あの娘の彼氏はスパダリと評判ですが、その実態はただのヘタレです

99

文字の大きさ
4 / 33

ルームナンバー315(4)

しおりを挟む
「どの部屋にしましょうか?」

薄暗い室内の中、煌々と光る四角のパネル群を見つめる男女2人組。……私達のことである。


ここはいわゆる、ご休憩がメインに設定されているホテルのロビー。あの居酒屋から更に駅を離れた場所は実はホテル街だったのだ。

あれから「それでは善は急げですよね」などと言われて、イケメンに半ば引きずられるように店を出た私達は、ホテル街へと足を向けたのだった。
繋がれた手は、相変わらず逃げられないようにする為か、指と指を絡ませた恋人つなぎである。
傍からみれば、イチャイチャしたがるお盛んなカップルだが、その実はなんでも追求したがる研究マニアとそれに付き合わされる会社の同僚という色気の欠片もない組み合わせ。

「ホテル街が近くのお店を選ぶなんて、さすが先生。うまい選択でしたね」

こちらを見て意味深に、神山透はニッコリ笑う。
違う!断じてこんな展開は予想だにしていなかったよ!
下心ありきで店を選んだように思われるのは甚だ心外である。

思い切り恨みがましい目を向けると、イケメンはフフッと笑って「冗談ですって」と楽しそうに言うのだった。

よほど「真相探求」するのが楽しみなのか、終始ゴキゲンなイケメンにドナドナされながら、相変わらず酔ってポンコツな頭の私も一応考えてみた。

『このままこの状況に流されてよいものやら』

①私は処女ではない
(と、言ってもお察しの通り経験人数は豊富ではない)

②私は現在交際相手はいない
(この何年もいないじゃないかというツッコミは不可である)

③神山透も交際相手はいない
(……と、言い張っている)

そして④、
神山透が、どうやって女性を抱くのか興味がある。


……③は気になるところだが、紺野洋子の今までの所業を鑑みれば、まあ、ギリギリ問題ないってところだろうか。

やったことはないが、いわゆる一夜の関係的なものも、どこかの漫画で見たようなセリフだが「スポーツの一種」だと思えばなんとか割り切れなくもない。
そしてなにより、性的に偏った知識しかないと見受けられるこの残念なイケメンがどんなことをしようとしているのか、なんだかんだで私も興味があるのだ。

……よし腹はくくった。
拙いながらも、先生、講義頑張っちゃうぞ!!

酔った人間の行動ほど無敵なものはない。
シラフだったら絶対に選択しない行動を選ぶ私なのだった。


そして現在、パネルの前。
イケメンはのんびり「部屋ごとになにかオプションが変わるんですかね?」などと言って興味深くパネルを覗き込んでいる。さすがは研究マニアである。

そんな神山透を尻目に、なんとなく他の客と鉢合わせするのは恥ずかしい私は「この部屋にしましょう!」と数ある部屋の中、315と書かれたパネルのボタンをさっさと押すのだった。

「ところでどうしてこの部屋にしようとしたんですか?」
「まあ、なんとなくですかね。」

部屋まで移動するエレベーターの中、間を持たせるためか神山透はそんな事を聞いてくる。

強いて言えばルームナンバーの315は、ゴロあわせで言うと「さぁこう」となる。決意表明の表れであると伝えると、神山透はブフッっと吹き出し、「たまに山本さんて、おじさんみたいなこと言いますよね」と笑うのだった。
えー?そうかぁ?
こちらは地味とはいえ、まだまだ花ざかりの20代。
おじさんと言われて嬉しい要素は何もないが、そんなことを言う神山透は店を出てからというもの、箸が転がってもおかしい年頃、女子校生のようによく笑う。

ほんの少しのことでも楽しそうにする乙女感満載のイケメンの姿。それは仕事の場面と、先程の酔う前の打ちひしがれる神山透しか知らない私にとって、新たな発見なのでもあった。


そうして入った315号室は、ラベンダー色に淡く照らされた大きなベッドとソファー、そして事後に寛いでテレビを見られるようにか巨大なスクリーンがある、タバコの匂いがする部屋だった。

「えーと、早速ですけどどうします?」
「まずはシャワーだとは思いますが、そもそも男女どちらが先に入るものなんでしょう?」

神山透に声を掛けると早速生徒から質問が飛ぶ。

うーん。シャワーどっちが先か問題!
地味に悩ましい。乏しいながらも過去の経験を思い出すが、入りたい人が先に入っていたような。……これじゃいまいち説得力がない。
昔の映画なんかのワンシーンを思い起こすと、男性が先で次いで女性に「君も入っておいでよ」とか言ってたような。うん、これだな。

先にイケメンを浴室に誘導し、とりあえずベッドに座って一息つくが、酔っぱらいにはこの布団の柔らかさがたまらない。
……いかん、眠くなってきた。

数分後、イケメンがバスローブ姿で浴室から戻ってきたので、そそくさと自分も浴室に飛び込み、シャワーを浴びる。

念の為隅々まで綺麗に洗って浴室からでて、バスローブを羽織る。さあ、これからどうしよう。

ドキドキしながら寝室に戻ると、目の前に見えるは、ラベンダー色に照らされた、体を丸めて無邪気な顔でスヤスヤ眠るイケメンの姿。

目を何度も擦って確認しても、そこにいるのは薄紫色に染まる、寝ている神山透なのであった。

……えええええーーー?????

先程までの緊張感が一気にアホらしくなる。

それからしばらく寝顔を覗き込んでいたが、神山透は全く起きる気配がない。仕方がないので布団をかけてやると、ゴロリと私もその隣に横になってみる。

今日は色々な出来事がありすぎた。

ほぅとため息を一つついてみると緊張の糸が切れたせいか、再び眠気が襲ってくる。
そして私はふわり大きく欠伸をすると、そっと瞼を閉じるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

モテ男とデキ女の奥手な恋

松丹子
恋愛
 来るもの拒まず去るもの追わずなモテ男、神崎政人。  学歴、仕事共に、エリート過ぎることに悩む同期、橘彩乃。  ただの同期として接していた二人は、ある日を境に接近していくが、互いに近づく勇気がないまま、関係をこじらせていく。  そんなじれじれな話です。 *学歴についての偏った見解が出てきますので、ご了承の上ご覧ください。(1/23追記) *エセ関西弁とエセ博多弁が出てきます。 *拙著『神崎くんは残念なイケメン』の登場人物が出てきますが、単体で読めます。  ただし、こちらの方が後の話になるため、前著のネタバレを含みます。 *作品に出てくる団体は実在の団体と関係ありません。 関連作品(どれも政人が出ます。時系列順。カッコ内主役) 『期待外れな吉田さん、自由人な前田くん』(隼人友人、サリー) 『初恋旅行に出かけます』(山口ヒカル) 『物狂ほしや色と情』(名取葉子) 『さくやこの』(江原あきら) 『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!』(阿久津)

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

冷徹社長の「契約」シンデレラ~一夜の過ちから始まる溺愛ルート!? 嘘つきな私と不器用な御曹司のオフィスラブ~

藤森瑠璃香
恋愛
派遣社員の桜井美月は、ある夜、会社の懇親会で泥酔し、翌朝目覚めると隣には「氷の彫刻」と恐れられる若き社長・一条蓮がいた。まさかの一夜の過ち(実際には何もなかったが、美月は勘違い)に青ざめる美月に、蓮は「責任は取る。だがこれは恋愛ではない、契約だ」と、彼の抱えるある事情のため、期間限定で恋人のフリをするよう持ちかける。破格の報酬と蓮の真剣な様子に、美月は契約を受け入れる。

氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。 お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、 “氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。 最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、 実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき―― 舞子の中で、恋が芽生えはじめる。 でも、彼には誰も知らない過去があった。 そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。 ◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか? ◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか? そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。 笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。 関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。 仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。 「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。

誘惑の延長線上、君を囲う。

桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には "恋"も"愛"も存在しない。 高校の同級生が上司となって 私の前に現れただけの話。 .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ Иatural+ 企画開発部部長 日下部 郁弥(30) × 転職したてのエリアマネージャー 佐藤 琴葉(30) .。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚ 偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の 貴方を見つけて… 高校時代の面影がない私は… 弱っていそうな貴方を誘惑した。 : : ♡o。+..:* : 「本当は大好きだった……」 ───そんな気持ちを隠したままに 欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。 【誘惑の延長線上、君を囲う。】

フェチではなくて愛ゆえに

茜色
恋愛
凪島みなせ(ナギシマ・ミナセ) 26歳 春霞一馬(ハルガスミ・カズマ) 28歳 同じオフィスビルの7階と9階。違う会社で働く男女が、恥ずかしいハプニングが縁で恥ずかしい展開になり、あたふたドキドキする話。 ☆全12話です。設定もストーリーも緩くて薄いです。オフィスラブと謳ってますが、仕事のシーンはほぼありません。 ☆ムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

取引先のエリート社員は憧れの小説家だった

七転び八起き
恋愛
ある夜、傷心の主人公・神谷美鈴がバーで出会った男は、どこか憧れの小説家"翠川雅人"に面影が似ている人だった。 その男と一夜の関係を結んだが、彼は取引先のマネージャーの橘で、憧れの小説家の翠川雅人だと知り、美鈴も本格的に小説家になろうとする。 恋と創作で揺れ動く二人が行き着いた先にあるものは──

処理中です...