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晴れ女
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辺境伯令嬢クリスティーヌは、王都の教会で聖女かどうかの認定式に参加するため、王都へ赴いた。15歳の時だった。
「お母様の体調が悪い時に、あまり出向きたくないのに、仕方ないわね。この国でそういう決まりになっているものだから、さっさと行って、さっさと帰りましょう。」
父と二人で、馬車で向かった。
教会に着いた時、すでに同い年の貴族令嬢がたくさんいた。
皆、目いっぱい着飾っている。もし、聖女と認定されれば、すぐさま王太子殿下の婚約者となれるから、そうなれば家も領地も安泰になる。
クリスティ-ヌにとっては、どうでもいいことだった。
王太子には、興味がない。クリスティーヌは、一人娘だから将来、婿を取らなければならない。もし、嫁に行くことになれば、従兄弟のうちの誰かが領地経営することになるからだ。
もし、好きな相手が見つかれば、それも吝かではない。好きでもない王太子との結婚はありえないことと思っていた。
クリスティーヌの順番が回ってきた。水晶の前に手をかざした途端、王都中がまばゆい光に包まれて、まるで聖女誕生を祝福しているような陽気になった。
すぐさま王太子の婚約者にされた。
「いやいや無理。」と言っているにもかかわらず、教会が囲い込みを始めた。
父がすぐ、国王陛下に嘆願を申し入れ、そのまま王都の学園には入学せず、辺境伯領の学園に入学して、卒業するまでは、王都へ赴かないことになった。
国王陛下は、クリスティーヌの母の事情をよくご存じだったので、何もおっしゃいませんでしたが、アレク王太子は,不敬だといい、クリスティーヌを疎んじていた。
18歳になり王都へ赴き、婚約披露パーティが開かれた。
アレク王太子殿下とは、ほぼ初対面であった。
「辺境伯令嬢クリスティーヌ、貴様との婚約はしない。聖女のくせに王都を不在にするとは、不敬だ。俺の妻は、聖女でなくともよい。」
「承知いたしました。では、この婚約はなかったものとして、辺境伯領へ帰ります。ごきげんよう。」
カテーシーで礼をして、今、降りたばかりの馬車に乗った。
国王陛下、側近たち、教会関係者は、慌てられたご様子でしたが、クリスティーヌは構わず馬車を走らせた。
クリスティーヌが王都を離れた途端、雨が降り続き止まなくなった。聖女様を疎んじたことが、神の怒りに触れたのだ。
そんなことになっているとは、つゆ知らずクリスティーヌは
「相変わらず、いいお天気ね。」と言いながら、馬車を走らせていた。
「好きでもない王太子殿下と婚約しなくて、良かったわ。」
「でもずいぶん無礼で、いけ好かない王太子殿下だったわ。もう二度とお会いしたくないわ。」
その頃、王都では
「祟りだ。祟りに違いない。聖女様を軽んじ、疎んじられたから、神の怒りだ。神の祟りだ。」と大騒ぎになっていた。
王都の民は、降り続いている雨に天を仰いで、お許しを。と祈りを捧げている。
国王陛下は、王太子に対して
「聖女様には、聖女様なりの事情があったのだ。決して不敬で、王都を不在されていたわけではないのだ。アレクよ。それにしても言い方というものがあろう。わざわざ王都まで、出向かれた方を追い返すような言い方をして、わしの育て方が間違っていたのか?」
それから1か月が過ぎた。まだ、雨は降り続いている。王都に隣接する山や里、その他の村や町まで、雨が降り続いている。
辺境伯領以外の王国領すべてで雨が降り続いている。
王都の民は、諦め、いち早く王都を出たものがいるが、行けども、行けども晴天の地にたどり着けない。
教会関係者は、神へ祈りを捧げ続けるも、一向に雨は止まない。
困り果てた教会関係者は、騎士団を伴い、聖女様をお迎えに上がることに決めた。王太子との婚約がなくなった今、どう説得して王都へ来てもらおうか、頭が痛いところだ。
国王陛下がついに決断された。
「アレクよ。そちを廃嫡することとした。雨が降り止まぬ原因を作ったのは、お前だ。」
「待ってください父上。雨と婚約破棄は関係ないのでは?」
「貴様、何を言っているのだ!この期に及んで、雨が止まないのは、貴様のせいだろうが!アレク。お前などもう息子でも王太子でもない。さっさと消え失せろ。」
「第2王子カイルに命じる聖女クリスティーヌ様と婚約し、この地に晴天をもたらすのだ。さすればカイルよ。そちに王位継承権を渡す。」
「え!でも、私には、公爵令嬢の婚約者がおります。」
「そんな女、さっさと婚約破棄してしまえ。」
第2王子は、悩んで国を出た。「それでは、兄上と同じじゃないか。」と口が裂けても言えなかった。
王都に住む貴族たちも、降り続ける雨に、なすすべもなくいったん領地へ帰ることにした。
教会は、騎士団を伴って、聖女様がいらっしゃる辺境伯領をめざした。
道が雨でぬかるんでいるため、思うように馬が走らなかった。
本日も晴天なり。最近、雨が降らないことに疑問も持たないクリスティーヌ
「あのバカが婚約破棄してくれたおかげかしらね。」
クリスティーヌは、聖女と認定されたあの日から毎日欠かさず、神様へ祈りを捧げている。
今日は、領地内へ行く予定だ。「神のご加護を」とクリスティーヌが言えば、皆喜んでくれる。
実際、豊作になるからだ。
とある日、一人の騎士がボロボロのドロドロになって、国境を越えてきた。聞けば、クリスティーヌが王都を出た日から、今もなお雨が降り続いているそうだ。
民は、神の祟りだ、神の怒りだ。と騒ぎ、晴天を求め移動中らしい。
とにかくクリスティーヌは、その騎士を風呂に入れ、着替えをさせ、手当てと食事を与えた。はじめ恐縮していた騎士だが、熱心にクリスティーヌが勧めるので素直に従った。
「聖女クリスティーヌ様、ありがとうございます。わたくしは、王国騎士団長のクロードと申します。実は、王都へお戻りいただくため、馬を走らせてきました。途中、馬がぬかるみに足を取られ、馬を捨て走って参った次第でございます。」
「もう王都へは二度と参りませぬ。また王太子殿下とは二度とお会いしたくありません。」
「そうおっしゃると思っておりました。わたくしもここへ来るまでは、なんとか聖女様をご説得し、王都へお戻りをと願っていましたが、ここへ来て、クリスティーヌ様からおもてなしいただき気が変わりました。わたくしも何かこの地で、お役に立ちたいと存じます。」
「ありがとうございます。辺境の地でございますから、お仕事はいくらでもありますわよ。」
その後も、ぞろぞろと騎士団が到着した。クロード様が仰せになったかは存じませんが、皆一様に「もう、王都へは帰りたくない。」と口をそろえて言いました。
そのうち教会関係者も教会ごと移住してきた。「聖女様と共におります。」
王都の雨騒ぎで、領民が増えました。その後も王都から歩いて?民が移動し続け、少々手狭になってきた。
隣の領地の伯爵やら子爵が、我が家へ来て、領地の管理を依頼してきた。かわりに辺境伯領に、住みたいのだそうな。そんな変な話ある?
でも父上が承知したから、その領地へクリスティーヌが行くと、雨が止んだらしい。
こうして、我が領土は、王国の3分の1にまでなった。婚約破棄から半年が経った。
第2王子のカイル様がいらっしゃった。
私を王都へ連れ戻し、婚約するように国王陛下から命ぜられたそうだ。
しかし、彼は公爵令嬢の婚約者を愛していたので、躊躇していた。
「カイル王子殿下、それなら、我が領地の一部にお住まいになってはいかがですか?公爵令嬢様と駆け落ちをなされば、よろしいのです。」
なんと、公爵家ともども領地に引っ越してこられたので、こちらで結婚式を挙げられることになった。
「クリスティーヌ嬢のおかげです。もう、父上から婚約破棄をしろと言われたときは、絶望感でいっぱいになりました。まさか、こんな展開になるとは、夢にも思っていませんでした。さすがに神に愛された聖女様ですね。」
公爵様のお話によると、王都と周辺の土地では、今も雨が降り続き、川は氾濫し橋も流され復旧もできず、畑は、作物が根腐れを起こして、枯れ果てているそうです。隣国からの輸入もできず、貧困と洪水に王都は疲弊しきっているらしい。
公爵様は、「今こそ挙兵し、王都を占拠すべきだ。」とおっしゃいます。
騎士団長のクロード様も
「この現状を招いたのは、確かに王太子の、王族の傲慢からです。神をも恐れぬ行為が招いた結果です。クリスティーヌ様、ご決断ください。」
教会の皆様も、頷かれ、一同が期待した目をクリスティーヌに向けている。
そんなこと、私が決めるの?父上のほうを見た。
父上も頷き、
「クリスティーヌが、頷けば、それは神のご意思となろう。」
「わかりました。これだけ雨が続いているのは、神の御心が今の王族ではこの国の行く末を任せられないとの、ご判断があるからなのでしょう。我々には、神様がついておられます。神様と共に、挙兵いたしましょう。クロード様、ご準備をお願いいたします。」と頭を下げた。
辺境伯領は、一気に活気づいた。
挙兵準備のため、公爵様と筆頭として、父上と貴族様たちが作戦会議をされることになった。
王都に向けて、聖戦(?)軍が行軍した。クリスティーヌは、最後尾を移動している。不思議なことに、我が軍が進行する真上のお空だけが晴天で、1m離れた横では、今なお降り続いている。
王都までの周辺都市は、あっという間に降伏した。
聖女クリスティーヌに降伏した途端、雨は止み、晴れ間が広がった。
王都だけを残し、周辺から雨を止ませていく作戦で、王都を孤立させる目的だ。
王都にいる国王陛下は、聖戦軍が侵攻してきたことに戸惑い、恐れ、怒り、国外へ逃げ出す算段をし始めた。
「おのれ!公爵!カイル!聖女様を唆し、王都を攻めようとするとは、不届きモノめ!」
「本来なら、この場に残り、成敗してくれるものを!」言い訳?プライド?
降伏したいが、降伏すれば処刑されると思い込んでいる。
もちろん、聖女クリスティーヌは、そんなこと思っていない。ただ、王都に住む民のため、雨を止ますことだけを考えているのだ。
できれば、第2王子のカイル殿下が、この国の国王となってくれれば、それでいいとさえ思っていた。
自分は、また、田舎に引っ込んで辺境の地のために祈りを捧げ、平穏に暮らしていければ、それでよかった。
ついに、残すところ王都だけになってしまった。
クロード様が、傍に来られて、戦後処理をどうなさいますかと聞いてこられた。
「そうね。現在の国王陛下を追放するか、どこかへ幽閉させていただいて、新しい王にカイル様を推挙したいと考えております。公爵家の後ろ盾もあることだし、盤石なのではないかと思います。」
「聖女様は、一線を退かれるのでございますか? では、わたくしも聖女様とどこまでも行動を共にさせていただく所存でございます。」
「それは、心強いです。ありがとうございます。ですが、クロード様は、今回の聖戦の立役者であられますから、カイル様にとっても強い味方ではございませんか?私の方から口添えをして、どこかいいポストがもらえるように働きかけましょう。」
「それには、及びません。わたくしは、聖女様のお側にいさせていただくだけで幸甚でございます。」
クロードが顔を赤らめながら言ったので、つられてクリスティーヌも頬を染めた。
そんな二人の様子を、まわりは温かい目で見ていた。
翌日、王都へ侵攻した。
王都は、ほとんど無人だった。
王城の中も、誰もいなかった。絵画や彫刻など金目のものは置いて、慌てて逃げて行ったようだった。
ガランとした王城を見て回った。カイル様がいろいろ案内してくださった。
王城の一室で、会議が始まった。
今後の戦後処理だ。
クリスティーヌに意見を求められた。
「私は、次の国王として、カイル様を推挙いたす所存でございます。」
「クリスティーヌ様、とんでもございません。次の王は、前の王族以外の者が就くべきでございます。兄や父の暴走を止められなかった責任の一端は、私にもあります。」
「ですが、カイル様は、兵を挙げて、私たちと共に、戦おうとしてくださったではありませんか?十分、国王となる資質をお持ちだと思います。それに、公爵家ご令嬢とも、ご婚約されていますし、将来の国王、王妃として、適任かと存じます。」
そこで、公爵様が
「カイル様も娘も、そしてわたくしも前の王族の一員でした。新生国として、前の王族が関わるのはいかがなものでしょうか?ここは、ひとつ聖女様が国王様になられるべきだと思いますが、皆様方、いかがお考えですか?」
教会関係者もその他貴族様たちも、クロード様をはじめとする騎士団の方々も、すべて頷いてらっしゃる。
ええーーーっ!とクリスティーヌは、内心焦った。ここで頷いてしまったら、僻地のんびり生活が夢と消えてしまう。
でも誰も助けてくれない。
「では、ひとつ提案します。次の国王を選挙で選ぶというのは、いかがでしょうか?」
父上が
「無駄だよ。クリスティーヌ。誰が立候補するというのだ。悪あがきもほどほどにしないとダメだよ。」
「はい、わかりました。女王とならせていただきます。」渋々、観念した。
クリスティーヌが女王に就任することになった。
「あー。もー。」朝から不機嫌でいる。
「だいたい女王なんて、何をどうしたらいいかさっぱりわからない。」
逃げ出そうか?いやいや、また雨が降ったら、すぐバレるか。
女王就任式の案内状が各国へ送られ、お祝いのメッセージや贈り物が届き始めている。中には、独身のクリスティーヌに対して、縁談や「我が第3王子息子を」と言った売り込みも白熱している。」
「あーめんどくさい。」執務もそこそこに、ソファにだらけていると、クロード様がいらっしゃった。
居住まいを正しながら、侍女にお茶の準備をさせる。
「実は、領地に残した母の具合が悪く、本日は暇乞いに来ました。」
「え!どっか行っちゃうの?お母様を王都に移されては、いかがですか?」
「いえ、母は田舎暮らしが好きなもので、都会暮らしだとかえって気を遣い、体調が悪くなるのです。」
「あぁ、なんとなくだけど、わかるわ。私もそうだもの。いえ、母がだけどね。」
クリスティーヌの母は、あれから王都に居を移し、養生している。
「また、いつか会える時まで、お元気で。」
別れのあいさつを交わし、クロード様は、退室された。
それから3年の月日が流れ、クリスティーヌは、22歳となった。
もう立派なイカズ後家である。
あれから、相思相愛となれるべき相手が見つからなかった。
唯一、心ときめかせたクロード様は、田舎暮らしをしていらっしゃる。
相変わらず、他国からは、条件の悪い格下の王族との縁談が舞い込んでいるが、ピンとくる相手はいない。
「要するに、王の仕事なんて誰でもできる、ってことね。よくまぁ、こんな年寄り(他人のことは言えないけどね)が売り込んでくるわ。その日、きた縁談は、クリスティーヌより20歳も年上でしかも再婚話だった。」
「あーあ。どっかにイイ男転がってないかしら。」
若くて、背が高くて、たくましくて…そう、クロード様のような方が…。
領地へ視察に行った。
「神のご加護を」といえば、領民は、皆、喜んでくれる。
今日は、このまま宿営地に戻らず、もう少し遠出をすることにした。
なんとなく、の気分でだ。
そういうことは、たまにあるのだが、警護の者たちが急な変更で迷惑する。
でも、そういうときに限って、行く先で何かあるから、皆、聖女様の眼力はすごい!という話になる。
山間の奥まで来た。もう道がなさそうなので、ここまでかと、誰もが思った時、手負いの鹿が飛び込んできた。護衛団に緊張が走った。そこへ現れたのが、クロード様だった。
クリスティーヌが鹿を落ち着かせ、治癒魔法を発動した。
キズは塞がれ、無事、山へと帰って行った。
クロード様との久しぶりの再会だった。
クロード様が言われるには、最近、冬眠前の熊が暴れているそうな、クロード様の領地にもたびたび現れ、家畜や森にすむ動物を襲うので、時々見回りに来ているそうだ。
クロード様と共に、熊退治を行うことになった。
森や山を探すも、なかなか見つからない。
しばらく、クロード様の屋敷で逗留することになり、クロード様のお母様にご挨拶をした。
「母上、聖女クリスティーヌ女王様ですよ。たまたま、この地へ視察に来られました。」
クロード様が私を紹介してくださいました。
「ほんに、お綺麗な女王様ですね。クロードが夢中になるのがわかります。」
「な、何を言っているのですか、母上。」
クロード様が真っ赤になりながら、焦り始めた。
「初めまして。お母様、クリスティーヌと申します。お加減にいかがですか?」とクリスティーヌが手を握った。
すると、不思議なことに、クロード様のお母様の身体が光り、顔色が良くなった。
「聖女様の御力で母の容体が、よくなりました。ありがとうございます。」と何度もクロード様が頭をお下げになりました。
クロード様のお母様がにこりとほほ笑んで
「クロードのこと、よろしく頼みますね、聖女様。」
「はい。お母様。」
部屋を出てから、クロード様と二人きりになったとき、跪いて
「クリスティーヌ様、辺境領へ行った時から、ずっとクリスティーヌ様をお慕い申し上げておりました。無礼なのは、承知で申し上げますが、わたくしの妻になっていただけないでしょうか?」
「はい。私もクロード様をお慕い申し上げておりました。これからは、クリスとお呼びくださいませ。」といい、二人は抱き合いキスを交わした。
その夜、二人は同じ部屋に泊まった。
熊退治も無事に終わり、王都へ帰って結婚しました。
「お母様の体調が悪い時に、あまり出向きたくないのに、仕方ないわね。この国でそういう決まりになっているものだから、さっさと行って、さっさと帰りましょう。」
父と二人で、馬車で向かった。
教会に着いた時、すでに同い年の貴族令嬢がたくさんいた。
皆、目いっぱい着飾っている。もし、聖女と認定されれば、すぐさま王太子殿下の婚約者となれるから、そうなれば家も領地も安泰になる。
クリスティ-ヌにとっては、どうでもいいことだった。
王太子には、興味がない。クリスティーヌは、一人娘だから将来、婿を取らなければならない。もし、嫁に行くことになれば、従兄弟のうちの誰かが領地経営することになるからだ。
もし、好きな相手が見つかれば、それも吝かではない。好きでもない王太子との結婚はありえないことと思っていた。
クリスティーヌの順番が回ってきた。水晶の前に手をかざした途端、王都中がまばゆい光に包まれて、まるで聖女誕生を祝福しているような陽気になった。
すぐさま王太子の婚約者にされた。
「いやいや無理。」と言っているにもかかわらず、教会が囲い込みを始めた。
父がすぐ、国王陛下に嘆願を申し入れ、そのまま王都の学園には入学せず、辺境伯領の学園に入学して、卒業するまでは、王都へ赴かないことになった。
国王陛下は、クリスティーヌの母の事情をよくご存じだったので、何もおっしゃいませんでしたが、アレク王太子は,不敬だといい、クリスティーヌを疎んじていた。
18歳になり王都へ赴き、婚約披露パーティが開かれた。
アレク王太子殿下とは、ほぼ初対面であった。
「辺境伯令嬢クリスティーヌ、貴様との婚約はしない。聖女のくせに王都を不在にするとは、不敬だ。俺の妻は、聖女でなくともよい。」
「承知いたしました。では、この婚約はなかったものとして、辺境伯領へ帰ります。ごきげんよう。」
カテーシーで礼をして、今、降りたばかりの馬車に乗った。
国王陛下、側近たち、教会関係者は、慌てられたご様子でしたが、クリスティーヌは構わず馬車を走らせた。
クリスティーヌが王都を離れた途端、雨が降り続き止まなくなった。聖女様を疎んじたことが、神の怒りに触れたのだ。
そんなことになっているとは、つゆ知らずクリスティーヌは
「相変わらず、いいお天気ね。」と言いながら、馬車を走らせていた。
「好きでもない王太子殿下と婚約しなくて、良かったわ。」
「でもずいぶん無礼で、いけ好かない王太子殿下だったわ。もう二度とお会いしたくないわ。」
その頃、王都では
「祟りだ。祟りに違いない。聖女様を軽んじ、疎んじられたから、神の怒りだ。神の祟りだ。」と大騒ぎになっていた。
王都の民は、降り続いている雨に天を仰いで、お許しを。と祈りを捧げている。
国王陛下は、王太子に対して
「聖女様には、聖女様なりの事情があったのだ。決して不敬で、王都を不在されていたわけではないのだ。アレクよ。それにしても言い方というものがあろう。わざわざ王都まで、出向かれた方を追い返すような言い方をして、わしの育て方が間違っていたのか?」
それから1か月が過ぎた。まだ、雨は降り続いている。王都に隣接する山や里、その他の村や町まで、雨が降り続いている。
辺境伯領以外の王国領すべてで雨が降り続いている。
王都の民は、諦め、いち早く王都を出たものがいるが、行けども、行けども晴天の地にたどり着けない。
教会関係者は、神へ祈りを捧げ続けるも、一向に雨は止まない。
困り果てた教会関係者は、騎士団を伴い、聖女様をお迎えに上がることに決めた。王太子との婚約がなくなった今、どう説得して王都へ来てもらおうか、頭が痛いところだ。
国王陛下がついに決断された。
「アレクよ。そちを廃嫡することとした。雨が降り止まぬ原因を作ったのは、お前だ。」
「待ってください父上。雨と婚約破棄は関係ないのでは?」
「貴様、何を言っているのだ!この期に及んで、雨が止まないのは、貴様のせいだろうが!アレク。お前などもう息子でも王太子でもない。さっさと消え失せろ。」
「第2王子カイルに命じる聖女クリスティーヌ様と婚約し、この地に晴天をもたらすのだ。さすればカイルよ。そちに王位継承権を渡す。」
「え!でも、私には、公爵令嬢の婚約者がおります。」
「そんな女、さっさと婚約破棄してしまえ。」
第2王子は、悩んで国を出た。「それでは、兄上と同じじゃないか。」と口が裂けても言えなかった。
王都に住む貴族たちも、降り続ける雨に、なすすべもなくいったん領地へ帰ることにした。
教会は、騎士団を伴って、聖女様がいらっしゃる辺境伯領をめざした。
道が雨でぬかるんでいるため、思うように馬が走らなかった。
本日も晴天なり。最近、雨が降らないことに疑問も持たないクリスティーヌ
「あのバカが婚約破棄してくれたおかげかしらね。」
クリスティーヌは、聖女と認定されたあの日から毎日欠かさず、神様へ祈りを捧げている。
今日は、領地内へ行く予定だ。「神のご加護を」とクリスティーヌが言えば、皆喜んでくれる。
実際、豊作になるからだ。
とある日、一人の騎士がボロボロのドロドロになって、国境を越えてきた。聞けば、クリスティーヌが王都を出た日から、今もなお雨が降り続いているそうだ。
民は、神の祟りだ、神の怒りだ。と騒ぎ、晴天を求め移動中らしい。
とにかくクリスティーヌは、その騎士を風呂に入れ、着替えをさせ、手当てと食事を与えた。はじめ恐縮していた騎士だが、熱心にクリスティーヌが勧めるので素直に従った。
「聖女クリスティーヌ様、ありがとうございます。わたくしは、王国騎士団長のクロードと申します。実は、王都へお戻りいただくため、馬を走らせてきました。途中、馬がぬかるみに足を取られ、馬を捨て走って参った次第でございます。」
「もう王都へは二度と参りませぬ。また王太子殿下とは二度とお会いしたくありません。」
「そうおっしゃると思っておりました。わたくしもここへ来るまでは、なんとか聖女様をご説得し、王都へお戻りをと願っていましたが、ここへ来て、クリスティーヌ様からおもてなしいただき気が変わりました。わたくしも何かこの地で、お役に立ちたいと存じます。」
「ありがとうございます。辺境の地でございますから、お仕事はいくらでもありますわよ。」
その後も、ぞろぞろと騎士団が到着した。クロード様が仰せになったかは存じませんが、皆一様に「もう、王都へは帰りたくない。」と口をそろえて言いました。
そのうち教会関係者も教会ごと移住してきた。「聖女様と共におります。」
王都の雨騒ぎで、領民が増えました。その後も王都から歩いて?民が移動し続け、少々手狭になってきた。
隣の領地の伯爵やら子爵が、我が家へ来て、領地の管理を依頼してきた。かわりに辺境伯領に、住みたいのだそうな。そんな変な話ある?
でも父上が承知したから、その領地へクリスティーヌが行くと、雨が止んだらしい。
こうして、我が領土は、王国の3分の1にまでなった。婚約破棄から半年が経った。
第2王子のカイル様がいらっしゃった。
私を王都へ連れ戻し、婚約するように国王陛下から命ぜられたそうだ。
しかし、彼は公爵令嬢の婚約者を愛していたので、躊躇していた。
「カイル王子殿下、それなら、我が領地の一部にお住まいになってはいかがですか?公爵令嬢様と駆け落ちをなされば、よろしいのです。」
なんと、公爵家ともども領地に引っ越してこられたので、こちらで結婚式を挙げられることになった。
「クリスティーヌ嬢のおかげです。もう、父上から婚約破棄をしろと言われたときは、絶望感でいっぱいになりました。まさか、こんな展開になるとは、夢にも思っていませんでした。さすがに神に愛された聖女様ですね。」
公爵様のお話によると、王都と周辺の土地では、今も雨が降り続き、川は氾濫し橋も流され復旧もできず、畑は、作物が根腐れを起こして、枯れ果てているそうです。隣国からの輸入もできず、貧困と洪水に王都は疲弊しきっているらしい。
公爵様は、「今こそ挙兵し、王都を占拠すべきだ。」とおっしゃいます。
騎士団長のクロード様も
「この現状を招いたのは、確かに王太子の、王族の傲慢からです。神をも恐れぬ行為が招いた結果です。クリスティーヌ様、ご決断ください。」
教会の皆様も、頷かれ、一同が期待した目をクリスティーヌに向けている。
そんなこと、私が決めるの?父上のほうを見た。
父上も頷き、
「クリスティーヌが、頷けば、それは神のご意思となろう。」
「わかりました。これだけ雨が続いているのは、神の御心が今の王族ではこの国の行く末を任せられないとの、ご判断があるからなのでしょう。我々には、神様がついておられます。神様と共に、挙兵いたしましょう。クロード様、ご準備をお願いいたします。」と頭を下げた。
辺境伯領は、一気に活気づいた。
挙兵準備のため、公爵様と筆頭として、父上と貴族様たちが作戦会議をされることになった。
王都に向けて、聖戦(?)軍が行軍した。クリスティーヌは、最後尾を移動している。不思議なことに、我が軍が進行する真上のお空だけが晴天で、1m離れた横では、今なお降り続いている。
王都までの周辺都市は、あっという間に降伏した。
聖女クリスティーヌに降伏した途端、雨は止み、晴れ間が広がった。
王都だけを残し、周辺から雨を止ませていく作戦で、王都を孤立させる目的だ。
王都にいる国王陛下は、聖戦軍が侵攻してきたことに戸惑い、恐れ、怒り、国外へ逃げ出す算段をし始めた。
「おのれ!公爵!カイル!聖女様を唆し、王都を攻めようとするとは、不届きモノめ!」
「本来なら、この場に残り、成敗してくれるものを!」言い訳?プライド?
降伏したいが、降伏すれば処刑されると思い込んでいる。
もちろん、聖女クリスティーヌは、そんなこと思っていない。ただ、王都に住む民のため、雨を止ますことだけを考えているのだ。
できれば、第2王子のカイル殿下が、この国の国王となってくれれば、それでいいとさえ思っていた。
自分は、また、田舎に引っ込んで辺境の地のために祈りを捧げ、平穏に暮らしていければ、それでよかった。
ついに、残すところ王都だけになってしまった。
クロード様が、傍に来られて、戦後処理をどうなさいますかと聞いてこられた。
「そうね。現在の国王陛下を追放するか、どこかへ幽閉させていただいて、新しい王にカイル様を推挙したいと考えております。公爵家の後ろ盾もあることだし、盤石なのではないかと思います。」
「聖女様は、一線を退かれるのでございますか? では、わたくしも聖女様とどこまでも行動を共にさせていただく所存でございます。」
「それは、心強いです。ありがとうございます。ですが、クロード様は、今回の聖戦の立役者であられますから、カイル様にとっても強い味方ではございませんか?私の方から口添えをして、どこかいいポストがもらえるように働きかけましょう。」
「それには、及びません。わたくしは、聖女様のお側にいさせていただくだけで幸甚でございます。」
クロードが顔を赤らめながら言ったので、つられてクリスティーヌも頬を染めた。
そんな二人の様子を、まわりは温かい目で見ていた。
翌日、王都へ侵攻した。
王都は、ほとんど無人だった。
王城の中も、誰もいなかった。絵画や彫刻など金目のものは置いて、慌てて逃げて行ったようだった。
ガランとした王城を見て回った。カイル様がいろいろ案内してくださった。
王城の一室で、会議が始まった。
今後の戦後処理だ。
クリスティーヌに意見を求められた。
「私は、次の国王として、カイル様を推挙いたす所存でございます。」
「クリスティーヌ様、とんでもございません。次の王は、前の王族以外の者が就くべきでございます。兄や父の暴走を止められなかった責任の一端は、私にもあります。」
「ですが、カイル様は、兵を挙げて、私たちと共に、戦おうとしてくださったではありませんか?十分、国王となる資質をお持ちだと思います。それに、公爵家ご令嬢とも、ご婚約されていますし、将来の国王、王妃として、適任かと存じます。」
そこで、公爵様が
「カイル様も娘も、そしてわたくしも前の王族の一員でした。新生国として、前の王族が関わるのはいかがなものでしょうか?ここは、ひとつ聖女様が国王様になられるべきだと思いますが、皆様方、いかがお考えですか?」
教会関係者もその他貴族様たちも、クロード様をはじめとする騎士団の方々も、すべて頷いてらっしゃる。
ええーーーっ!とクリスティーヌは、内心焦った。ここで頷いてしまったら、僻地のんびり生活が夢と消えてしまう。
でも誰も助けてくれない。
「では、ひとつ提案します。次の国王を選挙で選ぶというのは、いかがでしょうか?」
父上が
「無駄だよ。クリスティーヌ。誰が立候補するというのだ。悪あがきもほどほどにしないとダメだよ。」
「はい、わかりました。女王とならせていただきます。」渋々、観念した。
クリスティーヌが女王に就任することになった。
「あー。もー。」朝から不機嫌でいる。
「だいたい女王なんて、何をどうしたらいいかさっぱりわからない。」
逃げ出そうか?いやいや、また雨が降ったら、すぐバレるか。
女王就任式の案内状が各国へ送られ、お祝いのメッセージや贈り物が届き始めている。中には、独身のクリスティーヌに対して、縁談や「我が第3王子息子を」と言った売り込みも白熱している。」
「あーめんどくさい。」執務もそこそこに、ソファにだらけていると、クロード様がいらっしゃった。
居住まいを正しながら、侍女にお茶の準備をさせる。
「実は、領地に残した母の具合が悪く、本日は暇乞いに来ました。」
「え!どっか行っちゃうの?お母様を王都に移されては、いかがですか?」
「いえ、母は田舎暮らしが好きなもので、都会暮らしだとかえって気を遣い、体調が悪くなるのです。」
「あぁ、なんとなくだけど、わかるわ。私もそうだもの。いえ、母がだけどね。」
クリスティーヌの母は、あれから王都に居を移し、養生している。
「また、いつか会える時まで、お元気で。」
別れのあいさつを交わし、クロード様は、退室された。
それから3年の月日が流れ、クリスティーヌは、22歳となった。
もう立派なイカズ後家である。
あれから、相思相愛となれるべき相手が見つからなかった。
唯一、心ときめかせたクロード様は、田舎暮らしをしていらっしゃる。
相変わらず、他国からは、条件の悪い格下の王族との縁談が舞い込んでいるが、ピンとくる相手はいない。
「要するに、王の仕事なんて誰でもできる、ってことね。よくまぁ、こんな年寄り(他人のことは言えないけどね)が売り込んでくるわ。その日、きた縁談は、クリスティーヌより20歳も年上でしかも再婚話だった。」
「あーあ。どっかにイイ男転がってないかしら。」
若くて、背が高くて、たくましくて…そう、クロード様のような方が…。
領地へ視察に行った。
「神のご加護を」といえば、領民は、皆、喜んでくれる。
今日は、このまま宿営地に戻らず、もう少し遠出をすることにした。
なんとなく、の気分でだ。
そういうことは、たまにあるのだが、警護の者たちが急な変更で迷惑する。
でも、そういうときに限って、行く先で何かあるから、皆、聖女様の眼力はすごい!という話になる。
山間の奥まで来た。もう道がなさそうなので、ここまでかと、誰もが思った時、手負いの鹿が飛び込んできた。護衛団に緊張が走った。そこへ現れたのが、クロード様だった。
クリスティーヌが鹿を落ち着かせ、治癒魔法を発動した。
キズは塞がれ、無事、山へと帰って行った。
クロード様との久しぶりの再会だった。
クロード様が言われるには、最近、冬眠前の熊が暴れているそうな、クロード様の領地にもたびたび現れ、家畜や森にすむ動物を襲うので、時々見回りに来ているそうだ。
クロード様と共に、熊退治を行うことになった。
森や山を探すも、なかなか見つからない。
しばらく、クロード様の屋敷で逗留することになり、クロード様のお母様にご挨拶をした。
「母上、聖女クリスティーヌ女王様ですよ。たまたま、この地へ視察に来られました。」
クロード様が私を紹介してくださいました。
「ほんに、お綺麗な女王様ですね。クロードが夢中になるのがわかります。」
「な、何を言っているのですか、母上。」
クロード様が真っ赤になりながら、焦り始めた。
「初めまして。お母様、クリスティーヌと申します。お加減にいかがですか?」とクリスティーヌが手を握った。
すると、不思議なことに、クロード様のお母様の身体が光り、顔色が良くなった。
「聖女様の御力で母の容体が、よくなりました。ありがとうございます。」と何度もクロード様が頭をお下げになりました。
クロード様のお母様がにこりとほほ笑んで
「クロードのこと、よろしく頼みますね、聖女様。」
「はい。お母様。」
部屋を出てから、クロード様と二人きりになったとき、跪いて
「クリスティーヌ様、辺境領へ行った時から、ずっとクリスティーヌ様をお慕い申し上げておりました。無礼なのは、承知で申し上げますが、わたくしの妻になっていただけないでしょうか?」
「はい。私もクロード様をお慕い申し上げておりました。これからは、クリスとお呼びくださいませ。」といい、二人は抱き合いキスを交わした。
その夜、二人は同じ部屋に泊まった。
熊退治も無事に終わり、王都へ帰って結婚しました。
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