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第5話
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「護衛のお前にはあちらの離れを使ってもらう」
ブレイブに教えられたサンスクリットの部屋は、サーラの部屋から遠い場所にあった。
「あの、ブレイブ様。私の部屋をご用意いただいのは大変ありがたいお話なのですが、私はサーラ様の護衛ですのでお側で仕えさせていただきたいのです」
サンスクリットが言うと、ブレイブは怪訝そうな表情を浮かべる。彼の隣にいた濃い茶髪の小柄な青年が眉をひそめて話す。
「仮にも妻となった人の近くに男がいるのはなぁ。もし、子どもが出来ても誰の子か分からなくねぇか?」
小柄な青年が言いたい事を察したサンスクリットは、満面の笑みを浮かべて答える。
「ご安心ください。スフェールでは、男が貴い地位にある女性にお仕えする時は去勢いたしますので」
さらりと告げられた事実に、小柄な青年だけでなく、アニーサもあの仏頂面のブレイブまでもが驚いていた。
「だ、だからと言って異性を近付けるのは……」
動揺しているのだろう、先程よりも歯切れが悪くなっている。
そんな彼を宥めるようにブレイブが口を開いた。
「リアン、もう止めろ。近衛騎士であるお前がお姫さんに付くことは反対はしない。ただ、アニーサもいる時だけにしてくれ。お姫さんとお前が2人きりで居るところをシュトルツ族の誰かに見られるのはまずい」
例え子を成す能力を持っていなくてもだ、とブレイブは続ける。
リアンと呼ばれた小柄な青年は、不服そうに唇を尖らせた。
「ご理解いただきありがとうございます」
サンスクリットは深々と頭を下げた。
「とりあえず今日は部屋でゆっくりすると良い」
ブレイブの言葉通り、サーラは与えられた部屋で、サンスクリットはサーラの部屋から近い離れで休んだ。
アニーサが食事を運んできてくれ、さらには湯浴みをする為のお湯まで準備してくれた。
サーラは温かな湯に体を沈めながら、これからどんな事が待っているのだろうと感じていた。
そして翌日、いよいよ結婚式が始まる。
早朝からアニーサとその母、祖母がやって来てサーラを着飾ってくれた。花嫁衣装はシュトルツ族の伝統的な衣装らしく、輝くような金糸と銀糸で緻密に刺繍された模様が美しい。
不思議そうに衣装を眺めるサーラに、アニーサの祖母はこの模様はこういう意味なのだと細かく教えてくれた。
「よし、出来ましたよ! サーラ様、とってもお似合いです」
アニーサ達は満面の笑みを浮かべて褒めてくれた。
そして、彼女達に手を引かれ結婚式が執り行われる教会へと向かう。
結婚式はシュトルツ族の旧式と呼ばれる様式で行われる。
式場に辿り着くと参列者は多数いたが、誰一人笑っていなかった。笑顔でおめでとう、と声を掛けてくれるのはアニーサ達とサンスクリットだけだ。
サーラは歓迎されていない事を痛感するが、同時にこの地で生きていくしかないと覚悟を決めていた。
それからの記憶はあまりない。笑顔を浮かべないシュトルツ族と、仏頂面で何を考えているか分からないブレイブに対して緊張していたからだ。
ブレイブと指輪の交換を済ませ、晴れて夫婦となったが実感が湧かない。
夜には宴が開かれたが、サーラは早々に部屋に戻り、遠くから聞こえる賑やかな声と楽器の音に耳を澄ませていた。
ブレイブに教えられたサンスクリットの部屋は、サーラの部屋から遠い場所にあった。
「あの、ブレイブ様。私の部屋をご用意いただいのは大変ありがたいお話なのですが、私はサーラ様の護衛ですのでお側で仕えさせていただきたいのです」
サンスクリットが言うと、ブレイブは怪訝そうな表情を浮かべる。彼の隣にいた濃い茶髪の小柄な青年が眉をひそめて話す。
「仮にも妻となった人の近くに男がいるのはなぁ。もし、子どもが出来ても誰の子か分からなくねぇか?」
小柄な青年が言いたい事を察したサンスクリットは、満面の笑みを浮かべて答える。
「ご安心ください。スフェールでは、男が貴い地位にある女性にお仕えする時は去勢いたしますので」
さらりと告げられた事実に、小柄な青年だけでなく、アニーサもあの仏頂面のブレイブまでもが驚いていた。
「だ、だからと言って異性を近付けるのは……」
動揺しているのだろう、先程よりも歯切れが悪くなっている。
そんな彼を宥めるようにブレイブが口を開いた。
「リアン、もう止めろ。近衛騎士であるお前がお姫さんに付くことは反対はしない。ただ、アニーサもいる時だけにしてくれ。お姫さんとお前が2人きりで居るところをシュトルツ族の誰かに見られるのはまずい」
例え子を成す能力を持っていなくてもだ、とブレイブは続ける。
リアンと呼ばれた小柄な青年は、不服そうに唇を尖らせた。
「ご理解いただきありがとうございます」
サンスクリットは深々と頭を下げた。
「とりあえず今日は部屋でゆっくりすると良い」
ブレイブの言葉通り、サーラは与えられた部屋で、サンスクリットはサーラの部屋から近い離れで休んだ。
アニーサが食事を運んできてくれ、さらには湯浴みをする為のお湯まで準備してくれた。
サーラは温かな湯に体を沈めながら、これからどんな事が待っているのだろうと感じていた。
そして翌日、いよいよ結婚式が始まる。
早朝からアニーサとその母、祖母がやって来てサーラを着飾ってくれた。花嫁衣装はシュトルツ族の伝統的な衣装らしく、輝くような金糸と銀糸で緻密に刺繍された模様が美しい。
不思議そうに衣装を眺めるサーラに、アニーサの祖母はこの模様はこういう意味なのだと細かく教えてくれた。
「よし、出来ましたよ! サーラ様、とってもお似合いです」
アニーサ達は満面の笑みを浮かべて褒めてくれた。
そして、彼女達に手を引かれ結婚式が執り行われる教会へと向かう。
結婚式はシュトルツ族の旧式と呼ばれる様式で行われる。
式場に辿り着くと参列者は多数いたが、誰一人笑っていなかった。笑顔でおめでとう、と声を掛けてくれるのはアニーサ達とサンスクリットだけだ。
サーラは歓迎されていない事を痛感するが、同時にこの地で生きていくしかないと覚悟を決めていた。
それからの記憶はあまりない。笑顔を浮かべないシュトルツ族と、仏頂面で何を考えているか分からないブレイブに対して緊張していたからだ。
ブレイブと指輪の交換を済ませ、晴れて夫婦となったが実感が湧かない。
夜には宴が開かれたが、サーラは早々に部屋に戻り、遠くから聞こえる賑やかな声と楽器の音に耳を澄ませていた。
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