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第一章
第6話
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ベアトリスから帰ってきた私に、リヒトは早速何があったか聞いてくる。
私は言えなかった。彼のお母さんがカトレアに殺されたという残酷な事実をどう伝えればいいのだろう。彼は大人びてはいるけれど、まだ八歳だし事実を受け止めるにも心が幼すぎる。本当の事を伝えて闇落ちしたら……。
次にカトレアが狙っているのは私達だ。どうやって立ち向かうべきかも考えなければいけない。
リヒトに伝えるべきか、カトレアにどう立ち向かうべきか悩んだ私はギルに相談することにした。
「という事なんだけど、ギルはどうしたらいいと思う?」
怪しまれないようこの間貰った女中の格好をして、宰相の仕事部屋に行く。出迎えてくれたギルは、仕事も残っているのに快く出迎えてくれた。
「後からどれだけ証拠を揃えても、国王陛下の性格ですから何だかんだ理由をつけて信じようとはしないでしょう。彼には自分の目で見てもらう必要があります。カトレア妃もバーバラ様達を罠にかけようと虎視眈々と狙っているでしょうから、こちらも利用すれば良いんです。まだ幼い王太子殿下には、全てが決着して時期が来たらお話するべきでしょう。自分の母が義理の母に毒殺されたと知ってしまったら、小さなお心は崩れてしまいます」
「そう、だよね。うん、私もそう思う」
ギルは柘榴のような瞳を私に向ける。
「良い作戦を思いついたのですが……」
「良いかも! さすがに陛下も信じるよ」
ギルから作戦内容を教えてもらった私は、話を聞き、賛同する。とても良い案だと思った。
「本当に色々とありがとうね。どうお礼をすればいいのか……」
「成功してから考えてください」
彼はお茶目に言うと微笑んだ。優しい眼差しに私の心臓がとくんと跳ねる。
「私は惚れた人の為なら何だって出来ますから」
ギルは言い、私の赤い髪の毛の先を手に取ると口づけを落とした。そのまま視線を上に、私の方を見る。
「えっ! あ、いや、その……まずは作戦実行しなきゃだね! じゃあ、当日よろしくね」
自分でも分かるくらい顔が熱い。慌てて部屋を出た。
あのイケメン、とんでもない――。
◆ ◆ ◆
ギルバードは逃げるように部屋から出て行ったバーバラの背中を見て呟く。
「押しすぎたかな?」
苦笑を浮かべ、机上に散乱した書類に目を戻す。
彼がバーバラに初めて会ったのは、ルシオの結婚式である。彼に嫁いだバーバラは当時十四歳の少女。
花嫁衣裳に身を包み、夫となるルシオを期待と喜びに満ちた美しい紫色の瞳が印象的だった。これから始まる夫婦生活が待ちきれないという彼女の感情が体に直接伝わって来るようだった。
最初は美しい人だと思っただけ。だが、本番を直前にルシオから「俺はお前が嫌いだ、生涯かけて愛するつもりはない。俺の愛を求めるな」と言われた彼女が泣きそうになるのを見て、心がざわついた。その愛らしい瞳に大粒の雫を溢れんばかりに溜め込んでいて、せっかくの化粧も落ちてしまいそうだと思った。
しかし、結婚式が始まる鐘の音が響くとバーバラはキッと顔を上げ、笑顔を浮かべたのだ。
強く、強く、前を見据えて、王妃として正しくあろうとする彼女の覚悟と、踏みにじられても折れることのない気高さにギルバードは心を射抜かれた。外見という殻だけでなく、内面まで美しいのだと彼は感じた。
同時に彼は自分の心を彼女に捧げようと誓う。幼馴染の妻で、この国の王妃で、決して叶わない恋だとしても。
この身が滅びるまで尽くし続けよう。
私は言えなかった。彼のお母さんがカトレアに殺されたという残酷な事実をどう伝えればいいのだろう。彼は大人びてはいるけれど、まだ八歳だし事実を受け止めるにも心が幼すぎる。本当の事を伝えて闇落ちしたら……。
次にカトレアが狙っているのは私達だ。どうやって立ち向かうべきかも考えなければいけない。
リヒトに伝えるべきか、カトレアにどう立ち向かうべきか悩んだ私はギルに相談することにした。
「という事なんだけど、ギルはどうしたらいいと思う?」
怪しまれないようこの間貰った女中の格好をして、宰相の仕事部屋に行く。出迎えてくれたギルは、仕事も残っているのに快く出迎えてくれた。
「後からどれだけ証拠を揃えても、国王陛下の性格ですから何だかんだ理由をつけて信じようとはしないでしょう。彼には自分の目で見てもらう必要があります。カトレア妃もバーバラ様達を罠にかけようと虎視眈々と狙っているでしょうから、こちらも利用すれば良いんです。まだ幼い王太子殿下には、全てが決着して時期が来たらお話するべきでしょう。自分の母が義理の母に毒殺されたと知ってしまったら、小さなお心は崩れてしまいます」
「そう、だよね。うん、私もそう思う」
ギルは柘榴のような瞳を私に向ける。
「良い作戦を思いついたのですが……」
「良いかも! さすがに陛下も信じるよ」
ギルから作戦内容を教えてもらった私は、話を聞き、賛同する。とても良い案だと思った。
「本当に色々とありがとうね。どうお礼をすればいいのか……」
「成功してから考えてください」
彼はお茶目に言うと微笑んだ。優しい眼差しに私の心臓がとくんと跳ねる。
「私は惚れた人の為なら何だって出来ますから」
ギルは言い、私の赤い髪の毛の先を手に取ると口づけを落とした。そのまま視線を上に、私の方を見る。
「えっ! あ、いや、その……まずは作戦実行しなきゃだね! じゃあ、当日よろしくね」
自分でも分かるくらい顔が熱い。慌てて部屋を出た。
あのイケメン、とんでもない――。
◆ ◆ ◆
ギルバードは逃げるように部屋から出て行ったバーバラの背中を見て呟く。
「押しすぎたかな?」
苦笑を浮かべ、机上に散乱した書類に目を戻す。
彼がバーバラに初めて会ったのは、ルシオの結婚式である。彼に嫁いだバーバラは当時十四歳の少女。
花嫁衣裳に身を包み、夫となるルシオを期待と喜びに満ちた美しい紫色の瞳が印象的だった。これから始まる夫婦生活が待ちきれないという彼女の感情が体に直接伝わって来るようだった。
最初は美しい人だと思っただけ。だが、本番を直前にルシオから「俺はお前が嫌いだ、生涯かけて愛するつもりはない。俺の愛を求めるな」と言われた彼女が泣きそうになるのを見て、心がざわついた。その愛らしい瞳に大粒の雫を溢れんばかりに溜め込んでいて、せっかくの化粧も落ちてしまいそうだと思った。
しかし、結婚式が始まる鐘の音が響くとバーバラはキッと顔を上げ、笑顔を浮かべたのだ。
強く、強く、前を見据えて、王妃として正しくあろうとする彼女の覚悟と、踏みにじられても折れることのない気高さにギルバードは心を射抜かれた。外見という殻だけでなく、内面まで美しいのだと彼は感じた。
同時に彼は自分の心を彼女に捧げようと誓う。幼馴染の妻で、この国の王妃で、決して叶わない恋だとしても。
この身が滅びるまで尽くし続けよう。
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