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三章 Remnant 6月
第58話 変化
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6月も残すところあと数日となった
ある日の放課後。
俺は奥川を呼び出した。
場所はあまりいい思い出のない体育館。
俺は体育館前の階段に座って待っていた。
俺より先に教室を出たはずの奥川は
まだ来てなかった。
奥川と話すのは彼女に別れを告げたあの日以来
初めてのことだった。
俺は話をどう切り出そうかと
頭の中で色々と言葉を並べてみたが、
どれも相応しいとは思えなかった。
その時。
校舎の方から歩いてくる奥川の姿が見えた。
俺は立ち上がって小さく手を振った。
奥川は俺に気付くと足を止めた。
「何?話って」
辛うじて声が届く距離だった。
この距離が今の俺達の関係を
如実に物語っていた。
俺が少しだけ歩み寄ると、
奥川が若干身構えたのがわかった。
「元気か?奥川」
俺は務めて自然に話しかけた。
「何それ」
奥川は素っ気なく呟くと俺から目をそらした。
取り付く島がなかった。
それでもここに来たということは
話を聞く意思はあるということだ。
俺は大袈裟にゴホンと咳払いをした。
「隣のクラスの葉山実果と仲がいいんだろ?」
俺の質問が予想外だったのか
奥川は怪訝な表情を浮かべた。
それから探るような眼差しで俺を睨んだ。
俺はその鋭い眼光に気圧されて一歩後ずさった。
「お、奥川が葉山と幼馴染って聞いたんだ」
俺は言葉を足した。
「・・たしかに。
実果のことは昔から知ってるけど?」
「それなら最近の葉山の様子を
教えてくれないか?」
奥川の表情が少し柔らかくなったのを見逃さず
俺は畳みかけた。
「何よそれ。
昔の彼女に新しい女の子を
紹介してもらおうってこと?」
奥川の表情が険しくなった。
「ち、違うよ。
最近。
葉山の様子がおかしいって聞いたから
少し気になったんだ」
「どうしてあっくんが実果ことを気にするの?」
もっともな質問だった。
俺は言葉に詰まった。
奥川の視線が鋭さを増した。
「じ、実は・・
ひ、洋が葉山のことが好きみたいなんだ。
だから、その・・」
俺は咄嗟に思い付いたことを口にした。
「ふーん、あの鈴木君がねぇ」
奥川が腕を組んで首を捻った。
「あ、でもこのことは秘密にしてくれよ。
洋はああ見えて繊細だからさ」
俺は額に浮かんだ汗をそっと拭った。
「それで洋が
最近、葉山が元気がないって気にしててさ」
「へぇ、流石ね。
鈴木君のこと、少し見直したわ。
やっぱり好きな子の変化には
すぐに気付くのね」
そう言って奥川はふたたびキリッと俺を睨んだ。
しかしその表情は少し悲しそうだった。
俺はコホンと小さく咳払いをして
奥川から目をそらした。
気まずい沈黙が流れた。
俺は3度目となる咳払いをした。
何を言うべきか考えていた。
その時。
奥川が口を開いた。
「わかったわ、
今度それとなく実果に聞いてみるわ」
「助かるよ」
俺はホッと胸を撫で下ろした。
「それで。話はそれだけ?」
そして奥川は伏し目がちに髪をかき上げた。
「えっ、あ、ああ・・」
「・・そう。
少しでも期待した私が馬鹿だったのね」
「えっ・・」
奥川が真っ直ぐに俺の目を見つめていた。
「何でもない!
あっくんって頭は良いのに
女の子のことは何もわかってないんだからっ」
俺は奥川に責められている気がして
少し困惑した。
「暁子~!」
その時。
校舎の方から奥川を呼ぶ声がした。
「じゃ、私この後約束があるから。
実果のこと、
何かわかったらその時にまた話しましょ」
「あ、ああ。ありがとう」
そして奥川はくるりと踵を返して駆け出した。
俺はそんな彼女の後姿に
自然と手を振っていた。
ある日の放課後。
俺は奥川を呼び出した。
場所はあまりいい思い出のない体育館。
俺は体育館前の階段に座って待っていた。
俺より先に教室を出たはずの奥川は
まだ来てなかった。
奥川と話すのは彼女に別れを告げたあの日以来
初めてのことだった。
俺は話をどう切り出そうかと
頭の中で色々と言葉を並べてみたが、
どれも相応しいとは思えなかった。
その時。
校舎の方から歩いてくる奥川の姿が見えた。
俺は立ち上がって小さく手を振った。
奥川は俺に気付くと足を止めた。
「何?話って」
辛うじて声が届く距離だった。
この距離が今の俺達の関係を
如実に物語っていた。
俺が少しだけ歩み寄ると、
奥川が若干身構えたのがわかった。
「元気か?奥川」
俺は務めて自然に話しかけた。
「何それ」
奥川は素っ気なく呟くと俺から目をそらした。
取り付く島がなかった。
それでもここに来たということは
話を聞く意思はあるということだ。
俺は大袈裟にゴホンと咳払いをした。
「隣のクラスの葉山実果と仲がいいんだろ?」
俺の質問が予想外だったのか
奥川は怪訝な表情を浮かべた。
それから探るような眼差しで俺を睨んだ。
俺はその鋭い眼光に気圧されて一歩後ずさった。
「お、奥川が葉山と幼馴染って聞いたんだ」
俺は言葉を足した。
「・・たしかに。
実果のことは昔から知ってるけど?」
「それなら最近の葉山の様子を
教えてくれないか?」
奥川の表情が少し柔らかくなったのを見逃さず
俺は畳みかけた。
「何よそれ。
昔の彼女に新しい女の子を
紹介してもらおうってこと?」
奥川の表情が険しくなった。
「ち、違うよ。
最近。
葉山の様子がおかしいって聞いたから
少し気になったんだ」
「どうしてあっくんが実果ことを気にするの?」
もっともな質問だった。
俺は言葉に詰まった。
奥川の視線が鋭さを増した。
「じ、実は・・
ひ、洋が葉山のことが好きみたいなんだ。
だから、その・・」
俺は咄嗟に思い付いたことを口にした。
「ふーん、あの鈴木君がねぇ」
奥川が腕を組んで首を捻った。
「あ、でもこのことは秘密にしてくれよ。
洋はああ見えて繊細だからさ」
俺は額に浮かんだ汗をそっと拭った。
「それで洋が
最近、葉山が元気がないって気にしててさ」
「へぇ、流石ね。
鈴木君のこと、少し見直したわ。
やっぱり好きな子の変化には
すぐに気付くのね」
そう言って奥川はふたたびキリッと俺を睨んだ。
しかしその表情は少し悲しそうだった。
俺はコホンと小さく咳払いをして
奥川から目をそらした。
気まずい沈黙が流れた。
俺は3度目となる咳払いをした。
何を言うべきか考えていた。
その時。
奥川が口を開いた。
「わかったわ、
今度それとなく実果に聞いてみるわ」
「助かるよ」
俺はホッと胸を撫で下ろした。
「それで。話はそれだけ?」
そして奥川は伏し目がちに髪をかき上げた。
「えっ、あ、ああ・・」
「・・そう。
少しでも期待した私が馬鹿だったのね」
「えっ・・」
奥川が真っ直ぐに俺の目を見つめていた。
「何でもない!
あっくんって頭は良いのに
女の子のことは何もわかってないんだからっ」
俺は奥川に責められている気がして
少し困惑した。
「暁子~!」
その時。
校舎の方から奥川を呼ぶ声がした。
「じゃ、私この後約束があるから。
実果のこと、
何かわかったらその時にまた話しましょ」
「あ、ああ。ありがとう」
そして奥川はくるりと踵を返して駆け出した。
俺はそんな彼女の後姿に
自然と手を振っていた。
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