姉の持ち物はすべて妹のもの。それなのに、玉の輿!? 旦那様を渡しなさいよ！

妹は病気？

　王宮でのパーティがあった時のこと

　「侯爵令嬢クラリス、貴様との婚約は破棄して、妹のレイナと婚約する。」と宣言されてしまった。
　しかも腕には、レイナをぶら下げている。ロレッド様は侯爵家の嫡男、つい3か月ほど前に婚約したばかりだ。

　「なぜでございますか？」

　「それは、貴様がレイナを虐めていたからではないか？レイナから相談を受けている間にレイナのことが哀れに思い、好きになってしまったのだ。」

　「そうですか、それでは妹レイナのことは宜しく頼みますわね。」

　なんという理不尽な理由。それもレイナの戦略である。

　私の持っているものは、昔からなんでも欲しがり、奪い取って行った。ドレスでもアクセサリーでも、人形でも。
　私が文句を言うと、決まって、レイナは

　「お姉さまは、ずるい！お姉さまだけがいつもいいモノを持っていて、それを渡してくれないお姉さまに虐められている。」とふてくされ、泣きわめいてしまうのだ。

　幼い頃に母を亡くしてから、ずっとそうである。母はクラリスだけを愛していて、自分はほったらかしにされたと思い込んでいる。レイナを産んでからの母は、産後の肥立ちが悪くレイナの世話ができずに死んでしまっただけなのだが、嫉妬心からか、ひがみ根性からかはわからない。

　父が、またわたくしのところへ縁談を持ってきた。どうせ、何人縁談を持ち込んでもまた、レイナに奪われてしまうというのに、この父ローンバルト侯爵の目は節穴だなと思う。

　次の婚約者が決まった、たいしてさえない男。伯爵家の三男坊

　私が持っているものが欲しいだけで、その持ち物を好きでも愛しているわけではない。
　手に入った瞬間、興味を失くしてしまうのだ。そして、その後また、私が持っているものに興味を移していく。はっきり言えば、一種の精神病なのだろう。

　かわいそうにロレッド様も、ただ捨てられていく存在だけなのに、レイナの本質を見ていないのですね。

　次の伯爵家の三男坊もレイナの「頂戴」の癖が出て、婚約破棄されてしまった。別にいいんですよ。向こうは侯爵の家督が欲しかっただけで、婚約したようなものですから。

　でも、その破棄の理由がまた、妹レイナを虐めているからには、正直なところ参った。

　「レイナ、ロレッド様という婚約者がいるのに、なぜまた伯爵家の三男坊に相談したのですか？」

　「だって、ロレッド様がレイナを虐めるんですよ。クラリスならこれぐらいのことできた。なぜレイナはできないとか、そう言って、お姉さまとわたくしを比べて虐めるのよ。お姉さまの婚約者はいい方ばかりだから、その方に少し相談しただけですわ。」

　「ロレッド様と婚約破棄したいのなら、違約金を払わなければなりませんよ。」

　「なんで虐められているわたくしがお金を払わなければなりませんの？」

　「婚約するということは、そういうことです。」

　父がまた、クラリスに縁談を持ってきたのだ。今度は侯爵家の次男ピエール様だ、この人も侯爵の家督狙いであることは、明らか。レイナは、ロレッド様と婚約破棄しなければ、ピエール様に相談もできないだろうけど、そこをいとも簡単に乗り越えてしまうのが、我が妹レイナなんだけど、ロレッド様とは、どうなっているのか見当もつかない。

　父は、今度の婚約がもし、ピエール様から破棄されるようなことがあれば、勘当する。と言ってきた。それを言うなら、レイナに言え、というのに、本当、わかっていない。

　クラリスには、実は相思相愛のお相手がいる。以前、レイナがいないときにたまたま出たパーティで知り合った男性である。
　ずっと、手紙でやり取りをしていたのだが、この度、書面にて婚姻届けが送られてきてサインをして、送り返したら、いつこちらへ来るのかと催促があったばかりだった。

　お相手のことは、父にも、もちろん妹レイナにも秘密にして言る。言えば、きっとレイナは欲しがり、父は政治的に利用しようとするからである。

　それで、だまって家を出ていくことにした。家人が寝静まった頃を見計らい、スーツケースとへそくりを持って、どうせ、また勘当になるのだから、今出て行っても同じでしょ。置手紙をして、そっと、家を出た。レイナは高いびきをかいている。

　やっと、自由になれた。国境沿いまで馬を走らせた。迎えに、彼が来てくれた。私たちは抱き合い、キスをして彼の住む館まで行った。

　次の日、クラリスがいないことにレイナが騒ぎ出した。
　
　「お姉さまが、誘拐された。お姉さまがレイナを置いてどこかへ行くはずがございません。」

　わざわざ置手紙をしていったのに、バカじゃない？まあ、バカだとは思っていたけど。

　クラリスの行き先は、隣国の第3王子様のところ、クラリスは、第3王子の夫人となりました。