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5.対岸の町
24.シスターさん
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「昨日のシスターさんだ」
「声をかけてみる?」
俺とトゥリンが顔を見合わせていると、モモが躊躇なく席を立った。
「こんにちはー!!」
ブンブン尻尾を振ってシスターに駆け寄るモモ。
「あっ、待てっ」
慌てて席を立つ。
「トゥリン、サブローさんを見ててくれないか?」
「ああ、分かった」
トゥリンにリードを預けると俺もモモの後を追った。
「あら、貴方達は昨日の」
シスターさんは俺たちの顔を見るとニコリと微笑んだ。
「ここに泊まっていたのね」
「は、はい。俺たちのこと、覚えてたんですね」
「ええ、目立つもの」
「ははは」
そりゃあ、あれだけ騒げばなあ。
サブローさんの顔をチラリと見る。
昨日ぎゃおんぎゃおん騒いでたのが嘘みたいに、サブローさんはお利口さんにして寝ていた。
シスターの名はセーブルさんと言って、元々ここの人間ではなく、予防接種の時期だけ神殿に助っ人として手伝いに来ているのだという。
「それでこの宿に泊まってるんですね」
「そうなの。神殿で泊めてくれるって言ってたんだけど、神殿の料理って美味しくないのよね。薄味だし、菜食主義的というか……」
「そうなんですね」
精進料理みたいな感じなんだろうか。
「昨日は大変だったわね」
セーブルさんがサブローさんに笑いかける。
サブローさんはビクリと俺の後ろに隠れた。
「あらあら、どうやら痛いことをする人だと思ってるみたいね」
「全く」
「ところで、私に何か用かしら」
セーブルさんが微笑みかける。
「ああ、ハイ」
チラリとモモを見る。
「ええと、セーブルさんは色んな獣人を見てると思うんですけど、この子と同じような獣人を見たことはありませんか?」
セーブルさんは顎に手を当て少しの間考えるような仕草をした。
「人間の体にコボルトのような耳、という獣人なら何回か見たことあるわ。でも、あなたのように耳も尻尾も大きい子は初めてよ。大抵、人間社会に溶け込めるように耳や尻尾を短くしてるから」
「そうなんですか。獣人図鑑にも載ってなくて、何の種類の獣人なのかなって」
俺はモモと出会った経緯を大まかに喋った。奴隷ショップで売られていたこと。どうやら鬼ヶ島のイクベという村で生まれたらしいこと。
セーブルさんは、真剣な顔をして何度もうなずいた。
「そうなの。私も実は鬼ヶ島に行こうと思っていたのだけど」
「そうなんですか?」
「ええ。鬼ヶ島は他の地域と比べても予防接種の接種率が低いの。大陸の国々と違って独立した政治体制を取っているし、最近情勢も不安定だから……」
ぎゅっと拳を握りしめるセーブルさん。
「でもこれからは人間の言葉の分からない獣人やコボルトにも予防接種をどんどん広めていかないと行けないと思っているの。その為に、私はできる限りのことをしたいと思っているわ」
なんて立派な人なんだ!!
俺は感激のあまり思わず身を乗り出してセーブルさんの手を握った。
「俺に出来ることがあったらなんでも言ってください! できる限りのお手伝いをします!」
セーブルさんは一瞬キョトンとすると、照れたように笑った。
「ありがとうございます。そう言っていただけただけでも嬉しいわ」
「いやー、セーブルさん、いい人だったな」
浮かれながら席に戻ると、なにやらトゥリンが浮かない顔をしている。
「……シバタはああいう女の人が好きなのか?」
「え?」
トゥリンの奴、一体何を言ってるんだ?
ギリ、とジュースに刺さったストローを噛み締めるトゥリン。
「……まあ、セーブルさんは美人で優しくていい人だからな。犬も好きだし」
犬や獣人の健康のために身を粉にして働くなんて、中々できるものじゃない。感心な娘さんだと思う。
見る見るうちにトゥリンの元気が無くなっていく。
ボソリと呟くトゥリン。
「やっぱりシバタも、あのシスターみたいに胸が大きくて足が長くて大人っぽい女の子のほうがいいのだな……」
はぁ!?
「確かに、セーブルさんは美人でスタイルも良くて、胸も大きいし足も長いけど、そういうことではなくて」
あくまで動物を愛する心がだな!
「じゃあ胸が大きいのは嫌いか!?」
訳の分からないことを聞いてくるトゥリン。
俺はサブローさんのフサフサの胸毛を思い浮かべた。
「うーん、小さいよりは大きい方がいいかな……」
フサフサの胸毛に顔を埋めている所を想像しニヤニヤしていると、トゥリンは顔を真っ赤にして立ち上がった。
「トゥリン?」
「……シバタのバカ! 変態!」
聞き捨てならない捨て台詞を吐いてどこかへ駆けていくトゥリン。
「あ、おい」
慌てて追いかけたものの、山暮らしで鍛えたトゥリンの足は早くて、あっという間に見えなくなってしまった。
「……腹でも痛いのか?」
席に戻り首をひねっていると、モモが呆れたように言った。
「ご主人は、もっと女心を学んだ方がいいです」
「アウ」
サブローさんまで俺のことを哀れっぽい顔で見る。何なんだよ!
◇◆◇
とりあえずその日は魔王の居る鬼ヶ島までの地図や今後の旅程、買い出しなどをして一日をして過ごした。
「ただいま、サブローさん。お土産だぞ!」
ホテルでお留守番していたサブローさんの頭を撫でると、奮発して買ったお土産を見せる。
「このヌイグルミ、凄いんだぞ! お腹を押すとピーピー鳴るし、この紐を引けば引っ張りっこもできるし、中に餌を入れて遊べるし!」
俺は意気揚々と買ったヌイグルミをサブローさんに投げた。が、サブローさんはそれを無視し部屋の隅に転がっていた汚いタオルで遊び始めた。
ポテッと寂しく転がるヌイグルミを拾い上げ、俺はため息をついた。
「……まあ、そんなもんだよな」
「......はい?」
俺がドアを開けると、そこには俯いたままのトゥリンがいた。
「トゥリン、どうしたんだ? こんな夜中に」
「...........」
トゥリンは答えない。何だか変、というか様子がおかしい。
「......トゥリン?」
「部屋、入ってもいいか?」
「あ、ああ」
部屋に入ってくるなり俺のベッドに腰掛けるトゥリン。
やっぱり、何か変だ。
お花みたいな妙に甘ったるい匂いもするし、顔も赤いし、なんか黒いヒラヒラしたスケスケの服なんか着て――
「どうしたシバタ」
ふふんと妖しげな笑みを漏らすトゥリン。
「いや、今日のトゥリン、いつもと何か違うくないか?」
「ふふふ、気づいたか」
得意げに艶やかな金の髪をかき上げるトゥリン。
「ああ。140cmくらいだった身長が155cmくらいになってるし、AAAカップだった胸もCカップくらいになってるし、寸胴だった体もクビレが出来ている......どうしたんだ? 成長期か!?」
俺がマジマジとトゥリンを見ながら言うと、トゥリンはぐい、と俺をベットに押し倒しながら言った。
「なんかムカつく物言いだが……その通り! 私は成長したのだ!!」
「えっ」
そんな急に。そんなことってあるのか!? 何か悪いものでも食べたんじゃあ……。
戸惑う俺に、クスリと笑うトゥリン。
その目が、赤く妖しげに光る。
「さあ、シバタ……私と子作りしよう」
トゥリン、一体どうしちゃったんだ?
--------------------------
◇柴田のわんわんメモ🐾
◼断耳・断尾
主にドーベルマンやボクサーなどの犬種を立ち耳、短尾にするため行われている。
現在ではヨーロッパ諸国では動物愛護の観点から禁止されており、断耳や断尾をしている犬は入国禁止になることがある。
「声をかけてみる?」
俺とトゥリンが顔を見合わせていると、モモが躊躇なく席を立った。
「こんにちはー!!」
ブンブン尻尾を振ってシスターに駆け寄るモモ。
「あっ、待てっ」
慌てて席を立つ。
「トゥリン、サブローさんを見ててくれないか?」
「ああ、分かった」
トゥリンにリードを預けると俺もモモの後を追った。
「あら、貴方達は昨日の」
シスターさんは俺たちの顔を見るとニコリと微笑んだ。
「ここに泊まっていたのね」
「は、はい。俺たちのこと、覚えてたんですね」
「ええ、目立つもの」
「ははは」
そりゃあ、あれだけ騒げばなあ。
サブローさんの顔をチラリと見る。
昨日ぎゃおんぎゃおん騒いでたのが嘘みたいに、サブローさんはお利口さんにして寝ていた。
シスターの名はセーブルさんと言って、元々ここの人間ではなく、予防接種の時期だけ神殿に助っ人として手伝いに来ているのだという。
「それでこの宿に泊まってるんですね」
「そうなの。神殿で泊めてくれるって言ってたんだけど、神殿の料理って美味しくないのよね。薄味だし、菜食主義的というか……」
「そうなんですね」
精進料理みたいな感じなんだろうか。
「昨日は大変だったわね」
セーブルさんがサブローさんに笑いかける。
サブローさんはビクリと俺の後ろに隠れた。
「あらあら、どうやら痛いことをする人だと思ってるみたいね」
「全く」
「ところで、私に何か用かしら」
セーブルさんが微笑みかける。
「ああ、ハイ」
チラリとモモを見る。
「ええと、セーブルさんは色んな獣人を見てると思うんですけど、この子と同じような獣人を見たことはありませんか?」
セーブルさんは顎に手を当て少しの間考えるような仕草をした。
「人間の体にコボルトのような耳、という獣人なら何回か見たことあるわ。でも、あなたのように耳も尻尾も大きい子は初めてよ。大抵、人間社会に溶け込めるように耳や尻尾を短くしてるから」
「そうなんですか。獣人図鑑にも載ってなくて、何の種類の獣人なのかなって」
俺はモモと出会った経緯を大まかに喋った。奴隷ショップで売られていたこと。どうやら鬼ヶ島のイクベという村で生まれたらしいこと。
セーブルさんは、真剣な顔をして何度もうなずいた。
「そうなの。私も実は鬼ヶ島に行こうと思っていたのだけど」
「そうなんですか?」
「ええ。鬼ヶ島は他の地域と比べても予防接種の接種率が低いの。大陸の国々と違って独立した政治体制を取っているし、最近情勢も不安定だから……」
ぎゅっと拳を握りしめるセーブルさん。
「でもこれからは人間の言葉の分からない獣人やコボルトにも予防接種をどんどん広めていかないと行けないと思っているの。その為に、私はできる限りのことをしたいと思っているわ」
なんて立派な人なんだ!!
俺は感激のあまり思わず身を乗り出してセーブルさんの手を握った。
「俺に出来ることがあったらなんでも言ってください! できる限りのお手伝いをします!」
セーブルさんは一瞬キョトンとすると、照れたように笑った。
「ありがとうございます。そう言っていただけただけでも嬉しいわ」
「いやー、セーブルさん、いい人だったな」
浮かれながら席に戻ると、なにやらトゥリンが浮かない顔をしている。
「……シバタはああいう女の人が好きなのか?」
「え?」
トゥリンの奴、一体何を言ってるんだ?
ギリ、とジュースに刺さったストローを噛み締めるトゥリン。
「……まあ、セーブルさんは美人で優しくていい人だからな。犬も好きだし」
犬や獣人の健康のために身を粉にして働くなんて、中々できるものじゃない。感心な娘さんだと思う。
見る見るうちにトゥリンの元気が無くなっていく。
ボソリと呟くトゥリン。
「やっぱりシバタも、あのシスターみたいに胸が大きくて足が長くて大人っぽい女の子のほうがいいのだな……」
はぁ!?
「確かに、セーブルさんは美人でスタイルも良くて、胸も大きいし足も長いけど、そういうことではなくて」
あくまで動物を愛する心がだな!
「じゃあ胸が大きいのは嫌いか!?」
訳の分からないことを聞いてくるトゥリン。
俺はサブローさんのフサフサの胸毛を思い浮かべた。
「うーん、小さいよりは大きい方がいいかな……」
フサフサの胸毛に顔を埋めている所を想像しニヤニヤしていると、トゥリンは顔を真っ赤にして立ち上がった。
「トゥリン?」
「……シバタのバカ! 変態!」
聞き捨てならない捨て台詞を吐いてどこかへ駆けていくトゥリン。
「あ、おい」
慌てて追いかけたものの、山暮らしで鍛えたトゥリンの足は早くて、あっという間に見えなくなってしまった。
「……腹でも痛いのか?」
席に戻り首をひねっていると、モモが呆れたように言った。
「ご主人は、もっと女心を学んだ方がいいです」
「アウ」
サブローさんまで俺のことを哀れっぽい顔で見る。何なんだよ!
◇◆◇
とりあえずその日は魔王の居る鬼ヶ島までの地図や今後の旅程、買い出しなどをして一日をして過ごした。
「ただいま、サブローさん。お土産だぞ!」
ホテルでお留守番していたサブローさんの頭を撫でると、奮発して買ったお土産を見せる。
「このヌイグルミ、凄いんだぞ! お腹を押すとピーピー鳴るし、この紐を引けば引っ張りっこもできるし、中に餌を入れて遊べるし!」
俺は意気揚々と買ったヌイグルミをサブローさんに投げた。が、サブローさんはそれを無視し部屋の隅に転がっていた汚いタオルで遊び始めた。
ポテッと寂しく転がるヌイグルミを拾い上げ、俺はため息をついた。
「……まあ、そんなもんだよな」
「......はい?」
俺がドアを開けると、そこには俯いたままのトゥリンがいた。
「トゥリン、どうしたんだ? こんな夜中に」
「...........」
トゥリンは答えない。何だか変、というか様子がおかしい。
「......トゥリン?」
「部屋、入ってもいいか?」
「あ、ああ」
部屋に入ってくるなり俺のベッドに腰掛けるトゥリン。
やっぱり、何か変だ。
お花みたいな妙に甘ったるい匂いもするし、顔も赤いし、なんか黒いヒラヒラしたスケスケの服なんか着て――
「どうしたシバタ」
ふふんと妖しげな笑みを漏らすトゥリン。
「いや、今日のトゥリン、いつもと何か違うくないか?」
「ふふふ、気づいたか」
得意げに艶やかな金の髪をかき上げるトゥリン。
「ああ。140cmくらいだった身長が155cmくらいになってるし、AAAカップだった胸もCカップくらいになってるし、寸胴だった体もクビレが出来ている......どうしたんだ? 成長期か!?」
俺がマジマジとトゥリンを見ながら言うと、トゥリンはぐい、と俺をベットに押し倒しながら言った。
「なんかムカつく物言いだが……その通り! 私は成長したのだ!!」
「えっ」
そんな急に。そんなことってあるのか!? 何か悪いものでも食べたんじゃあ……。
戸惑う俺に、クスリと笑うトゥリン。
その目が、赤く妖しげに光る。
「さあ、シバタ……私と子作りしよう」
トゥリン、一体どうしちゃったんだ?
--------------------------
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