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異世界転生篇
第1話 異世界へ
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「またか…」
水晶玉がいくつも宙に浮いた怪しげな部屋の中で男とも女ともとれる不思議な声色で誰かがつぶやいた。
「まったく、人族っていうのは神を何だと思っているのかな?戦争のたびに神の審判、神の審判って…あきれるよなぁ…」
呟きの主は水晶玉の一つをのぞき込みながらフードによって隠された顔を歪める。
「これは、本当に審判ってやつを下したほうがいいのかな。でも今の僕にはなぁ……ん?」
そして、数ある水晶玉のうちの一つがかすかに輝いていることに気づく。
「どうしたんだ~いっと……!…これは…まったく。どこまで業が深いんだ、人間ってのは」
そこには複雑な幾何学模様や古代文字のようなものが描かれた魔法陣を描く神官たちの姿があった。
「ふむ…だが、まぁちょうどいいかもしれない。少しばかり干渉させてもらうとしようかな」
そういうと水晶玉の明りを消し、空間から消え去った。
部屋の中に再び静寂が訪れた。
◇◇◇
「おい、なんとか言ったらどうなんだよ、えぇ?」
この世界は残酷だ。
「やめてあげたら~?傍から見たら完全に弱い者いじめよ?」
物心ついたころからそんなことばかり思っている。
「とか言いつつもお前止める気ないだろ?」
いつか幸福が訪れて、いつか報われて、幸せになれる。
「それなー。まじウケんだけど」
だが、現実はそうはいかない。こうやって現実を受け入れて大人になっていくと思っていた。
「それをいったらおしまいでしょ!」
この日までは。
「「「「ギャハハハ!」」」」
僕の名前は僑國 神愛。冗談みたいな名前だけどこれが本名。本気と書いてマジと読む。
だけど、名前に反して人生は不幸の連続で、母は僕を産んですぐに他界、父もその後を追うように交通事故で亡くなった。必然的に血のつながりのある人のところへ行かなければならず、僕は父方の祖父母の下で育てられた。
しかし、両親が周りの反対を押し切って駆け落ちしたこともあり、親戚中から煙たがられ、案の定祖父母もそうだった。
いや、むしろひどかった。今年で14歳になるがこれまでずっと虐待を受けている。
食事がないのなんてのは序の口、最近本気でこのクソジジィ…じゃなくて祖父は自分を殺そうとしているのでは?と思えるほど暴力がひどい。
よくも生きているものだと自分に感心してしまう。
(あー早く昼休み終わらないかなー。今日はいつもより蹴る力強すぎなんだよなー。結構やばいかも…)
今、3人の生徒が1人の生徒を集団で暴行するという悲惨なことが起きている。近くには5人の生徒もいるが止める気配は一切ない。
これはほぼ毎日起きていて、誰も助けないし、教師ですらも知らんぷりをしている。
それは本人ですらこの状況を甘んじてとはいえ受け入れており、改善しようとしていないことが原因かもしれない。
そもそも本人が動いたところでこの状況が改善されるとは到底思えなかったが…
主人公、神愛が意識を失いかけていたその時─
(──リーン──)
耳に心地よい鈴の音がその場に響いた。
(え?何の音?す、鈴?)
突然のことに戸惑う神愛。
だが、何か聞こえていたのは神愛だけではなかったようだ。
「おい、今のお前聞こえた?」
「あ、ああ。なんか変な音」
クラスメイト達にも聞こえていたようだった。だが─
「音ってか、なんか変なおっさんの声だったよな。気色わりぃ」
「なんか、ほかにもぶつぶつ言ってる声も聞こえた」
どうやら神愛に聞こえた鈴の音とは違う様子だった。
どうしたらいいのかわからず、神愛とクラスメイト達が茫然としていると─
「お、おい!なんか光が!」
「くそっ!ま、まぶしい─」
足元が突然、光り出したかと思った次の瞬間には神愛とクラスメイト達の意識は闇にのまれた。
水晶玉がいくつも宙に浮いた怪しげな部屋の中で男とも女ともとれる不思議な声色で誰かがつぶやいた。
「まったく、人族っていうのは神を何だと思っているのかな?戦争のたびに神の審判、神の審判って…あきれるよなぁ…」
呟きの主は水晶玉の一つをのぞき込みながらフードによって隠された顔を歪める。
「これは、本当に審判ってやつを下したほうがいいのかな。でも今の僕にはなぁ……ん?」
そして、数ある水晶玉のうちの一つがかすかに輝いていることに気づく。
「どうしたんだ~いっと……!…これは…まったく。どこまで業が深いんだ、人間ってのは」
そこには複雑な幾何学模様や古代文字のようなものが描かれた魔法陣を描く神官たちの姿があった。
「ふむ…だが、まぁちょうどいいかもしれない。少しばかり干渉させてもらうとしようかな」
そういうと水晶玉の明りを消し、空間から消え去った。
部屋の中に再び静寂が訪れた。
◇◇◇
「おい、なんとか言ったらどうなんだよ、えぇ?」
この世界は残酷だ。
「やめてあげたら~?傍から見たら完全に弱い者いじめよ?」
物心ついたころからそんなことばかり思っている。
「とか言いつつもお前止める気ないだろ?」
いつか幸福が訪れて、いつか報われて、幸せになれる。
「それなー。まじウケんだけど」
だが、現実はそうはいかない。こうやって現実を受け入れて大人になっていくと思っていた。
「それをいったらおしまいでしょ!」
この日までは。
「「「「ギャハハハ!」」」」
僕の名前は僑國 神愛。冗談みたいな名前だけどこれが本名。本気と書いてマジと読む。
だけど、名前に反して人生は不幸の連続で、母は僕を産んですぐに他界、父もその後を追うように交通事故で亡くなった。必然的に血のつながりのある人のところへ行かなければならず、僕は父方の祖父母の下で育てられた。
しかし、両親が周りの反対を押し切って駆け落ちしたこともあり、親戚中から煙たがられ、案の定祖父母もそうだった。
いや、むしろひどかった。今年で14歳になるがこれまでずっと虐待を受けている。
食事がないのなんてのは序の口、最近本気でこのクソジジィ…じゃなくて祖父は自分を殺そうとしているのでは?と思えるほど暴力がひどい。
よくも生きているものだと自分に感心してしまう。
(あー早く昼休み終わらないかなー。今日はいつもより蹴る力強すぎなんだよなー。結構やばいかも…)
今、3人の生徒が1人の生徒を集団で暴行するという悲惨なことが起きている。近くには5人の生徒もいるが止める気配は一切ない。
これはほぼ毎日起きていて、誰も助けないし、教師ですらも知らんぷりをしている。
それは本人ですらこの状況を甘んじてとはいえ受け入れており、改善しようとしていないことが原因かもしれない。
そもそも本人が動いたところでこの状況が改善されるとは到底思えなかったが…
主人公、神愛が意識を失いかけていたその時─
(──リーン──)
耳に心地よい鈴の音がその場に響いた。
(え?何の音?す、鈴?)
突然のことに戸惑う神愛。
だが、何か聞こえていたのは神愛だけではなかったようだ。
「おい、今のお前聞こえた?」
「あ、ああ。なんか変な音」
クラスメイト達にも聞こえていたようだった。だが─
「音ってか、なんか変なおっさんの声だったよな。気色わりぃ」
「なんか、ほかにもぶつぶつ言ってる声も聞こえた」
どうやら神愛に聞こえた鈴の音とは違う様子だった。
どうしたらいいのかわからず、神愛とクラスメイト達が茫然としていると─
「お、おい!なんか光が!」
「くそっ!ま、まぶしい─」
足元が突然、光り出したかと思った次の瞬間には神愛とクラスメイト達の意識は闇にのまれた。
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