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第19話
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アニーサが作ってくれた昼食を食べた後、館に客人がやって来た。
「あれ? ブレイブはいねぇの?」
客人はブレイブを探しに来たリアンだった。リアンは、サーラとアニーサを見ると「ここにはブレイブは居なさそうだな」と言って去ろうとする。
アニーサが慌ててリアンに声を掛けた。
「昼食の時間帯ですし、もしかしたら族長も館に戻ってくるかもしれません」
確かにそうだと思ったサーラは頷いた。アニーサはサーラが頷いたのを見ると、小声で相談する。
「館で休憩してもらうのはいかがでしょうか」
サーラはアニーサを見た。頬を赤くし、緊張した面持ちでサーラを見やる。時折リアンの方に視線をやるが、その眼差しが熱い。
(なるほどね)
サーラは察するとアニーサに向かって告げた。
「わたしは森に散歩しに行くからアニーサ、お相手をしてあげて」
そう言い、アニーサに目配せすると彼女は感動のあまり目を潤ませた。
ありがとうございます、と勢いよく頭を下げたのを見てサーラは館を出た。
(アニーサったら本当に嬉しそうだったわ。あまり早くに戻るのも申し訳ないし、この辺りを歩いてみようかしら)
サーラは自室として与えられている離れの周りを見渡した。
実は族長の館付近を詳しく見たことがない。自分がよくいる離れ、いつも体術の練習をしている場所以外は全くと言って良いほど知らなかった。
良い機会なので歩いてみようとサーラは足を踏み出す。
族長の館付近にある森は鬱蒼としていて、1度入ると土地勘がないサーラはすぐに迷いそうだった。あまり深くは入らずに整地された場所だけを歩く。
鳥の囀りや風で木々が揺れる音に耳をすませながらサーラは黙々と歩いていた。
サーラは、人の手が加わった歩きやすい道を選んでいるつもりだったがいつの間にか族長の館として建てられた離れの1つに辿り着く。見覚えのある風景にサーラは首を傾げた。
(この離れって確か……)
サーラが嫁いだ当初、ブレイブにあの離れにだけは近付くなと注意を受けていた離れだった。無自覚とはいえ、近付くなと言われていたのに来てしまったサーラは慌てて元の道を戻ろうとする。
「あーっ! スフェール人、ここはお前が来ていい場所じゃないんだぞ!」
甲高い子どもの声がサーラの背中に届く。大声で彼女を諌めたのはシュトルツ族の快活そうな少年だった。
「ごめんなさい、わざとじゃないの」
サーラは弁明するが子どもは聞かない。入ったらいけないんだ、と騒ぐ一方だ。
子どもの声が森に響き渡ったせいか、たまたま近くに居たのか分からないがブレイブが茂みから顔を出す。
「何の騒ぎだ」
「このスフェール人が離れに入ろうとしてたんだ!」
子どもの言葉に一瞬ブレイブの目が険しくなる。サーラはびくりと体を震わせた。
鋭い目付きでブレイブに見つめられ、サーラは何も言えずにブレイブを見つめ返すしかなかった。
「……お前はもう帰れ。広場でお前の母さんが探してたぞ」
ブレイブは少し黙っていたが、シュトルツ族の子どもに帰るよう促した。子どもは族長に言われたのが効いたのか渋々広場の方へ歩いていく。
森にはサーラとブレイブだけが残った。先程まで聞こえていた鳥の鳴き声が消えている。
緊張感漂う空気に汗をかきながらサーラは震える声でブレイブに話しかけた。
「ごめんなさい、入るつもりは無かったのよ。ぼうっと歩いていたらここに辿り着いただけで……言い訳になるけど、本当よ」
ブレイブに説明したが、彼はあぁと短く返事をするだけだった。
(絶対怒ってる……。近くに来てしまうのがそもそもの間違いだったわね)
サーラが心の中で反省していると、ブレイブが声を掛けた。
「ついてこい、あの離れを案内する」
「あれ? ブレイブはいねぇの?」
客人はブレイブを探しに来たリアンだった。リアンは、サーラとアニーサを見ると「ここにはブレイブは居なさそうだな」と言って去ろうとする。
アニーサが慌ててリアンに声を掛けた。
「昼食の時間帯ですし、もしかしたら族長も館に戻ってくるかもしれません」
確かにそうだと思ったサーラは頷いた。アニーサはサーラが頷いたのを見ると、小声で相談する。
「館で休憩してもらうのはいかがでしょうか」
サーラはアニーサを見た。頬を赤くし、緊張した面持ちでサーラを見やる。時折リアンの方に視線をやるが、その眼差しが熱い。
(なるほどね)
サーラは察するとアニーサに向かって告げた。
「わたしは森に散歩しに行くからアニーサ、お相手をしてあげて」
そう言い、アニーサに目配せすると彼女は感動のあまり目を潤ませた。
ありがとうございます、と勢いよく頭を下げたのを見てサーラは館を出た。
(アニーサったら本当に嬉しそうだったわ。あまり早くに戻るのも申し訳ないし、この辺りを歩いてみようかしら)
サーラは自室として与えられている離れの周りを見渡した。
実は族長の館付近を詳しく見たことがない。自分がよくいる離れ、いつも体術の練習をしている場所以外は全くと言って良いほど知らなかった。
良い機会なので歩いてみようとサーラは足を踏み出す。
族長の館付近にある森は鬱蒼としていて、1度入ると土地勘がないサーラはすぐに迷いそうだった。あまり深くは入らずに整地された場所だけを歩く。
鳥の囀りや風で木々が揺れる音に耳をすませながらサーラは黙々と歩いていた。
サーラは、人の手が加わった歩きやすい道を選んでいるつもりだったがいつの間にか族長の館として建てられた離れの1つに辿り着く。見覚えのある風景にサーラは首を傾げた。
(この離れって確か……)
サーラが嫁いだ当初、ブレイブにあの離れにだけは近付くなと注意を受けていた離れだった。無自覚とはいえ、近付くなと言われていたのに来てしまったサーラは慌てて元の道を戻ろうとする。
「あーっ! スフェール人、ここはお前が来ていい場所じゃないんだぞ!」
甲高い子どもの声がサーラの背中に届く。大声で彼女を諌めたのはシュトルツ族の快活そうな少年だった。
「ごめんなさい、わざとじゃないの」
サーラは弁明するが子どもは聞かない。入ったらいけないんだ、と騒ぐ一方だ。
子どもの声が森に響き渡ったせいか、たまたま近くに居たのか分からないがブレイブが茂みから顔を出す。
「何の騒ぎだ」
「このスフェール人が離れに入ろうとしてたんだ!」
子どもの言葉に一瞬ブレイブの目が険しくなる。サーラはびくりと体を震わせた。
鋭い目付きでブレイブに見つめられ、サーラは何も言えずにブレイブを見つめ返すしかなかった。
「……お前はもう帰れ。広場でお前の母さんが探してたぞ」
ブレイブは少し黙っていたが、シュトルツ族の子どもに帰るよう促した。子どもは族長に言われたのが効いたのか渋々広場の方へ歩いていく。
森にはサーラとブレイブだけが残った。先程まで聞こえていた鳥の鳴き声が消えている。
緊張感漂う空気に汗をかきながらサーラは震える声でブレイブに話しかけた。
「ごめんなさい、入るつもりは無かったのよ。ぼうっと歩いていたらここに辿り着いただけで……言い訳になるけど、本当よ」
ブレイブに説明したが、彼はあぁと短く返事をするだけだった。
(絶対怒ってる……。近くに来てしまうのがそもそもの間違いだったわね)
サーラが心の中で反省していると、ブレイブが声を掛けた。
「ついてこい、あの離れを案内する」
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