鬼上官と、深夜のオフィス

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女も30歳近くになると、なんとなく独身のまま会社にいるのがほんの少し、ほんのすこーしだけ肩身が狭くなってきたように気がしてくるのは気のせいだろうか。
腫れ物に触るというか、なんか気を使われちゃってる、というか。うっすら漂うそんな空気を、敏感に感じとってしまうこの悲しみよ。  

つい先日も後輩の女子から気まずい顔をされながらも、「実は結婚が決まりまして……」なんて報告をうけた私である。

「先輩より先に結婚してしまうのは申し訳無いんですけども……。」

なんて頭をペコペコ下げながら恐縮気味に言う彼女。
え?いや、そんなの今まで気にしたことなかったんだけど?!気を使われたことに逆に驚いた私は、

「結婚なんて一生に一度の大イベントだもん、そんな人様の幸せは全力でお祝いしちゃうよ!本当におめでとう!!」

なんて思わず必要以上に力を入れて、明るく元気にお祝いの言葉をかけてしまうのだった。
こちとら人様の幸せを喜べないような、そんな心は狭くないっていうのに痛くない腹を探られるこの感じは、一体何なのだ。もう本当にうんざりだ。


『じゃそんなに気を使われるのが嫌ならば、さっさと結婚しちゃえばいいんじゃね?』


たまに誰かに愚痴ってみれば、帰ってくるのはこの台詞。
……そんな人が居たら、今こんなこと愚痴ってないって話である。彼氏もいなけりゃ好きな人もいないし、ましてやデートする相手なんかもいない。

トキメキ乾燥注意報。

このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。


……そんな突如襲ってきた焦燥感に私は耐えられず、ある日「デートする相手がいないなら、いっそ無理矢理デートの予定を作ってしまおう!」と、昨今の流行りの婚活アプリを携帯にインストールしてみたのだった。

早速登録すると、まあまあそれなりの人数からお誘いのメッセージが入ってくる。
あらまあ私もまだまだイケてるんじゃないの?
謎の優越感に浸りつつ、その中の一人ととりあえずご飯に行く予約を取り付けてみた。

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