1 / 3
前編
しおりを挟む
「エドワード エストラーナはここにマリアナ タラチゴランジュ侯爵令嬢との婚約を破棄し、ソニア ヨムルガ男爵令嬢を新たな婚約者とする!」
舞台の上でのエピソードなら固唾を呑んで見守る場面ですけれど、実際に第2王子殿下が声を上げた場所は王立アカデミーの卒業を祝う宴の真っ最中。和やかだった会場は一瞬にして凍りつき、始まっていたダンスも軽やかな音楽も止んでしまった。
突然、目の前で声を上げられた私はポカンと開いてしまいそうな口元を婚約者に贈られた扇で隠して、その場を凌いだ。
公の場でのこの発言。
王子殿下の命運ここに尽きる、、、そう言うことで宜しいですか?
*****
王立アカデミーには14歳になると全ての魔力持ちが通う事を義務付けられています。ほぼ魔力を持って生まれる貴族は必然的に入学し、主に魔力の取り扱いを学びます。その他に自分の適正に合わせて魔術科や騎士科、魔力の少ない人に合わせて官僚科や淑女科、家の跡を継ぐ者を集めた特務科などを選択し今後に備えて知識をつけるのです。18歳を向かえた春で卒業となり、本日、その式典が粛々と行われたばかり。今はその後の卒業生達をお祝いする為の宴が華やかに行われていました。
私も今期の卒業生ですし、目の前で吠えている王子殿下も同期なのですけど。
チラリと目線を上げて確認すれば、扇越しにいる王子の一団は5名。
第2王子殿下エドワード様、公爵家子息グラン様、子爵家子息ロナルド様に騎士団総長子息ナルストジーク様、そして男爵令嬢ソニア様です。
今期一番の問題児集団ですわ。
不敬にもため息をつきたい気分ですがぐっと飲み込みました。
「申し訳御座いません。今、何とおっしゃいまして?」
勿論聞こえていましたよ?
よくよく確認して頂き、空気を読んで勇気ある撤退を平にお願いしたいのです。
「良いだろう!もう一度言う!よく聞け、マリアナお前との婚約を破棄して、ソニアと結婚する。理解出来たか!」
ダメ、でした……全く通じません。
得意げに述べていますが、どれも正解ではありませんから。
だからこそ、この三文芝居なのでしょうけれど。
「ゆ、許して下さい!でも、私、エドワード様の事を諦めるなんて出来ないんです。だって、私、エド様の事を愛してしまったんです!だから、だから、認めて欲しいんです!」
空気を読めないのは王子殿下だけではなくて、その隣からも鼻にかかった甲高い声が響いて来ます。
ピンクゴールドの髪をきっちりと結い上げて、空色の瞳からポロポロと滑り落ちる涙。胸の前で祈るように結んだ両の手。その左手の薬指には紅の守り石がはまり、身に纏うドレスは最上級な白のシルクですわね。
淑女らしからぬと噂の男爵令嬢。
可憐さを押し出して周りに健気さをアピールしている模様ですけれど……ダメですから。
どこからダメ出しをすれば良いのかわからない程ダメダメですから。淑女の嗜みを全く理解されていない様です。取り巻きの方々は誰も何も注意なさらなかったのでしょうか。
まず未婚の女性が髪を結い上げてはいけないのは淑女教育の初歩の初歩です。髪を上げて首筋を晒しても良いのは婚姻してから。未婚で髪を結い上げているのは春を鬻ぐ方々のみ。所謂、娼婦だと誤解されても仕方がない事になります。それから白いドレスはデビュタントか婚姻の儀にのみ許される物。アクセントに少しの白を使うぐらいならば問題ありませんが白が主体のものは普段は選びません。何者にも染められていない未熟者ですが、よろしくお願いしますね的な感じに取られる為、デビュタントや新婦が着る分には微笑ましく思われます。が、それ以外で着てしまうと何も理解出来ていない粗忽者、と思われて誰にも相手にされなくなってしまうからです。そして最大のダメ出しをしたいのは薬指にはまる紅の指輪。私の記憶が正しければアレは陛下から側妃様、第2王子殿下の御生母さまに贈られた守り石ではないでしょうか。婚姻の儀の際に贈られる、自分の魔力を練って造る守り石。正妃様には陛下の瞳の色、碧の守り石。側妃様には御髪の色、紅の守り石が贈られたはずです。あの紅は金髪碧眼の王子殿下の色ではないですし、魔力の痕跡が陛下の物です。故に側妃様の物を勝手に持ち出したと推測致しました。自分の為の守り石を譲るなんてあり得ないですし、ましてや陛下から賜った物ですから、あり得ない事ですわ。この事、側妃様は知っていらっしゃるのかしら。
それらを考察すると『私は何も知らない粗忽者で春を鬻ぐ者。王族から盗みを働いた犯罪者』となってしまいます。
「マリアナ様!お願いです!私たちを認めて下さい!」
認めるも何も、私にはそのような権限は御座いませんし、何故こんなに色々な方々が入り乱れる場を選んで暴挙に出るのか理解出来ません。人知れずやってくれていたら、穏便に済ませる方法だってありましたのに。これで我が国のスキャンダルが他国に垂れ流しになる事が確定しました。卒業生にも在校生にも他国から留学されている優秀な方々がいるのですから。明日にはこの茶番が各国に知れ渡っているでしょう。
本当にコレをどうやって収めればば良いのか。
ソニア様、私の苦悩も知らずにその様にウルウルした目で見られても意味ありませんよ。ああ、周りの方々に健気さをアピールしているのですか。取り巻きの方々のソニア様を見る目が気持ちわ……お熱いですものね。チョロい男はこう言う仕草で釣れるんですのね。
そもそも私はソニア様にお会いするのは初めてなのです。男爵令嬢から侯爵令嬢に話しかけるとか、名前を呼ぶとかありえないですし、マナー違反を通り越して不敬ですけれど、わかっていますか?
「……あなたとお会いするのは初めて、ですわね?」
ヨムルガ男爵家の庶子の娘。先代の落とし胤だとの噂もあるけれど、現在子どもがいない男爵家の跡取りとして迎え入れられたはず。養女となるまでは平民として暮らしていた彼女に、貴族のマナーを教え込まないはずないのですけど、あまりにも非常識すぎて男爵家の常識を疑ってしまいます。
「ひ、酷いです!私が平民上がりだとバカにしているんですね!」
「ソニア!大丈夫かい?だからこんな女に近づかない方が良いと言ったんだ。君が傷つくだけだろう。」
「ああ、エド様はなんてお優しいの。こんな私に気を使って下さって。ソニアはそんなエド様が大好きです!」
「ああ~嬉しいよ。私も同じだ、愛しているよ!」
誰か、誰でも良いから止めてはくれないでしょうか。
この人達とは会話が成り立つ気がしないのです。
そっとこの場を立ち去るのは……許されないですよね。
はぁ~腐っても王子殿下だもの、お相手しないといけないですよねぇ。
テンション下がりまくりです。
そっと息を吐く私を尻目にやっと2人の世界から戻ってきた王子殿下に、キッと睨み付けられました。
「今日は卒業という門出の時だからこそ穏便にすまそうと思っていたのだが、お前にその気がないなら仕方あるまい。悪女であるお前が国母になる事は罷り通らない。その事、皆の前ではっきりさせてやろうではないか!」
そもそも穏便に話を済ませるなら、パーティーの最中に宣言なんてしないと思います。
しかも悪女とか国母とか聞き捨てならないキーワードが出て来ました。
悪女はまだしも国母はアウトですね。
最悪な戯言を言葉にしてしまった事をわかっては……いないですよね。
王子殿下は思い込み?妄想?が激しいのですね。
周りのお友達も同じ認識でよろしいのかしら。
今も同意するように激しく頷いていて、この方々の教育もどうなってるのかと心配になって来ました。
「何を持ってそう言われるのか……、思い当たる事もございませんし、それに国母とはどう言う意味でしょう?」
「将来、私がこの国を継ぐと、その妃になるものが国母となる。だがそれは悪女たるおまえではなく、ここにいる心優しいソニアだ!わかったか!」
その言葉に思わず冷ややかな視線を浮かべてしまった。
全然、全く、自分の立場を理解していないこの人は、本当に王家の一員なのか。
この方が王位を継ぐ事はない。
つい先日、第1王子殿下が立太子なさると決まったばかりなのだから。それなのに何故第2王子殿下の妃が国母になり得るのか。それとも自分の兄君を亡き者にする準備があるとでも言いたいのか。
この方は王家に連なる事も出来なくなる、その様な結末が浮かんでは消えて行きました。
それに悪女と言われる程の事を私がやったとおっしゃいましたが、身に覚えがないのです。アカデミー在籍中、王子殿下並びに取り巻きの方々とお話しした事もありませんし。
「殿下、悪女とはなんの事でしょう?」
「しらを切るつもりか?そうはさせないぞ。お前はソニアに嫌がらせをしていたであろう!女の嫉妬とはなんと浅ましく、醜いことか。」
傍にぶら下がったソニア様をギュと抱きしめて、耳元で何かを囁く。それを聞いたソニア様は頰を赤らめ、「そんな事ないですぅ~」と王子殿下を見つめ返した。
これを早々に撤収出来ない自分の無能さに嫌気が差します。
「お前はソニアの持ち物を隠したり、壊したりしただろう!しかもアカデミーで孤立させる為にお茶会に招待させないなどの嫌がらせもだ。更にソニアを階段から突き落とした!」
うーん。
もちろん私にはソニア様に嫌がらせをする理由は何もないですし、王子殿下がどうなろうと興味もありません。
それにソニア様、一度はお茶会には招待されていました。伯爵家の令嬢達が下位の令嬢を順に招待して、徐々に高位の方々とのお茶会にも慣れるよう調整されいた筈です。
その初めてのお茶会でソニア様は招待するに値しないと判断されてしまったのです。それは決して私の所為ではありませんし、全ては本人のマナーが成っていないのが原因だと聞いています。聞いた話によれば主催者に挨拶するでもなく、まるで自分がその場の主の様な振る舞いをする。男爵令嬢が高圧的に高位の令嬢に声をかけ、口いっぱいに物を頬張りながら話をし、挙句自分の不注意で溢したお茶をわざと自分にかけただろうと他の令嬢を怒鳴りつけたのです。その後はさめざめとお茶会の模様を王子に語り、主催者は王子に叱責されました。こうなれば誰も彼女を招待しようとは思いません。
私も招待しませんでしが、それが何か?
最低限のルールとマナーを身につけていれば考えなくもなかったのですが、同じ席に着いて楽しくお話をするなんてとても無理そうでしたから。
後は階段から落ちた、のですか?
何段ほど落ちたのかは知りませんけれど、どこも怪我をした様子はありませんわね。上から落ちたならば、相当酷いことになっていてたのではないでしょうか。
しかも、なんと言いまして?
「…まるで私が突き落とした様に仰るのですね。」
していませけど。
「そうだ!!ソニアは落ちる前にお前を見たと言っている。惚けるのはやめるのだな!」
コレは何でしょう。
私に無実の罪を着せるつもりなのですか?証拠は被害者擬きの証言のみとか?まさかそんな事はないですよね。
首を傾げてしまいますよ。
「ソニア様?本当に私を見たのですか?もちろん他の目撃者とか物証とか、ございますのでしょ?」
ジッと見つめれば、ささっと王子の後ろに隠れて震えた振りをする。
なぜ振りかと言えば、覗いた口元がニヤリと歪んでいるのが見えたから。
「あの、私、黒髪が見えたんです。や、睨まないで、怖いっ、」
思わず広げていた扇をパシッと閉じて、頬に寄せてしまいました。
まさか被害者擬きの証言のみとは!
しかもソニア様はかなりの腹黒とお見受けしましたが、王族としてもイマイチな第2王子殿下を引っ掛けて、いったいどうするつもりなんでしょう。
殿下がこの後どのような立場になったとしても引き取って頂けると大変ありがたいですね。
「私、その様なことは致しておりません。それはいつの事ですの?どちらの階段を何段ぐらい落ちたのです?その時の怪我の手当てはどうされたのでしょう。」
ソニア様を背に庇った王子殿下のお綺麗な顔の眉間にシワが寄りました。
相当頭にきたのか、取り巻きその一、 公爵令息グラン様が声を荒げます。
「全て分かっていてるのに何を言っているのだ!この女狐が!」
あらあら。
側近候補のつもりならば、王子と一緒に糾弾せずにこの場から引く事を考えた方がよろしいのでは?
しかも女狐ですって。
タラチランジュの娘に対して酷いいいようですこと。
まぁ取り巻きその二、その三が吠えるよりはマシですね。彼らは当家よりも下の爵位ですから暴言は吐いてはいけません。お願いですから吐かないで下さい、後がとても面倒臭くなりますから。
「知らないからお聞きしたのです。いつ、どこで起きた事ですの?階段から落ちるなどの大きな事故はどなたからも聞いた事が御座いません。落ちた後はどうなさいましたの?アカデミーに報告はしたのですか?怪我は?医療室で診察は受けましたの?どちらにどの程度の怪我を負ったのですか?全治何ヶ月程度?……先生方は把握しておりますか?」
ふと傍観していたアカデミーの先生方に話を振ってみた。見てるだけなんて、狡いですから。
「いや?そんな報告は受けていない。医療室はどうだい?」
近くにいた魔術科の講師が面白そうに、治癒師に話を振ってくれた。
「うちでも聞いておりませんが?いつ、どちらか階段から落ちたのですか?」
アカデミーの治癒師からも同じ事を聞かれ、苛立ちを隠せずにチッと舌を鳴らした。
グラン様、お行儀が悪いです。
「先々週の水の日だ!場所はギャラリーに続く中央階段。突き落とされたと言うのだから一番上に違いないだろうが!」
治癒師がジロジロとソニア様をみて、首を傾げた。
「うーん。どこもなんともないようですね。治療した痕跡もなし。一番上から落ちたのなら相当酷い怪我と言うか、命に関わるものであってもおかしくないんですけどね。どこもなんともないなんて事はあり得ないんですけどね。そもそも皆様は落ちた所をみていたのですか?」
治癒師に問われて、取り巻き達が若干身を引く。
「見ては、、いない。悲鳴が聞こえて駆けつけたら、ソニアが階段下で倒れていた。そうだ!足首が痛いと言ってた!ソニアは光魔法を使うから、自己治癒したに違いない!その時に黒髪を見たと、ソニアが言っていた。アカデミーでソニアに危害を加えそうな黒髪などそいつしかいないだろうが!」
言いたい事は沢山ある、突っ込みどころは満載なのだけれど。
罪を着せるならば、私の予定を事前に調べませんとお話になりません。
「…では私ではありませんわね。毎週の水の日はアカデミーにはおりませんから。」
そう私は水の日はアカデミーから離れて、別の場所で講義を受けているのですよ。最終学年に上がってからずっとなので、昨日今日の話ではないのです。
「はぁー?何、嘘言ってるのよ!簡単にアカデミーを出れるわけがないじゃない!罪を認めたくないからって、そんな嘘をついて。素直に謝ってくれたらそれで良いのに!」
王子の後ろに隠れていたソニア様が、顔を引きつらせて私の前に進み出た。
確かに、週末ならともかく週半ばでアカデミーから抜け出すなど普通はあり得ない。あり得ないけれど、例外はあります。
「本当のことだよ。私が許可を出したのだから。ーーーーで、ソニア嬢は階段から落ちて、黒髪を見たのですか?本当に?」
いつの間にか後ろに学園長が控えていました。
よかった。
後は学園長が治めてくれる筈ですもの。
この人達の相手をするのはとても疲れますから、出来ればどなたかにお譲りしたい。
「も、もしかしたら日差しの加減で見間違えたのかも、しれません。でも、本当に押されたんです!」
ソニア様も必死ね。
全てを管理する学園長が本当だと証言したのだから、それはもう覆らない。そうなると偽証はソニア様の方になってしまいます。
全て冤罪なので、偽証は確定なんのですけど。
私がそんな事をする意味がわかりませんし、報復を考えるならもっと簡単に、証拠も残さずに瞬殺する方法を選びます。
「それで?何故落ちた後に何故アカデミーに報告しなかったのです?階段から突き落とされるなど重大事件です。傷害どころではなく殺人罪にも問われます。怪我は足首だけですか?……淑女の割には随分と頑丈な体ですね。屈強な男でも全治三ヶ月にはなるでしょうに。」
学園長に鼻で笑われて、ソニア様の体が震えているのが見えました。体格の良い厳つい男よりも頑丈な体って、淑女なの?本当に?みたいな感じで学園長に笑われたから。
でも私が言ったのではないのだから睨まないで下さい。
「酷いです!私が男爵家だから、平民上がりだからバカにするんですか!アカデミーは全ての生徒を平等に扱うんじゃないんですか!」
学園長は決してバカにしてはいないと思うのですが。男爵家だから、平民上がりだからと憤っているのはソニア様だけだと思いますよ。
「ふむ、ソニア嬢はそう感じるのか。犯人は時期に判明しますからご安心下さい。アカデミーでは色々と記録を取っておりますので。先々週、水の日、中央階段。映像が残っているはずです。」
学園長の指示なら直ぐにでも確認してもらえますね。犯人がいたなら、はっきり映っているはずですし。
コレで王子殿下達からの疑いの目も晴れる事でしょう。
めでたし、めでたし。
あら?ソニア様の顔色が悪いですがどうしたのですか……なんてね。自作自演がバレてしまいますもの、青くもなります。
映像が残る事を知らなかったのですかね?
貴族の子女が集う場所で何もしない訳がないのですよ。しかも王族の方も通われるのですから、かなり気を使っているはずです。入学前に説明もされたのですが聞いていなかったのでしょうね。
本当に残念な方達!
それよりもその指につけている物、早くはずした方が宜しいかと。自作自演よりも酷い事に成りかねませんから。
指輪を見ていた事に気がついたのか、ソニア様がしてやったりとニヤニヤ笑い始めました。
あ、自尊心で持ち直しましたか。流石、たくましく育っただけあります。
「ーーーーもしかしたら、押されたのは私の思い違いかも、知れません。けど、エドワード様への愛は真実なんです。お慕いしています、エド様!」
唖然と成り行きを見守っていた王子殿下が、ソニア様の愛の告白で舞台に戻って来てしまいました。有耶無耶のまま終わりにしてしまいたかったのですが、王子殿下の腕の中にソニア様がすっぽりと収まりました。
もうため息も出ません。
「私達は真実の愛で結ばれているのだ!それに逆らう事は出来ない!マリアナお前とは結婚できない、理解して欲しい。」
…振り出しに戻ってしまいましたわ。
最初からやり直しとは、泣いても許されますよね?
そもそも、私はあなたの婚約者ではありませんから!!
舞台の上でのエピソードなら固唾を呑んで見守る場面ですけれど、実際に第2王子殿下が声を上げた場所は王立アカデミーの卒業を祝う宴の真っ最中。和やかだった会場は一瞬にして凍りつき、始まっていたダンスも軽やかな音楽も止んでしまった。
突然、目の前で声を上げられた私はポカンと開いてしまいそうな口元を婚約者に贈られた扇で隠して、その場を凌いだ。
公の場でのこの発言。
王子殿下の命運ここに尽きる、、、そう言うことで宜しいですか?
*****
王立アカデミーには14歳になると全ての魔力持ちが通う事を義務付けられています。ほぼ魔力を持って生まれる貴族は必然的に入学し、主に魔力の取り扱いを学びます。その他に自分の適正に合わせて魔術科や騎士科、魔力の少ない人に合わせて官僚科や淑女科、家の跡を継ぐ者を集めた特務科などを選択し今後に備えて知識をつけるのです。18歳を向かえた春で卒業となり、本日、その式典が粛々と行われたばかり。今はその後の卒業生達をお祝いする為の宴が華やかに行われていました。
私も今期の卒業生ですし、目の前で吠えている王子殿下も同期なのですけど。
チラリと目線を上げて確認すれば、扇越しにいる王子の一団は5名。
第2王子殿下エドワード様、公爵家子息グラン様、子爵家子息ロナルド様に騎士団総長子息ナルストジーク様、そして男爵令嬢ソニア様です。
今期一番の問題児集団ですわ。
不敬にもため息をつきたい気分ですがぐっと飲み込みました。
「申し訳御座いません。今、何とおっしゃいまして?」
勿論聞こえていましたよ?
よくよく確認して頂き、空気を読んで勇気ある撤退を平にお願いしたいのです。
「良いだろう!もう一度言う!よく聞け、マリアナお前との婚約を破棄して、ソニアと結婚する。理解出来たか!」
ダメ、でした……全く通じません。
得意げに述べていますが、どれも正解ではありませんから。
だからこそ、この三文芝居なのでしょうけれど。
「ゆ、許して下さい!でも、私、エドワード様の事を諦めるなんて出来ないんです。だって、私、エド様の事を愛してしまったんです!だから、だから、認めて欲しいんです!」
空気を読めないのは王子殿下だけではなくて、その隣からも鼻にかかった甲高い声が響いて来ます。
ピンクゴールドの髪をきっちりと結い上げて、空色の瞳からポロポロと滑り落ちる涙。胸の前で祈るように結んだ両の手。その左手の薬指には紅の守り石がはまり、身に纏うドレスは最上級な白のシルクですわね。
淑女らしからぬと噂の男爵令嬢。
可憐さを押し出して周りに健気さをアピールしている模様ですけれど……ダメですから。
どこからダメ出しをすれば良いのかわからない程ダメダメですから。淑女の嗜みを全く理解されていない様です。取り巻きの方々は誰も何も注意なさらなかったのでしょうか。
まず未婚の女性が髪を結い上げてはいけないのは淑女教育の初歩の初歩です。髪を上げて首筋を晒しても良いのは婚姻してから。未婚で髪を結い上げているのは春を鬻ぐ方々のみ。所謂、娼婦だと誤解されても仕方がない事になります。それから白いドレスはデビュタントか婚姻の儀にのみ許される物。アクセントに少しの白を使うぐらいならば問題ありませんが白が主体のものは普段は選びません。何者にも染められていない未熟者ですが、よろしくお願いしますね的な感じに取られる為、デビュタントや新婦が着る分には微笑ましく思われます。が、それ以外で着てしまうと何も理解出来ていない粗忽者、と思われて誰にも相手にされなくなってしまうからです。そして最大のダメ出しをしたいのは薬指にはまる紅の指輪。私の記憶が正しければアレは陛下から側妃様、第2王子殿下の御生母さまに贈られた守り石ではないでしょうか。婚姻の儀の際に贈られる、自分の魔力を練って造る守り石。正妃様には陛下の瞳の色、碧の守り石。側妃様には御髪の色、紅の守り石が贈られたはずです。あの紅は金髪碧眼の王子殿下の色ではないですし、魔力の痕跡が陛下の物です。故に側妃様の物を勝手に持ち出したと推測致しました。自分の為の守り石を譲るなんてあり得ないですし、ましてや陛下から賜った物ですから、あり得ない事ですわ。この事、側妃様は知っていらっしゃるのかしら。
それらを考察すると『私は何も知らない粗忽者で春を鬻ぐ者。王族から盗みを働いた犯罪者』となってしまいます。
「マリアナ様!お願いです!私たちを認めて下さい!」
認めるも何も、私にはそのような権限は御座いませんし、何故こんなに色々な方々が入り乱れる場を選んで暴挙に出るのか理解出来ません。人知れずやってくれていたら、穏便に済ませる方法だってありましたのに。これで我が国のスキャンダルが他国に垂れ流しになる事が確定しました。卒業生にも在校生にも他国から留学されている優秀な方々がいるのですから。明日にはこの茶番が各国に知れ渡っているでしょう。
本当にコレをどうやって収めればば良いのか。
ソニア様、私の苦悩も知らずにその様にウルウルした目で見られても意味ありませんよ。ああ、周りの方々に健気さをアピールしているのですか。取り巻きの方々のソニア様を見る目が気持ちわ……お熱いですものね。チョロい男はこう言う仕草で釣れるんですのね。
そもそも私はソニア様にお会いするのは初めてなのです。男爵令嬢から侯爵令嬢に話しかけるとか、名前を呼ぶとかありえないですし、マナー違反を通り越して不敬ですけれど、わかっていますか?
「……あなたとお会いするのは初めて、ですわね?」
ヨムルガ男爵家の庶子の娘。先代の落とし胤だとの噂もあるけれど、現在子どもがいない男爵家の跡取りとして迎え入れられたはず。養女となるまでは平民として暮らしていた彼女に、貴族のマナーを教え込まないはずないのですけど、あまりにも非常識すぎて男爵家の常識を疑ってしまいます。
「ひ、酷いです!私が平民上がりだとバカにしているんですね!」
「ソニア!大丈夫かい?だからこんな女に近づかない方が良いと言ったんだ。君が傷つくだけだろう。」
「ああ、エド様はなんてお優しいの。こんな私に気を使って下さって。ソニアはそんなエド様が大好きです!」
「ああ~嬉しいよ。私も同じだ、愛しているよ!」
誰か、誰でも良いから止めてはくれないでしょうか。
この人達とは会話が成り立つ気がしないのです。
そっとこの場を立ち去るのは……許されないですよね。
はぁ~腐っても王子殿下だもの、お相手しないといけないですよねぇ。
テンション下がりまくりです。
そっと息を吐く私を尻目にやっと2人の世界から戻ってきた王子殿下に、キッと睨み付けられました。
「今日は卒業という門出の時だからこそ穏便にすまそうと思っていたのだが、お前にその気がないなら仕方あるまい。悪女であるお前が国母になる事は罷り通らない。その事、皆の前ではっきりさせてやろうではないか!」
そもそも穏便に話を済ませるなら、パーティーの最中に宣言なんてしないと思います。
しかも悪女とか国母とか聞き捨てならないキーワードが出て来ました。
悪女はまだしも国母はアウトですね。
最悪な戯言を言葉にしてしまった事をわかっては……いないですよね。
王子殿下は思い込み?妄想?が激しいのですね。
周りのお友達も同じ認識でよろしいのかしら。
今も同意するように激しく頷いていて、この方々の教育もどうなってるのかと心配になって来ました。
「何を持ってそう言われるのか……、思い当たる事もございませんし、それに国母とはどう言う意味でしょう?」
「将来、私がこの国を継ぐと、その妃になるものが国母となる。だがそれは悪女たるおまえではなく、ここにいる心優しいソニアだ!わかったか!」
その言葉に思わず冷ややかな視線を浮かべてしまった。
全然、全く、自分の立場を理解していないこの人は、本当に王家の一員なのか。
この方が王位を継ぐ事はない。
つい先日、第1王子殿下が立太子なさると決まったばかりなのだから。それなのに何故第2王子殿下の妃が国母になり得るのか。それとも自分の兄君を亡き者にする準備があるとでも言いたいのか。
この方は王家に連なる事も出来なくなる、その様な結末が浮かんでは消えて行きました。
それに悪女と言われる程の事を私がやったとおっしゃいましたが、身に覚えがないのです。アカデミー在籍中、王子殿下並びに取り巻きの方々とお話しした事もありませんし。
「殿下、悪女とはなんの事でしょう?」
「しらを切るつもりか?そうはさせないぞ。お前はソニアに嫌がらせをしていたであろう!女の嫉妬とはなんと浅ましく、醜いことか。」
傍にぶら下がったソニア様をギュと抱きしめて、耳元で何かを囁く。それを聞いたソニア様は頰を赤らめ、「そんな事ないですぅ~」と王子殿下を見つめ返した。
これを早々に撤収出来ない自分の無能さに嫌気が差します。
「お前はソニアの持ち物を隠したり、壊したりしただろう!しかもアカデミーで孤立させる為にお茶会に招待させないなどの嫌がらせもだ。更にソニアを階段から突き落とした!」
うーん。
もちろん私にはソニア様に嫌がらせをする理由は何もないですし、王子殿下がどうなろうと興味もありません。
それにソニア様、一度はお茶会には招待されていました。伯爵家の令嬢達が下位の令嬢を順に招待して、徐々に高位の方々とのお茶会にも慣れるよう調整されいた筈です。
その初めてのお茶会でソニア様は招待するに値しないと判断されてしまったのです。それは決して私の所為ではありませんし、全ては本人のマナーが成っていないのが原因だと聞いています。聞いた話によれば主催者に挨拶するでもなく、まるで自分がその場の主の様な振る舞いをする。男爵令嬢が高圧的に高位の令嬢に声をかけ、口いっぱいに物を頬張りながら話をし、挙句自分の不注意で溢したお茶をわざと自分にかけただろうと他の令嬢を怒鳴りつけたのです。その後はさめざめとお茶会の模様を王子に語り、主催者は王子に叱責されました。こうなれば誰も彼女を招待しようとは思いません。
私も招待しませんでしが、それが何か?
最低限のルールとマナーを身につけていれば考えなくもなかったのですが、同じ席に着いて楽しくお話をするなんてとても無理そうでしたから。
後は階段から落ちた、のですか?
何段ほど落ちたのかは知りませんけれど、どこも怪我をした様子はありませんわね。上から落ちたならば、相当酷いことになっていてたのではないでしょうか。
しかも、なんと言いまして?
「…まるで私が突き落とした様に仰るのですね。」
していませけど。
「そうだ!!ソニアは落ちる前にお前を見たと言っている。惚けるのはやめるのだな!」
コレは何でしょう。
私に無実の罪を着せるつもりなのですか?証拠は被害者擬きの証言のみとか?まさかそんな事はないですよね。
首を傾げてしまいますよ。
「ソニア様?本当に私を見たのですか?もちろん他の目撃者とか物証とか、ございますのでしょ?」
ジッと見つめれば、ささっと王子の後ろに隠れて震えた振りをする。
なぜ振りかと言えば、覗いた口元がニヤリと歪んでいるのが見えたから。
「あの、私、黒髪が見えたんです。や、睨まないで、怖いっ、」
思わず広げていた扇をパシッと閉じて、頬に寄せてしまいました。
まさか被害者擬きの証言のみとは!
しかもソニア様はかなりの腹黒とお見受けしましたが、王族としてもイマイチな第2王子殿下を引っ掛けて、いったいどうするつもりなんでしょう。
殿下がこの後どのような立場になったとしても引き取って頂けると大変ありがたいですね。
「私、その様なことは致しておりません。それはいつの事ですの?どちらの階段を何段ぐらい落ちたのです?その時の怪我の手当てはどうされたのでしょう。」
ソニア様を背に庇った王子殿下のお綺麗な顔の眉間にシワが寄りました。
相当頭にきたのか、取り巻きその一、 公爵令息グラン様が声を荒げます。
「全て分かっていてるのに何を言っているのだ!この女狐が!」
あらあら。
側近候補のつもりならば、王子と一緒に糾弾せずにこの場から引く事を考えた方がよろしいのでは?
しかも女狐ですって。
タラチランジュの娘に対して酷いいいようですこと。
まぁ取り巻きその二、その三が吠えるよりはマシですね。彼らは当家よりも下の爵位ですから暴言は吐いてはいけません。お願いですから吐かないで下さい、後がとても面倒臭くなりますから。
「知らないからお聞きしたのです。いつ、どこで起きた事ですの?階段から落ちるなどの大きな事故はどなたからも聞いた事が御座いません。落ちた後はどうなさいましたの?アカデミーに報告はしたのですか?怪我は?医療室で診察は受けましたの?どちらにどの程度の怪我を負ったのですか?全治何ヶ月程度?……先生方は把握しておりますか?」
ふと傍観していたアカデミーの先生方に話を振ってみた。見てるだけなんて、狡いですから。
「いや?そんな報告は受けていない。医療室はどうだい?」
近くにいた魔術科の講師が面白そうに、治癒師に話を振ってくれた。
「うちでも聞いておりませんが?いつ、どちらか階段から落ちたのですか?」
アカデミーの治癒師からも同じ事を聞かれ、苛立ちを隠せずにチッと舌を鳴らした。
グラン様、お行儀が悪いです。
「先々週の水の日だ!場所はギャラリーに続く中央階段。突き落とされたと言うのだから一番上に違いないだろうが!」
治癒師がジロジロとソニア様をみて、首を傾げた。
「うーん。どこもなんともないようですね。治療した痕跡もなし。一番上から落ちたのなら相当酷い怪我と言うか、命に関わるものであってもおかしくないんですけどね。どこもなんともないなんて事はあり得ないんですけどね。そもそも皆様は落ちた所をみていたのですか?」
治癒師に問われて、取り巻き達が若干身を引く。
「見ては、、いない。悲鳴が聞こえて駆けつけたら、ソニアが階段下で倒れていた。そうだ!足首が痛いと言ってた!ソニアは光魔法を使うから、自己治癒したに違いない!その時に黒髪を見たと、ソニアが言っていた。アカデミーでソニアに危害を加えそうな黒髪などそいつしかいないだろうが!」
言いたい事は沢山ある、突っ込みどころは満載なのだけれど。
罪を着せるならば、私の予定を事前に調べませんとお話になりません。
「…では私ではありませんわね。毎週の水の日はアカデミーにはおりませんから。」
そう私は水の日はアカデミーから離れて、別の場所で講義を受けているのですよ。最終学年に上がってからずっとなので、昨日今日の話ではないのです。
「はぁー?何、嘘言ってるのよ!簡単にアカデミーを出れるわけがないじゃない!罪を認めたくないからって、そんな嘘をついて。素直に謝ってくれたらそれで良いのに!」
王子の後ろに隠れていたソニア様が、顔を引きつらせて私の前に進み出た。
確かに、週末ならともかく週半ばでアカデミーから抜け出すなど普通はあり得ない。あり得ないけれど、例外はあります。
「本当のことだよ。私が許可を出したのだから。ーーーーで、ソニア嬢は階段から落ちて、黒髪を見たのですか?本当に?」
いつの間にか後ろに学園長が控えていました。
よかった。
後は学園長が治めてくれる筈ですもの。
この人達の相手をするのはとても疲れますから、出来ればどなたかにお譲りしたい。
「も、もしかしたら日差しの加減で見間違えたのかも、しれません。でも、本当に押されたんです!」
ソニア様も必死ね。
全てを管理する学園長が本当だと証言したのだから、それはもう覆らない。そうなると偽証はソニア様の方になってしまいます。
全て冤罪なので、偽証は確定なんのですけど。
私がそんな事をする意味がわかりませんし、報復を考えるならもっと簡単に、証拠も残さずに瞬殺する方法を選びます。
「それで?何故落ちた後に何故アカデミーに報告しなかったのです?階段から突き落とされるなど重大事件です。傷害どころではなく殺人罪にも問われます。怪我は足首だけですか?……淑女の割には随分と頑丈な体ですね。屈強な男でも全治三ヶ月にはなるでしょうに。」
学園長に鼻で笑われて、ソニア様の体が震えているのが見えました。体格の良い厳つい男よりも頑丈な体って、淑女なの?本当に?みたいな感じで学園長に笑われたから。
でも私が言ったのではないのだから睨まないで下さい。
「酷いです!私が男爵家だから、平民上がりだからバカにするんですか!アカデミーは全ての生徒を平等に扱うんじゃないんですか!」
学園長は決してバカにしてはいないと思うのですが。男爵家だから、平民上がりだからと憤っているのはソニア様だけだと思いますよ。
「ふむ、ソニア嬢はそう感じるのか。犯人は時期に判明しますからご安心下さい。アカデミーでは色々と記録を取っておりますので。先々週、水の日、中央階段。映像が残っているはずです。」
学園長の指示なら直ぐにでも確認してもらえますね。犯人がいたなら、はっきり映っているはずですし。
コレで王子殿下達からの疑いの目も晴れる事でしょう。
めでたし、めでたし。
あら?ソニア様の顔色が悪いですがどうしたのですか……なんてね。自作自演がバレてしまいますもの、青くもなります。
映像が残る事を知らなかったのですかね?
貴族の子女が集う場所で何もしない訳がないのですよ。しかも王族の方も通われるのですから、かなり気を使っているはずです。入学前に説明もされたのですが聞いていなかったのでしょうね。
本当に残念な方達!
それよりもその指につけている物、早くはずした方が宜しいかと。自作自演よりも酷い事に成りかねませんから。
指輪を見ていた事に気がついたのか、ソニア様がしてやったりとニヤニヤ笑い始めました。
あ、自尊心で持ち直しましたか。流石、たくましく育っただけあります。
「ーーーーもしかしたら、押されたのは私の思い違いかも、知れません。けど、エドワード様への愛は真実なんです。お慕いしています、エド様!」
唖然と成り行きを見守っていた王子殿下が、ソニア様の愛の告白で舞台に戻って来てしまいました。有耶無耶のまま終わりにしてしまいたかったのですが、王子殿下の腕の中にソニア様がすっぽりと収まりました。
もうため息も出ません。
「私達は真実の愛で結ばれているのだ!それに逆らう事は出来ない!マリアナお前とは結婚できない、理解して欲しい。」
…振り出しに戻ってしまいましたわ。
最初からやり直しとは、泣いても許されますよね?
そもそも、私はあなたの婚約者ではありませんから!!
0
あなたにおすすめの小説
殿下に婚約破棄されたわたくしに、新しい婚約者を教育してほしい? 良いですよ、全く頑張りませんけれど
kieiku
恋愛
つまり月給制で、アンジュ様が嫌だと言ったらその日はそれで終了。そういうことですよね。楽な仕事だわぁ。
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。
五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」
婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。
愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー?
それって最高じゃないですか。
ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。
この作品は
「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。
どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
【完結】婚約破棄の代償は
かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。
王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。
だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。
ーーーーーー
初投稿です。
よろしくお願いします!
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った
mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。
学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい?
良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。
9話で完結
飽きたと捨てられましたので
編端みどり
恋愛
飽きたから義理の妹と婚約者をチェンジしようと結婚式の前日に言われた。
計画通りだと、ルリィは内心ほくそ笑んだ。
横暴な婚約者と、居候なのに我が物顔で振る舞う父の愛人と、わがままな妹、仕事のフリをして遊び回る父。ルリィは偽物の家族を捨てることにした。
※7000文字前後、全5話のショートショートです。
※2024.8.29誤字報告頂きました。訂正しました。報告不要との事ですので承認はしていませんが、本当に助かりました。ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる