3 / 9
三
「お邪魔します。」
立花さんの部屋って感じがする…!
ヒート三日前。
いつ始まってもおかしくないということで、立花さんに心配され、少し早めではあるが立花さんのお家へとやって来た。
ご飯も済ませてきたし、今日は寝るだけ。
だけど、立花さんのいい香りがそこら中を満たしているから、ドキドキしちゃってすぐには寝れないかもな、なんて思った。
ヒート前なのと、αの濃いフェロモンを一気に嗅いだこともあって意識がぼーっとしてしまう俺の手を引っ張って立花さんがお部屋へと連れて行ってくれる。
「ごめんなさい、僕、ヒート前だと、ぼーっとしちゃうこと多くて。」
嫌われてないかな?
いつも僕はキリッと冷静な態度で仕事場にはいるつもりだ。
仕事場と違ってびっくりしちゃったかな?
嫌われちゃってないかな?途端に心配になって、立花さんに謝る。
「大丈夫だよ。神崎くん、謝らないで。むしろ可愛いよ。いつものしっかりしている神崎くんも素敵だけど、ゆったりしてる神崎くんも可愛い。」
「本当、ですか?」
「うん。もちろんだよ。可愛いよ。」
…何でだろう、すごく満たされる…。
ほわほわしたに気持ちになって、立花さんにぎゅっとしたくなっちゃう。
「神崎くん?」
「あっ、」
立花さんにぎゅっとしちゃった…!
理性の抑えが効かないみたいだ。
「ごめんなさいっ」
急いで離れようとすれば、立花さんが僕をぎゅっと抱きしめる。
「俺も神崎くんと抱き合いたかったよ。神崎くん、ぎゅっとしてくれてありがとう。嬉しいな。」
立花さんの首元から香るフェロモンが、いい香りすぎる。
立花さんがくれる言葉一つ一つが僕の心を満たしてくれる。
どうしよう?幸せすぎる…
いつも、ぼーっとしてしまう自分が大嫌いで、自分の事が嫌いになっちゃうのに、全然そんな気持ちにならない。
立花さんがかけてくれたお布団はふわふわで、もこもこ。
暖かくて、気持ちがいい。
新品なのか、立花さんの香りがあまりしないのが残念だけど、すぐそばにいてくれてるから平気だ。
「また明日。おやすみ?神崎くん。」
「おやすみなさい。立花さん。」
立花さんがお腹を優しくトントンしてくれて、僕はすーっと夢の中に入っていった。
✿
夜中。
ぱちんと目を覚ます。
あれ、ここは…あっ、そうか、立花さんのところに来たんだった。
優しくて、あったかい人。
あと…僕が大好きな人。
たぶん、まだ僕がヒートにならないからと思って立花さんは立花さんの部屋で寝たのだろう。
この部屋に立花さんはいなかった。
あれ…?いないの?
どこかで期待していた自分に気づく。
もしかしたら、一緒に寝てくれたんじゃないかって。
…、そうだよね。
ぽろぽろ涙がこぼれだす。
やっぱり、僕は迷惑?
立花さんのラットのときだけのΩ?
自分でも理不尽だよなと思いながらも、寂しくて、悲しい気持ちが止まらない。
寂しい。寂しい。立花さん、立花さん、
「うっ、んっ、……」
抑えながら嗚咽を上げて泣いていると、ドタドタという音がして、立花さんが来てくれた。
「神崎くん!」
あなたにおすすめの小説
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……
久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ
いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。
いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
きみはオメガ
モト
BL
隣に住む幼馴染の小次郎君は無表情。何を考えているのか長年ずっと傍にいる僕もよく分からない。
そんな中、僕がベータで小次郎君がアルファだと診断を受ける。診断結果を知った小次郎君は初めて涙を見せるが僕が言った一言で、君は安心した。
執着、幼馴染、オメガバース、アルファとベータ
オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました
こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。
断られるのが確定してるのに、ずっと好きだった相手と見合いすることになったΩの話。
叶崎みお
BL
ΩらしくないΩは、Ωが苦手なハイスペックαに恋をした。初めて恋をした相手と見合いをすることになり浮かれるΩだったが、αは見合いを断りたい様子で──。
オメガバース設定の話ですが、作中ではヒートしてません。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)
かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。
ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。
俺はつがいに憎まれている
Q矢(Q.➽)
BL
最愛のベータの恋人がいながら矢崎 衛というアルファと体の関係を持ってしまったオメガ・三村圭(みむら けい)。
それは、出会った瞬間に互いが運命の相手だと本能で嗅ぎ分け、強烈に惹かれ合ってしまったゆえの事だった。
圭は犯してしまった"一夜の過ち"と恋人への罪悪感に悩むが、彼を傷つける事を恐れ、全てを自分の胸の奥に封印する事にし、二度と矢崎とは会わないと決めた。
しかし、一度出会ってしまった運命の番同士を、天は見逃してはくれなかった。
心ならずも逢瀬を繰り返す内、圭はとうとう運命に陥落してしまう。
しかし、その後に待っていたのは最愛の恋人との別れと、番になった矢崎の
『君と出会いさえしなければ…』
という心無い言葉。
実は矢崎も、圭と出会ってしまった事で、最愛の妻との番を解除せざるを得なかったという傷を抱えていた。
※この作品は、『運命だとか、番とか、俺には関係ないけれど』という作品の冒頭に登場する、主人公斗真の元恋人・三村 圭sideのショートストーリーです。
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。