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二人がかりで両腕を掴まれて連れて行かれたのは、宣言通り地下牢だった。
先行した男が明かりを点けたのだろう。天井からぶら下がったいくつものランプが揺れていた。
薄暗がりに慣れた目には、とても眩しい。
目を細めながら見たそこは石造りで、左右に、等間隔に牢屋が並んでいた。
空気が澱んでいて、俺がいた部屋よりも悪臭が酷い。臭いが目に沁みるなんて知らなかった。
あまり考えたくないのだが、腐敗臭がする。
「眩しいな! 消せよ!」
牢のどれかから、誰かが叫んだ。天井から床まで鉄格子がはまっているその奥は、暗くて見えない。
「消したらよく見えないだろ。ちょっとこっち寄ってみろよ」
「ああ?」
「面倒くせえな」
「なんか面白いものでも持って来たのか?」
「んなことより、ここから出せよ! 濡れ衣だって言ってるだろ!」
「おい! 一番奥のヤツもう死んでるぞ! 早く持っていけ! 臭いんだよ! 見ろよこの虫の量!」
ビリーの言った言葉にあちこちから声が上がる。
中にはとてもおぞましい内容もあって、俺は体を強張らせた。
「なんだよ、ここから出さないなら帰って、っておい! 可愛いの連れてるじゃねーか!」
近くの牢から声がして、ついそっちを見てしまった。そして、目が合った。
鉄格子にべったりと顔を寄せている男。顔面の下半分は髭でおおわれて、髪は好き放題に伸びていた。
歯を見せて笑っているが、それも何本か抜け落ちている。
「おい。そいつもここにぶち込むのか? だったらその前に俺に貸してくれよ。溜まってんだよ」
舌なめずりして、その男が言った。
「なんだよ、男じゃねーか」
「男でもいいから、早く寄こせ」
「可哀そうになあ。こんなところに連れて来られて。見ろよ、怯えてるぜ。慰めてやるから、こっち来な」
「ここから出せ! 代わりにそいつ入れろ!」
「お前ら静かにしろ!!」
ビリーが怒鳴って、一応は静かになる。
さっきから感じる吐き気は悪臭のせいか、体調が悪いせいか、それとも別の何かか。
頭が上手く働かない。
「さあて、お嬢さん。どうする?」
お嬢さんって、俺?
ビリーはそばに来ると、俺のシャツのボタンをひとつひとつ外し始めた。
逃げようとしたが両脇の二人に抑えられて無理だった。
「素直に話した方が良いと思わないか? それとも、こういうのが好きなたちか?」
「痛っ」
ボタンを外し終え、俺の乳首を爪で強く摘まんできた。
「痛かったか? 優しいほうが好きか?」
「――っ!」
指の腹で押し込むように擦られて、体が跳ねた。
「ああ。こっちが良いのか」
「~~っ」
今度は円を描くように指先で揉まれて、俺は歯を食いしばった。
ヤバい。下半身に熱が集まってる。
疲れや体調不良のせいで、体の機能がおかしくなってて、それで反応してるだけなのに。
この男に感じさせられているのが腹立つ。
「んやぁ」
油断した!
ビリーだけかと思ったら、右腕を掴んでるヤツが俺の耳たぶ舐めてきやがった。
「可愛い声出すなあ」
「――っ。……っ、……ん」
そう言いながらビリーは指を止めない。親指と人差し指で固くなった乳頭をコリコリと捻る。
右側のヤツは耳に歯を立ててくる。
声は何とか我慢してるけど、俺の意思に反して体はビクビクと反応してしまう。
「おい! お前らのお楽しみ見せつけるために連れて来たのか!?」
「ふざけんな! こっち寄こせ!」
「可愛い子ちゃぁ~ん、おじさんとこおいで~。もっと気持ち良くしてあげるよ~」
「ああああ。もう出るっ。……うっ」
「ん?」
ビリーが手を止めて振り返った。
「汚いだろ! 誰だ飛ばしたヤツは! 服にかかったじゃないか!」
たぶん俺に向かって飛ばしたんだろうけど、結果的にビリーにかかったようだ。
ざまあみろ。
ああもう! お前も止めろよ! 上官が騒いでるんだからさぁ。
あの加虐趣味っぽい男がひたすらに俺の耳を舐めては噛んでくる。
ていうか、どうなってるんだこの状況。
俺は本当に何も知らないから話すこともないし、反貴族でもない。
どうすれば解放される?
もしかして――。
やってもないことを、やりましたと言えば良いのか?
何も、してないのに。
「もう、探したよぅ」
場違いに明るく呑気な声がした。
あれ、この声……。
「ディ……、ディラン・バートン副団長……」
声を絞り出すように、うめくようにビリーが言った。
やっぱり! ディラン副団長だ!
執務室で何度か顔を合わせたことがある。貴族にしては馴染みやすい人で、しかも美形。
これはもしかして、助かった?
「独房行ってもいないしさぁ。看守に聞いてもなかなか言わないし。行先はちゃんと分かるようにしといてよぉ」
「いや……あの……」
ビリーだけじゃなくて他の奴らも動揺してる。ディランさんの登場で耳舐め男の動きがやっと止まった。
可能な限り首を捻って振り返る。そこには金髪碧眼のディランさんが腕を組んで立っていた。
「なんだ。またキレイなのが来たな。相手してくれよ」
「ちょん切るよぉ。あっちこっち」
かけられた声を軽く流すディランさん。
どこ? あっちこっちって、どこ?
牢屋の皆さん大笑いしてるし。そんなに面白かった?
「いつまでそうしてるつもり? 早く放しなよぉ。彼が無実なのは知ってるでしょう?」
え? 俺が無実なの知ってるって、どういうこと?
「でないと君達、後が大変だよぉ?」
二コリと微笑むディランさんは絵画に描かれる天使のようだった。
けど、目だけは笑っていなかった。
先行した男が明かりを点けたのだろう。天井からぶら下がったいくつものランプが揺れていた。
薄暗がりに慣れた目には、とても眩しい。
目を細めながら見たそこは石造りで、左右に、等間隔に牢屋が並んでいた。
空気が澱んでいて、俺がいた部屋よりも悪臭が酷い。臭いが目に沁みるなんて知らなかった。
あまり考えたくないのだが、腐敗臭がする。
「眩しいな! 消せよ!」
牢のどれかから、誰かが叫んだ。天井から床まで鉄格子がはまっているその奥は、暗くて見えない。
「消したらよく見えないだろ。ちょっとこっち寄ってみろよ」
「ああ?」
「面倒くせえな」
「なんか面白いものでも持って来たのか?」
「んなことより、ここから出せよ! 濡れ衣だって言ってるだろ!」
「おい! 一番奥のヤツもう死んでるぞ! 早く持っていけ! 臭いんだよ! 見ろよこの虫の量!」
ビリーの言った言葉にあちこちから声が上がる。
中にはとてもおぞましい内容もあって、俺は体を強張らせた。
「なんだよ、ここから出さないなら帰って、っておい! 可愛いの連れてるじゃねーか!」
近くの牢から声がして、ついそっちを見てしまった。そして、目が合った。
鉄格子にべったりと顔を寄せている男。顔面の下半分は髭でおおわれて、髪は好き放題に伸びていた。
歯を見せて笑っているが、それも何本か抜け落ちている。
「おい。そいつもここにぶち込むのか? だったらその前に俺に貸してくれよ。溜まってんだよ」
舌なめずりして、その男が言った。
「なんだよ、男じゃねーか」
「男でもいいから、早く寄こせ」
「可哀そうになあ。こんなところに連れて来られて。見ろよ、怯えてるぜ。慰めてやるから、こっち来な」
「ここから出せ! 代わりにそいつ入れろ!」
「お前ら静かにしろ!!」
ビリーが怒鳴って、一応は静かになる。
さっきから感じる吐き気は悪臭のせいか、体調が悪いせいか、それとも別の何かか。
頭が上手く働かない。
「さあて、お嬢さん。どうする?」
お嬢さんって、俺?
ビリーはそばに来ると、俺のシャツのボタンをひとつひとつ外し始めた。
逃げようとしたが両脇の二人に抑えられて無理だった。
「素直に話した方が良いと思わないか? それとも、こういうのが好きなたちか?」
「痛っ」
ボタンを外し終え、俺の乳首を爪で強く摘まんできた。
「痛かったか? 優しいほうが好きか?」
「――っ!」
指の腹で押し込むように擦られて、体が跳ねた。
「ああ。こっちが良いのか」
「~~っ」
今度は円を描くように指先で揉まれて、俺は歯を食いしばった。
ヤバい。下半身に熱が集まってる。
疲れや体調不良のせいで、体の機能がおかしくなってて、それで反応してるだけなのに。
この男に感じさせられているのが腹立つ。
「んやぁ」
油断した!
ビリーだけかと思ったら、右腕を掴んでるヤツが俺の耳たぶ舐めてきやがった。
「可愛い声出すなあ」
「――っ。……っ、……ん」
そう言いながらビリーは指を止めない。親指と人差し指で固くなった乳頭をコリコリと捻る。
右側のヤツは耳に歯を立ててくる。
声は何とか我慢してるけど、俺の意思に反して体はビクビクと反応してしまう。
「おい! お前らのお楽しみ見せつけるために連れて来たのか!?」
「ふざけんな! こっち寄こせ!」
「可愛い子ちゃぁ~ん、おじさんとこおいで~。もっと気持ち良くしてあげるよ~」
「ああああ。もう出るっ。……うっ」
「ん?」
ビリーが手を止めて振り返った。
「汚いだろ! 誰だ飛ばしたヤツは! 服にかかったじゃないか!」
たぶん俺に向かって飛ばしたんだろうけど、結果的にビリーにかかったようだ。
ざまあみろ。
ああもう! お前も止めろよ! 上官が騒いでるんだからさぁ。
あの加虐趣味っぽい男がひたすらに俺の耳を舐めては噛んでくる。
ていうか、どうなってるんだこの状況。
俺は本当に何も知らないから話すこともないし、反貴族でもない。
どうすれば解放される?
もしかして――。
やってもないことを、やりましたと言えば良いのか?
何も、してないのに。
「もう、探したよぅ」
場違いに明るく呑気な声がした。
あれ、この声……。
「ディ……、ディラン・バートン副団長……」
声を絞り出すように、うめくようにビリーが言った。
やっぱり! ディラン副団長だ!
執務室で何度か顔を合わせたことがある。貴族にしては馴染みやすい人で、しかも美形。
これはもしかして、助かった?
「独房行ってもいないしさぁ。看守に聞いてもなかなか言わないし。行先はちゃんと分かるようにしといてよぉ」
「いや……あの……」
ビリーだけじゃなくて他の奴らも動揺してる。ディランさんの登場で耳舐め男の動きがやっと止まった。
可能な限り首を捻って振り返る。そこには金髪碧眼のディランさんが腕を組んで立っていた。
「なんだ。またキレイなのが来たな。相手してくれよ」
「ちょん切るよぉ。あっちこっち」
かけられた声を軽く流すディランさん。
どこ? あっちこっちって、どこ?
牢屋の皆さん大笑いしてるし。そんなに面白かった?
「いつまでそうしてるつもり? 早く放しなよぉ。彼が無実なのは知ってるでしょう?」
え? 俺が無実なの知ってるって、どういうこと?
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