唯我独尊」



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 結局、カラダを治すためのお里帰りの期間は、3か月にも及ぶことになった。ホワイトが可愛らしすぎて、離れがたかったというところが本音だけど、ホワイトの存在は、王家には秘密のことなので、一緒に帰った騎士にも、緘口令を敷く。

 そもそもリチャードから命令されて、付いてきた騎士たちは、ホワイトのことを、どこか親戚の子供としてしか思っていないようなので、安心はしているが、油断してはいけない。

 その心配は、杞憂のものとなる。なぜなら、ホワイトは生後2か月に見えない。どう見ても2歳時か3歳児並みの大きさをしていて、活発に動き回っているのだから。もう、この男の子がクロイセン家の跡継ぎになることに疑いの余地を挟むものはいない。

 リチャードがロバートのことを亡き者にしようとしていたことなど、夢にも思わなかったからで、それを知ってから、もう抱かれたいとは思わない。

 いっそ、このまま離縁して、領地に引っ込むべきかも視野に入れている。

 そんな時、王都でロバートそっくりの若者が記憶を失った状態で発見されるという情報が入った。

 それで、慌ててクロイセン領を後にするロアンヌ。先にリチャードに見つかっては、殺されかねないから。もし、もうすでに亡き者にしていたのなら、今度こそ、離縁してやる!

 後ろ髪をひかれる思いでクロイセン領を後にするロアンヌ。でも、出かけにホワイトにキスをしようと顔を覗き込むと、

「行ってらっしゃい。お母さん、王都までの2番目の橋はもろく流されそうになっているから、そこを渡らずに、遠回りをした方がいいですよ」

 なぜか忠告まで受けてしまったのだが、生後2か月で喋るなんて、早すぎませんか?それも幼児言葉ではなく、大人の言い方をするなんて。親ばかと言われようが、なんと言われようが、ホワイトの言葉を信じるしかない。

 それで御者に2番目の端を渡らないように忠告して大回りをして行って、結果的には良かった。後から2番目の端を渡った人たちは、大雨で増水していた河の中に落ち、流されて死んでしまったものが大勢いたと聞く。

 なぜ、ホワイトは見てきたようなことを言ったのか、わからない。ホワイトのことは、不思議だらけだけど、初めて、乳母に任せず、自分で母親をやろうとした子供なので、可愛くて仕方がない。

 目の中に入れても痛くないと思える子供に、ロアンヌやクロイセン領の人々はすっかりメロメロになっている。

 幸い、王都に着いたとき、まだロバートに似た男性は殺されていなかった。でも、城の地下牢に放り込まれた男性を見て、ロアンヌは激怒する!

「どうして!?ロバート様かもわからない男性を、こんな薄暗い地下牢に閉じ込めたの?命令を下したのは誰?リチャード殿下なの?」

 すごい剣幕で詰め寄るロアンヌを前に牢番はタジタジとなる。

 そこへリチャードが来て、

「どうもハッキリしないのだ。ロバートのような要望にも見えるが、別人のようにも見える」

 ロアンヌは、恐る恐る牢の鉄格子に近づくと、確かにロバートに似ているが別人のように見える。

 そこで、ふぅーっとため息を吐き、振り返って、牢番にこの男性のひげをそるように命じて、地下牢を後にした。

「やはりロアンヌも、あれはロバートではないと見たか?」

「ええ、そうね。あの方は、ロバート様ではないわ」
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