4 / 33
第4話
しおりを挟む
1週間後に結婚式を控えた今日。
サーラは必要最低限の荷物を馬車1両に詰め、母が残してくれたほんの少しのお金を持参金として懐に入れていた。
いよいよシュトルヴァ領へ出発する日だ。護衛としてサンスクリットのみが同行する事になり、シュトルヴァ領までは2人だけの旅となった。
スフェールからシュトルヴァ領までは、馬車で1週間かかる。舗装された道路は王都ルチルを離れていく程、険しくなっていった。
道が険しくなった最初の頃は馬車で左右に揺らされ、気持ち悪くなったものだが、もう慣れたものだ。
「到着いたしました」
サンスクリットの言葉通り、馬車がピタリと停まる。小鳥の囀りがあちらこちらから聞こえてきた。
シュトルヴァ領は豊かな緑が生い茂っている土地だった。空気は澄んでいて、様々な動物達が姿を見せる。どこからか水の音が聞こえてきて、落ち着く空間だった。
「お出迎えしていただいているようですよ」
サンスクリットに言われ、数人が目の前に居たことに気付く。
真ん中に立つ、雪のように真っ白な髪から覗く獅子の耳を左右に動かしている青年をはじめ、みな体の一部に獣の部分を持ち合わせている。シュトルツ族だ。
「初めまして、スフェールからやって参りましたサーラ・ディアマンティと申します。隣に居るのは近衛騎士のサンスクリットでございます」
サーラがスカートの裾をつまみ、軽く持ち上げて一礼をすると、シュトルツ族は顔を強張らせる。
白い髪の青年だけが表情を変えることなく、じっとサーラを見つめていた。
言葉が通じていないのかと思ったが、スフェール語ではなく大陸共通語で話した為、大陸共通語を話せるシュトルツ族なら分かるはずだ。
それなのにこの反応ということは、どうやらサーラ達は歓迎されていないらしい。
「俺はブレイブだ。シュトルツ族の長をしている」
沈黙を打ち破るように白い髪の青年が前に出てきた。吸い込まれそうなくらい透き通った青い瞳。サーラは思わずまじまじと見つめてしまった。
(わたしの夫になる人……)
彼は、サーラの視線を特に気にする様子もない。
「お姫さんがこれから暮らす族長の館に案内する」
ブレイブは淡々と告げると、くるりと背を向けて歩いて行く。他のシュトルツ族も彼についていくように背を向けた。
サーラとサンスクリットは慌ててブレイブ達についていく。
深い森を歩くこと数十分。滝が見えてきた。先程の水の音は滝の流れる音だったらしい。
川に浮かぶように幾つもの丸い家のような建物が橋で繋がっている。どうやらシュトルツ族の住む家は、小さい家を幾つも繋げて1つの家になっているようだ。
「族長の館がこれだ。お姫さんが住むのは真ん中の大きい離れになる。他の離れには好きなように出入りしてもらっていいが、森の離れだけには絶対近付くな」
ブレイブはそう言うと、森の近くに位置する1つの離れを指差した。何故そこだけに行ってはいけないのか、少し気になったがここで根掘り葉掘り聞いてもより歓迎されないだけだ。サーラは黙って頷く。
「結婚式は明日だ。気が休まらないだろうが、ゆっくりすると良い。お姫さんの世話役として彼女を付ける」
紹介されたのは1人の女性だった。
濃い青色の長い髪から目玉模様のような孔雀の飾り羽が生えている。どうやら孔雀の獣人らしい。
「アニーサと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
アニーサと名乗る彼女は幼さを残した顔に満面の笑みを浮かべる。彼女はサーラに好意的なようだ。
全てのシュトルツ族がサーラを歓迎していないわけではない事が分かって、ほっと胸を撫で下ろす。
(彼はわたしをどう思っているのかしら……)
仏頂面のブレイブに視線をやると、目が合ってしまい、慌てて視線を逸らした。
サーラは必要最低限の荷物を馬車1両に詰め、母が残してくれたほんの少しのお金を持参金として懐に入れていた。
いよいよシュトルヴァ領へ出発する日だ。護衛としてサンスクリットのみが同行する事になり、シュトルヴァ領までは2人だけの旅となった。
スフェールからシュトルヴァ領までは、馬車で1週間かかる。舗装された道路は王都ルチルを離れていく程、険しくなっていった。
道が険しくなった最初の頃は馬車で左右に揺らされ、気持ち悪くなったものだが、もう慣れたものだ。
「到着いたしました」
サンスクリットの言葉通り、馬車がピタリと停まる。小鳥の囀りがあちらこちらから聞こえてきた。
シュトルヴァ領は豊かな緑が生い茂っている土地だった。空気は澄んでいて、様々な動物達が姿を見せる。どこからか水の音が聞こえてきて、落ち着く空間だった。
「お出迎えしていただいているようですよ」
サンスクリットに言われ、数人が目の前に居たことに気付く。
真ん中に立つ、雪のように真っ白な髪から覗く獅子の耳を左右に動かしている青年をはじめ、みな体の一部に獣の部分を持ち合わせている。シュトルツ族だ。
「初めまして、スフェールからやって参りましたサーラ・ディアマンティと申します。隣に居るのは近衛騎士のサンスクリットでございます」
サーラがスカートの裾をつまみ、軽く持ち上げて一礼をすると、シュトルツ族は顔を強張らせる。
白い髪の青年だけが表情を変えることなく、じっとサーラを見つめていた。
言葉が通じていないのかと思ったが、スフェール語ではなく大陸共通語で話した為、大陸共通語を話せるシュトルツ族なら分かるはずだ。
それなのにこの反応ということは、どうやらサーラ達は歓迎されていないらしい。
「俺はブレイブだ。シュトルツ族の長をしている」
沈黙を打ち破るように白い髪の青年が前に出てきた。吸い込まれそうなくらい透き通った青い瞳。サーラは思わずまじまじと見つめてしまった。
(わたしの夫になる人……)
彼は、サーラの視線を特に気にする様子もない。
「お姫さんがこれから暮らす族長の館に案内する」
ブレイブは淡々と告げると、くるりと背を向けて歩いて行く。他のシュトルツ族も彼についていくように背を向けた。
サーラとサンスクリットは慌ててブレイブ達についていく。
深い森を歩くこと数十分。滝が見えてきた。先程の水の音は滝の流れる音だったらしい。
川に浮かぶように幾つもの丸い家のような建物が橋で繋がっている。どうやらシュトルツ族の住む家は、小さい家を幾つも繋げて1つの家になっているようだ。
「族長の館がこれだ。お姫さんが住むのは真ん中の大きい離れになる。他の離れには好きなように出入りしてもらっていいが、森の離れだけには絶対近付くな」
ブレイブはそう言うと、森の近くに位置する1つの離れを指差した。何故そこだけに行ってはいけないのか、少し気になったがここで根掘り葉掘り聞いてもより歓迎されないだけだ。サーラは黙って頷く。
「結婚式は明日だ。気が休まらないだろうが、ゆっくりすると良い。お姫さんの世話役として彼女を付ける」
紹介されたのは1人の女性だった。
濃い青色の長い髪から目玉模様のような孔雀の飾り羽が生えている。どうやら孔雀の獣人らしい。
「アニーサと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
アニーサと名乗る彼女は幼さを残した顔に満面の笑みを浮かべる。彼女はサーラに好意的なようだ。
全てのシュトルツ族がサーラを歓迎していないわけではない事が分かって、ほっと胸を撫で下ろす。
(彼はわたしをどう思っているのかしら……)
仏頂面のブレイブに視線をやると、目が合ってしまい、慌てて視線を逸らした。
0
あなたにおすすめの小説
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
【完結】嫌われ公女が継母になった結果
三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。
わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。
完璧な政略結婚のはずでしたが、宰相閣下の“私の妻”扱いが甘すぎます
星乃和花
恋愛
政略結婚のはずでした。
家同士の利も、立場の釣り合いも、全部きちんと整った、完璧に合理的な結婚。
……なのに、夫となった冷徹宰相は、なぜか人前で私を「最高の妻」と紹介し、暮らしを完璧に整え、他人に近づかれると不機嫌になってしまいます。
“天使”と噂される穏やかな令嬢フィオナもまた、
そんな不器用な優しさに少しずつ心をほどかれて――。
これは、条件で選ばれたはずの夫婦が、
いつの間にかお互いを“ただ一人”として欲しくなるまでの、甘くてやさしい政略結婚物語。
(毎日21:50更新ー全8話)
【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
花言葉は「私のものになって」
岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。)
そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。
その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。
美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。
青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる