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水岡千草

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始まり

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 遠い昔の話だが海と空と大地はひとつだった。
海を泳げば空へ行き、空を飛べば大地を蹴ることが出来た。
暫くして大地に生まれた生き物たちを守るために大地は空と海を自分から離した、海も空も反対はしなかった。
大地は深い愛を持って生き物たちを愛したが、その愛が聞こえず届くこともなかった。



パタン
「しっかしまぁなんだ、大地とやらは哀れだねぇ」
図書館なかの陽の当たる椅子に座った男は古くくたびれた本を閉じて呟いた。
男の周りには血の海ができている。
「ちょっとバルカナやりすぎよ、残しとけって言われたじゃない」
男の方に歩いてくる女がそういった、女はこの場所には合わない淡いピンク色のミニドレスを纏い銀色の髪をハーフアップでまとめていたが片手には若い男の首を持っていた。
「ハハッ悪いねつい盛りあがってしまったよ」
悪びれることも無く男は笑った、女は深いため息をついたあと男に指示をし図書館の片付けだと爆弾をいくつか配置して図書館を消した。
これがつい2日前この街で起こった悲劇だ。
 爆破音を聞き付けて街の人が図書館の方へ行くと図書館は跡形もなく消えていた。
犯人を探そうにも既に姿はなく愛する人をなくした人々の悲しみがこだまして響いていた。

文学の街リレタには世界の全てが本になり図書館に揃っていた、禁止書籍の倉庫や武器の設計図、麻薬の辞典などありとあらゆるものがリレタに集まる。
その図書館が爆破されたとなれば警察や陸軍、別種族のもの達まで騒ぎたっていた。
僕は図書館があった跡地で座り込んでいた。
「おい、ヲルどうすんだ」
話しかけてきたのは同い年の少年でいつも僕を気にかけてくれる。
「タクト、、、どうするもこうするも無理だよ、母様も父様も死んだんだ」
爆破に巻き込まれた父と母を想い僕はまだたちなおれないでいた。
「、、、旅に出ないか」
タクトがぼそりと呟いた言葉に耳を疑った
「何言ってるんだよ、、、むりにきまつてるじゃんか
そもそも僕らはまだ子供なんだ」
震える声で話したが伝わったようで、でもタクトは真剣な眼差しでこちらを見ていた
「嘘じゃねぇさ、何かが起こる気がするんだ」
タクトの予感は外れたことが無い、そしてタクトの提案はその違和感を打開する1番の得策なのだ。
「だからって、僕は」
言いかけた言葉を被せるようにタクトは続けた
「俺は夢がある、笑われたって構いやしないが空へ行きたい。
だからいずれ俺はこの街を出る」
真剣に前を見て話すタクトは悲しい目をしていた。

それからしばらく勧誘は続いた、
結論からゆうと負けた、あいつの熱意が凄すぎた、だからちょっとうなずいたんだ、、頷いただけだったんだ、、、
「だからヲル、俺は親友を連れていきたい、いや連れていく」
「えっ!?うわぁ!!」
ヒョイっと僕を持ち上げるとタクトは笑って「誘拐だ」といった。
こうして僕とタクトの冒険は始まった。



━━━━━━━━━━━━━━━
ヲル
図書館の司書をしていた夫婦の息子
今回の爆発で両親を亡くす
生まれはこの街ではないが物心ついた時からリレタに住んでいる。
この度「誘拐」された

タクト
ヲルを誘拐した本人
空に強い憧れを抱いている
本人曰く「ヲルは元々連れていくつもりだった」
ヲルよりも遥かにガタイがいい

バルカナ
体格のいい男

謎の女

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