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八章 Return 11月
第95話 先生と遺書
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毎週水曜日の朝は定例行事である
全校集会が開かれる。
昨夜遅くまで起きていた俺は
眠い目を擦りながら列に並んでいた。
子供達から少し離れた場所にいる
教師の一団の中には
今日もナカマイ先生の姿はなかった。
「・・大人は時に子供に嘘を吐いたり、
隠し事をしまぁす。
しかしですねぇ、
その嘘や隠し事は
子供にはバレているのですねぇ。
子供は大人の微妙な変化を
敏感に感じ取っているのですねぇ。
子供の前で嘘や隠し事は通用しましぇぇん」
いつになく校長は力説していた。
これなら30分は遅刻しても良かったな
と俺は大きく欠伸をした。
「昨日、
猿田先生の机から遺書が見つかりましたぁ。
遺書と言ってわかりにくければ、
手紙と言い直しましょうかねぇ」
校長の言葉は俺の眠りかけていた意識を
覚醒させた。
そして校長の言葉に反応したのは
子供達ではなく教師達だった。
教師達は少しざわついていた。
「皆さんも覚えているでしょう。
夏休みにぃ
亡くなられたぁ葉山実果さんのことを。
彼女は妊娠していましたぁ」
高学年の一部の男子生徒が声を上げた。
「相手は猿田先生でぇす。
猿田先生は教師として、
してはいけないことをしていたんですねぇ」
続いて女子生徒の間で悲鳴があがった。
教頭が横からマイクで
「しずかに!」
と注意した。
「猿田先生はそれが発覚することを恐れて
彼女を殺したのでぇす」
今度は多くの子供達が悲鳴をあげた。
教頭が鎮めようと試みたが
子供達の動揺は広まるばかりだった。
各クラスの担任が駆けつけて
静かにするように注意した。
校庭に静寂が戻ると、
校長は「コホン」と咳払いをしてから
ふたたび話し始めた。
「しかぁし、
猿田先生はそれを後悔していましたぁ。
猿田先生は自分を責め続けていたのでぇす。
手紙には死を決意したと書かれていましたぁ」
そして校長は一度言葉を止めて
声を震わせながら続けた。
「猿田先生は自らの過ちを償うためにぃ、
屋上から身を投げたのでぇす」
子供達は何度目かとなる驚きの声をあげた。
そしてそれは大合唱となった。
収拾がつかないと判断した教頭が
集会を打ち切った。
各クラスの担任に率いられて
皆校舎へと戻っていった。
俺達のクラスを引率したのは
音楽教師の池島だった。
池島は子供達を席に座らせると、
そのまま待つように指示をしてから
教室を出ていった。
すぐに教室は喧噪に包まれた。
「葉山さんを殺した教師って
ボス猿だったんだね」
「ボス猿ならやりかねないと思ってたぜ」
翔太と洋も興奮していた。
しばらくして池島が教室に戻ってきた。
池島の口から
1時間目が自習であることを告げられると
歓声があがった。
「いいですか、
先生がいなくてもきちんと自習をするように。
時々見に来ます。
その時、
おしゃべりをしたり立ち歩いていたら
厳しい罰がありますからね」
そんな池島の忠告が効いたのか、
子供達は比較的大人しく自習をしていた。
俺は全校集会での校長の話を思い返していた。
俺の推理はその半分は当たっていた。
見つかったのは手紙だということ。
しかし。
その手紙は俺が書いた手紙ではなく、
ボス猿自身が書いた遺書だった。
そして。
俺が守ろうとした葉山の妊娠の事実は
その遺書によって公にされた。
それは俺の望んだ結末ではなかった。
校長は子供に嘘は通用しないと言った。
確かに子供は大人の嘘や小さな変化を
敏感に感じ取る。
それでも今回の件のすべてを話すという
校長の選択に俺は賛成できなかった。
教師が教え子を妊娠させ、
その挙句殺したということを
公表する必要があったのだろうか。
このような事実は学校側からすれば
隠したい汚点である。
それに以前、
俺の流した噂話は必死になって消火したのにだ。
根拠のない噂話は学校の名誉にかけて否定し、
事実は学校にとって不名誉なことでも公表する。
それが校長の信念なら、
たしかに人として立派だと言わざるを得ない。
しかし。
この事実を知ることになる葉山の両親や
ナカマイ先生の気持ちを考えると、
やはり俺は納得できなかった。
それに校長が
そこまで真実に誠実であろうとするのなら、
自らの頭髪をカツラで隠さずに
堂々と晒すべきではないか。
そう考える俺は捻くれているのだろうか。
全校集会が開かれる。
昨夜遅くまで起きていた俺は
眠い目を擦りながら列に並んでいた。
子供達から少し離れた場所にいる
教師の一団の中には
今日もナカマイ先生の姿はなかった。
「・・大人は時に子供に嘘を吐いたり、
隠し事をしまぁす。
しかしですねぇ、
その嘘や隠し事は
子供にはバレているのですねぇ。
子供は大人の微妙な変化を
敏感に感じ取っているのですねぇ。
子供の前で嘘や隠し事は通用しましぇぇん」
いつになく校長は力説していた。
これなら30分は遅刻しても良かったな
と俺は大きく欠伸をした。
「昨日、
猿田先生の机から遺書が見つかりましたぁ。
遺書と言ってわかりにくければ、
手紙と言い直しましょうかねぇ」
校長の言葉は俺の眠りかけていた意識を
覚醒させた。
そして校長の言葉に反応したのは
子供達ではなく教師達だった。
教師達は少しざわついていた。
「皆さんも覚えているでしょう。
夏休みにぃ
亡くなられたぁ葉山実果さんのことを。
彼女は妊娠していましたぁ」
高学年の一部の男子生徒が声を上げた。
「相手は猿田先生でぇす。
猿田先生は教師として、
してはいけないことをしていたんですねぇ」
続いて女子生徒の間で悲鳴があがった。
教頭が横からマイクで
「しずかに!」
と注意した。
「猿田先生はそれが発覚することを恐れて
彼女を殺したのでぇす」
今度は多くの子供達が悲鳴をあげた。
教頭が鎮めようと試みたが
子供達の動揺は広まるばかりだった。
各クラスの担任が駆けつけて
静かにするように注意した。
校庭に静寂が戻ると、
校長は「コホン」と咳払いをしてから
ふたたび話し始めた。
「しかぁし、
猿田先生はそれを後悔していましたぁ。
猿田先生は自分を責め続けていたのでぇす。
手紙には死を決意したと書かれていましたぁ」
そして校長は一度言葉を止めて
声を震わせながら続けた。
「猿田先生は自らの過ちを償うためにぃ、
屋上から身を投げたのでぇす」
子供達は何度目かとなる驚きの声をあげた。
そしてそれは大合唱となった。
収拾がつかないと判断した教頭が
集会を打ち切った。
各クラスの担任に率いられて
皆校舎へと戻っていった。
俺達のクラスを引率したのは
音楽教師の池島だった。
池島は子供達を席に座らせると、
そのまま待つように指示をしてから
教室を出ていった。
すぐに教室は喧噪に包まれた。
「葉山さんを殺した教師って
ボス猿だったんだね」
「ボス猿ならやりかねないと思ってたぜ」
翔太と洋も興奮していた。
しばらくして池島が教室に戻ってきた。
池島の口から
1時間目が自習であることを告げられると
歓声があがった。
「いいですか、
先生がいなくてもきちんと自習をするように。
時々見に来ます。
その時、
おしゃべりをしたり立ち歩いていたら
厳しい罰がありますからね」
そんな池島の忠告が効いたのか、
子供達は比較的大人しく自習をしていた。
俺は全校集会での校長の話を思い返していた。
俺の推理はその半分は当たっていた。
見つかったのは手紙だということ。
しかし。
その手紙は俺が書いた手紙ではなく、
ボス猿自身が書いた遺書だった。
そして。
俺が守ろうとした葉山の妊娠の事実は
その遺書によって公にされた。
それは俺の望んだ結末ではなかった。
校長は子供に嘘は通用しないと言った。
確かに子供は大人の嘘や小さな変化を
敏感に感じ取る。
それでも今回の件のすべてを話すという
校長の選択に俺は賛成できなかった。
教師が教え子を妊娠させ、
その挙句殺したということを
公表する必要があったのだろうか。
このような事実は学校側からすれば
隠したい汚点である。
それに以前、
俺の流した噂話は必死になって消火したのにだ。
根拠のない噂話は学校の名誉にかけて否定し、
事実は学校にとって不名誉なことでも公表する。
それが校長の信念なら、
たしかに人として立派だと言わざるを得ない。
しかし。
この事実を知ることになる葉山の両親や
ナカマイ先生の気持ちを考えると、
やはり俺は納得できなかった。
それに校長が
そこまで真実に誠実であろうとするのなら、
自らの頭髪をカツラで隠さずに
堂々と晒すべきではないか。
そう考える俺は捻くれているのだろうか。
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