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ジャスターズ編
勘違い
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……なんだ、何が起きている。
外が騒がしいな。
「うお!」
俺が立ち上がろうとすると、地面が液体の様に溶け出す。
「ぶっ」
急に水の中に放り込まれたかの様に、五体に触れる地面は柔らかい。
「ラッツ!」
ラッツ? 知らない名だ。
「分あってる!」
この振動。誰か水に飛び込んだな。
それにしても、俺が少し居眠りをしている間に、何が起こったというんだ。
フォイル、シュモン、ニッチルは。
駄目だ、外の音が篭っている。
「ぶおっ」
何者かに後頭部を蹴られる。
「あんまり喋んないほうがいいぜ。口に泥入っちまうかんな」
「ばぁあっ」
ラッツとかいう人間は、無抵抗な俺に対して蹴りを連発する。
なぜ急にこんな事をするんだ。
俺に恨みのある人間……カンブゥの人たちか。
「カンブゥの者、落ちつ——」
「オラっ! なに? なんか言ったか?」
凄い信念だ。話をしようにもする隙がない。
だが、俺にも打たれる義務はある。
振り返ると、確かにあそこまでしなくて良かったんじゃないかと、思う事がある。
後悔はしていないが、丁度いい機会だ。
この痛みと共に反省しよう。
「オラっ! オラっ! ……んだよ。全然抵抗しねえじゃねえか」
男が攻撃を止めると直ぐに、背中あたりで水が途切れる。
「うわっ!」
ドスっと、背中から地面へ落下する。
「瞬間移動……?」
「おいしょっと。キューズさん、連れて来ましたぜ」
キューズ? あの犯罪者組織の。
「おつおつ。いやーそれにしても、ここは暗いな」
今日は快晴だった。急に雲が空を覆う事もありえないし、もしかしてここは地下か。
そう言えばニッチルが、目の前に教会があるとか言っていたな。
「もし、キューズさんと人。なぜ急にこんな事を」
俺は埃を払いながら立ち上がる。
「はぁ? 何言ってんだお前。テメェがジャスターズと協力して俺らを潰そうとしてるから、俺らはそれを阻止してんじゃねえかよ」
後ろにいる、ラッツという人が答える。
「俺が質問してんのはキューズさんだ。お前は黙ってろ」
「——⁉︎」
俺は後ろを振り向かずに、それでも聞こえるように大きな声で言う。
「キューズさん。あなたは確か、犯罪組織のリーダーでしたよね。そんなあなたが、俺になんの用ですか」
「用ってお前……、ラッツの言った通りじゃねえのかよ」
「ラッツ……。ああ……俺がキューズを潰そうとしているって事ですか? すみませんが、全く心当たりがないんです」
「……どうなってんだ」
俺も犯罪者の身である以上、いつかはキューズという組織とぶつかり合う可能性があったかもしれない。
しかしまずの話、キューズは昔ほど活躍しておらず、一部ではもう都市伝説と化しているそうだ。
それをわざわざ、国を飛び出してまで潰そうとは、考えたこともなかった。
これは何かの間違いなんじゃないか?
「キューズさん。あなたは多分、何かを勘違いしている。俺たちはキューズに危害を加えるつもりはないし、邪魔だと思っている訳でもない。確かに急に、ジースクエアの1人が国を飛び出したら、誰でも構えるのはもっともだと思う、たがら、もし勘違いさせたなら謝る。この通りだ」
俺は70度ほど角度をつけ、頭を下げる。
「勘違いって……、マジかよ」
誰にでも勘違いはある。
それがたまたま、一組織のリーダーと1人の正直者だったって話だ。
これに関してはこちらに非があり、争いなんて御免だ。
「じゃ、じゃあ聞くが、お前はなんでジャスターズに向かってるんだ」
「理由……ですか。考えた事もありませんでした。でも、なにかこう……、今お礼をしたい気持ちが最高潮だった気がしただけで、特に理由は……」
上手く言葉にできないが、小さい頃から話は聞いていた。
俺が能力者になった理由や、ジャスターズに保護された事。
ジースクエアに指定されてしまって不自由だったから、いつお礼を言うか迷っていたが、今回は何か動かなくてはいけない気がした。
そうしないと、何か、一生言えないんじゃないかと、不安が募って怖くなった。
「そう……か、ここまで来て勘違いかよ」
キューズさんが膝をつく。
相当な緊張状態だったのだろう。
しかし勘違いと分かれば、こちらも安心だ。
「待って下さい。キューズ様」
キューズさんよりももっと奥に、1人の男が立っていた。
「えっ?」
「コインは、結局はジャスターズに向かいます。そこで、コインが私たちキューズを滅ぼす意思がなくとも、ジャスターズはどうでしょう。恐らく、事情を知っている方もいるんですよね」
この男、殺気はないが敵意が凄い。
しかも、目が見えていないとは言え、こんなにも音や存在を隠せるものか。
俺もふざけて目隠しをしている訳ではないので、ある程度の音は聞き分けられるつもりでいたのだが。
「キューズ様、これはチャンスです。どっちにしたって私たちの危険は変わりません。要はここで殺るか、後で殺るかの違いです」
この吸い込まれる様な独特の雰囲気。
言葉一つ一つに幻惑剤が塗ってあるみたいだ。
この男、もしかして……。
「でもロン、勘違いだってよ。コインは嘘が嫌いだし、多分ジャスターズの意見如きじゃ意思を曲げない。俺たちはもう、帰っていいんだ」
「本当にそうでしょうか。ラッツだって、納得いってないはずですよ」
「……俺も悔しいが、ロンの言う通りだと思う。もしジャスターズとコインが繋がりを持ってしまったら、いざ殲滅をしようとした時に、コインが障害になるのは確かだ。今がベストコンディションなんだよ。今の、最小が」
ロンという人の発言から、一気に会話の流れが反転した。
このままでは、望まない争いに発展してしまう。
「ロンという人、俺が約束をすればいいんじゃないか。ジャスターズになんと言われようが、キューズには出だしをしない。そうすれば、今争う必要はないんじゃないか」
「そんな口約束で引き下がれませんよ」
「俺は——」
「分かっています。あなたが嘘をつかない事くらい、分かっています。てすが、意思だけで人が変わる時代は終わったんです。あなたがいくらやらないと約束をしても、能力によって操られたのならそれは、約束をしていないと同等です。あなたはジャスターズを信用しても、ジャスターズはあなたを利用しますよ」
「……っ」
まんまと言い返されている。完全にこの男のペースだ。
他の2人は黙っていて、もう話し合いに参加しそうもない。
ここは俺が堪えるしか——。
「いいんですか? あなたの部下、殺されているかもしれませんよ」
俺の部下……だと?
「何を言って……」
「目が見えないとは不便ですね。私たちはあなたに不意打ちをしたんですよ。その時にもしかしたら、1人や2人、死んでるかもしれませんね。その人たちにあなたは、黙っていろと言うんですか?」
「……はぁ、はぁ、お前、なぜ争いたい」
まずい、血が頭に上り始めた。
「争いたくはありません。あなたを殺したいだけです」
「殺さない解決方法は、ないのか」
「ありませんね。囚人のジレンマのようなものです」
「ああっ! 止めてくれ。お前のその声、聞きたくない」
嫌いな声だ。
頭に響く訳でもなく、心に響く訳でもない。
しかし確実に、洗脳という名の塩酸を脳みそにかけられているかの様な苦痛だ。
「それなら耳を塞げばいいじゃないですか。代わりに口を読んで、私を見つめて下さい。そうすれば、後は解放です」
「止めろ……止めてくれ。殺したくない。罪がない。悪くない。やるだけ無駄だ」
俺は全力で耳を塞ぐ。
「あなたは真実を知らない。私たちの悪を」
「えっ」
俺は耳が赤くなるほど押さえていた両手を、ゆっくりと下におろす。
「あなたはジャスターズに恩があり、カンブゥにも恩がある。しかし、キューズには怨があるのです」
「俺がキューズに……」
「あなたに能力が発現したのは、キューズ様のお陰です。キューズ様があなたを極限まで追い詰めたからこそ、今のあなたがあるのです」
「ロン、お前……」
「あなたが喜びを感じている時も、悲しみを感じている時も、それは全てキューズ様のお陰なのです」
「本当なのか……? キューズさん」
「……ああ、32年前の事だ。今でも忘れやしない。俺が最強を作っちまったって正直興奮した。もちろん最初はキューズに取り入れようと思った。だが、ジャスターズのやつに邪魔されちまったんだ」
「つまり、一歩間違えれば、俺はキューズにいたと……」
「そういう訳だ。俺はそれが原因で、お前が俺らを憎んでんじゃないかって、恐怖した。だから不意打ちなんて真似をしたんだよ」
最初から運命の巡り合わせみたいな出来事だったんだ。
俺があの銀行にいた事。キューズさんがそこに強盗へ入って来た事。
俺が人質に取られて能力が発現した事。
それでジャスターズやカンブゥに保護された事。
これら全ては、目の前にいるキューズさんが始めた事だったのか。
「キューズさん。もう一つ勘違いしていましたね」
「もう一つ?」
「俺はキューズさんを恨んでなんかいませんよ。能力が発現して大変な事は多いですが、それも試練だと思って生きています。逆にキューズさんがいなければ、この試練の土俵にすら入れなかった訳です。だから俺を能力者にしてくれて、素直に感謝しています」
「……お前、めっちゃいい奴じゃねえかよ……」
キューズさんは少し鼻を啜っていた。
勘違いする事で、勘違いを解く事だってある。
それが偶然でもなんでも、真実には変わりがない。
俺は今回、国を飛び出して来て良かったと思える理由を、見つけられた気がした。
「コイン、あなたも一つ勘違いしていますよ」
「ロンという人。もう俺に争う意思はない。いくら翻弄しようとも、俺は変わらない」
「そうですか。では、これは私個人の独り言として受け取ってください」
「…………ごぎゅっ」
何か得体の知れない緊張感が走る。
なんだこのジメジメした空気感は。
プールで深いところまで潜った様な、あの重い何かが肩にのしかかる。
「……あなたの親、キューズ様が殺したんですよ」
「——ドゥオオン」
「前言撤回だお前ら! 絶対に殺してやる!」
外が騒がしいな。
「うお!」
俺が立ち上がろうとすると、地面が液体の様に溶け出す。
「ぶっ」
急に水の中に放り込まれたかの様に、五体に触れる地面は柔らかい。
「ラッツ!」
ラッツ? 知らない名だ。
「分あってる!」
この振動。誰か水に飛び込んだな。
それにしても、俺が少し居眠りをしている間に、何が起こったというんだ。
フォイル、シュモン、ニッチルは。
駄目だ、外の音が篭っている。
「ぶおっ」
何者かに後頭部を蹴られる。
「あんまり喋んないほうがいいぜ。口に泥入っちまうかんな」
「ばぁあっ」
ラッツとかいう人間は、無抵抗な俺に対して蹴りを連発する。
なぜ急にこんな事をするんだ。
俺に恨みのある人間……カンブゥの人たちか。
「カンブゥの者、落ちつ——」
「オラっ! なに? なんか言ったか?」
凄い信念だ。話をしようにもする隙がない。
だが、俺にも打たれる義務はある。
振り返ると、確かにあそこまでしなくて良かったんじゃないかと、思う事がある。
後悔はしていないが、丁度いい機会だ。
この痛みと共に反省しよう。
「オラっ! オラっ! ……んだよ。全然抵抗しねえじゃねえか」
男が攻撃を止めると直ぐに、背中あたりで水が途切れる。
「うわっ!」
ドスっと、背中から地面へ落下する。
「瞬間移動……?」
「おいしょっと。キューズさん、連れて来ましたぜ」
キューズ? あの犯罪者組織の。
「おつおつ。いやーそれにしても、ここは暗いな」
今日は快晴だった。急に雲が空を覆う事もありえないし、もしかしてここは地下か。
そう言えばニッチルが、目の前に教会があるとか言っていたな。
「もし、キューズさんと人。なぜ急にこんな事を」
俺は埃を払いながら立ち上がる。
「はぁ? 何言ってんだお前。テメェがジャスターズと協力して俺らを潰そうとしてるから、俺らはそれを阻止してんじゃねえかよ」
後ろにいる、ラッツという人が答える。
「俺が質問してんのはキューズさんだ。お前は黙ってろ」
「——⁉︎」
俺は後ろを振り向かずに、それでも聞こえるように大きな声で言う。
「キューズさん。あなたは確か、犯罪組織のリーダーでしたよね。そんなあなたが、俺になんの用ですか」
「用ってお前……、ラッツの言った通りじゃねえのかよ」
「ラッツ……。ああ……俺がキューズを潰そうとしているって事ですか? すみませんが、全く心当たりがないんです」
「……どうなってんだ」
俺も犯罪者の身である以上、いつかはキューズという組織とぶつかり合う可能性があったかもしれない。
しかしまずの話、キューズは昔ほど活躍しておらず、一部ではもう都市伝説と化しているそうだ。
それをわざわざ、国を飛び出してまで潰そうとは、考えたこともなかった。
これは何かの間違いなんじゃないか?
「キューズさん。あなたは多分、何かを勘違いしている。俺たちはキューズに危害を加えるつもりはないし、邪魔だと思っている訳でもない。確かに急に、ジースクエアの1人が国を飛び出したら、誰でも構えるのはもっともだと思う、たがら、もし勘違いさせたなら謝る。この通りだ」
俺は70度ほど角度をつけ、頭を下げる。
「勘違いって……、マジかよ」
誰にでも勘違いはある。
それがたまたま、一組織のリーダーと1人の正直者だったって話だ。
これに関してはこちらに非があり、争いなんて御免だ。
「じゃ、じゃあ聞くが、お前はなんでジャスターズに向かってるんだ」
「理由……ですか。考えた事もありませんでした。でも、なにかこう……、今お礼をしたい気持ちが最高潮だった気がしただけで、特に理由は……」
上手く言葉にできないが、小さい頃から話は聞いていた。
俺が能力者になった理由や、ジャスターズに保護された事。
ジースクエアに指定されてしまって不自由だったから、いつお礼を言うか迷っていたが、今回は何か動かなくてはいけない気がした。
そうしないと、何か、一生言えないんじゃないかと、不安が募って怖くなった。
「そう……か、ここまで来て勘違いかよ」
キューズさんが膝をつく。
相当な緊張状態だったのだろう。
しかし勘違いと分かれば、こちらも安心だ。
「待って下さい。キューズ様」
キューズさんよりももっと奥に、1人の男が立っていた。
「えっ?」
「コインは、結局はジャスターズに向かいます。そこで、コインが私たちキューズを滅ぼす意思がなくとも、ジャスターズはどうでしょう。恐らく、事情を知っている方もいるんですよね」
この男、殺気はないが敵意が凄い。
しかも、目が見えていないとは言え、こんなにも音や存在を隠せるものか。
俺もふざけて目隠しをしている訳ではないので、ある程度の音は聞き分けられるつもりでいたのだが。
「キューズ様、これはチャンスです。どっちにしたって私たちの危険は変わりません。要はここで殺るか、後で殺るかの違いです」
この吸い込まれる様な独特の雰囲気。
言葉一つ一つに幻惑剤が塗ってあるみたいだ。
この男、もしかして……。
「でもロン、勘違いだってよ。コインは嘘が嫌いだし、多分ジャスターズの意見如きじゃ意思を曲げない。俺たちはもう、帰っていいんだ」
「本当にそうでしょうか。ラッツだって、納得いってないはずですよ」
「……俺も悔しいが、ロンの言う通りだと思う。もしジャスターズとコインが繋がりを持ってしまったら、いざ殲滅をしようとした時に、コインが障害になるのは確かだ。今がベストコンディションなんだよ。今の、最小が」
ロンという人の発言から、一気に会話の流れが反転した。
このままでは、望まない争いに発展してしまう。
「ロンという人、俺が約束をすればいいんじゃないか。ジャスターズになんと言われようが、キューズには出だしをしない。そうすれば、今争う必要はないんじゃないか」
「そんな口約束で引き下がれませんよ」
「俺は——」
「分かっています。あなたが嘘をつかない事くらい、分かっています。てすが、意思だけで人が変わる時代は終わったんです。あなたがいくらやらないと約束をしても、能力によって操られたのならそれは、約束をしていないと同等です。あなたはジャスターズを信用しても、ジャスターズはあなたを利用しますよ」
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「……はぁ、はぁ、お前、なぜ争いたい」
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「止めろ……止めてくれ。殺したくない。罪がない。悪くない。やるだけ無駄だ」
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「あなたは真実を知らない。私たちの悪を」
「えっ」
俺は耳が赤くなるほど押さえていた両手を、ゆっくりと下におろす。
「あなたはジャスターズに恩があり、カンブゥにも恩がある。しかし、キューズには怨があるのです」
「俺がキューズに……」
「あなたに能力が発現したのは、キューズ様のお陰です。キューズ様があなたを極限まで追い詰めたからこそ、今のあなたがあるのです」
「ロン、お前……」
「あなたが喜びを感じている時も、悲しみを感じている時も、それは全てキューズ様のお陰なのです」
「本当なのか……? キューズさん」
「……ああ、32年前の事だ。今でも忘れやしない。俺が最強を作っちまったって正直興奮した。もちろん最初はキューズに取り入れようと思った。だが、ジャスターズのやつに邪魔されちまったんだ」
「つまり、一歩間違えれば、俺はキューズにいたと……」
「そういう訳だ。俺はそれが原因で、お前が俺らを憎んでんじゃないかって、恐怖した。だから不意打ちなんて真似をしたんだよ」
最初から運命の巡り合わせみたいな出来事だったんだ。
俺があの銀行にいた事。キューズさんがそこに強盗へ入って来た事。
俺が人質に取られて能力が発現した事。
それでジャスターズやカンブゥに保護された事。
これら全ては、目の前にいるキューズさんが始めた事だったのか。
「キューズさん。もう一つ勘違いしていましたね」
「もう一つ?」
「俺はキューズさんを恨んでなんかいませんよ。能力が発現して大変な事は多いですが、それも試練だと思って生きています。逆にキューズさんがいなければ、この試練の土俵にすら入れなかった訳です。だから俺を能力者にしてくれて、素直に感謝しています」
「……お前、めっちゃいい奴じゃねえかよ……」
キューズさんは少し鼻を啜っていた。
勘違いする事で、勘違いを解く事だってある。
それが偶然でもなんでも、真実には変わりがない。
俺は今回、国を飛び出して来て良かったと思える理由を、見つけられた気がした。
「コイン、あなたも一つ勘違いしていますよ」
「ロンという人。もう俺に争う意思はない。いくら翻弄しようとも、俺は変わらない」
「そうですか。では、これは私個人の独り言として受け取ってください」
「…………ごぎゅっ」
何か得体の知れない緊張感が走る。
なんだこのジメジメした空気感は。
プールで深いところまで潜った様な、あの重い何かが肩にのしかかる。
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