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紅桜抜刀篇
第68話 エンド・オブ・ワールド
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「第一詠唱…白銀世界」
その鍵言によって引き起こされる事象は先ほどと同じ氷の世界。
しかしそれは、先ほどの上級魔法とは比べ物にならないほど強力でその区分が最上級であることを表していた。
(さっきの魔法よりも数段上の性能…まさか最上級魔法まで行使できるなんてね…)
氷系最上級魔法白銀世界。
上級魔法の永久凍土と名称は同じだが、その権能は比することが愚かに思えるほどかけ離れている。
空気中の成分を瞬時に液化し文字通り銀世界を作り出すこの魔法は、液体窒素や液体酸素、液化アルゴン、さらにはドライアイスまでも一瞬で生み出し、全てを秒数ゼロコンマ以下で凍り付かせることができる。
別名戦略魔法とも呼ばれる最上級魔法のうち、最も攻撃範囲の広いこの魔法は特殊魔法審議会で数少ない禁術に指定されようとしていた危険度未知数の禁断の魔法だ。
「ふっ…そう何度も同じ手を─」
余裕の笑みを浮かべ桜刃により白銀を切り刻む紅桜だったが、ふと感じた温かさに違和感を覚えシノアを直視する。
そして、次の瞬間にはその目を見開くこととなった。
「第二詠唱…獄炎爆撃覇」
「ッ?!」
紅桜の頬を撫でた微かな温かみは次の瞬間には地獄の業火となって辺りを火の海にした。
第二詠唱獄炎爆撃覇。
第一詠唱により水素を含めた様々な気体を液状化させ、それらを引き合わせることにより核融合を引き起こす。
そして、その莫大なエネルギーを一気に放出し、熱エネルギーと反応させることで巨大な爆発を起こすという人間が使うにはあまりに強力すぎるこの魔法は、もちろん炎系の最上級に分類される究極の魔法だ。
「…驚いたわ」
桜刃を盾替わりに自身を守った紅桜がぽつりとつぶやいた。
その顔には今まで張り付いていた余裕の笑みなど一切なく、恐ろしいほど無表情でシノアを見つめている。
「本当に坊やを甘く見過ぎていたようね。最上級をこうもポンポンと─」
上空に無数の刀を顕現させながら静かにシノアの隙を狙う紅桜だったが、またも予想外の攻撃を仕掛けられ一歩出遅れてしまう。
「第三詠唱…雷帝瞬導撃」
「チッ…」
舌打ちと共にシノアからさらに距離を離す紅桜だったが、シノアの魔法が生み出した三千億ボルトという雷の数千倍の電圧が、彼女が顕現させた刀を通してその身に襲い掛かった。
「あがぁぁあぁあ!!」
声にならない悲鳴を上げ、到底人の身には耐えられない電圧によりその身を焦がす紅桜。
通常であればこの時点で勝利は確実だろうが、相手は伝説の妖刀である。
そう簡単に行くわけがない。
「ふ…ふふ…痺れるわぁ…その技…単なる魔法じゃないわよねぇ…」
雷が数千発直撃したのとほぼ同じ状況だというのに、自慢の着物を少し焦がし軽い火傷を負った程度の紅桜は、再び殺気に満ちた笑みを浮かべるとゆっくりとシノアを観察し始めた。
(いくら修行したとはいえ、そう簡単に最上級魔法を連続で行使できるはずはない。これだけ連発すれば坊やはとっくに魔力欠乏症で倒れているはず…この魔力量…一体どこから…)
紅桜が眼光鋭いその瞳をシノアに向けていると、シノアが桜小町に両手を添え目を閉じ始めた。
次の瞬間、桜小町から膨大な魔力がシノアへと流れ込みその身体を青いオーラで包み込むと、彼の枯渇寸前だった魔力を完全回復させ上限を超えてその身体に供給し始める。
魔力の回復が終わったことで、シノアが刀を一振りし刀身についた血を払うと、同時に切先から蒼色の炎が出現し彼の右眼に宿った。
それは、彼が血に酔い支配されていた怨嗟の炎とは全く異なり、優しさを持ちながらも確固たる強さを宿している。
(まさか…掌握したの?桜小町のすべてを?…本当に信じがたい実力…いや…瞬間的な成長率というべきかしら?)
シノアの驚くべき成長に笑みがこぼれそうになるのを堪えながら隙を伺う紅桜。
数百枚の桜刃を顕現させると四肢で操り、シノアへ攻撃を開始した。
しかし、それが彼に届くことはなかった。
「チッ…まさかただの風に防がれるとはね」
突如出現した突風により、紅桜の桜刃はベクトルを失い血の海に沈む。
それを見た紅桜は舌打ちすると同時に見事な防御術だとシノアに感心した。
単なる防御…果たして本当に?
(…?これは…)
桜刃を防ぎ切ったにも関わらず止むことのない突風─もはや暴風というべきそれは、だんだんとその勢いを増していき巨大な竜巻となって辺りを蹂躙し始めた。
「くっ…!」
「第四詠唱…暴虐之嵐」
その魔法により顕現するのは無数の風の刃たちだ。
視認不可能な大量の刃が紅桜に襲い掛かり、その身を切り刻まんと荒ぶる。
「ッ…どこまで厄介なの」
思わず口からこぼれた愚痴に自分でも驚きながら、紅桜は風の刃を無効化していく。
瞬間風速100メートルを超える暴風の中で器用に刀を操る様は、見るものを魅了する舞いのようだ。
紅桜が風の刃に翻弄されているうちに、シノアは最後の大魔法の構築に取り掛かっていた。
今までの魔法を足掛かりにして発動する次の魔法は、魔法の区分の中で最上とされる禁術に匹敵する大規模なものだろう。
戦闘下ではまず不可能なほどの深い精神集中状態と膨大な魔力量、それに加えて様々な属性を行使したことによる物理的エネルギー、それらがすべて積み重なることで発動させることが可能になるこの魔法は、シノアが編み出した唯一無二の完全オリジナル魔法だ。
「…第五詠唱…此界終焉」
そして世界は終わりを知る。
その鍵言によって引き起こされる事象は先ほどと同じ氷の世界。
しかしそれは、先ほどの上級魔法とは比べ物にならないほど強力でその区分が最上級であることを表していた。
(さっきの魔法よりも数段上の性能…まさか最上級魔法まで行使できるなんてね…)
氷系最上級魔法白銀世界。
上級魔法の永久凍土と名称は同じだが、その権能は比することが愚かに思えるほどかけ離れている。
空気中の成分を瞬時に液化し文字通り銀世界を作り出すこの魔法は、液体窒素や液体酸素、液化アルゴン、さらにはドライアイスまでも一瞬で生み出し、全てを秒数ゼロコンマ以下で凍り付かせることができる。
別名戦略魔法とも呼ばれる最上級魔法のうち、最も攻撃範囲の広いこの魔法は特殊魔法審議会で数少ない禁術に指定されようとしていた危険度未知数の禁断の魔法だ。
「ふっ…そう何度も同じ手を─」
余裕の笑みを浮かべ桜刃により白銀を切り刻む紅桜だったが、ふと感じた温かさに違和感を覚えシノアを直視する。
そして、次の瞬間にはその目を見開くこととなった。
「第二詠唱…獄炎爆撃覇」
「ッ?!」
紅桜の頬を撫でた微かな温かみは次の瞬間には地獄の業火となって辺りを火の海にした。
第二詠唱獄炎爆撃覇。
第一詠唱により水素を含めた様々な気体を液状化させ、それらを引き合わせることにより核融合を引き起こす。
そして、その莫大なエネルギーを一気に放出し、熱エネルギーと反応させることで巨大な爆発を起こすという人間が使うにはあまりに強力すぎるこの魔法は、もちろん炎系の最上級に分類される究極の魔法だ。
「…驚いたわ」
桜刃を盾替わりに自身を守った紅桜がぽつりとつぶやいた。
その顔には今まで張り付いていた余裕の笑みなど一切なく、恐ろしいほど無表情でシノアを見つめている。
「本当に坊やを甘く見過ぎていたようね。最上級をこうもポンポンと─」
上空に無数の刀を顕現させながら静かにシノアの隙を狙う紅桜だったが、またも予想外の攻撃を仕掛けられ一歩出遅れてしまう。
「第三詠唱…雷帝瞬導撃」
「チッ…」
舌打ちと共にシノアからさらに距離を離す紅桜だったが、シノアの魔法が生み出した三千億ボルトという雷の数千倍の電圧が、彼女が顕現させた刀を通してその身に襲い掛かった。
「あがぁぁあぁあ!!」
声にならない悲鳴を上げ、到底人の身には耐えられない電圧によりその身を焦がす紅桜。
通常であればこの時点で勝利は確実だろうが、相手は伝説の妖刀である。
そう簡単に行くわけがない。
「ふ…ふふ…痺れるわぁ…その技…単なる魔法じゃないわよねぇ…」
雷が数千発直撃したのとほぼ同じ状況だというのに、自慢の着物を少し焦がし軽い火傷を負った程度の紅桜は、再び殺気に満ちた笑みを浮かべるとゆっくりとシノアを観察し始めた。
(いくら修行したとはいえ、そう簡単に最上級魔法を連続で行使できるはずはない。これだけ連発すれば坊やはとっくに魔力欠乏症で倒れているはず…この魔力量…一体どこから…)
紅桜が眼光鋭いその瞳をシノアに向けていると、シノアが桜小町に両手を添え目を閉じ始めた。
次の瞬間、桜小町から膨大な魔力がシノアへと流れ込みその身体を青いオーラで包み込むと、彼の枯渇寸前だった魔力を完全回復させ上限を超えてその身体に供給し始める。
魔力の回復が終わったことで、シノアが刀を一振りし刀身についた血を払うと、同時に切先から蒼色の炎が出現し彼の右眼に宿った。
それは、彼が血に酔い支配されていた怨嗟の炎とは全く異なり、優しさを持ちながらも確固たる強さを宿している。
(まさか…掌握したの?桜小町のすべてを?…本当に信じがたい実力…いや…瞬間的な成長率というべきかしら?)
シノアの驚くべき成長に笑みがこぼれそうになるのを堪えながら隙を伺う紅桜。
数百枚の桜刃を顕現させると四肢で操り、シノアへ攻撃を開始した。
しかし、それが彼に届くことはなかった。
「チッ…まさかただの風に防がれるとはね」
突如出現した突風により、紅桜の桜刃はベクトルを失い血の海に沈む。
それを見た紅桜は舌打ちすると同時に見事な防御術だとシノアに感心した。
単なる防御…果たして本当に?
(…?これは…)
桜刃を防ぎ切ったにも関わらず止むことのない突風─もはや暴風というべきそれは、だんだんとその勢いを増していき巨大な竜巻となって辺りを蹂躙し始めた。
「くっ…!」
「第四詠唱…暴虐之嵐」
その魔法により顕現するのは無数の風の刃たちだ。
視認不可能な大量の刃が紅桜に襲い掛かり、その身を切り刻まんと荒ぶる。
「ッ…どこまで厄介なの」
思わず口からこぼれた愚痴に自分でも驚きながら、紅桜は風の刃を無効化していく。
瞬間風速100メートルを超える暴風の中で器用に刀を操る様は、見るものを魅了する舞いのようだ。
紅桜が風の刃に翻弄されているうちに、シノアは最後の大魔法の構築に取り掛かっていた。
今までの魔法を足掛かりにして発動する次の魔法は、魔法の区分の中で最上とされる禁術に匹敵する大規模なものだろう。
戦闘下ではまず不可能なほどの深い精神集中状態と膨大な魔力量、それに加えて様々な属性を行使したことによる物理的エネルギー、それらがすべて積み重なることで発動させることが可能になるこの魔法は、シノアが編み出した唯一無二の完全オリジナル魔法だ。
「…第五詠唱…此界終焉」
そして世界は終わりを知る。
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