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4.縁談

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 エスペランサ家には、続々と縁談が舞い込み、精神年齢60歳の俺には、迷惑としか言いようがない。

 日本にいた頃の俺は、上官の娘と見合い結婚したから、今度はできれば、愛し愛される関係で結婚したいと思っている。

 妻の名は美咲で、つまらない妻だった。マグロという奴でナニをしても反応がない。結婚初夜は、処女であったが、御大層に守っていてもこれでは、木偶の坊を抱いていた方がマシだと思える女だった。

 上官に押し付けられ目問わされた結婚だった。それで仕方なく俺は外で女を作る。素人女ではない。プロのコールガールだ。金は高くついたが、感度が高い女が多い。そのコールガールを抱き潰しては捨て、また抱き潰すまで抱く。を繰り返し、なんとか性犯罪をせずに性欲処理していく。

 若い男が妻とのセックスに満足できないなら、外でヤるしかない。素人女を相手にすると、結婚してくれとか、子供ができたとか、でいろいろ面倒ごとが起きる。同僚で、浮氣離婚が原因で何人も出世コースから脱落していった奴らを見ている。

 もっとも、俺の場合は、妻とのセックスが不満でロクに満足できない捌け口をプロの女に求めたのだから、浮氣でも何でもない。強いて言えば、カラダだけの関係だったから、後腐れも何もない。

 妻との間に、娘を一人儲けている。休みの日には、家族3人で外出し、帰りは必ず外食にした。世間から見れば、絵に描いたような幸せに見えただろうが、それはまさしく絵に描いた餅に過ぎなかったわけで、決して幸せな人生だったとは、言い難い。

 おれは結婚するまでは、弟妹のために働き、結婚してからは妻子のために出世したといっても過言ではない。

 よくコールガールの腹の上で、そんなことを考えていたものだと自重気味に思い出す。

 そして今は、エスペランサ怪我俺の相手として選んだ男とお茶を飲んでいる。逝ってみれば見合いなのだが、俺は見合い結婚は、日本で懲りているので、辟易している態度をわざととっているが、両親も相手の男とその両親には、それが全く通じていないということだ。

「シャルロット嬢、ご趣味は?休日は何をしてお過ごしですか?」

 うーん。こういう時は、無難に……なんといえば、いいのか?本当のことを言うべきか?チラリと両親を見上げるとニコニコ顔をしている。

 どうせ断るのだから、いや、待てよ……、この世界に女性から縁談を断るというのはアリか?まさか、何も言わなければ、このまま、結婚させられてしまう?ウソだろ……、嫌だ!

「はい。筋トレが趣味で、ヒマさえ見つければ筋肉をつける運動ばかりをしております」

 さっきまでの和やかムードが一変して、そこにいた5人全員の顔が引きつったことを見逃していない!どうだ。こんな女はイヤだろ?

 それでも相手の男性は、くらいついてくる。まったくしつこい男だなぁ。

「では、シャルロット様は、どちらかと言えば、筋肉質の男性がお好みですか?」

「はい。わたくしよりも強い男性でなければ、抱かれたいなどと思いませんわ」

 これには、エスペランサ夫人がいち早く反応して、小声で叱責を受ける。

「はしたない!抱かれたい、だなんて口にしちゃダメよ」

「ほう、では一手、お手合わせ願えませんか?もし、私が勝てば、今宵、シャルロットは私のモノとなる。そのお約束で間違いありませんか?」

「いやいや、そんな約束をそもそもしていませんから」

 いくら抵抗しようとも、相手の男は、今宵、シャルロットを好きに甚振っていることを妄想しているようで、舌なめずりをしている。気持ち悪い。

「いやいや、それはシャルロットのいつもの冗談ですよ。シャルロットはご存知の通り、5年前にクリストファー殿下の浮気により、婚約破棄された身でございますから、まさか乙女を手籠めにするなど、思っているわけではおられませんよね?あはは」

 笑いながら父エスペランサ公爵が助け舟を出してくれるも、相手の男は妄想から覚めないでいる。
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