黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M

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九章 Revenge 12月

第105話 人を好きになるのは理屈ではない

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「昨日はどうしたのさ?あっくん」
「翔太も俺も心配したんだぜ」
翌朝、登校すると
すぐに翔太と洋が俺の所やってきた。
「悪い。ちょっと急用を思い出したんだ」
俺は素直に謝った。
チャイムが鳴ると同時に
ナカマイ先生が教室に入ってきた。
2人はまだ何か言いたそうだったが、
渋々席に着いた。
出席確認の際、
ナカマイ先生は俺と目が合うと小さく微笑んだ。
それは不自然なくらいに自然な笑顔だった。
その笑顔に俺は一抹の不安を感じた。

昼休みが始まると
子供達は一斉に教室を飛び出していった。
今日はドッジボールの日だった。
そんな中、
教室に残っているのはいつもの2人だった。
机に座って何をするともなく
ぼぅっとしている池田。
そして。
机で本を読んでいる相馬。
当然相馬のことは気になってはいた。
しかし相馬が学校から姿を消すのは卒業前。
まだ時間はある。
今は葉山とボス猿を殺した犯人を
見つけるのが先決だと
俺は自分に言い聞かせて教室を出た。
教室を出ると翔太が廊下に立っていた。

「どうしたんだ?翔太。
 皆もうグランドに行ってるだろ?」
「う、うん・・」
翔太は周囲をキョロキョロと気にしていた。
「あっくん、ちょっと話があるんだけど・・」
翔太は小さな声で呟いた。
「ベランダに行こうか」
教室に戻ってきた俺達を見て
相馬が不思議そうな顔をした。
が、それも一瞬のことですぐに本へ目を戻した。
俺達はベランダに出た。
校庭では子供達が元気に駆け回っていた。
6年3組の子供達は
グランドの真ん中に
コートを獲得したようだった。

「あっくんは気付いた?」
何のことかわからず俺は首を傾げた。
「・・茜ちゃんのことなんだけど」
翔太はそこで一度口を噤んだ。
俺は翔太が話し出すのを待つことにした。
翔太はベランダの手摺に両手をかけると
グランドに目を向けた。
翔太の視線の先には
コートの中を走り回っている茜がいた。
「茜のことが気になってるんだろ?
 俺は翔太と茜には幸せになって欲しいんだ。
 俺にできることなら何でも協力するよ」
翔太がなかなか口を開かないので、
俺の方から切り出した。
しかし。
翔太は首を振った。
「そういうことじゃないんだ・・」
翔太はグランドに目を向けたまま
ぽつりと呟いた。
「あっくんなら
 気付いてると思ったんだけど・・」
今度は俺が首を振る番だった。
「翔太、話してくれよ。
 そのために俺を待ってたんだろ?」
「・・う、うん」
そして翔太は一度大きく頷いてから口を開いた。
「最近さ、
 茜ちゃんの様子がおかしいと思わない?
 昨日だって『楽園』に来なかったんだ」
「急な用事が入ったんじゃないのか?」
翔太は大きく首を振った。
「ま、そういう時もあるさ。
 女心と秋の空っていうだろ?」
「それだけじゃないんだ。
 最近の茜ちゃんは
 どこか元気がないっていうか・・」
俺はコートの中の茜を探した。
いつの間にか片方のチームの内野は
茜だけになっていた。
茜くらいの年の子であれば
多かれ少なかれ悩みを抱えている。
それが女の子ならば尚のこと。
茜が悩んでいるとすれば、
それは俺に対する気持ちのせいかもしれない。
俺は茜の気持ちには
応えることはできないだろう。
茜は翔太と一緒にいた方が幸せになれる。
その時。
ボールから必死に逃げ回っていた茜が、
外野からの声援に応えるように
敵チームの四谷のボールを
体の正面でキャッチした。
「見ろよ、翔太。
 茜はあんなに元気じゃないか」
「う、うん・・」
翔太は躊躇いがちに頷いた。
「考えすぎだ。
 茜なら大丈夫さ。
 お前がそんな暗い顔をしてたら、
 それこそ今度は茜が心配するだろ?」
「う、うん。
 あっくんがそう言うなら大丈夫だよね」
「ああ。心配ないさ」
俺は翔太の肩をポンッと叩いた。
結局翔太は茜のことを気にかけている。
人を好きになるのは理屈ではない。
翔太もきっと心の奥底では
茜を想っているに違いなかった。
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