オッドアイと恋の色

文字の大きさ
2 / 9

第一話 お昼休みと真実

しおりを挟む
   憂鬱な午前の授業が終わった後の昼休み。クラスの人たちが各々グループでごはんを食べたりしている中、俺は一人、中庭でコンビニ弁当を食べていた。
 俺の家は両親が共働きなので、弁当を作ってくれる人がおらず、入学当初は自分で弁当を作っていいたものの、途中で面倒臭くなってやめてしまった。
 まぁ、自分で弁当を作った所で冷食ばっかりになってしまうので、結局はコンビニ弁当と栄養価も値段も変わらなかったりする。
 そんなことを考えながらコンビニ弁当をつついていると
「隣、良い?」
 背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 俺は振り返り顔を確認する。
 内心の予想は的中、昨日スマホを拾ってくれた子だ。
 カラコンを入れているのか、今日は両目とも黒色だった。
 と言っても昨日たまたまカラコンを入れていただけかもしれないので、本当にこの子がオッドアイなのかは定かではない。むしろオッドアイじゃなくなった事で奇抜な銀色の髪の毛へと意識が行ってしまう。
 うちの高校は髪を染めちゃいけないという校則は無いため、ちらほらと髪を染めている人は見かけるのだが、いっても金髪とか茶髪だ。
 流石に銀髪は初めて見た。
 またも彼女に呆気にとられていると、俺の返事を待つことなく隣に座りこみペットボトルのお茶を勢いよくあおった。
 何の目的で隣に座っているのかは謎だが、昨日スマホを拾ってくれた恩もあるし無下には出来ない。
 あれ? なんか俺立場弱くなってないか?
 そんな疑問が頭をよぎった瞬間、再度彼女が口を開いた。
「昨日の事、聞かないんだね」
 昨日の事とは察するにオッドアイの事だろうか。
 ここでしらを切るのもアリっちゃアリなのだろうが、多分嘘をついたとしても彼女の事は騙しきれないと思う。なら素直に話すほかないだろう。
 素直になると言いつつも、一応保険を入れておく。オッドアイ自体、俺の勘違いって線も捨てきれないし。
「昨日の事ってスマホの事?」
「いや、そっちじゃなくて」
 彼女は首を軽く横に振る。
「じゃあ君の目の事か」
「やっぱりバレちゃってたか」
「いやまぁ、ガッツリと」
 彼女は少しほっとした顔をして肩の力を抜いた。
「もうこの際だから遠慮なく聞いちゃうけど、あれってカラコンとかでは無いんだよな?」
「常日頃からあんな派手なカラコンしないよ。普通」
「て事は君はやっぱり」
「そう、私はオッドアイ。しかも色が特殊だから目立っちゃうんだよね」
「特殊って、黒と碧だったらありそうな気はするけどな。それより俺は髪の毛の方が俺は気になったけどな」
「あーこの髪色ね。カラコン外した時一番私に似合う色なんだよ」
「そうか? 左が碧で右が黒なら別に黒髪とかでも似合うと思うぞ?」
 俺がそう言うと少しきょとんとした後、くすっと笑って右目に手をかけた。
 そして彼女は右目に付けていたカラコンを外すと、今まで黒色だったはずの瞳が光を反射するほどの綺麗な琥珀色へと早変わりした。
「私は左目が碧、右が琥珀色。日本人とは程遠いい色なんだよ」
「俺が昨日君を見たときは左側だけカラコンが外れている状態だったって訳か」
「そゆこと。そしてまだ問題はあるんだよね」
「お前、前世でどんな事したんだよ」
「私色盲なんだよね。しかも一色覚」
 俺のツッコミをスルーし彼女はにへっと笑いながらそう答えた。
 聞いてるこっちからしたら笑い話なんかじゃ無い。
 俺も専門家って訳では無いのでそこまで詳しくは知らないのだが、色盲について少しだけネットの記事で見たことがある。
 簡単に説明すると他人より色の区別できなかったりするって病気らしい。
「色盲ってのは何となくわかるが、一色覚って言うのはなんだ?」
 聞きなれない単語に俺は疑問符を浮かべる。
 彼女はん~っと頭を悩ませた後
「全ての色が白黒に見えるって言ったら伝わるかな?」
 と少し難しそうな顔をしながら答えてくれた。
 俺は正直何を言って良いのか分からず、食いかけのコンビニ弁当へと視線を落とす。
「なんで君がそんな顔してるのさ」
「いや、何ていうか色々大変だなって」
「まぁ、大変っちゃ大変だけど慣れたかな。カラコンを付けてればオッドアイって事もばれないしね。君にはバレちゃったけど」
「あれは君がカラコンをちゃんと付けてれば起こらなかった事だ」
「私がカラコン落とした理由、君を追いかけてたからなんだけどね」
「そ、そうだったのか。それは悪かった」
「別に良いよ謝らなくたって」
 彼女は俺を小馬鹿にするかのようにクスっと笑い、その場に立ち上がった。
「それじゃあ、私は教室戻るね」
「ん、ああ」
「あ、そういえば私達お互いの名前知らなかったよね」
「あー確かに。完全スルーでここまで会話してたな」
「私は2年2組、七色恋珀なないろこはく。君は?」
「俺は2年3組、色与碧斗しきよあおと。よろしく」
「それと、私の秘密誰にも言わないでね?」
「言わないよ」
「そっか、それなら良かった。それじゃまた」
 彼女は満足した顔で玄関口へと走って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

処理中です...