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騎士団宿舎にある上官用の部屋には頭を抱えて執務机に伏しているジェラルド団長の姿があった。
しかも、犬のようにう~と低い声で唸っている。
その様子を部屋の中央にあるソファから金髪碧眼の美青年、副団長ディラン・バートンが冷たい笑みを浮かべて見ていた。
少しだけ開いた窓から入る風が白く薄いカーテンをゆるゆると揺らす、とても過ごしやすく気持ちのいい午後だった。
「で、エリオット君は寂しそうな笑顔をしたまま部屋を去り、衝撃から立ち直れなかった貴方は、それを黙って見送ってしまったと、そういうことですねぇ?」
う~と唸り声の返事。
「なにやってるんですか、貴方はぁ」
これにもまたう~と返ってきたが、意味のある返事のつもりだったのか本当に唸っただけなのか判然としなかった。
ディランはそんなジェラルドに対してイラ立ちを隠さない。
もちろんディランも貴族の生まれで家格でいえばジェラルドの家よりは下位になるのだが、いわゆる学友として幼い頃から一緒にいたので遠慮がない。
「ちょっと聞きますけどねぇ。エリオット君に交際してくれって言ってなかったんですかぁ? 今の話だと彼は体だけの関係だと思ってたようですけどぉ?」
ここでやっとジェラルドは勢いをつけて上体を起こした。
「言って! ……なかったかも……」
言いながら、ゆっくりとまた机に沈んでいく。
ディランはそれはそれは深いため息をついた。
「自業自得ですねぇ。その感じだと他のこともちゃんと言ってないんでしょう。見合いは最初から断ってて公爵様に会うだけでいいからと押し切られたことや、貴方の家族にはエリオット君のことをすでに話してあって、家に招待したいと考えてることとかぁ」
「……言ってない」
「本当に駄目ですねぇ。仕事に関しては優秀すぎるほど出来る人なのに、肝心のエリオット君になると、とたんにマヌケになる」
「なんか……緊張しちゃって……」
「訓練兵からやり直してこい腰抜け」
「酷い……」
再びため息をついたディランはおもむろに立ち上げると、部屋の隅にある棚に行きお茶の準備を始めた。
「それで、どうするんですかぁ? エリオット君のこと諦めたわけじゃないでしょう?」
「……あぁ」
ディランが振り返るとジェラルドは顔を上げて苦笑した。
「今さらだが、思いを告げてみるよ。エリーはきっと身分差のことも気にしてるだろうから、それも安心させてやりたい」
「そうですねぇ。早いほうがいいと思いますよ」
「ああ」
ディランがジェラルドの前にお茶の入ったカップを差し出す。
ふわふわと立ち昇る湯気と一緒に、華やかな香りが室内に広がっていく。
ジェラルドはそれを受け取り一口分だけ口に含むと、わざと時間をかけて飲み込んだ。
自分を落ち着かせるように。
「しかし、噂ってそんなに早く流れるものなんですかねぇ」
「うん?」
ディランは立ったままお茶を飲みながら不思議そうな顔をしている。
「貴方が見合いすることですよぉ。しかもそれがオルタンナ公爵の紹介だということまで分かってる。こう言ってはなんですが、平民が知るには詳しすぎません?」
「ん~、どうなんだろうな。噂には尾ひれが付くから、今頃は俺が公爵家の婿養子になってるかもしれない」
「尾ひれが大きすぎる。バランスが悪い」
「ふふっ」
ディランは早々に飲み終わり、カップをソファの前にあるローテーブルに置いた。
後で室内を整えに入るメイドに使用済みだと一目で分かるようにするためだ。
そのまま、ディランはカップから視線をそらさずソファに座る。
「考えたくはないですが、団内に情報を流してる輩がいるかもしれませんねぇ。団員でなければそば付きの従者かメイドか……」
普段は飄々とした印象を与えるディランだったが、今はその瞳が鋭く冷たくなっている。唇の、片方の口角がキュッと上がる。
「これは気を引き締めないと」
その表情は、国王を、ひいては王国を守る騎士のものではなく、まるで悪の親玉のようだった。
ジェラルドはひそかに、こいつは敵に回さないと心に固く決めている。
「ああ、それからぁ」
一瞬で通常の顔に戻って、ディランはジェラルドを見た。
「エリオット君のこと、早めに決着つけてくださいねぇ。貴方達お二人は団内で賭けの対象になってますからぁ」
「は?」
「どういう形でどう結ばれるか、大盛り上がりなんですよ」
「…………」
目を点にして固まってしまったジェラルドをよそに、ディランはその長い足を組んで背もたれに体を預けた。
「いやー。貴方とエリオット君が関係を持つのが僕の予想より早かったから、その時は大負けしましたが、実は付き合ってなかったようなので無効ですよねぇ? 仕切り直さないと」
「おい――」
さすがに自身が賭けに使われているとは思っておらず、ジェラルドの声は自然と低くなる。
しかしディランは気にした風もなく、笑顔だった。
「いいじゃないですかぁ。愛されてる証拠ですよぉ。あなたとエリオット君が訓練場で会うときは二人きりにしてあげてるでしょう? この間なんて、貴方がエリオット君を放さないから察した従者が、もう一人いる従業員を頑張って引きとめてたんですよぉ? 感謝してくださいねぇ」
「あ~、それは……まあ、うん」
反論できずにジェラルドは視線を泳がせたまま、残りのお茶を飲みほした。
「そういえばその時に、その従業員が一度執務室のほうへ様子を見に行ったと従者が心配してましたが、大丈夫でしたかぁ?」
「……あぁ、問題ない」
「なら、良かったです」
話は終わったとばかりにディランは立ち上がった。
踵を返し扉へ行こうとする。その背中にジェラルドは声をかけた。
「ディラン。追加の発注がある」
「あれ? なにか不足してましたかぁ?」
振り返り怪訝そうな顔をするディランに、ジェラルドはゆるく首を振った。
「いや。例の計画が正式に決まったようだ」
「え。あれ本当にやるんですかぁ? 正気とは思えない」
「仕方ない。俺たちは指示に従うだけだ」
「はあ。分かりました。手配しときます」
今度こそディランは部屋を出た。
一人になったジェラルドは腕を組み両目を閉じる。
その顔はうっすらと笑んでいた。
しかも、犬のようにう~と低い声で唸っている。
その様子を部屋の中央にあるソファから金髪碧眼の美青年、副団長ディラン・バートンが冷たい笑みを浮かべて見ていた。
少しだけ開いた窓から入る風が白く薄いカーテンをゆるゆると揺らす、とても過ごしやすく気持ちのいい午後だった。
「で、エリオット君は寂しそうな笑顔をしたまま部屋を去り、衝撃から立ち直れなかった貴方は、それを黙って見送ってしまったと、そういうことですねぇ?」
う~と唸り声の返事。
「なにやってるんですか、貴方はぁ」
これにもまたう~と返ってきたが、意味のある返事のつもりだったのか本当に唸っただけなのか判然としなかった。
ディランはそんなジェラルドに対してイラ立ちを隠さない。
もちろんディランも貴族の生まれで家格でいえばジェラルドの家よりは下位になるのだが、いわゆる学友として幼い頃から一緒にいたので遠慮がない。
「ちょっと聞きますけどねぇ。エリオット君に交際してくれって言ってなかったんですかぁ? 今の話だと彼は体だけの関係だと思ってたようですけどぉ?」
ここでやっとジェラルドは勢いをつけて上体を起こした。
「言って! ……なかったかも……」
言いながら、ゆっくりとまた机に沈んでいく。
ディランはそれはそれは深いため息をついた。
「自業自得ですねぇ。その感じだと他のこともちゃんと言ってないんでしょう。見合いは最初から断ってて公爵様に会うだけでいいからと押し切られたことや、貴方の家族にはエリオット君のことをすでに話してあって、家に招待したいと考えてることとかぁ」
「……言ってない」
「本当に駄目ですねぇ。仕事に関しては優秀すぎるほど出来る人なのに、肝心のエリオット君になると、とたんにマヌケになる」
「なんか……緊張しちゃって……」
「訓練兵からやり直してこい腰抜け」
「酷い……」
再びため息をついたディランはおもむろに立ち上げると、部屋の隅にある棚に行きお茶の準備を始めた。
「それで、どうするんですかぁ? エリオット君のこと諦めたわけじゃないでしょう?」
「……あぁ」
ディランが振り返るとジェラルドは顔を上げて苦笑した。
「今さらだが、思いを告げてみるよ。エリーはきっと身分差のことも気にしてるだろうから、それも安心させてやりたい」
「そうですねぇ。早いほうがいいと思いますよ」
「ああ」
ディランがジェラルドの前にお茶の入ったカップを差し出す。
ふわふわと立ち昇る湯気と一緒に、華やかな香りが室内に広がっていく。
ジェラルドはそれを受け取り一口分だけ口に含むと、わざと時間をかけて飲み込んだ。
自分を落ち着かせるように。
「しかし、噂ってそんなに早く流れるものなんですかねぇ」
「うん?」
ディランは立ったままお茶を飲みながら不思議そうな顔をしている。
「貴方が見合いすることですよぉ。しかもそれがオルタンナ公爵の紹介だということまで分かってる。こう言ってはなんですが、平民が知るには詳しすぎません?」
「ん~、どうなんだろうな。噂には尾ひれが付くから、今頃は俺が公爵家の婿養子になってるかもしれない」
「尾ひれが大きすぎる。バランスが悪い」
「ふふっ」
ディランは早々に飲み終わり、カップをソファの前にあるローテーブルに置いた。
後で室内を整えに入るメイドに使用済みだと一目で分かるようにするためだ。
そのまま、ディランはカップから視線をそらさずソファに座る。
「考えたくはないですが、団内に情報を流してる輩がいるかもしれませんねぇ。団員でなければそば付きの従者かメイドか……」
普段は飄々とした印象を与えるディランだったが、今はその瞳が鋭く冷たくなっている。唇の、片方の口角がキュッと上がる。
「これは気を引き締めないと」
その表情は、国王を、ひいては王国を守る騎士のものではなく、まるで悪の親玉のようだった。
ジェラルドはひそかに、こいつは敵に回さないと心に固く決めている。
「ああ、それからぁ」
一瞬で通常の顔に戻って、ディランはジェラルドを見た。
「エリオット君のこと、早めに決着つけてくださいねぇ。貴方達お二人は団内で賭けの対象になってますからぁ」
「は?」
「どういう形でどう結ばれるか、大盛り上がりなんですよ」
「…………」
目を点にして固まってしまったジェラルドをよそに、ディランはその長い足を組んで背もたれに体を預けた。
「いやー。貴方とエリオット君が関係を持つのが僕の予想より早かったから、その時は大負けしましたが、実は付き合ってなかったようなので無効ですよねぇ? 仕切り直さないと」
「おい――」
さすがに自身が賭けに使われているとは思っておらず、ジェラルドの声は自然と低くなる。
しかしディランは気にした風もなく、笑顔だった。
「いいじゃないですかぁ。愛されてる証拠ですよぉ。あなたとエリオット君が訓練場で会うときは二人きりにしてあげてるでしょう? この間なんて、貴方がエリオット君を放さないから察した従者が、もう一人いる従業員を頑張って引きとめてたんですよぉ? 感謝してくださいねぇ」
「あ~、それは……まあ、うん」
反論できずにジェラルドは視線を泳がせたまま、残りのお茶を飲みほした。
「そういえばその時に、その従業員が一度執務室のほうへ様子を見に行ったと従者が心配してましたが、大丈夫でしたかぁ?」
「……あぁ、問題ない」
「なら、良かったです」
話は終わったとばかりにディランは立ち上がった。
踵を返し扉へ行こうとする。その背中にジェラルドは声をかけた。
「ディラン。追加の発注がある」
「あれ? なにか不足してましたかぁ?」
振り返り怪訝そうな顔をするディランに、ジェラルドはゆるく首を振った。
「いや。例の計画が正式に決まったようだ」
「え。あれ本当にやるんですかぁ? 正気とは思えない」
「仕方ない。俺たちは指示に従うだけだ」
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