チートが無いのに聖女様~なぜだか囲まれてます~

深郷由希菜

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衝撃

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思えば、違和感があったんだよね。

でもそれの正体を知った時、私は驚きを隠せなかった。

「ジロジロ見てんじゃねぇよ、平民聖女」

そう言い放って地面に組み敷かれている私を見下ろすその人は、大人しいショートヘアになっただけのバーニャ。

でもその顔は、どう見てもきれいではあるけれど、のそれだった。

「俺が男なのは一応黙っとけよ。とはいえあのシーフは知ってたみたいだけどな」

かわいかったあのバーニャからは予想できない声と表情で言われることを聞きつつも、私はなんでこうなった!?と頭を回転させていた。






バーニャと出会って3日目。

私たちは近くにあったダンジョンに来ていた。

「パーティの連携の訓練のために軽いダンジョンへと来たのですが、危険がないとは言えない。そこを了解するよう」

ファルゴットさんの声に頷くヴィックス以外のメンバー3人

そして魔物たちを倒したり、罠を外したり(毎回褒めてとシーフが言いに来る)する私たち。

「!危ない!」

叫ぶ声が聞こえたと思ったら、私は何かに突き飛ばされた。

そして、冒頭の状態に戻る。


「ったく、なんだよ。崩落なんて聞いてねぇぞ」

悪態をつく人物は、本当にバーニャ?

「あぁ、はバリンデルと呼べ。様付けしてもいいぞ」

にやっと笑う女装男子、バリンデルは目の前の岩をどうにかできないかと考えている。

「・・・水流ウォーターフロゥ

岩に向けて手をかざし、そう唱えるけれど。

最初の勢いは岩へ届く前に失速し、岩をどかせなかった。

もちろん、大の男数人がかりでもどかせなさそうなものがごろごろしているから、バリンデル君一人では到底力業でどかせない。

だからこそ魔法で、となったんだろうけど。

意外にも弱い威力だったのに驚く私を見て、すっ、と目を細める。

「忘れろ。さもないと・・・」

どんどん近づいてくる姿を見ても、私は動けなくて。

そして、顔が近づいて、触れた。



「そんな多くねぇんだな、聖女様の魔力って」

ま、なんにせよゴチソウサマ、と言って離れた姿を見ても、私は動けなかった。

唇を舐め、そしてもう一度放った水流は、最初の威力を保ったまま岩を崩した。

「よし、出るぞ。あ、ちょっとだるいだろうけど自分で動けよ?支えくらいはするから」

少しぼーっとする頭で、肩を貸してもらう状態でされるがまま歩き出す。

そして、みんなと合流した後は、私はそのまま意識を失ってしまって連携を見るどころじゃなかった。

ファーストキスを奪われたとか、そういう驚きを感じる間もなく、その日は終わってしまったのだった。
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