笑ってる?私

みお

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塾の先生1

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「今日からよろしくね。後藤と言います」

うん?
新しい先生?

初めて見る顔。

「この子が中岡さん。真ん中が松井さんね。そして、隣が高橋くん」

今まで教えてくれていた先生が、後藤先生に教えてた。

「えっ、先生代わっちゃうの?」
そう、言ったのは私の隣の中岡さんだ。

「いいじゃん。中岡さん、僕の時はよく寝そうになってたから。後藤先生に鍛えてもらえば?」

「は?そんなこと無いしっ」

「じゃあ、よろしくねっ」
その先生は、後藤先生に向かってそう言い残し、そのパーテーションで区切られた私たちの大きな机から出ていった。

正面に座った後藤先生は…苦笑い。

そして、緊張。

さらに、少しオロオロしている。

あ、本当に初めてなんだ。

「じゃあ、中岡さんは…このテキストの23ページから」
「えーと、松井さんは…あ、松井さんも同じところだから23ページね」
「高橋くんは24ページの5から」

個別指導の塾って…どこも先生がコロコロ代わって、そして若い先生が多い。

いかにも大学生のバイトって感じ。

若くない先生に教えてもらったことって…体験で…ここに来た時だけだった。

その若くない先生って、塾長先生だったみたいで…普段は高校生を教えている。

さっき行っちゃった…前の先生は…意外に長かった方で中1の夏頃から…ずっと教えてもらってたから…慣れてたのになぁ。

私は…火曜日と金曜日の7時から8時半までの90分で火曜日は数学、金曜日は英語を教えてもらっている。

金曜日なんて、本当に先生がコロコロ代わってるから…なんか毎週違うみたいな。

「松井さん。わからないの?」

急に声をかけられた。

「…」
首を振った。

慌てて、問題を解く。

今、やってるのは、多項式の計算。

中1の後期でやった図形は嫌いだけど、計算は得意だから…あまり困っていない。

「出来た」
高橋くんが…先生に…解いたノートを見せる。

先生は…赤ペンを胸ポケットから取り出し…丸をつける。

って、この高橋くん。
なかなか頭はいいんだけど、字が汚い。

後藤先生は…目を凝らしながら…丸付けをしている。
あの汚い字を必死で解読している。

前の先生だったら
「高橋くん。字が汚いから読めませんね。書き直しっ」
なんて、クールに言ってたけど…

「先生出来ました」
中岡さんも…後藤先生にノートを見せる。

「あっ、ちょっと待っててね」

いきなり、後藤先生…ピンチ。
焦ってる。

早く高橋くんの丸付けを終らせて、中岡さんの丸付けをしたいのに、高橋くんの字がそれを阻止している。

なんか…面白い。

まるで…漫画のように…

後藤先生の身体の周りに…
アセ…アセ
って文字が見える。

えーと、高橋くんがやってた問題は…次のページの5だから…10問ある。
見た感じ…まだ、半分ぐらい丸付けが終わった感じ。

中岡さんは…何もすることがなくて…ボーとしている。

前の先生だったら…
「中岡さん、悪いけど次の問題もやってて」
なんて言ってたけど…

今の後藤先生には…そんな余裕はない。

とにかく、早く高橋くんの丸付けを終らせてなきゃって感じ。

「ふっ」
思わず…私は…

「先生、出来ました」

私も…解いたテキストを先生に差し出した。

「あ、はい」

大学生らしき年上の男性が…こんなに余裕がなく焦っている姿

面白すぎる。

私はさらに焦らせてやった。

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