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第20話
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バルトロの合図で今まで隠れていた組員達が続々と姿を現す。底冷えするような笑みを浮かべて、シャルロッテを捕らえることなど容易いと高を括っている。
「……シャルロッテに手を出さないでくれっ!」
鎖に繋がれたセルジュが力を振り絞るようにしてバルトロに願い出る。かすれた声は彼のものとは思えない。
身動ぎするセルジュを冷ややかに見ると、バルトロは馬鹿にしたように鼻で笑った。
「そうそう、コイツはお嬢さんの身も保障しろと言ってきた。心から愛しているんだと。お嬢さんと共に生きるのが夢だとね」
バルトロは呆れたように大きなため息をつく。困ったように眉を下げて、満面の笑みを浮かべた。
「生温い事を。お嬢さんを捕まえた後は……そうだなぁ、男に売ろう。その前に儂が味見をするかな」
バルトロはシャルロッテに、舐め回すような視線を送ると涎を飲み込む。
「外套で顔が見えないな、剥ぎ取れ」
バルトロの命令に組員の1人がシャルロッテに飛び掛かる。
セルジュが制止しようと叫ぶが、使い物にならなくなった声は、じゃらりと鎖の揺れる音に掻き消されてしまう。
「本当に貴方って反吐が出るほどの屑ね」
シャルロッテは自分の方へ向かってくる組員を一瞥すると、バルトロに対して悪態をつく。そんな余裕は何処からだと言いたげに、バルトロは口角を上げた。
「ゴーレム、出番よ」
誰にでもなく呼び掛ける。彼女の声に地面が揺れ始めた。やがてシャルロッテの足元で、木が薙ぎ倒されるような鈍い音を立てながら盛り上がる。
地面から現れた巨人は、掌にシャルロッテを乗せて守るように包み込んだ。
目の前で起きた不可思議な光景に、シャルロッテを襲おうとしていた組員達も、バルトロも唖然としていた。
シャルロッテは外套を脱ぐ。2色の髪と瞳が現れた。
「その髪と目……スフォルトゥーナか」
バルトロは狂ったように笑い声をあげる。ひとしきり笑うと、嬉しくて堪らないという風に身震いをした。
「スフォルトゥーナが儂の住処にやって来るとは! でかしたぞ、セルジュ! スフォルトゥーナは高く売れる!」
しかも、とバルトロは興奮冷めやらぬ口調でまくし立てた。
「スフォルトゥーナの中でも、全ての精霊達に愛された"愛し子"ではないか」
スフォルトゥーナの民は、自身に加護を与えた精霊の属性の色と、自身の色の2つを持つ。
シャルロッテは水の精霊アルテミシアの色である青色と自身の金色がある。しかし、金という色はスフォルトゥーナの中でも大切な意味を持つ。
スフォルトゥーナの民に与えられる加護は1種類だけ。力を借りることが出来るのは、自身に加護を与えた精霊の属性から生み出される力だけだ。
だが例外がある。全ての属性の精霊から愛される者。それも高位の精霊から。どんな属性の精霊をも従える事が出来る特別な者を、"愛し子"と呼ぶ。スフォルトゥーナの民からは"守護者"とも呼ばれる。
愛し子、守護者と呼ばれる者は特徴があった。それは、その者特有の色が金だということ。一般的なスフォルトゥーナの民には、自分の色として金の髪や瞳を持つ者はいない。金は守護者の色なのだ。
シャルロッテはスフォルトゥーナの中でも選ばれた守護者だった。
「セルジュを今すぐ離して。そして、彼を自由にして! 2度とわたし達に関わらないと誓いなさい!」
バルトロを見下げながら、シャルロッテは叫ぶ。この男を見ているだけで虫酸が走る。セルジュの心を弄んで、心だけでなく身体をも傷つけた。
バルトロがゆっくりと腰にぶら下がった拳銃を手に取る。そして、躊躇いもなくシャルロッテの額へと照準を向けた。
「……交渉しようじゃないか、お嬢さん。降伏するか、儂と争うか? もっともシンと争って生き残る奴は居ないがな。降伏すればセルジュを解放してやろう。戦う事を選ぶならその時は残念だが……」
お嬢さんはスフォルトゥーナだから出来るだけ生かしておきたいんだが、とバルトロは独り言を呟く。
シャルロッテはバルトロの言葉に眉をひそめた。
「あなたはセルジュを傷つけた。それだけで、あなたとわたしが対峙する十分な理由よ」
「交渉決裂だな」
バルトロはそう言い、撃鉄を起こす。銃口をシャルロッテの額に向けると、引き金を引いた。
「……シャルロッテに手を出さないでくれっ!」
鎖に繋がれたセルジュが力を振り絞るようにしてバルトロに願い出る。かすれた声は彼のものとは思えない。
身動ぎするセルジュを冷ややかに見ると、バルトロは馬鹿にしたように鼻で笑った。
「そうそう、コイツはお嬢さんの身も保障しろと言ってきた。心から愛しているんだと。お嬢さんと共に生きるのが夢だとね」
バルトロは呆れたように大きなため息をつく。困ったように眉を下げて、満面の笑みを浮かべた。
「生温い事を。お嬢さんを捕まえた後は……そうだなぁ、男に売ろう。その前に儂が味見をするかな」
バルトロはシャルロッテに、舐め回すような視線を送ると涎を飲み込む。
「外套で顔が見えないな、剥ぎ取れ」
バルトロの命令に組員の1人がシャルロッテに飛び掛かる。
セルジュが制止しようと叫ぶが、使い物にならなくなった声は、じゃらりと鎖の揺れる音に掻き消されてしまう。
「本当に貴方って反吐が出るほどの屑ね」
シャルロッテは自分の方へ向かってくる組員を一瞥すると、バルトロに対して悪態をつく。そんな余裕は何処からだと言いたげに、バルトロは口角を上げた。
「ゴーレム、出番よ」
誰にでもなく呼び掛ける。彼女の声に地面が揺れ始めた。やがてシャルロッテの足元で、木が薙ぎ倒されるような鈍い音を立てながら盛り上がる。
地面から現れた巨人は、掌にシャルロッテを乗せて守るように包み込んだ。
目の前で起きた不可思議な光景に、シャルロッテを襲おうとしていた組員達も、バルトロも唖然としていた。
シャルロッテは外套を脱ぐ。2色の髪と瞳が現れた。
「その髪と目……スフォルトゥーナか」
バルトロは狂ったように笑い声をあげる。ひとしきり笑うと、嬉しくて堪らないという風に身震いをした。
「スフォルトゥーナが儂の住処にやって来るとは! でかしたぞ、セルジュ! スフォルトゥーナは高く売れる!」
しかも、とバルトロは興奮冷めやらぬ口調でまくし立てた。
「スフォルトゥーナの中でも、全ての精霊達に愛された"愛し子"ではないか」
スフォルトゥーナの民は、自身に加護を与えた精霊の属性の色と、自身の色の2つを持つ。
シャルロッテは水の精霊アルテミシアの色である青色と自身の金色がある。しかし、金という色はスフォルトゥーナの中でも大切な意味を持つ。
スフォルトゥーナの民に与えられる加護は1種類だけ。力を借りることが出来るのは、自身に加護を与えた精霊の属性から生み出される力だけだ。
だが例外がある。全ての属性の精霊から愛される者。それも高位の精霊から。どんな属性の精霊をも従える事が出来る特別な者を、"愛し子"と呼ぶ。スフォルトゥーナの民からは"守護者"とも呼ばれる。
愛し子、守護者と呼ばれる者は特徴があった。それは、その者特有の色が金だということ。一般的なスフォルトゥーナの民には、自分の色として金の髪や瞳を持つ者はいない。金は守護者の色なのだ。
シャルロッテはスフォルトゥーナの中でも選ばれた守護者だった。
「セルジュを今すぐ離して。そして、彼を自由にして! 2度とわたし達に関わらないと誓いなさい!」
バルトロを見下げながら、シャルロッテは叫ぶ。この男を見ているだけで虫酸が走る。セルジュの心を弄んで、心だけでなく身体をも傷つけた。
バルトロがゆっくりと腰にぶら下がった拳銃を手に取る。そして、躊躇いもなくシャルロッテの額へと照準を向けた。
「……交渉しようじゃないか、お嬢さん。降伏するか、儂と争うか? もっともシンと争って生き残る奴は居ないがな。降伏すればセルジュを解放してやろう。戦う事を選ぶならその時は残念だが……」
お嬢さんはスフォルトゥーナだから出来るだけ生かしておきたいんだが、とバルトロは独り言を呟く。
シャルロッテはバルトロの言葉に眉をひそめた。
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