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第1章
4.手芸
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真理子ことルミアマリーゼは、この世界に転生してから、気になっていることがあった。それは、どこからともなく聞こえてくる電子音らしきチャリン音。前世、メールや何か珍しいニュースが入った時によくなっていたものと同じ音。その正体をいくら探してもどこにもないから、余計に気持ちが悪い。
でも、その音が聞こえているのは、どうもルミアマリーゼだけのようで、メイドに聞けないでいる。
こういう時こそ、お祖父ちゃんがいてくれたら便利なのに……、でも、あれ以来何度お祖父ちゃんを呼び戻そうとしても失敗ばかりでいい加減、心が折れてしまいそう。
まあ、いいや。そのうちわかるだろう。
それから何日か経過してから、お母様が暗い顔でまた訪ねてこられた。どうも、麻里子は、このお母様のことに関して、変に気を遣ってしまいがちで、苦手なタイプの一人であった。それというのも、おそらく全盛の真理子と同い年ぐらいではなかろうか?という年齢から来るものだということらしい。
前世は、社畜と呼ばれるようなOLだった真理子に対して、このお母様は偉そうに指図はするが、自分おひとりでは何一つできない。できることはお父様の夜伽ぐらいなもので、それが前世、処女のまま逝った真理子の癪に障るところでもあるのだ。
「あのね。ルミアマリーゼちゃん、お父様にルミアマリーゼちゃんが、この前作っていらしたランジェリーのことを言ったらね。ウチの娘は天才か!って話になってね。それでね……」
この辛気臭いところが嫌いなのよ。さっさと言えって!
「それでね……、やっぱりお母様とおそろいのランジェリーを作っていただけないかしら、と思ってね……」
「あら、そんなこと。でも、お母様なら大人なんだから、ご自分の下着ぐらい3歳の娘に作らせなくても、レースでパッパッと作っちゃえばいいことではございませんか?」
「……。この前も、思ったのだけど……その……レースって、いったい何の競争かしら?」
「へっ?」
これには、麻里子も驚いてしまって、ここまでの天然ボケは、前世でも見たことがないレベル。
いや、ひょっとしたら、この世界にはレース編みすら存在していない未開の世界なのかもしれない。
いや、待てよ?ひょっとすれば、これはビジネスチャンスになるのではないかな?パンツもなければ、レース編みも知らないとなると、女性に下着とレース編みを普及させたら、一大産業に発展するではないか!
その時、またあの妙な電子音、チャリンが聞こえたような気がしたけど、今はそれどころではない!
神様やお祖父ちゃんは、聖女様として、幸せに何でも思うとおりに生きればいいと言ってくれたことを思い出す。
でも、肝心のルミアマリーゼは、若干3歳児、この小さなお手手で、レース編みをしたところで、たかが知れているというもの。
もっと大人の手に近づいてからでも遅くはないはず。子供なんて、あっという間に大きくなったような記憶があったから、のんきに考えるが、このことだけはお父様に一度、相談した方が無難かもしれない。
お母様みたいな天然ボケには、とても相談できないもの。でも、その前にゴムの木を栽培しなければ……やることが、たくさんあり過ぎて、何から手を付ければいいかわからない。
軽いめまいを感じたからと、お母様を退室させて、その後、公爵邸にある図書室に入る。図書室の存在は、転生した初日に、新しいメイドに一通り案内させたので、場所は知っていた。
天井には天窓があり、そこが唯一の灯かりでもある。高さは3階建てぐらいあり、吹き抜け構造になっている。普段は鍵がかかっているものの、執事のセバスチャンに言えば、すぐ鍵を渡してくれ、ろうそくに火を点けて、案内までしてくれたのだ。
左右に壁伝いにらせん状の階段がそれぞれあり、それが右回りのものと、左回りの者がそれぞれにある。梯子を上って、本を取るにすると、あまりにも危険なので、本を取りやすいような仕様が施されているというわけ。
もう少し、ルミアマリーゼが大きくなれば、その階段を使って、本の近くまで行くことができるかもしれないけど、今はあまりにも幼く小さいので、階段を使うことは難しい。
「どういった御本をお探しなのでしょうか?」
「ゴムの木の本を探しているのよ」
「ごむ?でございますか……?」
「栽培方法とか、種をどこで入手できるのか、などが載っている本をあれば、いいなと思って」
「はぁ?」
「たぶん、南方の温かいところで育つ植物だと、思うのだけど……?」
「ああ、それでしたら2階の右端に合った書架にその関連の本が確かにございましたはずで、どれ、見て参りましょうか」
セバスチャンは、らせん状の階段を器用に上がっていき、その後をルミアマリーゼはついて行くことになった。
「お嬢様は、下でお待ちを……」
と言われても、素直に下で待っているわけにはいかない。もし、セバスチャンが頓珍漢な書物を手に取ろうものなら、諫めなくては、何度も書架と机を往復させては申し訳ないから。
恐縮しているセバスチャンをしり目に机のところまで本を運んでもらうことにした。
でも、その音が聞こえているのは、どうもルミアマリーゼだけのようで、メイドに聞けないでいる。
こういう時こそ、お祖父ちゃんがいてくれたら便利なのに……、でも、あれ以来何度お祖父ちゃんを呼び戻そうとしても失敗ばかりでいい加減、心が折れてしまいそう。
まあ、いいや。そのうちわかるだろう。
それから何日か経過してから、お母様が暗い顔でまた訪ねてこられた。どうも、麻里子は、このお母様のことに関して、変に気を遣ってしまいがちで、苦手なタイプの一人であった。それというのも、おそらく全盛の真理子と同い年ぐらいではなかろうか?という年齢から来るものだということらしい。
前世は、社畜と呼ばれるようなOLだった真理子に対して、このお母様は偉そうに指図はするが、自分おひとりでは何一つできない。できることはお父様の夜伽ぐらいなもので、それが前世、処女のまま逝った真理子の癪に障るところでもあるのだ。
「あのね。ルミアマリーゼちゃん、お父様にルミアマリーゼちゃんが、この前作っていらしたランジェリーのことを言ったらね。ウチの娘は天才か!って話になってね。それでね……」
この辛気臭いところが嫌いなのよ。さっさと言えって!
「それでね……、やっぱりお母様とおそろいのランジェリーを作っていただけないかしら、と思ってね……」
「あら、そんなこと。でも、お母様なら大人なんだから、ご自分の下着ぐらい3歳の娘に作らせなくても、レースでパッパッと作っちゃえばいいことではございませんか?」
「……。この前も、思ったのだけど……その……レースって、いったい何の競争かしら?」
「へっ?」
これには、麻里子も驚いてしまって、ここまでの天然ボケは、前世でも見たことがないレベル。
いや、ひょっとしたら、この世界にはレース編みすら存在していない未開の世界なのかもしれない。
いや、待てよ?ひょっとすれば、これはビジネスチャンスになるのではないかな?パンツもなければ、レース編みも知らないとなると、女性に下着とレース編みを普及させたら、一大産業に発展するではないか!
その時、またあの妙な電子音、チャリンが聞こえたような気がしたけど、今はそれどころではない!
神様やお祖父ちゃんは、聖女様として、幸せに何でも思うとおりに生きればいいと言ってくれたことを思い出す。
でも、肝心のルミアマリーゼは、若干3歳児、この小さなお手手で、レース編みをしたところで、たかが知れているというもの。
もっと大人の手に近づいてからでも遅くはないはず。子供なんて、あっという間に大きくなったような記憶があったから、のんきに考えるが、このことだけはお父様に一度、相談した方が無難かもしれない。
お母様みたいな天然ボケには、とても相談できないもの。でも、その前にゴムの木を栽培しなければ……やることが、たくさんあり過ぎて、何から手を付ければいいかわからない。
軽いめまいを感じたからと、お母様を退室させて、その後、公爵邸にある図書室に入る。図書室の存在は、転生した初日に、新しいメイドに一通り案内させたので、場所は知っていた。
天井には天窓があり、そこが唯一の灯かりでもある。高さは3階建てぐらいあり、吹き抜け構造になっている。普段は鍵がかかっているものの、執事のセバスチャンに言えば、すぐ鍵を渡してくれ、ろうそくに火を点けて、案内までしてくれたのだ。
左右に壁伝いにらせん状の階段がそれぞれあり、それが右回りのものと、左回りの者がそれぞれにある。梯子を上って、本を取るにすると、あまりにも危険なので、本を取りやすいような仕様が施されているというわけ。
もう少し、ルミアマリーゼが大きくなれば、その階段を使って、本の近くまで行くことができるかもしれないけど、今はあまりにも幼く小さいので、階段を使うことは難しい。
「どういった御本をお探しなのでしょうか?」
「ゴムの木の本を探しているのよ」
「ごむ?でございますか……?」
「栽培方法とか、種をどこで入手できるのか、などが載っている本をあれば、いいなと思って」
「はぁ?」
「たぶん、南方の温かいところで育つ植物だと、思うのだけど……?」
「ああ、それでしたら2階の右端に合った書架にその関連の本が確かにございましたはずで、どれ、見て参りましょうか」
セバスチャンは、らせん状の階段を器用に上がっていき、その後をルミアマリーゼはついて行くことになった。
「お嬢様は、下でお待ちを……」
と言われても、素直に下で待っているわけにはいかない。もし、セバスチャンが頓珍漢な書物を手に取ろうものなら、諫めなくては、何度も書架と机を往復させては申し訳ないから。
恐縮しているセバスチャンをしり目に机のところまで本を運んでもらうことにした。
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