お世話したいαしか勝たん!

沙耶

文字の大きさ
1 / 9

しおりを挟む
斗真は、悩んでいた。

最近、ヒートが辛すぎる。
もともと、ヒートのときにオメガ特性が出やすいタイプで日常的に強い抑制剤を服用していたのだが、最近どうも効かなくなり、こうしてかかりつけ医の元を訪ねた。
ずっと抑制剤で抑え込んでいることや、職場的にαに囲まれているのに、抱いてくれるαはいないというのが、どうも身体に堪えたらしい。
…まあ、想像通りなのだが…。

「次のヒートでは抑制剤を飲まないようにしてください。一度ヒートをリセットしましょう。抑制剤を服用せずに、ヒートを迎えたことは確かないですよね?」

「はい。初めてのときも抑制剤を使ったので…」

「そうでしたよね…。きっと辛いでしょうから、思い切ってαに抱いてもらうのも手ですよ。嫌かもしれませんけれど、実は一番シンプルで、効果も高い方法ですからね。」

……昔からお世話になっている初老のかかりつけ医にとうとう言われてしまった。

自分自身がオメガ科の医者であるということもあって、かかりつけ医の判断が全くおかしくなく、むしろ自分だってそう言うだろうという正しい判断をしていることもわかっている。

しかし、自分のヒートは抑制剤有りでも辛い。
その上、抱いてくれるαなんて、あても無い。

一体、僕はどうしたら良いのだろうか。

せっかく取った半休を思うように使い切れないまま、職場である病院へ斗真は戻っていた。


(今日は番健診担当か…)


よりにもよって…という気分だった。
番健診というのは、αとΩの番の健診である。

DVされていないかとか、きちんと番になれているかとかそういうことを確認する健診なのだ。

患者がαとΩのペアで来るために、医者もαとΩのペアで健診する。

α科とΩ科からローテーションで医者を出していくのだが、その当番に今日当たってしまった。


(僕のペアは誰だろう?)


シフト表を辿って、ペアに行き着く前に、声をかけられる。

「神崎くん。今日は俺とだよ?」


「あ、立花さん。よろしくお願いします」


「よろしくね。」


立花さん、というのは僕より2つ年上のαだ。

αなのに、威張ったりしないし、よく笑ってるし、とにかく優しくて、頼れる先生だ。

よかった、立花さんとだったら安心だ。

他の先生とペアでも、変わらずにしっかりとやるけれど少し怖いし、何よりフェロモンの相性が悪く居心地が悪いのだ。

それと比べて立花さんのフェロモンは性格の通り優しくて、いい香りで1つの診察室に居ても不快にならない。
居心地も良いので今日はラッキーと言える。

「一組目の番が一時からの予約なんだよね、神崎くん、来たばかりで申し訳ないけど、早速いいかな?」


「はい。大丈夫です。」

「よし、じゃあいこうか?」


立花さんの横をトコトコと歩いて、診察室に入り、早速診察を始めた。


「すみません、項の確認をさせてください。」

「えっ、項ですか?」

「はい、番になれているかどうかを確認するだけです。」

「え…」

「………」

こわいよ、何このα。すごく威嚇してくる…。
確かに番のオメガさん項見られるの嫌そうだし、僕も男だけどさ…その前にオメガだから、ね?素直に診させてよ。

…αの威嚇って怖い…。
思わず一歩後ろへと下がってしまう。

息が詰まる感じ…、こういう威嚇をされることは結構多いけど、この人のα性が強いのか、僕のヒートが近いからなのか、結構今日は苦しく感じる。

そんなときに、立花先生が間に入ってくれた。

「大丈夫ですから。番さんにおかしなことはしませんよ、確認したらすぐ終わりますから、ほら、旦那さんもそんなに威嚇しないであげてください。神崎先生はオメガ科なんです。神崎先生、大丈夫?」

「はい…。少し診察させてください。」


立花先生が睨みを効かせてくれている間に、Ωさんの項を見させてもらう。

おー!凄い。きれいな噛み跡だ。


「問題はありません。しっかりと番になれています。」

「よかったぁ。先生、ありがとうございました!」

うん、早くそのαさんを連れて帰ってください。

番を診察室から追い出したあと、立花先生と二人でため息をつく。


「全然なれないね…」
「本当、いつも大変です。」


「神崎くんはさ、今日みたいに独占欲の強いαは嫌?」

「いや、そんなことはないです。ただ、今日みたいに威嚇されるのが苦手なので。」

「そっか。今日は怖かったもんね。俺も久しぶりに睨んだよ。」

「立花先生がいてくれて、本当に助かりました。ありがとうございました。」

「いやいやいや、神崎くんだって大変だったでしょ。さっきはお疲れ。」


「立花先生、神崎先生、次の方お呼びしてもいいですか?」

「はい、大丈夫です。お願いします。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巣作りΩと優しいα

伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。 そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ

いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。 いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。 ※pixivにも同様の作品を掲載しています

きみはオメガ

モト
BL
隣に住む幼馴染の小次郎君は無表情。何を考えているのか長年ずっと傍にいる僕もよく分からない。 そんな中、僕がベータで小次郎君がアルファだと診断を受ける。診断結果を知った小次郎君は初めて涙を見せるが僕が言った一言で、君は安心した。 執着、幼馴染、オメガバース、アルファとベータ

βな俺は王太子に愛されてΩとなる

ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。 けれど彼は、Ωではなくβだった。 それを知るのは、ユリウスただ一人。 真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。 だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。 偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは―― 愛か、執着か。 ※性描写あり ※独自オメガバース設定あり ※ビッチングあり

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?

モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。 平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。 ムーンライトノベルズにも掲載しております。

世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)

かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。 ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。

運命の番と出会ったら…幸運な再会でした

こたま
BL
春川茜(あかね)はオメガ男子だ。ベータの姉、藍(あい)と帰国子女として仲良く大学に通っている。茜は、父の赴任で米国滞在中に診断不能の不全オメガと言われていた。二次性徴も発情期も正常に訪れ、血液検査ではホルモンもフェロモンも正常に反応している。しかしどんなアルファに対しても魅力を感じず、嫌悪感を覚える。そしてアルファもまた茜をどこか近寄りがたい誰かの物であるように知覚するのだ。一人で生きていこうと努力をしていた茜に訪れた出会いとは。同じ年のアルファ×オメガ。ハッピーエンドBLです。

処理中です...