鬼上官と、深夜のオフィス

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そんな佐久間の独り言 3

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――


「こっちなんてあれからずっと佐久間君のこと、意識しちゃってるっていうのにっ!」

そして翌週金曜日の残業終わり。
先輩が顔を真っ赤にさせながら、俺を睨みつけている。
怒った顔をしているけれど、先輩、そりゃ好きだと告白してる様なもんですよ。

思わず顔がニヤついて、
「俺のこと、ちょっとは好きになっちゃいました?」
なんて軽口を叩けば、先輩からは「違う!」と想像以上の強い拒絶の声。

……違う?
違わないでしょ?
俺のこと、気になるんでしょ?
それって、結局、好きだってことでしょ?

先輩に、どうしても好きだって言ってほしくなり、急激に仄暗くドロドロとした執着心のようなものが胸に湧き上がってくるのを感じる。
俺は先輩に振り向いてほしくて、頼れる男だと思われたくて、がむしゃらに働いて営業トップの座を保持していると言うのに。
なんで先輩は俺のことを好きだって言ってくれないのだろう。


……だったら身体からオトすまで。

やり場のないない憤りを胸に秘め、背後から先輩を抱きしめる。舌でその肌をペロリと舐め、柔らかな胸を揉みしだき、頂を摘めば甘やかな反応が返ってくる。

ね、先輩。好きでもない相手にこんなに可愛い反応するの?

違うよね?

ちょっとは俺の事好きだからこそ、気持ちよくなっちゃうんだよね?

祈る様な気持ちで先週同様乱れる先輩を更に追い立てる。もう、俺の事しか考えられない様にしてあげたい。
ぐちゅぐちゅに蕩かして、快楽の虜にしてあげたい。

……けれど先輩はギリギリのところで踏み留まった。
そして真剣な表情で「私の何が好きだって言うの?」と聞くものだから、こちらの思いを全て吐き出すことにした。

どうしても先輩と一緒にいたくて課長に無理を言って仕事のパートナーにしてもらったこと。
先輩に格好いいところを見せたくて仕事を頑張っていたこと。
泥臭いまでのこちらの思いを全て先輩にさらけ出した。
全て舞台の整った状態で格好良く告白したかったのに、なんとも勢いだけの格好悪い告白になってしまった。
その上逃げようとする先輩に「もっと好きになってみせるから会社以外の先輩の姿も見せて?」なんて、みっともなくもつい縋りついてしまった。

これまでのイメージ戦略が水の泡だ。
脱力する俺を見つめる先輩は、それでも少し納得いかなそうな様子だったが、気が変わったのかちょっと照れくささを隠すように怒った口調で俺にキスをしてくれた。

「じゃあ会社以外の私については、そのうち。追々ね。」

……追々?

追々ってことは、これから先に続く何かがあるってこと?

どん底の気持ちから天に舞い上がりそうな気持ちになる俺は、先輩をぎゅうと抱きしめる。

「じゃあ取り敢えず、これからゆっくり別な所で、今の続きをしてもいいですか?」

調子に乗って耳元で囁いてみると、先輩の顔はみるみるまたしても赤くなり、そして消えそうな声で、

「……いいけど……。もう。バカぁ。」

可愛らしい上目遣いでこちらを睨み、先輩は了承の言葉を口にするのだった。

――


さて、現状を振り返ってみれば、今の所恋人同士になったとは言い切れないところではあるが、俺は相変わらず先輩が好きだし、先輩も俺の気持ちを知った上で徐々にその距離をつめようとしてくれている様である。

焦らずに少しずつ二人の関係を築いていければいいのかな、と俺は一人納得し、そして作戦変更とばかりに今後の長期戦略案を考える日々が始まるのだった。
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