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四章 Recreation 7月
第61話 音楽室の幽霊
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「そう言えばこの前さ。
1組の男子が話してたのを
偶然聞いたんだけどさ。
また音楽室の幽霊が出たらしいよ」
ふいに翔太が切り出した。
「嫌っ!
その話は怖いから聞きたくないわ」
そう言って茜は耳をふさいだ。
「ひひひ。
そう言えば。
今年転校してきたあっくんは知らないのか」
首を傾げた俺に洋が代表して語り出した。
それは子供達の間で
昨年から噂になっている学校の怪談だった。
この怪談話のきっかけとなったのは
当時5年1組の生徒だった
目明(さっか あきら)
という少年だった。
ある日。
学校から帰って部屋でくつろいでいた明少年は
図書館で借りた本を学校に
忘れてきたことに気付いた。
明少年は急いで学校へ戻った。
黄昏時。
校庭にも校舎にも残っている生徒は
1人もいなかった。
2階にある5年1組の教室で本を回収した少年が
校舎西側の階段を
下りようとした時のことだった。
「・・ぅぁぁ」
上の階から微かに声がした。
気のせいか若しくは空耳かと訝しんだ少年は、
少しの間その場で逡巡する。
そして好奇心旺盛な彼は
今しがた耳にした声の正体を確かめるべく
階段を上った。
声は少年の気のせいでも空耳でもなかった。
耳を澄ますと女の叫び声とも呻き声ともとれる
苦しそうな声が不規則に、
そして抑揚をもって薄暗い廊下に響いていた。
その声は階段を上る度に大きくなり
少年の恐怖心を煽った。
階段を上る足が重くなった。
それでも少年は3階に辿り着いた。
将来、
警察官になると決めていた彼は勇気こそが
もっとも大切だと信じていたからだ。
「・・はぁはぁ・・ぁぁぁあぁぁぅ」
その不気味な声は苦しそうだった。
そしてその声は校舎の西の方から聞こえていた。
少年は勇気を出してそちらに目を向けた。
廊下には誰もいなかった。
その時「ガタガタガタ」という物音がした。
薄暗い廊下の先に見える
「音楽室」が音源だとわかった。
少年の足は震えていた。
直後。
「あぁぁぁぁぁああぁあぁ」
という女の絶叫が廊下を震わせた。
少年は一目散に階段を駆け下りた。
翌日。
クラスで少年がその話をしても
誰も信じなかった。
しかしそんな中
1人の少女が真相を確かめるべく
名乗りを上げた。
少女の名前は西園愛。
それからちょうど1週間後。
愛は子供達のいなくなった放課後の学校へ
忍び込んだ。
心細かった少女は
1つ年上の姉、哀(あい)と
4つ下の妹、藍(あい)を誘った。
その日は偶然にも13日の金曜日だった。
人気のない校舎で3人は一列になって進んだ。
先頭は年長者の哀。
次に愛。
そのすぐ後ろから藍が続いた。
いつもの学校がその時はなぜか不気味だったと、
のちに愛は語った。
校舎西側の階段を3人は足音を立てずに上った。
静かな廊下に3人の不規則な息遣いだけが
響いていた。
3階への階段を途中まで上ったところで、
先頭の哀の足が止まった。
「今、何か聞こえなかった?」
振り向いた哀に愛と藍は首を振った。
「姉さん、脅かさないでよ。
藍が怖がるでしょう」
「気のせいかしら」
3人は気を取り直して
ふたたび階段を上り始めた。
そして3人が3階に着いたその時、
「あぁぁ~~っ」
という苦し気な叫び声が廊下に響いた。
3人の足が止まった。
「・・今のは聞こえたでしょ?」
哀の言葉に愛と藍は無言で頷いた。
「お、お姉ちゃん、ボク怖いよぉ」
藍が愛の手を強く握った。
「お、音楽室の方からだよね?」
愛の言葉に哀は頷いた。
3人は廊下の奥の音楽室の扉に目を向けた。
扉はしっかりと閉ざされていたが、
時折、中から
「ガタガタ」
と机や椅子が揺れるような音がしていた。
「どうする?」
愛は2人に意見を求めた。
「ここまで来たんだから確かめましょうよ」
「ボク怖いよぉ、もう帰ろうよぉ」
哀とは対照的に藍は怯えていた。
次の瞬間、
「うあぁぁぁぁぁああぁあぁ」
という獣のような雄たけびが廊下に響き渡った。
3人は一目散に階段を駆け下りた。
翌日、3姉妹の証言から
明少年の話が嘘ではないことが証明された。
そして。
この話は「音楽室の幽霊」として
子供達の間で語り継がれることになった。
同時に幽霊の正体に関して
様々な憶測が飛び交った。
その中でも最も有力な説は
「ベートーベン」の肖像画が
幽霊の正体だというものだった。
日が暮れ始めて、
俺達は『楽園』を後にした。
茜が1人で帰るのが怖いと言ったので、
翔太が家まで送ることになった。
俺と洋は2人に手を振って別れた。
1組の男子が話してたのを
偶然聞いたんだけどさ。
また音楽室の幽霊が出たらしいよ」
ふいに翔太が切り出した。
「嫌っ!
その話は怖いから聞きたくないわ」
そう言って茜は耳をふさいだ。
「ひひひ。
そう言えば。
今年転校してきたあっくんは知らないのか」
首を傾げた俺に洋が代表して語り出した。
それは子供達の間で
昨年から噂になっている学校の怪談だった。
この怪談話のきっかけとなったのは
当時5年1組の生徒だった
目明(さっか あきら)
という少年だった。
ある日。
学校から帰って部屋でくつろいでいた明少年は
図書館で借りた本を学校に
忘れてきたことに気付いた。
明少年は急いで学校へ戻った。
黄昏時。
校庭にも校舎にも残っている生徒は
1人もいなかった。
2階にある5年1組の教室で本を回収した少年が
校舎西側の階段を
下りようとした時のことだった。
「・・ぅぁぁ」
上の階から微かに声がした。
気のせいか若しくは空耳かと訝しんだ少年は、
少しの間その場で逡巡する。
そして好奇心旺盛な彼は
今しがた耳にした声の正体を確かめるべく
階段を上った。
声は少年の気のせいでも空耳でもなかった。
耳を澄ますと女の叫び声とも呻き声ともとれる
苦しそうな声が不規則に、
そして抑揚をもって薄暗い廊下に響いていた。
その声は階段を上る度に大きくなり
少年の恐怖心を煽った。
階段を上る足が重くなった。
それでも少年は3階に辿り着いた。
将来、
警察官になると決めていた彼は勇気こそが
もっとも大切だと信じていたからだ。
「・・はぁはぁ・・ぁぁぁあぁぁぅ」
その不気味な声は苦しそうだった。
そしてその声は校舎の西の方から聞こえていた。
少年は勇気を出してそちらに目を向けた。
廊下には誰もいなかった。
その時「ガタガタガタ」という物音がした。
薄暗い廊下の先に見える
「音楽室」が音源だとわかった。
少年の足は震えていた。
直後。
「あぁぁぁぁぁああぁあぁ」
という女の絶叫が廊下を震わせた。
少年は一目散に階段を駆け下りた。
翌日。
クラスで少年がその話をしても
誰も信じなかった。
しかしそんな中
1人の少女が真相を確かめるべく
名乗りを上げた。
少女の名前は西園愛。
それからちょうど1週間後。
愛は子供達のいなくなった放課後の学校へ
忍び込んだ。
心細かった少女は
1つ年上の姉、哀(あい)と
4つ下の妹、藍(あい)を誘った。
その日は偶然にも13日の金曜日だった。
人気のない校舎で3人は一列になって進んだ。
先頭は年長者の哀。
次に愛。
そのすぐ後ろから藍が続いた。
いつもの学校がその時はなぜか不気味だったと、
のちに愛は語った。
校舎西側の階段を3人は足音を立てずに上った。
静かな廊下に3人の不規則な息遣いだけが
響いていた。
3階への階段を途中まで上ったところで、
先頭の哀の足が止まった。
「今、何か聞こえなかった?」
振り向いた哀に愛と藍は首を振った。
「姉さん、脅かさないでよ。
藍が怖がるでしょう」
「気のせいかしら」
3人は気を取り直して
ふたたび階段を上り始めた。
そして3人が3階に着いたその時、
「あぁぁ~~っ」
という苦し気な叫び声が廊下に響いた。
3人の足が止まった。
「・・今のは聞こえたでしょ?」
哀の言葉に愛と藍は無言で頷いた。
「お、お姉ちゃん、ボク怖いよぉ」
藍が愛の手を強く握った。
「お、音楽室の方からだよね?」
愛の言葉に哀は頷いた。
3人は廊下の奥の音楽室の扉に目を向けた。
扉はしっかりと閉ざされていたが、
時折、中から
「ガタガタ」
と机や椅子が揺れるような音がしていた。
「どうする?」
愛は2人に意見を求めた。
「ここまで来たんだから確かめましょうよ」
「ボク怖いよぉ、もう帰ろうよぉ」
哀とは対照的に藍は怯えていた。
次の瞬間、
「うあぁぁぁぁぁああぁあぁ」
という獣のような雄たけびが廊下に響き渡った。
3人は一目散に階段を駆け下りた。
翌日、3姉妹の証言から
明少年の話が嘘ではないことが証明された。
そして。
この話は「音楽室の幽霊」として
子供達の間で語り継がれることになった。
同時に幽霊の正体に関して
様々な憶測が飛び交った。
その中でも最も有力な説は
「ベートーベン」の肖像画が
幽霊の正体だというものだった。
日が暮れ始めて、
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茜が1人で帰るのが怖いと言ったので、
翔太が家まで送ることになった。
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