33 / 127
二章 Renewal 5月
第33話 向こう側
しおりを挟む
翌日。
5月25日。
昼休みが始まると
子供達は一斉に教室を飛び出していった。
俺は大吾、翔太、洋、そして茜を
教室の後ろへ集めた。
大吾と洋が
「何だよ早くいかねーと場所が取れねーだろ」
「話があるなら早く話せよ」
と催促した。
今日はドッジボールの日だった。
「今日の放課後
『Tombstone in 城之三崎』へ行こう」
俺の言葉に4人は一瞬、固まった。
「何言ってるんだよ。
お前だってこの前見ただろ」
「さすがに悪い冗談だぜ、あっくん」
「あれは無理だよ。
落ちたら死んじゃうよ」
「そうよ。
それに私、高い所は苦手だわ」
すぐに4人は反論した。
「あの程度の障害なら問題はない」
俺は詳しい説明はせずにそう言った。
「勿体ぶるなよ」
そう言って洋は口を尖らせた。
「わかったけどよ。
期待させておいてダメでしたじゃ許さねーぞ」
不満そうな洋を意外にも大吾が制した。
そして話は終わったとばかりに
大吾は教室を出ていった。
翔太と茜も後に続いた。
洋はまだ何か言いたそうだったが、
結局何も言わず3人の後を追いかけていった。
教室には俺を除けば2人の生徒が残っていた。
机で本を読んでいる相馬沙織。
そして。
窓際の一番後ろの席に座って
ただ窓の外をぼうっと眺めている池田圭。
俺は相馬に話しかけようかと迷ったが、
読書の邪魔をしたら
また印象が悪くなると思いやめた。
その時。
池田と目が合った。
池田は緊張した面持ちで頭を下げた。
俺は軽く手を挙げたが、
池田はすぐに窓の外に顔を戻した。
帰りの挨拶が終わると大吾達は我先にと
教室を出ていった。
俺も急いで席を立った。
「あっくん!」
その時。
俺を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと奥川が手を振っていた。
俺は
「後で連絡するから」
と手を振り返してから、
すぐに大吾達を追いかけた。
奥川との関係もケジメをつけなければならない。
このままズルズルと恋人ごっこを続けていけば
俺はいつか必ず彼女を傷付ける。
そうなる前に終わりにしなければ。
今ならまだ。
彼女の傷は浅くて済む。
俺達が「Tombstone in 城之三崎」に着くと、
丁度中から住人の1人が出てきたところだった。
オートロックのドアが閉まる直前に
洋が素早く体を滑り込ませて、
俺達は正面から堂々と侵入した。
エレベーターで最上階まで上がり、
外階段に出ると
俺達はすぐに問題の鉄格子に行く手を阻まれた。
「で、どうするんだ?」
大吾は大きな溜息を吐いて俺を睨んだ。
俺は徐に鞄から金切り鋏を取り出した。
「大吾。俺を肩車してくれ」
大吾は多少不満そうだったが
素直に俺を抱え上げた。
大吾の肩に乗ると
鉄格子の金網と俺の目線が同じ高さになった。
俺は金網に金切り鋏を突き立てた。
作業は思ったよりも早く終わった。
金網が取り除かれて
ぽっかりと大きな穴が口を開けた。
最後に、
俺は穴に沿って手を当てて
危険がないことを確認してから
大吾の肩から下りた。
「さあ、これなら通り抜けられるだろ」
俺は皆の顔を見回した。
「うん!」
「すげーぜ、あっくん」
「私、スカートだけど大丈夫かしら」
翔太と洋は目を輝かせながら、
そして茜は多少不安そうに穴を見上げていた。
大吾だけは黙って穴を睨んでいた。
「よし、行こうぜ。翔太」
洋が真っ先に鉄格子に飛びついた。
そして身軽な身のこなしで、
穴を抜けて向こう側に着地した。
「洋。待ってよ」
すぐに翔太も後を追った。
スカートを気にしていた茜も、
俺と大吾に
「見ないでね」
と釘を刺してから鉄格子に手を掛けた。
翔太は鉄格子の向こうから
茜が穴を抜けるのを心配そうに見守っていた。
茜が向こう側へ下り立ったとき、
上から洋の声がした。
「おーい。
見晴らしが最高だぜ。
早く来いよ」
「洋、1人でずるいぞ」
「翔太さん、私達も行きましょ」
翔太と茜が階段を駆け上がっていき、
俺と大吾が取り残された。
「どうした、行けよ」
大吾は興味無さそうに呟いた。
「大吾、上に行けば排水管を使って
お前を引き上げる方法があるかもしれない。
皆で考えるからここで待ってろよ」
俺は大吾を残して穴を抜けた。
5月25日。
昼休みが始まると
子供達は一斉に教室を飛び出していった。
俺は大吾、翔太、洋、そして茜を
教室の後ろへ集めた。
大吾と洋が
「何だよ早くいかねーと場所が取れねーだろ」
「話があるなら早く話せよ」
と催促した。
今日はドッジボールの日だった。
「今日の放課後
『Tombstone in 城之三崎』へ行こう」
俺の言葉に4人は一瞬、固まった。
「何言ってるんだよ。
お前だってこの前見ただろ」
「さすがに悪い冗談だぜ、あっくん」
「あれは無理だよ。
落ちたら死んじゃうよ」
「そうよ。
それに私、高い所は苦手だわ」
すぐに4人は反論した。
「あの程度の障害なら問題はない」
俺は詳しい説明はせずにそう言った。
「勿体ぶるなよ」
そう言って洋は口を尖らせた。
「わかったけどよ。
期待させておいてダメでしたじゃ許さねーぞ」
不満そうな洋を意外にも大吾が制した。
そして話は終わったとばかりに
大吾は教室を出ていった。
翔太と茜も後に続いた。
洋はまだ何か言いたそうだったが、
結局何も言わず3人の後を追いかけていった。
教室には俺を除けば2人の生徒が残っていた。
机で本を読んでいる相馬沙織。
そして。
窓際の一番後ろの席に座って
ただ窓の外をぼうっと眺めている池田圭。
俺は相馬に話しかけようかと迷ったが、
読書の邪魔をしたら
また印象が悪くなると思いやめた。
その時。
池田と目が合った。
池田は緊張した面持ちで頭を下げた。
俺は軽く手を挙げたが、
池田はすぐに窓の外に顔を戻した。
帰りの挨拶が終わると大吾達は我先にと
教室を出ていった。
俺も急いで席を立った。
「あっくん!」
その時。
俺を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと奥川が手を振っていた。
俺は
「後で連絡するから」
と手を振り返してから、
すぐに大吾達を追いかけた。
奥川との関係もケジメをつけなければならない。
このままズルズルと恋人ごっこを続けていけば
俺はいつか必ず彼女を傷付ける。
そうなる前に終わりにしなければ。
今ならまだ。
彼女の傷は浅くて済む。
俺達が「Tombstone in 城之三崎」に着くと、
丁度中から住人の1人が出てきたところだった。
オートロックのドアが閉まる直前に
洋が素早く体を滑り込ませて、
俺達は正面から堂々と侵入した。
エレベーターで最上階まで上がり、
外階段に出ると
俺達はすぐに問題の鉄格子に行く手を阻まれた。
「で、どうするんだ?」
大吾は大きな溜息を吐いて俺を睨んだ。
俺は徐に鞄から金切り鋏を取り出した。
「大吾。俺を肩車してくれ」
大吾は多少不満そうだったが
素直に俺を抱え上げた。
大吾の肩に乗ると
鉄格子の金網と俺の目線が同じ高さになった。
俺は金網に金切り鋏を突き立てた。
作業は思ったよりも早く終わった。
金網が取り除かれて
ぽっかりと大きな穴が口を開けた。
最後に、
俺は穴に沿って手を当てて
危険がないことを確認してから
大吾の肩から下りた。
「さあ、これなら通り抜けられるだろ」
俺は皆の顔を見回した。
「うん!」
「すげーぜ、あっくん」
「私、スカートだけど大丈夫かしら」
翔太と洋は目を輝かせながら、
そして茜は多少不安そうに穴を見上げていた。
大吾だけは黙って穴を睨んでいた。
「よし、行こうぜ。翔太」
洋が真っ先に鉄格子に飛びついた。
そして身軽な身のこなしで、
穴を抜けて向こう側に着地した。
「洋。待ってよ」
すぐに翔太も後を追った。
スカートを気にしていた茜も、
俺と大吾に
「見ないでね」
と釘を刺してから鉄格子に手を掛けた。
翔太は鉄格子の向こうから
茜が穴を抜けるのを心配そうに見守っていた。
茜が向こう側へ下り立ったとき、
上から洋の声がした。
「おーい。
見晴らしが最高だぜ。
早く来いよ」
「洋、1人でずるいぞ」
「翔太さん、私達も行きましょ」
翔太と茜が階段を駆け上がっていき、
俺と大吾が取り残された。
「どうした、行けよ」
大吾は興味無さそうに呟いた。
「大吾、上に行けば排水管を使って
お前を引き上げる方法があるかもしれない。
皆で考えるからここで待ってろよ」
俺は大吾を残して穴を抜けた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる