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第三章 御曹司くんのニセ彼女!?
13.ふたりの帰り道
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「朱里、帰るぞ」
放課後、蒼木先輩が教室まで迎えに来てくれる。
「は、はいっ!」
私はみんなの目を気にしながらも立ち上がり、先輩の元へと向かった。
「行ってらっしゃ~い!」
「お幸せに!」
心菜ちゃんたち女子がニヤニヤ顔で手を振ってくれる。
私は引きつった笑顔で手を振り返すと先輩と一緒に教室を出た。
靴箱の前まで来て、そっと蓋を開ける。
良かった。靴には何もされてないみたい。
てっきり泥だらけにされたり画鋲を入れられたりするかと思った……。
ほっとしながら校門を出る。
「さ、行こう」
私はキョロキョロと辺りを見回した。
朝乗ってきた白い車は停まっていない。
「……えっと、帰りは車じゃないんですね」
「ああ、朱里が目立つのは嫌だと言っていたから帰りの車は断った」
いや、これはこれで目立つんですけど……?
私が戸惑っていると、蒼木先輩がスタスタと歩いていく。
「ま……待って下さーい!」
前を歩く蒼木先輩を慌てて追いかける。
もうっ、先輩ったら歩くのが速いなあ……。
私が必死に蒼木先輩を追いかけていると、蒼木先輩がくるりと振り返った。
「……そういえば女の子は歩くのが遅いんだっけ。ほら」
私に向かって手を差し伸べてくる蒼木先輩。
えっ……と。
これは手をつなげってことですか……?
私がとまどっていると、蒼木先輩は私の手をぎゅっと握りしめた。
どきっ。
心臓が大きくはねる。
「ほら。俺の彼女なんだろ?」
蒼木先輩の大きくて綺麗な瞳が私をじっと見つめてくる。
「は……はい……そうでした……」
頬がかあっと熱くなる。
ひゃあ!
手……つないじゃった……!
なんだかくすぐったいような、恥ずかしいような、変な気持ち……。
どうしよう。
緊張して先輩の顔を見れないよっ……。
私がカチンコチンに固まっていると、蒼木先輩がクスリと笑った。
「照れてるのか? 可愛いな」
「かっ……!」
か、可愛い?
私が……?
顔だってスタイルだって普通だし、どちらかというと地味なのに、そんなことってあるのかな。
私……からかわれてる?
顔を上げると、アイドルみたいに整った顔がこちらを見つめてくる。
うわ。綺麗な顔……。
とくん、とくん。
胸のどきどきが止まらない。
やっぱりイケメンってすごいな。
私たちはニセの恋人で、私はただのボディーガード。
ドキドキなんてしちゃいけないのに……。
結局、私は蒼木先輩と手をつないだまま家に帰ってきてしまった。
「ただいま」
仁科いなり店の紺色ののれんをくぐる。
蒼木先輩ともここでさよならかと思いきや――。
「あ、おかえりなさーい」
「あっ、帰ってきたー」
「お帰りなさい!」
店内には、なぜか涼間先輩と高校生くらいの美女二人がいて、にこやかに迎えてくれた。
「えっ、何で涼間先輩がいるんですか!?」
私がびっくりして尋ねると、涼間先輩はこう答えた。
「だって、授業終わって凪季のこと迎えに行こうと思ったらもういなくてさ。きっと朱里ちゃんと帰ったんだって思ったから先回りして待ってたんだ」
私は美女二人に目をやった。
二人とも背が高くて、色白で髪もサラサラで、まるでアイドルみたい。
「この方たちは知り合いですか? もしかして、涼間先輩の彼女?」
私が恐る恐る尋ねると、涼間先輩はあははと大きな声で笑った。
「まさか! そこでナンパしたんだよ。一人でご飯を食べるのは寂しいからね」
ええっ。
一人で高校生をナンパするなんてすごいっ……。
蒼木くんはあきれた顔をしながら涼間先輩を睨みつけた。
「……お前なあ」
「だって俺、ヒマだしさ」
涼間先輩がケラケラ笑う。
すると、厨房の奥からお父さんが声をかけてきた。
「おーい、朱里。帰ったなら手伝ってくれ」
「あっ、はい」
私は慌てて店内を見回した。
店内は席がほとんど埋まっていて、昨日までのガラガラが嘘みたい。
「ごめんなさい、蒼木先輩。今日ちょっと店が混んでるので、手伝ってきます」
私が言うと、涼間先輩がスマホを取り出した。
「ああ、ごめんね朱里ちゃん。昨日僕がSNSに載せたばっかりに店が忙しくなっちゃって」
「へっ?」
涼間先輩のスマホを見るとSNSに凪季先輩と涼間先輩が二人でご飯を食べている写真が投稿されていた。
写真には「#いつメン」「#最近のお気に入りはおいなりさん」というハッシュタグが付いている。
「す……すごい。いいねがたくさん付いてる! 涼間先輩すごい人気なんですね」
イケメンだとは思ってたけど、まさか涼間先輩がこんなに人気だっただなんて!
まるで人気インフルエンサーみたい。
私がびっくりして涼間先輩の顔を見ると、涼間先輩はクスリと笑って説明してくれた。
「まあ、凪季は全然SNS更新しないからね。凪季の情報が欲しい人もみんな僕をフォローするから僕が人気なように見えるだけさ。朱里ちゃんもフォローしていいからね」
「あ、はいっ。あとでします」
確かに涼間先輩、マメそうだもんなあ……。
私が慌ててスマホを取り出そうとすると、蒼木先輩は少しイライラしたようにその手を止めた。
「朱里、こいつのSNSはフォローしなくていい」
「えっ、でも――」
「朱里は目の前の俺だけ見ていればいいから」
真剣な蒼木先輩の瞳。
「は、はい」
私があっけにとられながら返事をすると、涼間先輩がプッと吹き出した。
「えー? 何それ、嫉妬? 凪季ってば独占欲強すぎー」
「……そんなんじゃない。お前のSNSがくだらなすぎるってだけだ」
蒼木先輩は顔を真っ赤にして横を向いた。
「はいはい」
涼間先輩はやれやれと首をすくめる。
私は蒼木先輩の顔をチラリと見た。
嫉妬? 独占欲?
そんなのあるわけない。
だって私たちは偽のカップル。
恋愛感情なんて、ないんだから。
ない……よね?
放課後、蒼木先輩が教室まで迎えに来てくれる。
「は、はいっ!」
私はみんなの目を気にしながらも立ち上がり、先輩の元へと向かった。
「行ってらっしゃ~い!」
「お幸せに!」
心菜ちゃんたち女子がニヤニヤ顔で手を振ってくれる。
私は引きつった笑顔で手を振り返すと先輩と一緒に教室を出た。
靴箱の前まで来て、そっと蓋を開ける。
良かった。靴には何もされてないみたい。
てっきり泥だらけにされたり画鋲を入れられたりするかと思った……。
ほっとしながら校門を出る。
「さ、行こう」
私はキョロキョロと辺りを見回した。
朝乗ってきた白い車は停まっていない。
「……えっと、帰りは車じゃないんですね」
「ああ、朱里が目立つのは嫌だと言っていたから帰りの車は断った」
いや、これはこれで目立つんですけど……?
私が戸惑っていると、蒼木先輩がスタスタと歩いていく。
「ま……待って下さーい!」
前を歩く蒼木先輩を慌てて追いかける。
もうっ、先輩ったら歩くのが速いなあ……。
私が必死に蒼木先輩を追いかけていると、蒼木先輩がくるりと振り返った。
「……そういえば女の子は歩くのが遅いんだっけ。ほら」
私に向かって手を差し伸べてくる蒼木先輩。
えっ……と。
これは手をつなげってことですか……?
私がとまどっていると、蒼木先輩は私の手をぎゅっと握りしめた。
どきっ。
心臓が大きくはねる。
「ほら。俺の彼女なんだろ?」
蒼木先輩の大きくて綺麗な瞳が私をじっと見つめてくる。
「は……はい……そうでした……」
頬がかあっと熱くなる。
ひゃあ!
手……つないじゃった……!
なんだかくすぐったいような、恥ずかしいような、変な気持ち……。
どうしよう。
緊張して先輩の顔を見れないよっ……。
私がカチンコチンに固まっていると、蒼木先輩がクスリと笑った。
「照れてるのか? 可愛いな」
「かっ……!」
か、可愛い?
私が……?
顔だってスタイルだって普通だし、どちらかというと地味なのに、そんなことってあるのかな。
私……からかわれてる?
顔を上げると、アイドルみたいに整った顔がこちらを見つめてくる。
うわ。綺麗な顔……。
とくん、とくん。
胸のどきどきが止まらない。
やっぱりイケメンってすごいな。
私たちはニセの恋人で、私はただのボディーガード。
ドキドキなんてしちゃいけないのに……。
結局、私は蒼木先輩と手をつないだまま家に帰ってきてしまった。
「ただいま」
仁科いなり店の紺色ののれんをくぐる。
蒼木先輩ともここでさよならかと思いきや――。
「あ、おかえりなさーい」
「あっ、帰ってきたー」
「お帰りなさい!」
店内には、なぜか涼間先輩と高校生くらいの美女二人がいて、にこやかに迎えてくれた。
「えっ、何で涼間先輩がいるんですか!?」
私がびっくりして尋ねると、涼間先輩はこう答えた。
「だって、授業終わって凪季のこと迎えに行こうと思ったらもういなくてさ。きっと朱里ちゃんと帰ったんだって思ったから先回りして待ってたんだ」
私は美女二人に目をやった。
二人とも背が高くて、色白で髪もサラサラで、まるでアイドルみたい。
「この方たちは知り合いですか? もしかして、涼間先輩の彼女?」
私が恐る恐る尋ねると、涼間先輩はあははと大きな声で笑った。
「まさか! そこでナンパしたんだよ。一人でご飯を食べるのは寂しいからね」
ええっ。
一人で高校生をナンパするなんてすごいっ……。
蒼木くんはあきれた顔をしながら涼間先輩を睨みつけた。
「……お前なあ」
「だって俺、ヒマだしさ」
涼間先輩がケラケラ笑う。
すると、厨房の奥からお父さんが声をかけてきた。
「おーい、朱里。帰ったなら手伝ってくれ」
「あっ、はい」
私は慌てて店内を見回した。
店内は席がほとんど埋まっていて、昨日までのガラガラが嘘みたい。
「ごめんなさい、蒼木先輩。今日ちょっと店が混んでるので、手伝ってきます」
私が言うと、涼間先輩がスマホを取り出した。
「ああ、ごめんね朱里ちゃん。昨日僕がSNSに載せたばっかりに店が忙しくなっちゃって」
「へっ?」
涼間先輩のスマホを見るとSNSに凪季先輩と涼間先輩が二人でご飯を食べている写真が投稿されていた。
写真には「#いつメン」「#最近のお気に入りはおいなりさん」というハッシュタグが付いている。
「す……すごい。いいねがたくさん付いてる! 涼間先輩すごい人気なんですね」
イケメンだとは思ってたけど、まさか涼間先輩がこんなに人気だっただなんて!
まるで人気インフルエンサーみたい。
私がびっくりして涼間先輩の顔を見ると、涼間先輩はクスリと笑って説明してくれた。
「まあ、凪季は全然SNS更新しないからね。凪季の情報が欲しい人もみんな僕をフォローするから僕が人気なように見えるだけさ。朱里ちゃんもフォローしていいからね」
「あ、はいっ。あとでします」
確かに涼間先輩、マメそうだもんなあ……。
私が慌ててスマホを取り出そうとすると、蒼木先輩は少しイライラしたようにその手を止めた。
「朱里、こいつのSNSはフォローしなくていい」
「えっ、でも――」
「朱里は目の前の俺だけ見ていればいいから」
真剣な蒼木先輩の瞳。
「は、はい」
私があっけにとられながら返事をすると、涼間先輩がプッと吹き出した。
「えー? 何それ、嫉妬? 凪季ってば独占欲強すぎー」
「……そんなんじゃない。お前のSNSがくだらなすぎるってだけだ」
蒼木先輩は顔を真っ赤にして横を向いた。
「はいはい」
涼間先輩はやれやれと首をすくめる。
私は蒼木先輩の顔をチラリと見た。
嫉妬? 独占欲?
そんなのあるわけない。
だって私たちは偽のカップル。
恋愛感情なんて、ないんだから。
ない……よね?
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